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2.ぐるぐる思考中
しおりを挟む皇帝陛下、いやロイは結構な男前だと思う。……すみません嘘です。かなり断トツで最高の美人さんです!見たことないレベルの綺麗さんです!!だから同性から愛していると言われたにも関わらず、不思議と嫌悪感はありません!
でもな、俺の17年間は多分普通に女の子が好き、だったはずなんだよ。彼女なんていた記憶もないけどな!それにロイはこの国でトップ張ってるお偉いさんだ。俺みたいな男が好きなんて、外聞悪いんじゃないか?
なーんて思いついたことを、混乱のあまりそのまま口からぼそぼそ言ってしまったら、当の皇帝陛下さんがいい笑顔で
「どこの大陸でも同性恋愛は盛んだ。隣国の王配は異種族同性でもある。私がカナタを愛していると他国向けに公式文書で発表したとしても、何の問題もない。ああ、思いつきで言ったがそれも良いな…。外堀から埋めようか。」
「それだけはやめとこう!?」
なんておっしゃるので、思わず叫んでいた。
なぜ異世界で目が覚めた途端に、どこかの皇帝陛下に恋人宣言されねばならないのか。それでなくても自分の立ち位置が全力で行方不明中だというのに。
そんな疲れる話をしながらも、ロイに雑炊に似た食事をあーんされ続けた俺は無心でしっかり完食した後、ソッコー寝た。
「お前がいいと言うまでは何もしない。
安心してゆっくり休め、カナタ。」
枕元に腰を下ろしたロイが、そう喉の奥で小さく笑いながら俺の髪を梳くものだから
(何もっていったい何するつもりなんですかねぇこのイケメンはぁあぁあ!!?てかさっきのアレはノーカウントのつもりかぁあああぁ!!!何様のつもりだ!?はい皇帝陛下っすね!!!)
という叫びを心の中でぐっと飲み込んだまま耐えていたら、いつの間にかまた眠りに着いていた。で、俺としてはちょっと昼寝したつもりだったのに、なんで目が覚めたらいかにも朝っぽい光なんですかねー?いくらなんでも寝すぎじゃないか?もはやいい加減これが夢オチという希望も諦めろと?
そんな事をうだうだ思いながら、もそもそと体を起こし広い室内を見渡すと、この数日見慣れた姿がない。それにほっとしたのか、不安めいたものを覚えたのかは自分でもわからないが、ちょっとだけ胸がざわついた気がした。
「いやいや、保護者っぽい人がいなくてちょっと落ち着かないだけだろ、うん。」
とりあえずついているだろう寝癖を手櫛で調えながら、ゆっくりベッドから足を下ろしてみる。今更意識したが、着せられている服は、肌触りのいい真っ白な膝丈のワンピースもどきだった。なんだか病院の検査着っぽい。格段に、ぶっちぎりで、質はこっちのほうが上も上だが。
そして、実はこのベッドを降りるのはこれが初めてだ。良くわからない全身の痛みはまだあるが、軽く動く程度ならどうにかなるようになったのが昨日のことだし。……ただベッドに正座しただけであの話になったからな!つまり、異世界初めの第一歩を俺は今、踏み出すのだ!そう、踏み出してっ……!
「いっ!?だぁあぁぁあ――――!!!?」
後悔した。第一歩を猛烈に後悔した。てか踏み出してない。
ベッドから腰を浮かせた瞬間、全身を走り抜けた焼けるような強烈な痛みにべちゃっと床に崩れ落ちた。あ、この絨毯めっちゃふかふか。でも痛い。転げ回りたいくらい至る所が痛い。でも痛くて指一本動かせない!なぜだ!?仰向けから正座は問題なかったのに!なんで立ち上がったらだめなんだ!?
(はー…なにやってるかなぁ俺ぇー)
うつ伏せに倒れたまま、意識的に深く息を吐く。
丁度いい、異世界とか、記憶喪失とか、愛し……いやそれはいい。とにかく色んな夢オチ希望状況に振り回された挙句、ぶん投げられたような状況だ。ちょっと落ち着こう、俺。
そう、今までのロイの話の全てを、俺は信じられるのか。
いつも傍にいてくれる男に、ロイに、間違いなく親近感を覚えている。誰だって見知らぬ場所で、状況で、ここまで手厚く介護されたらそりゃ少しは懐くだろう。まぁ、俺もロイは信じられるんじゃないかなと感情ではとうに判断している。
でも、いい加減おかしいことだって見えてくる。気づかないはずがない。
この世界の統治機構が俺の知っているものと相当な乖離がなければ、【皇帝陛下】なる人物がここまで一個人に張り付いている時間があるのだろうか?それになにより、この部屋で目覚めてから今の今まで、俺はロイ以外の人間を見ていない。
だから、そろそろ考えたくなかったことも、もしかしたら考えないといけないのかもしれない。
もしかして俺って…………監禁されているんじゃないか、とか。
ロイが話してくれたこの異世界の事柄『は』真実だと仮定して、黒のうにゃららや魔導のぴにょやらの二つ名を持っている俺は、結構な危険人物だと思う。もしかすると個人で戦術核並の武力を保持している、というふざけた状況に近いのかもしれない。
そんな人間が記憶を吹っ飛ばして、17歳程度の頭ぱっぱらぱーになっているのだ。優しくして大切に扱って上手く洗脳…とまではいかなくても、思考誘導してしまえば、簡単に言いなりになる道具にな――……
「……はっ」
そこまで考えて、あまりの馬鹿らしさに思わず鼻で嗤ってしまった。そのせいでまた痛みに見舞われたけれど、それはもういい。どうせ下手な考え休むに似たり、なのだ。俺ごときがあれこれ考えたところで、この状況で何ができる。そう、どうせいつもと同じだ。
考えて何かしたところで、誰も助けてなんてくれない。どうせ俺は、ただ、与えられたモノを受け入れて、流されていくだけしかできないのだから。
だから思考が完全にマイナス向きになる前に、丁度瞼が重くなってきたのをこれ幸いと受け入れて、もうひと眠りしようかと息を吐く。そうしてゆるゆると意識が遠ざかっていく中、懐かしいと感じる声音が、どこかから聞こえた気がした。
----- だったら、言ってごらん。助けてって -----
頭の中で響いたその音の意味を、理解することはできなかったけれど。
そして翌日まで再びしっかり眠り切った俺は、ロイのとんでもない能力を目の当たりにすることになる。マジで人外か……皇帝陛下ぱねぇ……これは…………
ヤバい、惚れそう……。
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