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第二章
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「チャーリー様、あの、普段からお気遣いくださり、ありがとうございます」
簡単なステップを踏みながら、声をかける。
「いや、あれは、私の役割だから。気にしないで」
久しぶりに踊るワルツは、伯爵令嬢として幼い頃から叩き込まれている。ステップを間違えることはない。
「リアリム嬢、その、一つ伺いたいのだが」
「はい、なんでしょうか?」
「その、ユゥベール殿下のモデルをする時は、いつも、あの姿なのか?」
質問なんて何だろうかと思えば、私が絵のモデルをしている時の服装のことだった。
「はい、あの服装は私のお気に入りの冒険者スタイルなのですが、あまり理解されなくて。でも、ユゥベール殿下は面白いと言ってくださったので、あの姿で書いてもらっています」
「そうなのか、ずいぶんと斬新だから、その、先日は驚いてしまって」
「ふふっ、普通はびっくりしますよね、ユゥベール殿下は、そうした意外性がいい、なんて言っていましたよ」
王子様でも、ユウ君のことなら何を話していても楽しい。普段はひきこもり王子なんて言われているけど、転生前と同じように、今もユウ君はとっても頭がいいに違いない。
話していても、きちんと世情を追いかけている。それに絵ばかり描いているのは、自分が優秀と思われると、お兄さんであるウィルストン殿下と後継者争いになりかねない。それが嫌だと言っていた。
「リアリム嬢は、その、ユゥベール殿下と大変仲がよろしいかと、」
「えっと、それは、そうですが、恋愛ではありません。趣味が合うだけで、」
何と答えればいいのだろうか。転生した記憶があるといっても、簡単に信じてはもらえないだろう。何と言っても、ここにはない異世界の記憶だ。どう頑張っても、証明することが出来ない。
ただでさえ、アトリエに出入りしているのだ。恋愛関係にあると誤解されてもおかしくない。
かつ、私はウィルストン殿下の婚約者候補でもある。傍で見ているチャーリー様にしてみても、私は何をしているのか、と言いたいことだろう。
「では、ウィルストン殿下にも希望はあるのでしょうか、最近、ひどく落ち込んでいたので、てっきり」
「え? 落ち込んでいるのですか? 殿下が?」
いつも傍で仕えている人の言葉だから、本当に落ち込んでいるのだろう。でも、何故、
「えぇ、ウィルストン殿下は、先日、リアリム嬢と話した後からすっかり元気を失くしてしまって。なので私はてっきり、貴方が殿下に何か言われたのかと思っていたのですが、」
「そんな、そうでした、か」
曲が終わりに近づいてくる。
「あの、私、ウィルストン殿下の気持ちは聞いています。その上で、少し、待ってもらっているだけで、」
最後まで言い切ることなく、曲が終わりを告げる。二人でもう少し話をしたいけれど、チャーリー様も第一王子の側近と会って、非常に人気のある方だ。私一人と話しているわけにはいかない。
ふと、周囲がざわついていることに気がつく。
どこかから「あの方が」と、噂する声が聞こえる。
「リアリム嬢、少し見てきます。失礼」
ざわつく方へ足をむけたチャーリー様は、その向こうから人をかき分けてやってくる人をみて驚いた。
「リア! ここにいたのか!」
愛称で呼ぶその声は、ホールに響いて大勢の人が振り返る。
これまで夜会や舞踏会、いかなる公式行事にも顔をださなかったユゥベール第二王子、その人が現れたのだ。
「ユ! ユゥベール殿下! どうしたのですか?」
いつもはふわふわとしている蜂蜜色の髪を後ろに撫でつけ、黒の礼服をきちんと来たユウ君。優し気な濃いブラウンの瞳を輝かせて、私の方へ向かって歩いてくる。
普段、姿を表さない第二王子が現れただけでなく、その王子が第一王子の婚約者候補であるリアリムを愛称で呼んだ。そのことに衝撃を受けない者はいなかった。
「リア、きょうも可愛いね。あ、ピアス、つけたんだね、うん、いい感じだ」
「ユ、ユゥベール殿下。あの、ここではちょっと、」
ユウ君がピアスを見るために、私の耳を触ろうとする。その手の動きを止めるように、後ずさって距離をとる。
「あ、そっか。ゴメンゴメン、目立っているよね、僕。じゃ、ダンスしながら話そう」
そう言ってユウ君は私の手をとると、ダンスフロアに連れて行く。次の曲は、もう始まっていた。
「ユウ君、踊れるんだ、」
「リア、僕だって一応王子だからね、基本的なことは一通りできるよ」
軽やかなステップも間違えずに踊るけど、少し自分勝手な踊り方をしているユウ君と踊るのは、ちょっと難しかった。
「ユウ君、どうして夜会に来たの? いつもは、出席なんてしてなかったよね、」
「ははっ、そうだね。兄上の贈ったドレスを着たリアを視たかったのが一番だけど、ホラ、ここには攻略対象が勢ぞろいしているだろ、リアとチャーリーとか、リアとディリスとか。そっちもみたくってさ~」
「もうっ、いっつもその話なんだね、ユゥベール殿下として、今日はやることいっぱいあるでしょ」
「へっ? あぁ、デビュタント達と踊ること? そっかぁ、僕、王子だもんね、」
ちょっと嫌そうな、面倒くさそうな顔をしている。ユウ君は、極力王子としての責務を避けてきたのだ。
「今夜は! 少しは王子業もしなさいねっ、折角今夜のユウ君はカッコイイんだからっ」
少しふくれた顔で諭すように話すと、ユウ君は「わかったよ、リアに言われると弱いよなぁ~」とか、言っている。
