363 / 422
第1章 カイト、五歳までの軌跡
361
しおりを挟む
うわっ、全然弱風じゃないよ、強風よ、うわー、ちょっ、ちょ、ストーップ。
「うおーっ、あちっ、危ない。カイト様、いきなりなんてことするんですか?私はもうすぐ丸焦げでしたよっ」
ボクが出した風は思っていたより強く吹き出して、その風は目の前の炎を纏い、その先にいるハーレン団長へ襲いかかるところだった。火が襲う前にハーレン団長はその場から一瞬で避けたから何ともなかったんだけど。
1部だけ、ほんの少し焼けたシナモンの木は森に甘い香りを振りまいていた。
「ごめんなさい。ハーレン団長、大丈夫?怪我してない?」
「大丈夫です、すぐ避けましたから、気をつけてくださいよ」
おわっ、驚いた。なんだ、今何が起きた?
向こうにいるあの子は風を出したのか?
なんて威力だ。
「うん、気をつける。本当にごめんね。弱い風送るつもりだったんだけど、もっと弱い風送るね。さっきみたいな風は送らないからハーレン団長、シナモンを麻袋に入れて、袋の口は開けたまま火に向けて持ってて」
ん?シナモン?ああ、さっき採取した木の皮のことか。
「わかりました。充分気をつけて下さい」
「うん、わかった、じゃ、次はもっと弱くするね」
危なかったー、扇風機の弱風をイメージしてあの威力、やばいよ。
えっと、えっと、扇風機の弱風がダメなら、なんだ?うちわ?いや、うちわはなかなか風強いよ。
えっと、あ、そうだ。そよ風をイメージしよう。
軽く頬に触れるくらいの、肌をゆっくり撫でるくらいの風をイメージして、そよ風くらいかな?
今のイメージをしながら風を起こしてみる。
うん、次は上手くいったみたい。
送った風は、ハーレン団長が起こした火を微かに揺らしながら、向こう側にいるハーレン団長の所へと揺らいでいく。
「カイト様、なんだか温かい風が来ましたよ、これで何をするんです?」
「えっとね、もう少し風を強くするね。その風をシナモンに当てて欲しいの。」
「それをどうするんですか?」
「袋に温風を当ててシナモンの乾燥を早めるの。乾燥したら使えるようになるんだっ」
使う?何に使うんだ?
用途がさっぱり分からないが、指示に従うしかない。
「カイト様、このシナモンてやつを乾燥させたらどうするんですか?」
「え?食べるけど?」
「はえ?」
食べるだと?木をかじれと言うのか?
思わず変な声が出たのも気づかない。
「あははっ、なあに?はぇって。ハーレン団長、はぇって、可笑しい、あははっ」
いや、変な声になった、け、ど、も!
恥ずかしさを隠すぞ。誤魔化すぞ。
「カイト様、笑わないで下さい。教えて下さい。この木を食べるんですか?気が触れましたか?」
あれー、ハーレン団長、ギャグも言えるの?
「あははははっ。木を食べる?気が触れた?あはは」
いつも笑ってないハーレン団長の焦る顔が可笑しくてボクは笑いのツボにハマっちゃたよね、ハーレン団長面白いねー。
「笑い事じゃありません」
いや、怖い顔しても無駄だよ、もうハーレン団長、ボクの中ではちょいと面白いおじさん認定だよね。
いつの間にか、家族と離れた寂しさもほんの少し軽くなって、王太子妃と浮気をしたイケナイおじさんというハーレン団長のイメージも薄くなっていた。
そして、ボクの中では、あの橋の上でボクを助けてくれた人、ゴリランの群れからボクを守ろうとしてくれたこと、軍馬で走る時ボクを抱えて揺れを軽減してくれたこと、そして今シナモンを文句も言わず取り出してくれて、そしてギャグも言う、そんなハーレン団長の事が人として好きになっていった。
「本当に食べるのですか?」
「うん、凄く美味しいと思う。それをこれから証明したいと思うの」
そう、ボクにはあのレシピが頭にある。
もうお昼もだいぶ過ぎちゃってお腹がすいてしょうがない。
「作る?」
何を作るって言うんだ?あ、でも腹も空いたな。
ベアとダークウルフと戦った時に食料の入った袋は置いてきたままだ。
この子のいたマーシュ領はたしか最近変わった食べ物があるって聞いたことがあったな、しかもどれも美味しと言っていたか?
もしかしたら何か美味いもんが食えるのか?このシナモンてやらはどう使うんだ?
