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伊予の部活動
トラップ
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実は、あれから期末テスト前の期間に入ってしまい、部活動は活動休止期間に入った。せっかく持てたサクとの接点が遠ざかり、伊予にはまたつまらない毎日が戻ってきたように思えた。
(サク、何してんだろ)
「ねえ、伊予。」
教室に入ってきた蛍が神妙な顔でこちらに歩いてきた。
「さっきまた変な噂になってたよ。伊山くん。」
「え?」
「なんか今日、大きい焼酎瓶持ってきて、校門の先生にめちゃくちゃ注意されてた。」
「えええー!?」
「あと、袋の中に死ぬほどバナナ入ってたけど。サルなの?」
「なんか、変な情報量多くて頭パンクしそう。」
「部活動に必要なんですって言ってたけど。今、テスト前で活動休止してるよね?」
「うん。そのはずだけど。何するつもりなんだろ。」
伊予は最近、そういう奇行らしき噂を聞いても、「サク=変な人」というイメージにはならなくなっていた。彼は理由や目的や興味がなくては、その行動を取らないはずだからだ。彼にとっては奇行ではなく、あれらの行動は「研究」に近い。伊予は、漸くそういったことが分かってきた。
*
お昼休みになって、蛍とお弁当を食べながらも伊予はサクのことを考えていた。蛍にはすでに由紀と和解した話をしたが、蛍は「あいつ、何か企んでない?気をつけなよ。」と、由紀に対しての警戒心を解くことはなかった。
「蛍、私、サクのこと気になるから、ちょっと部室見てきてもいい?」
「んー、いいよ。行っておいで。私も図書室に行きたいから、いっしょに行こ。帰るときは図書室にいるから声かけて。」
「オッケー。」
蛍は伊予に「またあとで話聞かせて。」と言って、図書室へ吸い込まれていった。
伊予は、そっと理科準備室の扉を開けた。案の定、サクがいて何かやっている。そして……
「なんで由紀までいるの!」
「は?」
由紀が何やら手伝っているようだ。
「あれ、伊予じゃん。どうしたの?」
「どうしたのって!だってなんか噂になってたから。焼酎瓶持ってきたって。」
「あはは!それだけ聞いたら俺、ただのおかしなやつじゃん。」
(いや、君はだいたいおかしな奴として噂されていますよ、とは言えない。)
サクの手元を見ると、大量のバナナを切っている。
「で、何してるの?」
「トラップ作ってんの。」
「トラップ?」
ぽかんとした伊予に、由紀が説明を付け加える。
「昆虫採集のためのトラップ。クワガタとかカブトムシとかのためのやつだって。」
「へえーーー!捕まえるの?」
「うん。今年はいっぱい捕まえて、せっかくだから標本作るつもり。部活動でできるって良いよね~!」
「でも、俺らは無理だぞ。テスト大事にしないとな。」
「とか言いながら、見に来たくせに。」
「うるせー。カブトムシは男はみんな好きなんだよ!」
「何それ!開き直らないでよ!」
そう言って伊予は笑った。由紀は大人っぽく見えるけれど、中身は本当にただの小学生のままだ。
サクは手慣れていて、バナナをストッキングにおもむろに入れた。大量のバナナが入ったストッキングが何個かできて、それを大きな桶に入れ、焼酎とコーラを惜しみなくかけた。
「臭い。」
「お前、臭いで酔うなよ。顔赤いぞ。」
「酔ってないし。」
伊予は完全に酒の香りにやられていた。
「なんか手伝ってもらってありがとう~。助かった。」
「いえいえ、こちらこそ。何か楽しかった。」
「そんなことより、これって今日仕掛けに行くのかよ?」
「うん。学校の裏の森に何個かつけようかなって。あとは、近くの山まで持ってく。」
「大丈夫なの?」
「まあ、そっちは流石に親にも手伝ってもらおうかなって。いつもは兄貴に手伝わせてるんだけど、流石に高3だしね。」
伊予は「手伝いたい」と言いたかったけれど、自分も高2の期末テストだった。受験は静かに足音を立てずに近づいてくる。「手伝いたい」と言い出さない伊予に、由紀は内心ほっとしていた。
(こいつ、考えなしだから「手伝う」って言いだすかと思ったけど。結構冷静じゃん。)
「そんで、明日の朝には捕まえに行くから。もし捕まえたの見たかったら、明日もここ来たら見れるよ。」
