それぞれの愛の形 月矢と蒼介

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それぞれの愛の形

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幼い頃からの夢だった看護師になった蒼介は夢を果たして4年で  看護師の職から離れてしまった

いや 俺が無理矢理 離れさせた

常に真摯に患者と接し  真面目に仕事をこなす蒼介だったか  あまりに繊細過ぎたのだ
どうしても命の灯と向き合うことが苦痛だった
受け入れるには患者1人1人に感情移入し過ぎていたのだろう

それでも夢を叶えたのだからと  自分を叱咤して看護師であり続けようとした

あり続けようとした結果  蒼介は壊れてしまった

食事も睡眠も思うように取れず  みるみるうちに窶れていった蒼介の姿を見ているのは辛かった

そんな蒼介を幼馴染として  恋人として  一番近くで見ていた俺は  蒼介を宥めて賺して最終的には少し脅して 半ば監禁するように当時勤務していた病院を退職させた


あれから3年  言葉にしてしまえば短いのか長いのかわからない月日が流れる間に  蒼介は漸く以前のように生命力溢れる輝きを取り戻しつつあった

退職後すぐの頃は  ゆっくり休養させたいと思う俺に対して蒼介は毎日のように体を合わせることを求めた

衰弱しきった体は  そんなことに耐えられるはずもなく行為の途中で半ば意識を失うように眠りにつくことも多かった
そんな行為に罪悪感を抱く俺に  ごめん  と一言謝り静かに涙を流す蒼介は俺に依存していたのか  セックスに依存していたのか
今となっても  その時の蒼介の思いを量りかねている
きっと蒼介自身にも  わからないだろう

誰かに  何かに縋りたかったのか
過去と言うには 余りに新しい記憶に一時いっときでも蓋をしたかったのか

それでも今年に入ってからは週に2~3度コンビニで短時間のバイトをこなしつつ  物理的にも経済的にも そして精神的にも 俺に依存する生活に度々  申し訳ないとか  肩身が狭いとか寂しいことを言ってくれるが  2人の生活に不満があるわけではないようで  よほど調子が悪くない限りは家事も率先して請け負ってくれている

時折訪れるフラッシュバックに怯えることもあるが  その頻度も時間の経過と共に減少していった


そして蒼介は離職後3年を経ても立派な看護師だった


決算前の仕事量の多さに忙殺されかかった俺は  どこかでインフルエンザをもらってしまったらしい

それまで病気とは無縁の生活を送ってきた俺の体調の変化に俺よりも先に気づいてくれたのは蒼介だった

仕事が終わり終電で帰宅した俺を迎えてくれた蒼介は開口一番
『月矢  顔色悪い  熱測ろう』

元看護師の血がそうさせたのか  2人で過ごす時間の長さ故に気づいてくれたのか  恐らくは  その両方だろう

『38.8℃か  高いな…』

テキパキと俺を着替えさせてベッドに横たえる

『インフルエンザかもしれないから  明日病院に行こう  俺も一緒に行くから』

そんな蒼介の声も夢現で聞いていた俺は  ただ泥のように眠った
つもりだった

実際には高熱に魘され  浅い眠りと緩やかな覚醒の間を行ったり来たりしていたようだ
朦朧とする意識の中でもベッドの脇で俺の汗を冷たいタオルで拭ってくれるマスク姿の蒼介を何度も見たような気がする

