ヒーローズエイト〜神に選ばれし8人の戦士達による新八犬伝最強救世主伝説〜

蒼月丸

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第七章 おとぎの世界の大冒険

第二百二十二話 零夜VS桃太郎(前編)

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 おとぎの世界にある闘技場「ワンダースタジアム」。そこでは零夜と桃太郎の決闘が始まろうとしていて、観客席は多くの人で溢れかえっていた。しかも席は全て売り切れていて、満員御礼の看板まで出ているのだ。

「今回の決闘もまさかの客がいっぱいで、あっという間に売り切れてしまうとはな。皆も物好きだな……」
「そうだな。さて、桃太郎は零夜に対し、どう挑むかだな」

 王様と金太郎が観客席で戦いの行方を見守る中、桃太郎が入場口から入ってきた。彼の姿を見た途端、観客席から歓声が沸き起こる。

「桃太郎、頑張れよー!」
「我等おとぎの世界の英雄だ!負けるなよ!」
(おとぎ世界のエースとして、負けられないな。誰が相手でも勝つのみだ!)

 観客達からの声援を聞いた桃太郎は、頷きながら応えていく。おとぎの世界の選ばれし戦士として、観客の前で負ける理由にはいかないだろう。
 続いて零夜が入場した直後、こちらも大歓声が響き渡る。Aランクの選ばれし戦士を生で見るだけでなく、ウサギを助けてくれた事に尊敬を抱いているのだ。

「あれがウサギを助けたヒーローか!凄くカッコ良いし、トップでトーナメント進出を果たしたみたいだぞ!」
「マジかよ!良い試合見せてくれよ!」

 住民達からの歓声に零夜も頷いた後、すぐに前を向いて桃太郎に視線を移す。自身が強くなる為だけでなく、おとぎの世界を救う為にも負ける理由にはいかないのだ。

(相手が誰であろうとも……俺はここで負けられない。与えられた任務を果たすだけでなく、おとぎの世界をカボチャ男爵から救う為にも!)

 零夜が心の中で決意したと同時に、彼等は戦いのステージへと上がっていく。するとステージ中央にトキコが姿を現し、ラビリンまでも雲に乗りながら姿を現してきた。

「いよいよ始まります!東零夜と桃太郎の試合!実況は私、ラビリンでお送りします!」

 ラビリンはウインクしながら自己紹介し、観客達は歓声の声を上げる。彼女は零夜達の試合を中心に実況する役割を持っているが、多くのファンも存在しているのだ。
 因みに彼女の他にも実況メンバーは多くいるが、それについては別の話で。

「更にレフェリーはトキコが務めます!さあ、皆!戦いの準備はできているか!?」
「「「イェーッ!」」」

 ラビリンの質問に対し、観客達は歓声を出しながら拳を真上に上げる。早くやれという気持ちが強いのもあるのは勿論、誰もがこの名勝負を楽しみにしているのだ。

「さて……やるからには容赦なく立ち向かう!」
「俺もそのつもりだ!行くぞ!」

 桃太郎と零夜が戦闘態勢に入ったと同時に、戦いのゴングが鳴り響く。両者はジリジリと円を描く様に移動しつつ、間合いを取りながら近づいていく。すると桃太郎が刀を引き抜いたと同時に、零夜に対して襲い掛かってきた。

「させるか!」

 零夜も忍者刀を引き抜き、桃太郎の刀である「鬼斬丸おにきりまる」をガキンと弾き返す。素早い抜刀術による弾き返しで、桃太郎は一瞬よろけてしまった。

「そこ!」
「がっ!」

 更に追い討ちの蹴りが腹に激突してしまい、桃太郎はよろけながら尻もちをつきそうになる。しかし根性で踏ん張ったと同時に、そのまま戦闘態勢に入り始めた。

「オープニングヒットは零夜!桃太郎はどう反撃するのか?」

 ラビリンの実況が響き渡り、観客席からも応援の声が響き渡る。すると桃太郎が素早く鬼斬丸に力を込め始め、強烈な斬撃を放とうとしていく。

「お返しの一撃を喰らわせて貰おう!波動斬撃!」

 桃太郎が鬼斬丸を横一閃に振り払った途端、刃から波動の斬撃が飛び出してきた。そのまま零夜に直撃したと同時に大爆発を起こしてしまったのだ。

「今の爆発はキツい!これで零夜は倒れたのか!?」
「零夜!」 

 この光景にラビリンだけでなく、観客達もざわつきの声が響き渡る。あの爆発に巻き込まれたらタダでは済まさず、大怪我をする事だってあり得るのだ。
 ミミ達が心配そうにする中、エヴァは匂いを真剣な表情で嗅ぎ始める。すると零夜の気配を感じ取り、心配する仲間達に視線を移す。

