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01-プロローグ
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重たい瞼をゆっくりと上げると、カーテンの隙間から光が漏れ部屋を淡く照らしていた。
横向きに寝ている私の腰に重みを感じその正体を探ると筋肉質の腕が私の腰辺りに絡んでいることに気がついた。
視界がハッキリしない。
それもそのはず、逞しい胸板が目の前を塞いでいることに気がついた。
えっ? これってどういう状況? 寝起きのせいか自分が置かれた状況に戸惑う私。
そこで重要なことに気づいた。
もっ、もしかして私服着てない? まっまさか! 全裸ってことはないよね?
そっと自分の身体を確認すると……。
下着は……ちゃんと着ているみたい。
だからといって何も無かったとは言い切れない。いや、と言うよりこの状況では何もなかったと言っても説得力がない。
昨夜のことは何も覚えていない。うーん、この状況は所謂アレね。朝チュンってやつかしら?
まぁ、それはいいとして……いや、全然良くないんだが、それにしてもこの男ダレ?
そっと私の隣で寝ている男の顔を覗いた。金髪に形のいい鼻梁、薄い唇に少し焼けた肌。目を瞑っていてもかなりの美形だと言うことが窺い知れる。
なんか見覚えあるわ。
私の見間違いじゃなかったら、その顔は以前から知っているこの国の第三王子の顔に間違いないと思われた。
げっ……
思わず声が出そうになり口を抑えた。
何でこんなことになっているの? しかも王子様と……
もしかして本当にそういうことをしてしまったのかしら?
私は昨日の夜の事を思い出すべく思考を巡らせた。
確か昨日はこのお城で私と同じく第二王女の侍女をしているメリッサと酒盛り……じゃなくてお酒を多少嗜みながらお喋りしていたと思うんだけど。
でも、途中から記憶が無い……。
まずい、まずいわね。この世界は前世と違って処女信仰が厚い。そのため、私が処女喪失した……とは決まっていないけど……と知られたらこの先お嫁に行くのは難しいと言える。
前世と言うのは、私がこの世界に生まれる前の世界のことだ。そう、私には前世の記憶がある。
日本で普通の看護師として生きていた前世が。
その前世を思い出したのは、私が10才の時だった。
貴族の娘として生まれた割には活発すぎる私。
その頃の私は覚え立ての木登りに夢中になっていた。
木の上に登って周辺を見下ろすと景色が変わって見えた。もちろん木登りなんて普通の貴族の令嬢はしない。いや、令嬢じゃなくても普通の女の子ならする子も少ないだろう。
でも、私は多分普通じゃなかったのだ。
私はハーセンロンダ子爵家の長女として生まれたリナリア。亜麻色の髪に緑色の瞳は前世からすると人形の様に可愛らしく思えるが、顔面偏差値の高いこの世界ではたいして目立たない。
ハーセンロンダ子爵はガラティア王国西部にあるグラティスタ領内で2番目に大きなオイレスの町を統治している。領内で2番目に大きな町といえど、王都に比べれば田舎町に過ぎない。
一応貴族ではあるが、この地域ではあまり貴族と平民の隔たりが大きくなかったため、私が幼少期の時は邸を抜け出して平民の子供達と遊ぶことがよくあった。
とは言え、その度に両親や侍女に怒られていたのだが。
木登りを教えてもらったのも平民の少年からだった。
だが、私はある日いつもの様に木登りをしていて誤って足を滑らせて落ちてしまったのだ。
大事には至らなかったが気を失ってしまい、子爵邸は大騒ぎになってしまった。一緒にいた少年は自責の念に囚われて大変だったらしいが、それほどお咎めはなかったようだ。
普段からの私のお転婆具合が知れ渡っていたので、責任は私自身にあると周囲の者が把握していたのだろう。
その時、気を失っている間に私に前世の記憶が流れ込んで来たのだった。
暫くは夢だと思い、その事を受け入れることが出来なかったが夢にしてはあまりにもリアルでその時の感情まで蘇ってくるようだった。
特に、恋人に裏切られた焦燥感は私の心の中に大きな傷として深く刻まれているようだった。
それにしてもこうしてはいられない。ここから早くバックレ……お暇しなければ!
