昆虫採集部の伊山くん

nandemoarisa

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伊予の部活動

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実は、あれから期末テスト前の期間に入ってしまい、部活動は活動休止期間に入った。せっかく持てたサクとの接点が遠ざかり、伊予にはまたつまらない毎日が戻ってきたように思えた。

(サク、何してんだろ)

「ねえ、伊予。」

教室に入ってきた蛍が神妙な顔でこちらに歩いてきた。

「さっきまた変な噂になってたよ。伊山くん。」

「え?」

「なんか今日、大きい焼酎瓶持ってきて、校門の先生にめちゃくちゃ注意されてた。」

「えええー!?」

「あと、袋の中に死ぬほどバナナ入ってたけど。サルなの?」

「なんか、変な情報量多くて頭パンクしそう。」

「部活動に必要なんですって言ってたけど。今、テスト前で活動休止してるよね?」

「うん。そのはずだけど。何するつもりなんだろ。」

伊予は最近、そういう奇行らしき噂を聞いても、「サク=変な人」というイメージにはならなくなっていた。彼は理由や目的や興味がなくては、その行動を取らないはずだからだ。彼にとっては奇行ではなく、あれらの行動は「研究」に近い。伊予は、漸くそういったことが分かってきた。



お昼休みになって、蛍とお弁当を食べながらも伊予はサクのことを考えていた。蛍にはすでに由紀と和解した話をしたが、蛍は「あいつ、何か企んでない?気をつけなよ。」と、由紀に対しての警戒心を解くことはなかった。

「蛍、私、サクのこと気になるから、ちょっと部室見てきてもいい?」

「んー、いいよ。行っておいで。私も図書室に行きたいから、いっしょに行こ。帰るときは図書室にいるから声かけて。」

「オッケー。」

蛍は伊予に「またあとで話聞かせて。」と言って、図書室へ吸い込まれていった。

伊予は、そっと理科準備室の扉を開けた。案の定、サクがいて何かやっている。そして……

「なんで由紀までいるの!」

「は?」

由紀が何やら手伝っているようだ。

「あれ、伊予じゃん。どうしたの?」

「どうしたのって!だってなんか噂になってたから。焼酎瓶持ってきたって。」

「あはは!それだけ聞いたら俺、ただのおかしなやつじゃん。」

(いや、君はだいたいおかしな奴として噂されていますよ、とは言えない。)

サクの手元を見ると、大量のバナナを切っている。

「で、何してるの?」

「トラップ作ってんの。」

「トラップ?」

ぽかんとした伊予に、由紀が説明を付け加える。

「昆虫採集のためのトラップ。クワガタとかカブトムシとかのためのやつだって。」

「へえーーー!捕まえるの?」

「うん。今年はいっぱい捕まえて、せっかくだから標本作るつもり。部活動でできるって良いよね~!」

「でも、俺らは無理だぞ。テスト大事にしないとな。」

「とか言いながら、見に来たくせに。」

「うるせー。カブトムシは男はみんな好きなんだよ!」

「何それ!開き直らないでよ!」

そう言って伊予は笑った。由紀は大人っぽく見えるけれど、中身は本当にただの小学生のままだ。

サクは手慣れていて、バナナをストッキングにおもむろに入れた。大量のバナナが入ったストッキングが何個かできて、それを大きな桶に入れ、焼酎とコーラを惜しみなくかけた。

「臭い。」

「お前、臭いで酔うなよ。顔赤いぞ。」

「酔ってないし。」

伊予は完全に酒の香りにやられていた。

「なんか手伝ってもらってありがとう~。助かった。」

「いえいえ、こちらこそ。何か楽しかった。」

「そんなことより、これって今日仕掛けに行くのかよ?」

「うん。学校の裏の森に何個かつけようかなって。あとは、近くの山まで持ってく。」

「大丈夫なの?」

「まあ、そっちは流石に親にも手伝ってもらおうかなって。いつもは兄貴に手伝わせてるんだけど、流石に高3だしね。」

伊予は「手伝いたい」と言いたかったけれど、自分も高2の期末テストだった。受験は静かに足音を立てずに近づいてくる。「手伝いたい」と言い出さない伊予に、由紀は内心ほっとしていた。

(こいつ、考えなしだから「手伝う」って言いだすかと思ったけど。結構冷静じゃん。)

「そんで、明日の朝には捕まえに行くから。もし捕まえたの見たかったら、明日もここ来たら見れるよ。」

サクは優しくそう言った。伊予の顔には「行きたい」って書いてあるように見えたので、サクはそう言った。

(伊予って、わかりやすいな~。)

「やったー!!!」

人一倍喜んだ伊予を見て、サクは笑った。
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