太陽と月

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ガジュマルの家を後に自宅マンションへの帰り道、陽は宮腰のサポートでなんとか作り終えた木製の小さな箱を大切そうに抱えている。

ガジュマルの家での滞在時間は、ほんの2時間ほどで長いものではなかった。

朔也と一緒だったから大丈夫だったのかもしれない。
短時間だったから大丈夫なのかもしれない。

陽には社会と積極的に関わって欲しいと思う反面、朔也だけの陽でいて欲しいとも思ってしまう。

じりじりと、そんなことを考える朔也こそができずにいることは、既に周囲も本人も気付いている。

助手席で自作の小箱を撫でたり、対向車に興味を寄せたりと忙しそうな陽だが、短時間とは言え慣れない外出で疲れたのだろう。
船を漕ぎだし、やがて全身から力が抜けていく。

信号待ちで自身の上着を陽にかけた朔也は、普段よりも大人しい運転でマンションの駐車場へと車を滑り込ませた。

駐車場に到着しても目を覚ます様子のない陽を抱き上げ自動車の外に出れば、前後を走っていた護衛の自動車からも何人かの組員が降りてくる。
陽を気遣ったのだろう。声を発することはないが辺りの警戒は怠らない。朔也の指紋でセキュリティを解除し専用エレベーターの扉が開けば即座に中を確認している。

ここ1年余で朔也が撃たれ、陽が連れ去られ、穏やかとは言えない時期があったのだ。組員達もナーバスになっている。
そんな精神状態を長く保つのは疲れるのだと朔也自身も知っている。

だからこそ。

最上階に向かってエレベーターが動き出したところで同行した組員に午後は休暇の許可を出す。

野太くも声量を落とした声で礼を言った組員は、自宅玄関のドアが閉まるまで、頭を上げることはなかった。

室内では、咲恵と楠瀬が出迎える。鹿島はキッチンから離れられないのだろう。

自室のベッドに陽を横たえ、リビングに戻ったところで今日の報告を始めた朔也だった。

咲恵も楠瀬も心配していたのだろう。ガジュマルの家での陽の様子を話せば、わかりやすい安堵の色が見て取れる。

『あとは陽くん次第ね』

咲恵の言葉を引き取ったのは、普段は物静かな楠瀬だ。

『少し寂しいですね』

保育園での卒園式と似た気分だと言う。例え陽がガジュマルの家に通うことを選んでも、朝夕は咲恵や楠瀬の手を借りることになる。鹿島にも食事を作ってもらうことに変わりはない。

やはり陽の成長は嬉しくもあり、寂しくもある。それは咲恵も楠瀬も同様なのだろう。

ただし朔也だけは邪な想いも抱えてはいるのだが。
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