私は直ぐにベッドの下に投げ捨ててあったドレスを着用した。部屋着仕様のゆったりとしたドレスだったので自分一人でも難なく着ることが出来た。
「んーんっ……」
寝てても見目麗しい王子様が悩ましげな声をあげた。
やばいっ! そっと部屋のドアを開けて廊下を確認し、人がいないのを確かめると逃げるようにその部屋を後にしたのだった。
横向きに寝ている私の腰に重みを感じその正体を探ると筋肉質の腕が私の腰辺りに絡んでいることに気がついた。
視界がハッキリしない。
それもそのはず、逞しい胸板が目の前を塞いでいることに気がついた。
えっ? これってどういう状況? 寝起きのせいか自分が置かれた状況に戸惑う私。
そこで重要なことに気づいた。
もっ、もしかして私服着てない? まっまさか! 全裸ってことはないよね?
そっと自分の身体を確認すると……。
下着は……ちゃんと着ているみたい。
だからといって何も無かったとは言い切れない。いや、と言うよりこの状況では何もなかったと言っても説得力がない。
昨夜のことは何も覚えていない。うーん、この状況は所謂アレね。朝チュンってやつかしら?
まぁ、それはいいとして……いや、全然良くないんだが、それにしてもこの男ダレ?
そっと私の隣で寝ている男の顔を覗いた。金髪に形のいい鼻梁、薄い唇に少し焼けた肌。目を瞑っていてもかなりの美形だと言うことが窺い知れる。
なんか見覚えあるわ。
私の見間違いじゃなかったら、その顔は以前から知っているこの国の第三王子の顔に間違いないと思われた。
げっ……
思わず声が出そうになり口を抑えた。
何でこんなことになっているの? しかも王子様と……
もしかして本当にそういうことをしてしまったのかしら?
私は昨日の夜の事を思い出すべく思考を巡らせた。
確か昨日はこのお城で私と同じく第二王女の侍女をしているメリッサと酒盛り……じゃなくてお酒を多少嗜みながらお喋りしていたと思うんだけど。
でも、途中から記憶が無い……。
まずい、まずいわね。この世界は前世と違って処女信仰が厚い。そのため、私が処女喪失した……とは決まっていないけど……と知られたらこの先お嫁に行くのは難しいと言える。
前世と言うのは、私がこの世界に生まれる前の世界のことだ。そう、私には前世の記憶がある。
日本で普通の看護師として生きていた前世が。
その前世を思い出したのは、私が10才の時だった。
貴族の娘として生まれた割には活発すぎる私。
その頃の私は覚え立ての木登りに夢中になっていた。
木の上に登って周辺を見下ろすと景色が変わって見えた。もちろん木登りなんて普通の貴族の令嬢はしない。いや、令嬢じゃなくても普通の女の子ならする子も少ないだろう。
でも、私は多分普通じゃなかったのだ。
私はハーセンロンダ子爵家の長女として生まれたリナリア。亜麻色の髪に緑色の瞳は前世からすると人形の様に可愛らしく思えるが、顔面偏差値の高いこの世界ではたいして目立たない。
ハーセンロンダ子爵はガラティア王国西部にあるグラティスタ領内で2番目に大きなオイレスの町を統治している。領内で2番目に大きな町といえど、王都に比べれば田舎町に過ぎない。
一応貴族ではあるが、この地域ではあまり貴族と平民の隔たりが大きくなかったため、私が幼少期の時は邸を抜け出して平民の子供達と遊ぶことがよくあった。
とは言え、その度に両親や侍女に怒られていたのだが。
木登りを教えてもらったのも平民の少年からだった。
だが、私はある日いつもの様に木登りをしていて誤って足を滑らせて落ちてしまったのだ。
大事には至らなかったが気を失ってしまい、子爵邸は大騒ぎになってしまった。一緒にいた少年は自責の念に囚われて大変だったらしいが、それほどお咎めはなかったようだ。
普段からの私のお転婆具合が知れ渡っていたので、責任は私自身にあると周囲の者が把握していたのだろう。
その時、気を失っている間に私に前世の記憶が流れ込んで来たのだった。
暫くは夢だと思い、その事を受け入れることが出来なかったが夢にしてはあまりにもリアルでその時の感情まで蘇ってくるようだった。
特に、恋人に裏切られた焦燥感は私の心の中に大きな傷として深く刻まれているようだった。
それにしてもこうしてはいられない。ここから早くバックレ……お暇しなければ!
私は直ぐにベッドの下に投げ捨ててあったドレスを着用した。部屋着仕様のゆったりとしたドレスだったので自分一人でも難なく着ることが出来た。
「んーんっ……」
寝てても見目麗しい王子様が悩ましげな声をあげた。
やばいっ! そっと部屋のドアを開けて廊下を確認し、人がいないのを確かめると逃げるようにその部屋を後にしたのだった。
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