私と踊った後、本当にユウ君はデビュタント達と一緒にいるウィルストン殿下の所へ向かった。
簡単なステップを踏みながら、声をかける。
「いや、あれは、私の役割だから。気にしないで」
久しぶりに踊るワルツは、伯爵令嬢として幼い頃から叩き込まれている。ステップを間違えることはない。
「リアリム嬢、その、一つ伺いたいのだが」
「はい、なんでしょうか?」
「その、ユゥベール殿下のモデルをする時は、いつも、あの姿なのか?」
質問なんて何だろうかと思えば、私が絵のモデルをしている時の服装のことだった。
「はい、あの服装は私のお気に入りの冒険者スタイルなのですが、あまり理解されなくて。でも、ユゥベール殿下は面白いと言ってくださったので、あの姿で書いてもらっています」
「そうなのか、ずいぶんと斬新だから、その、先日は驚いてしまって」
「ふふっ、普通はびっくりしますよね、ユゥベール殿下は、そうした意外性がいい、なんて言っていましたよ」
王子様でも、ユウ君のことなら何を話していても楽しい。普段はひきこもり王子なんて言われているけど、転生前と同じように、今もユウ君はとっても頭がいいに違いない。
話していても、きちんと世情を追いかけている。それに絵ばかり描いているのは、自分が優秀と思われると、お兄さんであるウィルストン殿下と後継者争いになりかねない。それが嫌だと言っていた。
「リアリム嬢は、その、ユゥベール殿下と大変仲がよろしいかと、」
「えっと、それは、そうですが、恋愛ではありません。趣味が合うだけで、」
何と答えればいいのだろうか。転生した記憶があるといっても、簡単に信じてはもらえないだろう。何と言っても、ここにはない異世界の記憶だ。どう頑張っても、証明することが出来ない。
ただでさえ、アトリエに出入りしているのだ。恋愛関係にあると誤解されてもおかしくない。
かつ、私はウィルストン殿下の婚約者候補でもある。傍で見ているチャーリー様にしてみても、私は何をしているのか、と言いたいことだろう。
「では、ウィルストン殿下にも希望はあるのでしょうか、最近、ひどく落ち込んでいたので、てっきり」
「え? 落ち込んでいるのですか? 殿下が?」
いつも傍で仕えている人の言葉だから、本当に落ち込んでいるのだろう。でも、何故、
「えぇ、ウィルストン殿下は、先日、リアリム嬢と話した後からすっかり元気を失くしてしまって。なので私はてっきり、貴方が殿下に何か言われたのかと思っていたのですが、」
「そんな、そうでした、か」
曲が終わりに近づいてくる。
「あの、私、ウィルストン殿下の気持ちは聞いています。その上で、少し、待ってもらっているだけで、」
最後まで言い切ることなく、曲が終わりを告げる。二人でもう少し話をしたいけれど、チャーリー様も第一王子の側近と会って、非常に人気のある方だ。私一人と話しているわけにはいかない。
ふと、周囲がざわついていることに気がつく。
どこかから「あの方が」と、噂する声が聞こえる。
「リアリム嬢、少し見てきます。失礼」
ざわつく方へ足をむけたチャーリー様は、その向こうから人をかき分けてやってくる人をみて驚いた。
「リア! ここにいたのか!」
愛称で呼ぶその声は、ホールに響いて大勢の人が振り返る。
これまで夜会や舞踏会、いかなる公式行事にも顔をださなかったユゥベール第二王子、その人が現れたのだ。
「ユ! ユゥベール殿下! どうしたのですか?」
いつもはふわふわとしている蜂蜜色の髪を後ろに撫でつけ、黒の礼服をきちんと来たユウ君。優し気な濃いブラウンの瞳を輝かせて、私の方へ向かって歩いてくる。
普段、姿を表さない第二王子が現れただけでなく、その王子が第一王子の婚約者候補であるリアリムを愛称で呼んだ。そのことに衝撃を受けない者はいなかった。
「リア、きょうも可愛いね。あ、ピアス、つけたんだね、うん、いい感じだ」
「ユ、ユゥベール殿下。あの、ここではちょっと、」
ユウ君がピアスを見るために、私の耳を触ろうとする。その手の動きを止めるように、後ずさって距離をとる。
「あ、そっか。ゴメンゴメン、目立っているよね、僕。じゃ、ダンスしながら話そう」
そう言ってユウ君は私の手をとると、ダンスフロアに連れて行く。次の曲は、もう始まっていた。
「ユウ君、踊れるんだ、」
「リア、僕だって一応王子だからね、基本的なことは一通りできるよ」
軽やかなステップも間違えずに踊るけど、少し自分勝手な踊り方をしているユウ君と踊るのは、ちょっと難しかった。
「ユウ君、どうして夜会に来たの? いつもは、出席なんてしてなかったよね、」
「ははっ、そうだね。兄上の贈ったドレスを着たリアを視たかったのが一番だけど、ホラ、ここには攻略対象が勢ぞろいしているだろ、リアとチャーリーとか、リアとディリスとか。そっちもみたくってさ~」
「もうっ、いっつもその話なんだね、ユゥベール殿下として、今日はやることいっぱいあるでしょ」
「へっ? あぁ、デビュタント達と踊ること? そっかぁ、僕、王子だもんね、」
ちょっと嫌そうな、面倒くさそうな顔をしている。ユウ君は、極力王子としての責務を避けてきたのだ。
「今夜は! 少しは王子業もしなさいねっ、折角今夜のユウ君はカッコイイんだからっ」
少しふくれた顔で諭すように話すと、ユウ君は「わかったよ、リアに言われると弱いよなぁ~」とか、言っている。
私と踊った後、本当にユウ君はデビュタント達と一緒にいるウィルストン殿下の所へ向かった。
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