クズはゴミ箱へ

天方主

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第三章 クズ共は特別任務へ

第45話

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 果歩はひとしきり涙を流した後、時々えずきながらも落ち着いた様子で口を開いた。



「実は私、万引き依存症でして……。少し前まで万引きであなたたちと同じように捕まっていた身なんですけど。みんなからの差別とか侮蔑とか、そういうのが耐えられなくなって、必死でこの世界に貢献する努力をしたんです!だからゴミ箱からもすぐに出ることができたんです。それからは万引きする衝動も必死に抑えてただただ貢献ポイントを上げる活動に専念しました……。でも――」



 果歩は再び泣きそうな表情を見せた。



 しかし、黙って耳を傾けている黒水たちのために声を振り絞って――。



「また最近、強烈な衝動に駆られてしまったんです。そんなときに万引きしてもテリスと防犯カメラにばれないスポットを見つけてしまって……。それからはもう毎日そこで万引きしてしまったんです。コツコツ貯めた貢献ポイントが、万引きがばれた瞬間一気になくなってしまうというスリルが私の衝動をさらに掻き立てました。そして、三日前――。私がいつものようにそこで万引きをしていたら、あの男に見られてしまったんです」



「あの男……?」



「はい、私も誰だかよくわかっていませんがとにかく目つきが鋭くガラの悪い男でした。その男に私が万引きしている現場を撮られてしまったんです……!男はその写真と一枚の紙を見せて店を出た私にこう言いました。『この写真を風紀委員共に見られたくなかったら、ここに書いてある通りに動け』と。私がまた万引きなんてしてなければ……。すみませんすみませんっ!」



 果歩の目に溜まっていた涙が一気に溢れだした。



「事情は分かったわ!とりあえず逮捕―!」



「ちょいちょいちょいちょい!その前に聞くことがあるだろ!?」



「何言っているのよ?こいつは犯罪者のくせに、善良の市民のふりをしていたクズ女よ!私がゴミ箱でつらい思いをしている間のうのうとここで暮らして――」



「はーいかなでん、ちょっと黙ろうかー」



「ムグッ――」



 奏の止まらない口は斧研の力強い手によって押さえつけられた。



「果歩さん……。その紙に書かれていたのが、違法アプリのインストール方法だったんですか……?」



 亜紀が泣いている果歩に恐る恐る尋ねた。



「そう、です……。だから私のテリスは今、違法アプリでさらに機能が向上してしまって――」



 そう言って果歩はベッドに置いてあったクマのぬいぐるみを手に取る。



 そして、果歩が小指でぬいぐるみの腕の付け根を撫でた次の瞬間――。



 ポロリ、とぬいぐるみの腕が落ち、床に転がった。



「――――っ!?」



 腕の付け根から綿が丸見えのそのぬいぐるみを見て、黒水は声にならない悲鳴を上げた。



「この驚異的な力もおそらく、違法アプリをインストールしたからです……。ほんと、なんでこんなことにっ……」



「だから果歩さんは最近そんなに怯えていたんですね」



「いや、それだけじゃありません……」



 果歩は涙を必死に拭い、話を続ける。



「男から渡された紙にはアプリのインストール方法に加えてもうひとつ書かれていたことがあるんです。『この紙を他の善良な市民に渡し、布教すること』、と。でも私は元オレンジなので、そういうこと話せる友達もいないですし何より捕まったことのない善良の市民に話す勇気がありませんでした……!」



「それってつまり――」



 果歩は自分の勉強机のほうに指をさす。



 そこには一枚の折りたたまれた紙が置いてあった。



「まだ、誰にも布教できていないんです。でも、はやく布教しないとまた私はゴミ箱行きに――」



「お前がゴミ箱に行こうがうちには関係ねーけどよ。とりあえず、いつまでに違法アプリの布教をしなきゃいけねーんだ?」



「今日の午後四時まで、です。あの男とはここに近い公園で待ち合わせすることになってます。そこで布教を完了した証拠を見せなければなりませんっ……」



 果歩の肩が極寒の地にいるかの如く、ブルブルと震えだすのだった。
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