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第一章
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しおりを挟む「ふっ、あの顔」
俺はさっき会ったばかりのリアリム嬢が、きょとんとした顔をしていたのを思い出す。
公爵家のお茶会を辞した俺は、王宮の執務室へ向かう馬車に乗っていた。
「殿下、顔がにやついていますよ、顔」
同乗している側近のチャーリー・ロウが指摘するほど、どうやら表情に出ていたようだ。
「いいではないか、ようやく念願かなって招待することが出来たんだ。もう少しこの幸福感にひたっていたい。邪魔をするな。」
ついつい文句が出てしまう。
あの桃色の髪をふわりとさせ、水色の瞳を大きくさせてこちらを見つめていたリアリム。
あの真っ赤なサクランボのような唇を、ペロッと舐めたかった。
「でも殿下。大丈夫でしょうか? 今度のお茶会は、婚約者候補を集めたお茶会ですよ。既に宰相の方が候補者を選定し、声掛けを済ませたと聞いていますが。追加が可能でしょうかねぇ。」
「俺の婚約者なんだ、俺が招待したい人を招待して何が悪い。宰相なんかに婚約者を決められてはたまらん。俺は自分で選びたい」
「ハァ。まあ、それはそうでしょう。ミンストン伯爵家ですね、招待状を手配しておきます」
「ああ、よろしく頼む。ついでに花も用意しておいてくれ。あぁ、彼女の髪の色のようなピンクの花がいいな。リボンは空色にしてくれ」
「ハァ、花もですか? そんな特別扱いして、相手が期待したらどうするんですか?」
「期待させたいから、花を贈るのだ。それのどこが悪い?」
「ハァ、わかりました。ピンクの花も一緒に。って、ミンストン伯爵令嬢ですか、まぁ、中立の立場の家なので問題はなさそうですが。しかし殿下、その、リアリム嬢のどこが気に入ったのですか? 確かに外見は多少、派手でしたが、本人は控えめな性格のようですよ」
「彼女の名前を呼ぶな」
「は?」
「リアリムと名前を呼んでいいのは、私だけだ」
「殿下、いろいろと突っ込みたいのですが、ひっかかるのはそこですか?」
我ながら、既に独占欲でいっぱいなのだ。
ようやく、俺は王子として彼女に会うことができたのだ。
「殿下、浮かれすぎですよ。全く。これだから、恋愛童貞は」
「ん? 何か言ったか?」
「いえ、一人言です」
確かに俺は浮かれていた。彼女を婚約者とするためのお茶会に招くことが出来た喜びで、いっぱいになっていた。
まさか、この後に厄介な関係になるとは、この時は思いもしなかった。
彼女が王子様の俺を嫌っているとは、想像もできなかったのだ。
何故なら、俺達は既に、知り合ってから大分経っていたからだった。
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