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第百二十八話 前世と現世の告白
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私の体調を心配したクランリー農場の人達は、無理せずゆっくりと休むように言ってくれた。本当に優しい人達だ。私はその言葉に甘えて一日だけ時間を貰う事にした。
みんなに私の話を聞いてもらう為にも、何から話せば良いのか考える時間が欲しかったからだ。
知らなかったこととは言え私はクラレシア神聖王国の滅亡の切っ掛けを作ってしまった。
例えそうだったとしても言い訳だけでは前に進めない。実際に被害を被ったクラレシアの人々が沢山いるのだから。
女神様とグレンのお陰で私は生きることを許された。いいえ、生きることによって贖罪の機会を与えられたのかも知れない。
ならばそれに応えよう。私に出来ることはそんなに多くはないだろうけど、それでも何が出来るのか、何をするべきなのか考えよう。幸いにも私の周りには助けてくれる人がたくさんいる。ベアトリーチェの時は罪悪感に阻まれて視野狭窄に陥っていたけど今は違う。
さあ、これからだ。私は密かに心の中で気合いを入れて助け手達に向かって話す内容を纏めた。
「皆さんがご存知の通り私は亡国クラレシア神聖王国の元王女ベアトリーチェです。ですが、今は前世の奄美根花梨の記憶を持っています」
私はクランリー家の応接室でこれまでのことを語り始めた。
応接室には、ダンテさん、セレンさん、ショウがソファに並んで腰掛け私はその正面に向かい合うように座っていた。
ラルクは、ロイ爺ちゃんとマギー婆ちゃんと隣の領の農場で親睦会があるといって一緒に行ったようだ。未来のクランリー農場の跡継ぎになる為、見聞を広めるそうだ。
私の言葉が直ぐに理解出来なかったのか、三人ともキョトンとした顔をしている。
「前世?」
ダンテさんが聞き返し、私の瞳をジッと見つめた。
この世界には前世と言う概念がないのだろうか? だとしたらそこから説明する必要があるのかも知れない。
「はい、前世です。ベアトリーチェとして生まれる前に生きていた記憶です」
私はダンテさんの瞳をしっかり見つめ返してハッキリと言った。
「ふむ、なるほど。そんな話を冒険者時代に聞いた事があるが眉唾物だと思っていた。まさか、本当に前世の記憶を持つ者が存在するとは!」
目を丸くして驚いた表情をするダンテさん。
「そうね、私も冒険者時代に聞いた事があるわ。カリンちゃんが前世の記憶を持っているということね。どうりで珍しい料理や色々なことを知っていると思ったわ。カリンちゃんの年齢からしたらとても不思議だったけど前世の記憶があるなら納得だわ」
セレンさんが目を細めて得心がいったという様に私に笑みを向けた。
どうやら、ダンテさんとセレンさんの二人は前世のことを聞いた事があるらしい。と言うことは、私以外にもこの世界には前世の記憶を持つ者がいるのだろうか? だとしても二人とも実際に会ったわけではなく話を聞いただけの様だから滅多にいないのかも知れないけど。
「前世……」
ショウは複雑そうな顔で小さく呟いている。ダンテさんとセレンさんと違って前世という言葉を初めて聞いたのかも知れない。ショウは首を傾げて考え込んでいる。
それから私は、前世は地球と呼ばれる世界で日本という国に住んでいたこと、飲食店をオープンする前に亡くなったこと、日本は美食国家だったということ、魔法はないが科学が発達して様々な電化製品や乗物があったこと、流通、交通機関など思いつく限りのことを話した。
更に私の過ちでクラレシア神聖王国が滅亡してしまった原因も…………最大の私の過ちを打ち明けるとき私の瞳からは止めどもなく涙がこぼれ落ちた。
みんなに嫌われてしまうかも知れない。そう思うと怖くて仕方がなかった。
「ああ、カリンちゃん、辛かったわね……大丈夫よ、私達がずっと傍にいるから……」
セレンさんは暫くの間私を優しく抱きしめてくれた。
ダンテさんとショウは驚きのあまりか言葉を挟むことなく私の話す内容にジッと聞き入っていた。
「これは想定外だ……ああ、クラレシアの事ではない。カリンはまだ幼かったのだからカリンの責任ではないさ。」
ダンテさんは私が不安そうな顔をすると言い換えて私に優しく笑みをむけた。
「それにしてもどうしたものかな……」
言葉を零し頭を抱えるダンテさん。
セレンさんもショウも何やら考え込んでいる。
沈黙が流れた…………。
私は彼らが何を悩んでいるのか検討がつかず、声をかけることも出来なかった。
何かまずい内容でもあったのかしら……? 私の罪が大きすぎるから?