サクは優しくそう言った。伊予の顔には「行きたい」って書いてあるように見えたので、サクはそう言った。
(伊予って、わかりやすいな~。)
「やったー!!!」
人一倍喜んだ伊予を見て、サクは笑った。
(サク、何してんだろ)
「ねえ、伊予。」
教室に入ってきた蛍が神妙な顔でこちらに歩いてきた。
「さっきまた変な噂になってたよ。伊山くん。」
「え?」
「なんか今日、大きい焼酎瓶持ってきて、校門の先生にめちゃくちゃ注意されてた。」
「えええー!?」
「あと、袋の中に死ぬほどバナナ入ってたけど。サルなの?」
「なんか、変な情報量多くて頭パンクしそう。」
「部活動に必要なんですって言ってたけど。今、テスト前で活動休止してるよね?」
「うん。そのはずだけど。何するつもりなんだろ。」
伊予は最近、そういう奇行らしき噂を聞いても、「サク=変な人」というイメージにはならなくなっていた。彼は理由や目的や興味がなくては、その行動を取らないはずだからだ。彼にとっては奇行ではなく、あれらの行動は「研究」に近い。伊予は、漸くそういったことが分かってきた。
*
お昼休みになって、蛍とお弁当を食べながらも伊予はサクのことを考えていた。蛍にはすでに由紀と和解した話をしたが、蛍は「あいつ、何か企んでない?気をつけなよ。」と、由紀に対しての警戒心を解くことはなかった。
「蛍、私、サクのこと気になるから、ちょっと部室見てきてもいい?」
「んー、いいよ。行っておいで。私も図書室に行きたいから、いっしょに行こ。帰るときは図書室にいるから声かけて。」
「オッケー。」
蛍は伊予に「またあとで話聞かせて。」と言って、図書室へ吸い込まれていった。
伊予は、そっと理科準備室の扉を開けた。案の定、サクがいて何かやっている。そして……
「なんで由紀までいるの!」
「は?」
由紀が何やら手伝っているようだ。
「あれ、伊予じゃん。どうしたの?」
「どうしたのって!だってなんか噂になってたから。焼酎瓶持ってきたって。」
「あはは!それだけ聞いたら俺、ただのおかしなやつじゃん。」
(いや、君はだいたいおかしな奴として噂されていますよ、とは言えない。)
サクの手元を見ると、大量のバナナを切っている。
「で、何してるの?」
「トラップ作ってんの。」
「トラップ?」
ぽかんとした伊予に、由紀が説明を付け加える。
「昆虫採集のためのトラップ。クワガタとかカブトムシとかのためのやつだって。」
「へえーーー!捕まえるの?」
「うん。今年はいっぱい捕まえて、せっかくだから標本作るつもり。部活動でできるって良いよね~!」
「でも、俺らは無理だぞ。テスト大事にしないとな。」
「とか言いながら、見に来たくせに。」
「うるせー。カブトムシは男はみんな好きなんだよ!」
「何それ!開き直らないでよ!」
そう言って伊予は笑った。由紀は大人っぽく見えるけれど、中身は本当にただの小学生のままだ。
サクは手慣れていて、バナナをストッキングにおもむろに入れた。大量のバナナが入ったストッキングが何個かできて、それを大きな桶に入れ、焼酎とコーラを惜しみなくかけた。
「臭い。」
「お前、臭いで酔うなよ。顔赤いぞ。」
「酔ってないし。」
伊予は完全に酒の香りにやられていた。
「なんか手伝ってもらってありがとう~。助かった。」
「いえいえ、こちらこそ。何か楽しかった。」
「そんなことより、これって今日仕掛けに行くのかよ?」
「うん。学校の裏の森に何個かつけようかなって。あとは、近くの山まで持ってく。」
「大丈夫なの?」
「まあ、そっちは流石に親にも手伝ってもらおうかなって。いつもは兄貴に手伝わせてるんだけど、流石に高3だしね。」
伊予は「手伝いたい」と言いたかったけれど、自分も高2の期末テストだった。受験は静かに足音を立てずに近づいてくる。「手伝いたい」と言い出さない伊予に、由紀は内心ほっとしていた。
(こいつ、考えなしだから「手伝う」って言いだすかと思ったけど。結構冷静じゃん。)
「そんで、明日の朝には捕まえに行くから。もし捕まえたの見たかったら、明日もここ来たら見れるよ。」
サクは優しくそう言った。伊予の顔には「行きたい」って書いてあるように見えたので、サクはそう言った。
(伊予って、わかりやすいな~。)
「やったー!!!」
人一倍喜んだ伊予を見て、サクは笑った。
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