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26話 嘘つきは泥棒の始まりじゃなくて贖罪の始まりらしい
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浅田は生徒指導が終わるとさっさと靴箱へ走って帰っていった。今頃友達に俺の悪口を吹聴していることだろう。「じゃあね」ぐらい言ったらどうなんだ。どんだけ俺のこと嫌いなの。
俺は特にやることもなく、教室に戻って1人帰る準備と片付けをしていた。
井藤と田中は松原に言われ先に帰ったらしく、松原は今保健室で詳しい事情を川本先生に伝えてるはずだ。くそ、川本ちゃんと同じ部屋だなんて…!
俺は激しく嫉妬しながら道具をバックに詰め、その場を立ち去ろうとしたが、
(一応、保健室に行っとくべきかな…)
俺はそう思い、帰る前に保健室に寄ることにした。
べ、別に川本ちゃんに会いたいとか、そんなんじゃないんだからからねっ!
-------------------------
「どうも」
俺が保健室に入ると、そこには無表情で座っている平本と川本先生、そして困り顔の松原がいた。
「あ、よう。なあ、お前これどうにかしてくれないか?」
松原が俺を見つけて話しかけてくる。どうやらトラブルらしい。
「どうにかするって…何を」
「平本だよ。全然喋んないんだもん」
「平本が?全く?」
「そう」
俺は少し奇妙に感じた。1ヶ月前、俺が平本の両親に会った帰り、あそこで会話したときは少なくとも喋らないタイプには思えなかった。元々はあまり喋ったりするタイプではなかったけど、今はてっきり快活な性格に変わっているのかと思っていたのだが…
と、ふと俺の中である1つの仮説が生まれた。
それは…
「なあ、松原。それに、川本先生。少しの間、外に出ててくれませんか」
「ん?」
「え?」
「少し、確かめたいことがあるんです。大丈夫、すぐ終わりますから」
「う、うん。わかったよ──君。ただ、怪我した子がいつでも来ていいように早めにね」
「わかってます」
2人は不審がりながらも保健室から出ていった。
さて、と。
「よう、平本。ほんと、悲劇のヒロインは大変だよな」
俺は平本に話しかける。平本は怯えているような素振りを見せる。
俺は構わず続ける。
「覚えてるか、平本。俺だ。結構前、お前に教室の位置を教えたあいつだ」
「……」
「なあ、なんとか言ってくれ。じゃないと、お前に言わなくちゃならないことが増えてしまう」
平本は未だに黙っている。
「ちぇ、黙秘とはな。ズルいやつだ」
そして、俺は言う。
「俺はお前がこの1ヶ月間何をして何を考えて過ごしてきたのかはわかんねえよ。だけど、俺は今のお前を見て、ある1つの仮設を立てた。さて、一体全体なんだと思う?」
俺はまくしたてるように言う。平本を焦らすためだ。
平本は依然として黙っている。
「…そうかい。それがお前の答えか。なるほどね」
俺はわざと感心したような言い方をする。浅田が聞いたらノロイーゼになりそうなウザさだった。
しかし、これでいいのだ。
平本には、まず俺に対して嫌悪感を抱かさなければならないから。
「で、悲劇のヒロイン平本さん。お前、ほんとにすげえ女優だよな──」
そして、俺は誰が聞いても鳥肌が立つようなウザい口調で、かつて好きだった人に、自信満々に言い放った。
「だって、こんなに完璧な記憶喪失を演じれるんだもんなぁ?」
俺は特にやることもなく、教室に戻って1人帰る準備と片付けをしていた。
井藤と田中は松原に言われ先に帰ったらしく、松原は今保健室で詳しい事情を川本先生に伝えてるはずだ。くそ、川本ちゃんと同じ部屋だなんて…!
俺は激しく嫉妬しながら道具をバックに詰め、その場を立ち去ろうとしたが、
(一応、保健室に行っとくべきかな…)
俺はそう思い、帰る前に保健室に寄ることにした。
べ、別に川本ちゃんに会いたいとか、そんなんじゃないんだからからねっ!
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「どうも」
俺が保健室に入ると、そこには無表情で座っている平本と川本先生、そして困り顔の松原がいた。
「あ、よう。なあ、お前これどうにかしてくれないか?」
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「どうにかするって…何を」
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「平本が?全く?」
「そう」
俺は少し奇妙に感じた。1ヶ月前、俺が平本の両親に会った帰り、あそこで会話したときは少なくとも喋らないタイプには思えなかった。元々はあまり喋ったりするタイプではなかったけど、今はてっきり快活な性格に変わっているのかと思っていたのだが…
と、ふと俺の中である1つの仮説が生まれた。
それは…
「なあ、松原。それに、川本先生。少しの間、外に出ててくれませんか」
「ん?」
「え?」
「少し、確かめたいことがあるんです。大丈夫、すぐ終わりますから」
「う、うん。わかったよ──君。ただ、怪我した子がいつでも来ていいように早めにね」
「わかってます」
2人は不審がりながらも保健室から出ていった。
さて、と。
「よう、平本。ほんと、悲劇のヒロインは大変だよな」
俺は平本に話しかける。平本は怯えているような素振りを見せる。
俺は構わず続ける。
「覚えてるか、平本。俺だ。結構前、お前に教室の位置を教えたあいつだ」
「……」
「なあ、なんとか言ってくれ。じゃないと、お前に言わなくちゃならないことが増えてしまう」
平本は未だに黙っている。
「ちぇ、黙秘とはな。ズルいやつだ」
そして、俺は言う。
「俺はお前がこの1ヶ月間何をして何を考えて過ごしてきたのかはわかんねえよ。だけど、俺は今のお前を見て、ある1つの仮設を立てた。さて、一体全体なんだと思う?」
俺はまくしたてるように言う。平本を焦らすためだ。
平本は依然として黙っている。
「…そうかい。それがお前の答えか。なるほどね」
俺はわざと感心したような言い方をする。浅田が聞いたらノロイーゼになりそうなウザさだった。
しかし、これでいいのだ。
平本には、まず俺に対して嫌悪感を抱かさなければならないから。
「で、悲劇のヒロイン平本さん。お前、ほんとにすげえ女優だよな──」
そして、俺は誰が聞いても鳥肌が立つようなウザい口調で、かつて好きだった人に、自信満々に言い放った。
「だって、こんなに完璧な記憶喪失を演じれるんだもんなぁ?」
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