そう考えていると
『あまりの予想外の話に戸惑っているのだろうな。彼らが考えているのはカリンの前世の記憶のことだ。地球の知識が有ればこの世界を牛耳る事さえ出来てしまうだろうからな』
グレンが私の目の前に来て念話を飛ばして来た。
え? 牛耳るって、え? そうなの?
私はそこまで考えていなかったのでグレンの言葉に驚いた。てっきりベアトリーチェがやらかした過ちのことを考えているのかと私は思っていたのだ。
まだまだ私の頭の中はクラレシアでの生活だけでなく日本での生活も相まって平和ボケが根強い様だ。ベアトリーチェだった私はあれほどの失態を犯したというのに日本での記憶の方が私の中で強いせいかもしれない。
「カリン、ひとまず今話したことは他の者には言わない方がいいだろう。もちろん、私達はこれまで通りカリンの力になりたいと思う。困ったことや相談ごとがあればいつでも遠慮なく話して欲しい」
暫く考え込んでいたダンテさんが静かに私の目を見て言った。
「そうね、いくら前世での記憶があったとしても今のカリンちゃんはまだ13才と子供なのよ。いつでも私達を頼ってね」
セレンさんがダンテさんの言葉を繋ぐように私に微笑んだ。
「ありがとう、ダンテさん、セレンさん。もちろん、いっぱい頼らせて貰うと思います。私はこれからクラレシアの元王女としてクラレシアの民達に出来るだけ償いをしていくつもりなので。もっとも、私の力なんて小さすぎてどれだけ償えるか分からないんですけど」
私は何とか笑みを浮かべダンテさんとセレンさんに答えた。
「カリン、俺も出来るだけのことをする。だから、何でも言ってくれ。カリンがそんなに重い過去があったなんて全く知らなかった。カリンに比べたら俺の悩みなんて何てちっぽけなんだろうと恥ずかしくなったよ」
「ありがとう、ショウ。もちろん、ショウにも沢山助けて貰う事もあると思う。だからこれからもよろしくね」
私がショウに笑顔を向けると、「ああ、まかせてくれ」と言ってショウは少し照れくさそうな顔をしたのだった。
みんなに私の話を聞いてもらう為にも、何から話せば良いのか考える時間が欲しかったからだ。
知らなかったこととは言え私はクラレシア神聖王国の滅亡の切っ掛けを作ってしまった。
例えそうだったとしても言い訳だけでは前に進めない。実際に被害を被ったクラレシアの人々が沢山いるのだから。
女神様とグレンのお陰で私は生きることを許された。いいえ、生きることによって贖罪の機会を与えられたのかも知れない。
ならばそれに応えよう。私に出来ることはそんなに多くはないだろうけど、それでも何が出来るのか、何をするべきなのか考えよう。幸いにも私の周りには助けてくれる人がたくさんいる。ベアトリーチェの時は罪悪感に阻まれて視野狭窄に陥っていたけど今は違う。
さあ、これからだ。私は密かに心の中で気合いを入れて助け手達に向かって話す内容を纏めた。
「皆さんがご存知の通り私は亡国クラレシア神聖王国の元王女ベアトリーチェです。ですが、今は前世の奄美根花梨の記憶を持っています」
私はクランリー家の応接室でこれまでのことを語り始めた。
応接室には、ダンテさん、セレンさん、ショウがソファに並んで腰掛け私はその正面に向かい合うように座っていた。
ラルクは、ロイ爺ちゃんとマギー婆ちゃんと隣の領の農場で親睦会があるといって一緒に行ったようだ。未来のクランリー農場の跡継ぎになる為、見聞を広めるそうだ。
私の言葉が直ぐに理解出来なかったのか、三人ともキョトンとした顔をしている。
「前世?」
ダンテさんが聞き返し、私の瞳をジッと見つめた。
この世界には前世と言う概念がないのだろうか? だとしたらそこから説明する必要があるのかも知れない。
「はい、前世です。ベアトリーチェとして生まれる前に生きていた記憶です」
私はダンテさんの瞳をしっかり見つめ返してハッキリと言った。
「ふむ、なるほど。そんな話を冒険者時代に聞いた事があるが眉唾物だと思っていた。まさか、本当に前世の記憶を持つ者が存在するとは!」
目を丸くして驚いた表情をするダンテさん。
「そうね、私も冒険者時代に聞いた事があるわ。カリンちゃんが前世の記憶を持っているということね。どうりで珍しい料理や色々なことを知っていると思ったわ。カリンちゃんの年齢からしたらとても不思議だったけど前世の記憶があるなら納得だわ」