「大丈夫。零夜は倒れてないわ。今の爆発で彼は倒れないから」
「「「えっ?」」」

 エヴァの微笑みにミミ達がキョトンとしたその時、煙の中から零夜が跳躍しながら飛び出してきた。爆発のダメージは喰らってしまったが、ふんばりによって耐え切る事が出来た。更に自動回復で傷も完治しているとなると、この程度では倒れないと言えるだろう。

「なるほど。戦いはこうでないと面白くないからな。あの攻撃を耐えきるとは天晴だ!」

 桃太郎は笑みを浮かべながらも、零夜の行動を称賛していた。更に観客達も零夜の行動に拍手喝采をしていて、観客席のボルテージも高まってきているのだ。

「実に見事だ。わしも戦いたくなったぞ!」
「陛下!自重してください!あなたは王様でしょうが!」

 王様もこの光景を見ていて、戦いたくてウズウズしてしまうのも無理はない。それを見た従者が慌てながら、王様にツッコミを入れながら落ち着かせていた。
 ステージでは零夜が地面に着地したと同時に、両手に忍者刀を構えてながら戦闘態勢に入る。どうやら二刀流で戦う事になるだろう。

「今の爆発はかなり手強かったな。だが、俺もここで負ける理由にはいかない!」

 零夜は懐から鬼の角を取り出し、それを忍者刀の一つに付属しているオーブに当てる。すると鬼の角がオーブの中に入ったと同時に、二本の忍者刀が変化し始めた。

「武器が変化したわ!」
「一体何になるのでしょうか……」
「鬼の角を入れたから鬼殺し系だったりして」
「まさか」

 美津代達はドキドキしながら、零夜の武器がどんな姿になるのか楽しみにしていた。そして忍者刀は新たな武器に変化したが、なんと桃太郎と同じ武器の姿となっていたのだ。

「鬼斬丸だと!?まさかお前も使えるのか!?」
「分からない。調べてみる!」

 桃太郎が想定外の事態に驚きを隠せない中、零夜はすぐに武器のデータを確認し始める。ウインドウを召喚して調べてみた途端、現在の刀のデータが画面に映し出された。

鬼斬丸
鬼属性の敵に効果がある武器。
かつて桃太郎が使っていた武器であるが、属性付与をする事によってさらなる進化を発揮できる。

(なるほどな。この武器は普通の武器だが、属性を付与する事に変化するのか。桃太郎と同じ武器の様だが、いい武器を手に入れた事は確かだ)

 零夜は自らの武器の説明に納得したと同時に、すぐに二本の鬼斬丸を構え始める。同時に背中からオーラを発動させ、集中力を高めながら戦闘態勢に入り始めた。

「桃太郎と同じ武器を手に入れたのは想定外だが、ここからが本番だ。俺はこんなところで立ち止まれない。その覚悟を……見せてやる!」

 零夜は真剣な表情をしながら桃太郎を睨みつけ、彼は思わず冷や汗を流してしまう。この光景に観客達はざわめいてしまうのは無理なく、まさか零夜が桃太郎と同じ武器を使うのは想定外だっただろう。
 セコンドにいるミミ達やラビリンも息を呑んでいて、この闘技場全体は緊迫感によって包まれていく。この状態にも関わらず、トキコは冷静に零夜の姿に視線を移していた。

(零夜の覚悟はこんなところでは追われない。桃太郎は知る事になるかもね……彼と自身の実力の差を)

 トキコは心の中で思いながらも、冷静さを保ちながらもレフェリーを続ける。同時に戦いも後半戦へと突入するのだった。
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