翌朝目を覚ましても  ひどい関節痛と頭痛でベッドから起き上がることすらできない

内心  たかが風邪なのに  と思う反面  風邪ってこんなに辛いものなのか?とも思う

『月矢  辛いよね  でも病院に行くよ  インフルエンザなら薬をもらってくれば  すぐに楽になるはずだから』

じっとりと汗をかいた俺をベッドに転がしたまま当たり前のように着替えさせる

『体を起こすから僕の首に腕を回して掴まって』

いつもはベッド上で  しがみつくのは蒼介で  しがみつかれるのは俺なのに  この日ばかりは蒼介が主導権を握った

急に体勢を変えると目眩を起こすからと  体を支えられ  ゆっくりと立たされる

蒼介に肩を借り車の助手席に乗せられた頃には  着替えたばかりなのにTシャツは随分と汗で濡れていた

『月矢  少しでもいいから  お水飲める?』

蓋を開けたペットボトルを口に付けられるが唇を濡らす程度で限界だった

『困ったな  水分が摂れない』

誰に言うでもなく呟き 車を発進させる蒼介は言葉の通り困ったような顔をしていたが  久しぶりに握ったはずのハンドル捌きは なかなかに滑らかだった

家から車で ほんの数分の場所にある小さなクリニックには蒼介の元同僚が勤めていた。予め連絡をしておいてくれたのか  ほとんど待ち時間なく診察室へと招かれた

ぐったりとする俺に替わって  蒼介は俺の症状を医師に伝えてくれる
子供でもないのに  と思われるかもしれないが正直  体を起こしているだけでも辛い

健康ではないことの心の痛みを  ほんの少しだけ理解できたような気がした
こんなことなら 傷ついた蒼介を  もっと甘やかしてやればよかった
霞がかかったような思考で  つらつらと考えるのは隣にいる蒼介のことだった