セレンさんが目を細めて得心がいったという様に私に笑みを向けた。
どうやら、ダンテさんとセレンさんの二人は前世のことを聞いた事があるらしい。と言うことは、私以外にもこの世界には前世の記憶を持つ者がいるのだろうか? だとしても二人とも実際に会ったわけではなく話を聞いただけの様だから滅多にいないのかも知れないけど。
「前世……」
ショウは複雑そうな顔で小さく呟いている。ダンテさんとセレンさんと違って前世という言葉を初めて聞いたのかも知れない。ショウは首を傾げて考え込んでいる。
それから私は、前世は地球と呼ばれる世界で日本という国に住んでいたこと、飲食店をオープンする前に亡くなったこと、日本は美食国家だったということ、魔法はないが科学が発達して様々な電化製品や乗物があったこと、流通、交通機関など思いつく限りのことを話した。
更に私の過ちでクラレシア神聖王国が滅亡してしまった原因も…………最大の私の過ちを打ち明けるとき私の瞳からは止めどもなく涙がこぼれ落ちた。
みんなに嫌われてしまうかも知れない。そう思うと怖くて仕方がなかった。
「ああ、カリンちゃん、辛かったわね……大丈夫よ、私達がずっと傍にいるから……」
セレンさんは暫くの間私を優しく抱きしめてくれた。
ダンテさんとショウは驚きのあまりか言葉を挟むことなく私の話す内容にジッと聞き入っていた。
「これは想定外だ……ああ、クラレシアの事ではない。カリンはまだ幼かったのだからカリンの責任ではないさ。」
ダンテさんは私が不安そうな顔をすると言い換えて私に優しく笑みをむけた。
「それにしてもどうしたものかな……」
言葉を零し頭を抱えるダンテさん。
セレンさんもショウも何やら考え込んでいる。
沈黙が流れた…………。
私は彼らが何を悩んでいるのか検討がつかず、声をかけることも出来なかった。
何かまずい内容でもあったのかしら……? 私の罪が大きすぎるから?
そう考えていると
『あまりの予想外の話に戸惑っているのだろうな。彼らが考えているのはカリンの前世の記憶のことだ。地球の知識が有ればこの世界を牛耳る事さえ出来てしまうだろうからな』
グレンが私の目の前に来て念話を飛ばして来た。
え? 牛耳るって、え? そうなの?
私はそこまで考えていなかったのでグレンの言葉に驚いた。てっきりベアトリーチェがやらかした過ちのことを考えているのかと私は思っていたのだ。
まだまだ私の頭の中はクラレシアでの生活だけでなく日本での生活も相まって平和ボケが根強い様だ。ベアトリーチェだった私はあれほどの失態を犯したというのに日本での記憶の方が私の中で強いせいかもしれない。
「カリン、ひとまず今話したことは他の者には言わない方がいいだろう。もちろん、私達はこれまで通りカリンの力になりたいと思う。困ったことや相談ごとがあればいつでも遠慮なく話して欲しい」
暫く考え込んでいたダンテさんが静かに私の目を見て言った。
「そうね、いくら前世での記憶があったとしても今のカリンちゃんはまだ13才と子供なのよ。いつでも私達を頼ってね」
セレンさんがダンテさんの言葉を繋ぐように私に微笑んだ。
「ありがとう、ダンテさん、セレンさん。もちろん、いっぱい頼らせて貰うと思います。私はこれからクラレシアの元王女としてクラレシアの民達に出来るだけ償いをしていくつもりなので。もっとも、私の力なんて小さすぎてどれだけ償えるか分からないんですけど」
私は何とか笑みを浮かべダンテさんとセレンさんに答えた。
「カリン、俺も出来るだけのことをする。だから、何でも言ってくれ。カリンがそんなに重い過去があったなんて全く知らなかった。カリンに比べたら俺の悩みなんて何てちっぽけなんだろうと恥ずかしくなったよ」
「ありがとう、ショウ。もちろん、ショウにも沢山助けて貰う事もあると思う。だからこれからもよろしくね」
私がショウに笑顔を向けると、「ああ、まかせてくれ」と言ってショウは少し照れくさそうな顔をしたのだった。
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