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3.父親みたいな騎士団長
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「あっ! そういえばアシュリー様、騎士団の人たちへ会っていかれますか?」
「騎士団……忘れてたわ。そうね……まだ少し時間あるし、会っていこうかしら」
アシュリー達が向かったのは、騎士団が使用している訓練場。
騎士団は訓練の真っ最中。
「ライオネル様!」
「姫様!」
騎士たちは、アシュリーを見ると訓練を中断した駆け寄ってきてくれた。騎士達の間でも、婚約破棄と帝国の件は伝わっており、皆アシュリーのことが心配だったのだ。
なぜなら今の王家の人間は、騎士団の人たちを軽んじているものが多い。騎士団の人たちの殆どが平民上がりの騎士爵か、子爵より下の階級貴族の次男以下の人間たちが殆ど。
その中でアシュリーと、彼女の母のセシルだけが、自分たちと対等に接してくれたから。
「アシュリー様。大丈夫ですか?」
「ええ、心配しないで。帝国に行く前に皆に会っていこうかと思ってね」
「といいつつ私が言うまで忘れてましたけどね」
「アリア! それは言わない約束でしょ!」
「そうでしたっけ? また失敗しちゃいました」
「ははは……アシュリー様が息災で安心しました」
実はアシュリーは、たまに勉強をこっそり抜け出して、騎士団の人たちと交流をしていた。
特に騎士団長のライオネルとは仲が良く、セシルには内緒で彼から剣を教えてもらっていた。
「それにしても今回の件といい……陛下の身勝手さには困ったものだ」
ライオネルは、ガースに対する憤りを隠そうとせずにそう言った。実はライオネルは、先代の国王までの王家の人間の剣術の指南役を仰せつかっていたのだ。
王国には、『男女関係なく王族は剣を習う』というのが伝統としてあったが、ガースが王太子の時に、廃止にしてしまった。ガースは体を動かすのが大嫌いで、剣術なんてめんどくさい。というなんとも我儘な理由で。
「何故姫様が帝国に行かなければならないんだ……」
「国のためだから仕方ないわ」
「それにしても、何故王妃様は今回のことに賛同されたのだろうか……」
「……お母様は、私のことなんてどうでもいいのかもしれないわね。『王家の面汚し』の私なんて……」
「それは違いますぞ!」
ライオネルがアシュリーの言ったことを否定するのには、理由があった。アシュリーに剣術を教えたその日に、彼女の母のセシルから呼び出しを受けていた。
この時すでにセシルはすべて知っていたのだ。アシュリーが勉強を抜け出して騎士団に度々遊びに来てたことも、ライオネルがアシュリーに剣術を教えたことも。
すべてを知っていたセシルは、ライオネルを咎めるわけでなく逆に「アシュリーのことをよろしくお願いします」とお願いまでされたのだ。
「そんな、お母様が……」
ライオネルからセシルのことを聞いたアシュリーは、驚きを隠せずにいた。
「自分には王妃様の考えていることは、わかりません。でもこれだけは断言できます。王妃様は、あなたのことを大切に思っています」
「お母様……」
「難しい顔して姫様らしくないですぞ!」
ライオネルは空気を変えるようにそう言った。
「らしくないってなによ!」
「はっはっは!! 姫様は無邪気に笑うのがかわいらしいですぞ」
まるで父親みたいに接してくるライオネルに、時間があればまたお母様と話してみよう……そう考えるアシュリー。
「そうだ姫様。せっかくここまで来たんだ。最後に手合わせといきませんか?」
自身の剣の柄を指しながら言ってくるライオネル。
「アシュリー様。こちらを」
間髪開けずに横からすっと剣を差し出してくるアリア。
「……もう。わかったわよ」
アリアから剣を受け取り嫌々構えをとるアシュリー。
ただその口元は、わずかに笑みを浮かべていた。
「騎士団……忘れてたわ。そうね……まだ少し時間あるし、会っていこうかしら」
アシュリー達が向かったのは、騎士団が使用している訓練場。
騎士団は訓練の真っ最中。
「ライオネル様!」
「姫様!」
騎士たちは、アシュリーを見ると訓練を中断した駆け寄ってきてくれた。騎士達の間でも、婚約破棄と帝国の件は伝わっており、皆アシュリーのことが心配だったのだ。
なぜなら今の王家の人間は、騎士団の人たちを軽んじているものが多い。騎士団の人たちの殆どが平民上がりの騎士爵か、子爵より下の階級貴族の次男以下の人間たちが殆ど。
その中でアシュリーと、彼女の母のセシルだけが、自分たちと対等に接してくれたから。
「アシュリー様。大丈夫ですか?」
「ええ、心配しないで。帝国に行く前に皆に会っていこうかと思ってね」
「といいつつ私が言うまで忘れてましたけどね」
「アリア! それは言わない約束でしょ!」
「そうでしたっけ? また失敗しちゃいました」
「ははは……アシュリー様が息災で安心しました」
実はアシュリーは、たまに勉強をこっそり抜け出して、騎士団の人たちと交流をしていた。
特に騎士団長のライオネルとは仲が良く、セシルには内緒で彼から剣を教えてもらっていた。
「それにしても今回の件といい……陛下の身勝手さには困ったものだ」
ライオネルは、ガースに対する憤りを隠そうとせずにそう言った。実はライオネルは、先代の国王までの王家の人間の剣術の指南役を仰せつかっていたのだ。
王国には、『男女関係なく王族は剣を習う』というのが伝統としてあったが、ガースが王太子の時に、廃止にしてしまった。ガースは体を動かすのが大嫌いで、剣術なんてめんどくさい。というなんとも我儘な理由で。
「何故姫様が帝国に行かなければならないんだ……」
「国のためだから仕方ないわ」
「それにしても、何故王妃様は今回のことに賛同されたのだろうか……」
「……お母様は、私のことなんてどうでもいいのかもしれないわね。『王家の面汚し』の私なんて……」
「それは違いますぞ!」
ライオネルがアシュリーの言ったことを否定するのには、理由があった。アシュリーに剣術を教えたその日に、彼女の母のセシルから呼び出しを受けていた。
この時すでにセシルはすべて知っていたのだ。アシュリーが勉強を抜け出して騎士団に度々遊びに来てたことも、ライオネルがアシュリーに剣術を教えたことも。
すべてを知っていたセシルは、ライオネルを咎めるわけでなく逆に「アシュリーのことをよろしくお願いします」とお願いまでされたのだ。
「そんな、お母様が……」
ライオネルからセシルのことを聞いたアシュリーは、驚きを隠せずにいた。
「自分には王妃様の考えていることは、わかりません。でもこれだけは断言できます。王妃様は、あなたのことを大切に思っています」
「お母様……」
「難しい顔して姫様らしくないですぞ!」
ライオネルは空気を変えるようにそう言った。
「らしくないってなによ!」
「はっはっは!! 姫様は無邪気に笑うのがかわいらしいですぞ」
まるで父親みたいに接してくるライオネルに、時間があればまたお母様と話してみよう……そう考えるアシュリー。
「そうだ姫様。せっかくここまで来たんだ。最後に手合わせといきませんか?」
自身の剣の柄を指しながら言ってくるライオネル。
「アシュリー様。こちらを」
間髪開けずに横からすっと剣を差し出してくるアリア。
「……もう。わかったわよ」
アリアから剣を受け取り嫌々構えをとるアシュリー。
ただその口元は、わずかに笑みを浮かべていた。
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