診察が終わり 隔離された部屋で待たされていると言うことは やはりインフルエンザだったのだろうか

診断結果を聞かされたのかさえ覚束ない

今では珍しいクリニックでの院内処方で薬を出してもらい  処方薬にしては些か大きい紙袋を蒼介が受け取っていた

『無理言ってごめんね  助かったよ』
「院内処方のできるクリニックに勤めてるナースの特権よ」

蒼介と元同僚の会話であることは理解していたが  内容まで汲み取ることはできなかった

帰りの車に乗り込んでアルコールで自分の手と俺の手を消毒した蒼介は早々に薬を飲ませてくれた

『月矢もう少し  お水飲める?』

薬を飲み込むのに最低限の水を口に含んだだけで軽い吐き気を感じるのに  これ以上は無理だ

一度首を左右に振れば
『そうか  辛いよね』
ペットボトルの蓋を閉めて  俺にシートベルトをかけると車は  ゆっくりと動き始めた

帰宅後も  ぐったりと動けない俺をベッドに横たえた蒼介は  クリニックで受け取った紙袋から何かを取り出している

『月矢  点滴しようね』

元同僚に頼み込んで分けてもらったようだ

『昨日の夜から全然  お水飲んでないでしょ?脱水症状が進んでる』

近くのカーテンレールに点滴パックを掛け  俺の肘の下あたりに丸めたタオルを置く

点滴パックと一緒に譲ってもらったのだろうか  手際よく駆血帯を巻いて  迷い無く針を刺す
針と腕を固定すると

『疲れたでしょ?ゆっくり休んで』

幼子にするように髪を梳かれれば俺の意識はすぐに遠くなった


太陽が真上に上がった頃   1度目が覚めた
頭痛は相変わらずで倦怠感も酷い  ベッドから1ミリも動きたくない

『目が覚めた?』

俺の首筋に手をあてているのは熱を確かめているのだろう

『月矢  おしっこしたくない?』

…?蒼介は至って真剣に口にした言葉なんだろう
でも俺には理解が及ばない

どうして今 下の話?疑問が顔に出ていたのであろう
俺に蒼介は続ける

『月矢  昨日の夜から一度もトイレに行ってないだろ?かなり脱水症状が進んでから』

でも  と更に続けられた言葉で合点がいく

『ずっと水分摂取をしないで熱で大量に汗をかいたけど  月矢が寝てる間に点滴パック一本分の水分が体に入ったんだよ』

それなのに尿意を感じないのは  脱水と同様  若しくはそれ以上に怖いのだと言う

『さっきね月矢が寝てる間にお腹を触ったんだけど 
結構おしっこ溜まってるんだ 』

そう言われても やはり尿意は感じない
黙り込む俺を見て蒼介は意を決したように言う

『月矢  カテーテル入れよう  動けるようになったら外せばいいから』

カテーテル?大した病気をしたことのない況してや医療従事者でもない俺には馴染みのない言葉だった

『膀胱に直接チューブを入れて  おしっこを体の外に出すんだ』

いやいやいや
その瞬間  頭痛も倦怠感もなくなった

膀胱に直接ってことは  そう言うことだろ?
痛いよ  どのぐらい痛いかは想像できないが スゲー痛いだろうことはわかる

『あっ…  蒼介  俺トイレ  トイレ行くわ』

勇んでベッドから起き上がろうとした俺は無惨にベッドに崩れ落ちた

『ほら  まだ体に力が入らないだろ?熱が下がってないもの』

ベッドの上で項垂れる俺の体勢を直すと蒼介は寝室から出ていってしまう

やめろよ!怖いこと想像させた後に1人にするなよ!
グルグルと考えているうちに寝室に戻った蒼介はクリニックで受け取った紙袋から不穏なブツを取り出している

なんかゴムのチューブみたいなヤツと なんか空の点滴パックみたいなやつ
なんか変な鋏みみたいな形したヤツと 手袋と消毒綿

嫌な予感しかしない

『手はキレイに洗ってきたから大丈夫だよ』

何が大丈夫なのかわからない
逃げたしたい  でも 体は言うことを聞いてくれない

布団を剥ぎ  下衣も剥がれる

手袋をつけ 茶色い液体が染み込んだ綿球を持った蒼介が丁寧に説明してくれる

『うがい薬と同じ成分の消毒薬だよ  安全なものだからね』

違う安全とか安全じゃないとか そう言う問題じゃない

わなわなと震える俺に 更に丁寧に説明を続ける蒼介が今は悪魔に見える

『心配しないで月矢  僕カテーテルの挿入は得意だったから』

俺の先端をクルクルと撫でるように消毒する蒼介は  いつもと同じ柔らかな表情のままだ

『月矢  動いちゃダメだよ』

俺に挿入されるであろう細いチューブに潤滑剤を塗りつける蒼介に やはり表情の変化はない

『ちょっと触るよ』

セックス以外で触れられたことない俺のそれを平然と握り込んだ蒼介は鈴口を拡げると俺の表情を見ながら  ゆっくりと  でもスルスルとカテーテルを挿入していく


???痛くない  違和感はあるけど痛くない
しかも何故だか少し気持ちがいい
少しだけだぞ!すごく気持ちがいいわけじゃない!断じてない!

そんな俺を見透かすように 蒼介はクスッと笑う

『月矢  ちょっと勃ってる  だから言ったでしょ  僕カテーテルの挿入は得意なんだって』

内心 蒼介にこんなことをしてもらっていた患者に対し嫉妬しながらも  インフルエンザと未知への恐怖で疲弊しきった俺は下半身露出状態のまま再び眠りに落ちた

夕方になって再度目を覚ます頃には不調もだいぶ収まり熱も幾分落ち着いた

だからこそ下半身の違和感は相当なもので

『なぁ 蒼介  これ抜いてくれよ』

少々辛くても体を起こすことはできる
トイレにも行かれる

そうなれば体の一番大事と言っても過言ではない部分に異物が入ったままと言うのは やはり  なんだか落ち着かない

『短時間の導尿だったから大丈夫だとは思うけど少し様子を見てからだね』

様子を見るってなんだ?ただ引っこ抜けばいいんじゃないのか?

そんな俺の疑問を見透かしたように蒼介は続ける
まるで子供に説明するような言い聞かせるような口調で

『月矢は昼間  目を覚ました時  おしっこが溜まっているのに気付かなかっただろう?』

なんだか聞いていて恥ずかしくなる
大の大人が尿意に気付かないなんて俺の体はバカになってしまったのだろうか

『ちゃんと  おしっこが溜まった感覚がわかるかどうか試す必要があるんだ』

だからね  と続く説明は  やはり恥ずかしい

カテーテルを鉗子で挟み

『これで  おしっこは体の外には出てこないよ』

後は俺が尿意を感じられるのか試すのだと言う

30分程で俺はハッキリとした尿意を覚えた

『蒼介  トイレ行くから  これ外して』

でも今や悪魔となった蒼介は  俺の下腹を触りながら

『確かに  溜まってきているね』

と言うだけでカテーテルを外してくれる素振りはない
その代わりのようにカテーテルの出口を床に置いた洗面器に向け  鉗子を外す

ショロショロと流れ出る薄い琥珀色の液体を観察しながら

『色も量も大丈夫そうだね』

平然と言い放つ蒼介の顔を俺は直視出来ない  その間にも  蒼介は看護師の顔を見せる

『カテーテル外すね  動いちゃダメだよ』

挿入の時と同様に下半身には何も纏わず  蒼介の前に曝け出す
違う  曝け出された

んっ  んんっ

これは色々とよくない
ような気がする

カテーテルを挿入される時  少し  ほんの少しだけ気持ちよかった

そして抜去されている今も  間違いなく気持ちいい

さっさと抜いてくれればいいものを蒼介も  まるで楽しむように抜いている

『尿管に傷が付いたら大変だからね』

その声には明らかな甘さが混じっている
クスッと笑った蒼介は

『月矢  また勃ってる』

でもな  蒼介お前のも勃ってるよ!
スラックス越しでもハッキリと解るくらい勃ってるよ!