うーん、考えてもさっぱり、想像もつかない。
私はまたいつの間にかこの子のペースに乗せられて、この子に絆されたのか?
いや、そうじゃないはずだ!
「うおーっ、あちっ、危ない。カイト様、いきなりなんてことするんですか?私はもうすぐ丸焦げでしたよっ」
ボクが出した風は思っていたより強く吹き出して、その風は目の前の炎を纏い、その先にいるハーレン団長へ襲いかかるところだった。火が襲う前にハーレン団長はその場から一瞬で避けたから何ともなかったんだけど。
1部だけ、ほんの少し焼けたシナモンの木は森に甘い香りを振りまいていた。
「ごめんなさい。ハーレン団長、大丈夫?怪我してない?」
「大丈夫です、すぐ避けましたから、気をつけてくださいよ」
おわっ、驚いた。なんだ、今何が起きた?
向こうにいるあの子は風を出したのか?
なんて威力だ。
「うん、気をつける。本当にごめんね。弱い風送るつもりだったんだけど、もっと弱い風送るね。さっきみたいな風は送らないからハーレン団長、シナモンを麻袋に入れて、袋の口は開けたまま火に向けて持ってて」
ん?シナモン?ああ、さっき採取した木の皮のことか。
「わかりました。充分気をつけて下さい」
「うん、わかった、じゃ、次はもっと弱くするね」
危なかったー、扇風機の弱風をイメージしてあの威力、やばいよ。
えっと、えっと、扇風機の弱風がダメなら、なんだ?うちわ?いや、うちわはなかなか風強いよ。
えっと、あ、そうだ。そよ風をイメージしよう。
軽く頬に触れるくらいの、肌をゆっくり撫でるくらいの風をイメージして、そよ風くらいかな?
今のイメージをしながら風を起こしてみる。
うん、次は上手くいったみたい。
送った風は、ハーレン団長が起こした火を微かに揺らしながら、向こう側にいるハーレン団長の所へと揺らいでいく。
「カイト様、なんだか温かい風が来ましたよ、これで何をするんです?」
「えっとね、もう少し風を強くするね。その風をシナモンに当てて欲しいの。」
「それをどうするんですか?」
「袋に温風を当ててシナモンの乾燥を早めるの。乾燥したら使えるようになるんだっ」
使う?何に使うんだ?
用途がさっぱり分からないが、指示に従うしかない。
「カイト様、このシナモンてやつを乾燥させたらどうするんですか?」
「え?食べるけど?」
「はえ?」
食べるだと?木をかじれと言うのか?
思わず変な声が出たのも気づかない。
「あははっ、なあに?はぇって。ハーレン団長、はぇって、可笑しい、あははっ」
いや、変な声になった、け、ど、も!
恥ずかしさを隠すぞ。誤魔化すぞ。
「カイト様、笑わないで下さい。教えて下さい。この木を食べるんですか?気が触れましたか?」
あれー、ハーレン団長、ギャグも言えるの?
「あははははっ。木を食べる?気が触れた?あはは」
いつも笑ってないハーレン団長の焦る顔が可笑しくてボクは笑いのツボにハマっちゃたよね、ハーレン団長面白いねー。
「笑い事じゃありません」
いや、怖い顔しても無駄だよ、もうハーレン団長、ボクの中ではちょいと面白いおじさん認定だよね。
いつの間にか、家族と離れた寂しさもほんの少し軽くなって、王太子妃と浮気をしたイケナイおじさんというハーレン団長のイメージも薄くなっていた。
そして、ボクの中では、あの橋の上でボクを助けてくれた人、ゴリランの群れからボクを守ろうとしてくれたこと、軍馬で走る時ボクを抱えて揺れを軽減してくれたこと、そして今シナモンを文句も言わず取り出してくれて、そしてギャグも言う、そんなハーレン団長の事が人として好きになっていった。
「本当に食べるのですか?」
「うん、凄く美味しいと思う。それをこれから証明したいと思うの」
そう、ボクにはあのレシピが頭にある。
もうお昼もだいぶ過ぎちゃってお腹がすいてしょうがない。
「作る?」
何を作るって言うんだ?あ、でも腹も空いたな。
ベアとダークウルフと戦った時に食料の入った袋は置いてきたままだ。
この子のいたマーシュ領はたしか最近変わった食べ物があるって聞いたことがあったな、しかもどれも美味しと言っていたか?
もしかしたら何か美味いもんが食えるのか?このシナモンてやらはどう使うんだ?
