アラフォー幼女は異世界で大魔女を目指します

梅丸みかん

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第一章 塔の上から見た異世界

43, 一角玄虎

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 塔へ戻った私は、ぐったりした魔獣の子を抱えたまま、キッチンへ直行した。応急処置をするなら、薬があるここしかない。

 そっと床に魔獣の子を寝かせ、棚から瓶をひとつ取り出す。中身はどこか不安になるくらい鮮やかなオレンジ色。
「確か、これだったよね……」

 瓶に魔力を流すと、”傷薬”の文字がぽわんと浮かび上がる。師匠が以前、私の擦り傷に使ってくれたのと同じやつだ。

 魔獣にも効くかはわからないけど……他に選択肢もない。


 突然目が覚めて攻撃されない様に、念の為防御魔法エアークロスを纏ったまま魔獣の子供の傷にかけた。

 すると――
 傷がみるみる塞がっていく。でも、意識はまだ戻らない。胸のあたりが上下してるし、生きてはいる。

 よかった。

「猫っぽいけど、やっぱり魔獣だよね」
 改めて眺めると、小さな虎の子みたいで……あら、案外かわいいかも。

 おそるおそる頭を撫でてみる。柔らかいもふもふの毛が気持ちいい。

 額の真ん中にある銀色に光る突起物。

 これは……多分”角”……だよね。

 ということは、猫ではない。でも虎でもないよね。
 確か虎には角なんてなかったはず……それに黒い虎なんて見たことがないし……

 そんなことを考えていると、その子の瞼がぱちりと開いた。
 金色の瞳が私を見据えた次の瞬間――唸り声とともに噛みつこうとしてきた!

「え、大丈夫、大丈夫だから! 傷つけたりしないから!」
 とっさに手を差し出す。……が、そこに響いたのは金属音。

 ガキィィィン!
「キュイインッ」

 魔獣の子は弾かれ、しょんぼりと前脚の間に顔をうずめてしまった。……あ、そうだった。エアークロス防御魔法張りっぱなしだったわ。

「ごっ、ごめんねぇ……痛かった?」
「キュイン……」
 涙目で後ずさり、小さく体を丸めて震え出す姿が切ない。え、私、めっちゃ怖がられてる?

 どうしよう、威嚇されるのとはまた違う種類のショック……。

「そ、そうだ! ごはん!」
 動物は食べれば元気になるって、相場が決まってる……はず。肉食獣っぽいし、お肉よね?

 ミルク……は、ない!
 仕方ない。食品保管庫に残っていた肉を細かく切って、お皿に盛って出してみた。

 でも、魔獣の子はまったく動かない。警戒MAX。
 目だけがこちらをチラチラと見てる。

 それにしても……この子の親、どこにいったんだろう?
 思い返せば、森でこの子はあの冒険者風の男たちに追われていた。もし親が近くにいたら、命懸けで守ったはず。

 ……ということは、もしかして殺された……とか?
 そうだとしたら、この子を森に返すなんてとてもできない。再び襲われる可能性が高すぎる。


 それにこの子も傷つけられている。傷が治ったからと言って森に放り出せばまた襲われる可能性が高い。

「……やっぱり、しばらくは面倒見るしかないか。拾った者の責任として」
 問題は、怯えられているということ。


「うーん、困ったわ……どうしたら懐いてくれるんだろう……?」

『何を困っておるのじゃ』
 私が悩んでいると、今度もまた後ろから師匠の声が聞こえた。

「あっ、師匠。おかえり。状況はどう?」
 私は、振り返ると赤い鳥師匠の思念体に声をかけた。

『もちろん、順調じゃ。ん? そこにいるのは一角玄虎いっかくげんこの子ではないか? なぜそこにおるのじゃ?』

「いっかくげんこ……?」
『そうじゃ。この森に生息している魔獣じゃ。ほれ、妾が戦っている映像に写っていたあれじゃ。あれは成獣じゃったがな』

「ああ、そういえばこの子に似ていたわ。やっぱりこの子魔獣だったんだね。えっと、実はね、この子冒険者風の男たちに襲われていて……」
 私は魔獣の子を保護した時のことを師匠に説明した。

『人がそんなところまで来ているのか? ミカもミカじゃ。仕掛けの近くまで行くとは! まったく、妾がいないところで何をしているのかと思えば……それで? その子をどうするつもりじゃ』

「えっと、しばらくは面倒見ようかな……と思って……だって、またあの冒険者たちに襲われるかもしれないし……」

『その可能性は高いじゃろうな。じゃが、ミカの姿を人に見られたのは問題じゃな』

「えっと……そうだよね。子供が森の奥にいるなんておかしいと思われるよね」

『だとしても、そう簡単にどうこうできるとは思えぬ。ただの冒険者風情に妾の防御壁を破られることはないからな。この塔まで来ることはなかろう』

「それより、この子どうしよう? 怯えちゃって全然近づけないんだけど。お肉も食べてくれないし」

『ふむ、不安なのじゃろう。守ってくれるはずの親がそばにいないせいじゃな』

「やっぱり、この子の親って死んじゃったの?」

『おそらくな。一角玄虎の親は子が成長するまで一時も離れぬ。過保護なくらい子を守ろうとするのじゃ。その親が子のそばにいないというだけでそうできない何らかの理由がある。その最も大きな理由は大怪我か死じゃ。冒険者を見たというのなら、その者たちによって討伐されたのじゃろう』

「でも、そんなに簡単に殺される様な魔獣なの?」

『一角玄虎はこの森でも最強クラスじゃ。真空刃を放ち敵を切り裂く。人間が倒すには、魔剣や魔矢のような特別な武器が必要じゃが、それを扱える者などそうはおらぬ』

 魔剣? 魔矢? なにそれ! ファンタジー感が加速してるんだけど……

 なんて言っている場合ではない。

 とにかく、この子の警戒を解くのが先だ。

「それよりも、この子どうしたらいい?」

 私は、この世界で長年生きてきた……そのうち五百年間封印されていたけど……師匠の知識に頼ることにしたのだった。

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