『今まで患者さんに同じことしても  こんな風になったことなかったのに』

苦笑いを浮かべる蒼介は自分の股間に目を遣ると

『ごめん  月矢まだ熱も下がってないのに不謹慎だよね』

いえいえ
こんなことされて興奮してるのは俺も同じだから!
この際  生まれて初めてのインフルエンザを利用して蒼介にお願いしてみよう

『なぁ蒼介…あのさ』

恥ずかしくて なかなか言葉が出てこない

その先を促すように コテンと首を傾げる蒼介は黙って次の言葉を待っている

『あのさ  その…   また  これやって』

ヤバい  俺の羞恥心は天をも突き破る勢いで急上昇だ

そんな俺に天使のような顔をした悪魔が呟く

『そうだね  また  やろうね』



※※※※※※※※※※

その後  間もなく全快した俺は  休みの前の日になると蒼介に『あれ』を強請るようになった

今日も今日とて  俺の中心を持ち上げて先端をクルクルと消毒する蒼介は悪魔の笑顔を浮かべている

『月矢  入れるよ 』

カテーテルをゆっくり じっくり挿入させる蒼介の表情はどこか恍惚としている

わざと前立腺を掠めるように前後させながら進むカテーテルは  ほんの少しの痛みと形容し難い快感を俺に与える

『あっ  あぁ  蒼介  もっと』

カテーテルを最後まで挿入し  いきつ俺のそこからは ブラブラとカテーテルが生えている
他人が見れば滑稽なそれも蒼介と俺にとっては興奮を煽るスパイスとなる

『月矢  今日もこれで  イってみようね  』

今日はどっちが先に出るんだろうね
無邪気に笑う蒼介は更に悪魔度に磨きがかかったようだ

絶妙の力加減で上下に扱かれれば  すぐにでも爆ぜそうになる

それでもすぐに許されるわけはなく今度は亀頭を掌でよしよしされる

人間我慢のし過ぎはよくない
だから俺は出す!

それなのに亀頭からも呆気なく掌は離れ  腹の中に熱が溜まる
いや溜まっているのは熱だけじゃない

限界まで高められた射精欲は裏筋をスリッと弄られただけで簡単に解放された

白濁がカテーテルを登り 俺の腹を汚す

荒い息を整える暇も与えられず亀頭を刺激され続ければ最近になって蒼介に覚えさせられた込み上げるような感覚に襲われる

『あっ  あっ  んん  ダメ蒼介  出ちゃう』

身を捩る俺を見る悪魔は嗤いながら自分のモノを取り出して慰めている
俺からは見えないが既に雫を滴らせていることだろう

『ダメじゃない  月矢  全部出して』

瞬間カテーテルには  それなりの勢いで透明な液体が迫り上がる

カテーテルのせいで全てが解放できないもどかしさは経験者にしか解るまい

『蒼介  抜いて  抜いてぇ』

俺の懇願に悪魔は口端をあげて ゆっくりゆっくりカテーテルを抜去する
同時に 悪魔は自分を慰める手を早めたようだ

全部抜き終わるのを待ちわびたように何かが勢いよく俺とシーツを濡らす
そして悪魔も『うッ』と一瞬息を止め自身の何かを解放したのだろう

『月矢かーわいい』

カテーテルから白濁を溢し潮を吹く俺と  それを見て可愛いと言う蒼介

そう言えば蒼介の後孔でセックスをしていただけの頃よりも俺の尿道を使った『コミュニケーション』をとるようになってからの方が蒼介は快活になった

まぁ それと同時に悪魔度も増すわけだが




相手が蒼介でなければ 大事な所に異物を挿入させるなど  許せるわけがない

蒼介とて相手が俺でなければ  1つの医療行為に興奮を覚えることはなかったようだ

例えば  こんなプレイがゲイ専門のビデオになったとしても需要はかなり少ないだろう

俺たちの性癖は それ程までに特殊であることは互いに理解している

それでも蒼介が笑ってくれるなら俺は『これ』をやめられない
違うな
俺自身が気持ちいいから  やめられない

だって  それが2人の愛の形なのだから










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