うーん、考えてもさっぱり、想像もつかない。
私はまたいつの間にかこの子のペースに乗せられて、この子に絆されたのか?
いや、そうじゃないはずだ!
380
あなたにおすすめの小説
ボンクラ王子の側近を任されました
里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」
王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。
人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。
そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。
義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。
王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?
【完結】令嬢憧れの騎士様に結婚を申し込まれました。でも利害一致の契約です。
稲垣桜
恋愛
「君と取引がしたい」
兄の上司である公爵家の嫡男が、私の前に座って開口一番そう告げた。
「取引……ですか?」
「ああ、私と結婚してほしい」
私の耳がおかしくなったのか、それとも幻聴だろうか……
ああ、そうだ。揶揄われているんだ。きっとそうだわ。
* * * * * * * * * * * *
青薔薇の騎士として有名なマクシミリアンから契約結婚を申し込まれた伯爵家令嬢のリディア。
最低限の役目をこなすことで自由な時間を得たリディアは、契約通り自由な生活を謳歌する。
リディアはマクシミリアンが契約結婚を申し出た理由を知っても気にしないと言い、逆にそれがマクシミリアンにとって棘のように胸に刺さり続け、ある夜会に参加してから二人の関係は変わっていく。
※ゆる〜い設定です。
※完結保証。
※エブリスタでは現代テーマの作品を公開してます。興味がある方は覗いてみてください。
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
虐げられていた次期公爵の四歳児の契約母になります!~幼子を幸せにしたいのに、未来の旦那様である王太子が私を溺愛してきます~
八重
恋愛
伯爵令嬢フローラは、公爵令息ディーターの婚約者。
しかし、そんな日々の裏で心を痛めていることが一つあった。
それはディーターの異母弟、四歳のルイトが兄に虐げられていること。
幼い彼を救いたいと思った彼女は、「ある計画」の準備を進めることにする。
それは、ルイトを救い出すための唯一の方法──。
そんな時、フローラはディーターから突然婚約破棄される。
婚約破棄宣言を受けた彼女は「今しかない」と計画を実行した。
彼女の計画、それは自らが代理母となること。
だが、この代理母には国との間で結ばれた「ある契約」が存在して……。
こうして始まったフローラの代理母としての生活。
しかし、ルイトの無邪気な笑顔と可愛さが、フローラの苦労を温かい喜びに変えていく。
さらに、見目麗しいながら策士として有名な第一王子ヴィルが、フローラに興味を持ち始めて……。
ほのぼの心温まる、子育て溺愛ストーリーです。
※ヒロインが序盤くじけがちな部分ありますが、それをバネに強くなります
※「小説家になろう」が先行公開です(第二章開始しました)
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
アルファポリス恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
*他サイトでも公開中
なろう日間総合ランキング2位に入りました!
森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。
玖保ひかる
恋愛
[完結]
北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。
ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。
アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。
森に捨てられてしまったのだ。
南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。
苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。
※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。
※完結しました。
分厚いメガネを外した令嬢は美人?
しゃーりん
恋愛
極度の近視で分厚いメガネをかけている子爵令嬢のミーシャは家族から嫌われている。
学園にも行かせてもらえず、居場所がないミーシャは教会と孤児院に通うようになる。
そこで知り合ったおじいさんと仲良くなって、話をするのが楽しみになっていた。
しかし、おじいさんが急に来なくなって心配していたところにミーシャの縁談話がきた。
会えないまま嫁いだ先にいたのは病に倒れたおじいさんで…介護要員としての縁談だった?
この結婚をきっかけに、将来やりたいことを考え始める。
一人で寂しかったミーシャに、いつの間にか大切な人ができていくお話です。
『まて』をやめました【完結】
かみい
恋愛
私、クラウディアという名前らしい。
朧気にある記憶は、ニホンジンという意識だけ。でも名前もな~んにも憶えていない。でもここはニホンじゃないよね。記憶がない私に周りは優しく、なくなった記憶なら新しく作ればいい。なんてポジティブな家族。そ~ねそ~よねと過ごしているうちに見たクラウディアが以前に付けていた日記。
時代錯誤な傲慢な婚約者に我慢ばかりを強いられていた生活。え~っ、そんな最低男のどこがよかったの?顔?顔なの?
超絶美形婚約者からの『まて』はもう嫌!
恋心も忘れてしまった私は、新しい人生を歩みます。
貴方以上の美人と出会って、私の今、充実、幸せです。
だから、もう縋って来ないでね。
本編、番外編含め完結しました。ありがとうございます
※小説になろうさんにも、別名で載せています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる