太陽と月

ko

文字の大きさ
上 下
185 / 197
そして未来へ

183

しおりを挟む
翌朝、やはりいつもより寝起きの悪い陽を心配した朔也が陽の項に触れてみる。
発熱を心配したのだが、熱くなっている様子はない。

鬼の吾妻のせいで、ここ10日間ずっと帰りが遅い朔也のせいで陽の生活リズムか乱れている。
就寝の時間は変わらないが、連日夕食を共にしないことなど初めてだった。

それでも吾妻が詰め込む仕事は、確かに今のうちに片付けておけば後の憂いが失くなるものばかり。
裏を返せば、あと何日かで自由な時間が随分と増えるはずだ。
吾妻が何のために今のタイミングで仕事を詰めたのか理解に苦しむ部分もあるのだが、ビジネスの面では上々の結果を望むことができるだろう。

あと3日間は、席を外せない夜が続く。しかし、日曜日は昼間のうちに創世会の事務所で土門からの依頼された雑事を片付ければ自由の身だ。

日曜日は不足した陽をチャージする。今から心に決めた朔也だが、とりあえず目の前の問題を解決しなければならない。
目を覚まさない陽を、どう起こせばいいんだろうか。

『陽、おはよう』

ベッドの中でモゾモゾと動くが、起き上がる様子がない。

『どこか痛いか?』

モゾモゾと動き続ける陽は、恐らく睡魔と闘っているのだろう。

『ガジュマルの家、お休みするか?』

あまり疲れているのならと声をかけた瞬間、がばりと身を起こした陽が、眠そうに、それでも必死に

『ガジュマルには行く』

と宣言し、ゆっくりとベッドを出る。

『朔也、おしっこ』

大丈夫だ。いつもの陽だ。問題ない。
己に言い聞かせ陽の手を取り、いつものようにトイレへと向かう。

今でも休むことなく毎日続く朔也の修行の後、陽に疲れているのかと問えば、疲れてはいないと言う。

明らかに疲れている様に見えるのだが、本人に自覚がないのか、疲れていると認めたくない何かがあるのか。

しかし、それが吾妻により仕組まれた
「朔也を夕食過ぎまで帰宅させない作戦」
と関わっているとは思いもしない。

いつも通り朝食を摂るが、念のため帰宅後はゆっくりさせるよう楠瀬と鹿島に言い付け、何かあればすぐに佐伯に連絡をするようにとも言う。

ガジュマルの家に送り届けた際も、門で子供達を出迎えていた松田を捕まえ、何かあればすぐに朔也のスマートフォンに連絡するように伝える。

やはり、今夜は早く帰った方がいいのかもしれない。
だって、陽が体調を崩してからでは遅いではないか。本格的に体調を崩す前に、どうにかしてやらねば。

事務所に到着したら吾妻を脅し揚げるべきか、泣き落とすべきか、それとも何も言わずに逃げるべきか、今夜早く帰宅するための手段に考えを巡らす朔也だった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

聖女召喚に巻き添え異世界転移~だれもかれもが納得すると思うなよっ!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,065pt お気に入り:845

エルフのお婿さん────(※実際は子作り用の家畜です)

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:122

婚約破棄されたけど前世が伝説の魔法使いだったので楽勝です

sai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:901pt お気に入り:4,184

騎士様のアレが気になります!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:957

甘い婚約~王子様は婚約者を甘やかしたい~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:385

処理中です...