婚約破棄はまだ早い?男装令嬢、でも乙女!それは密かな二重婚約 〜幼馴染の純情騎士も、腹黒な美形商人も、どっちも素敵で選べませんっ!~

季邑 えり

文字の大きさ
27 / 88
第二章

2-7

しおりを挟む

 地下牢のような所にドサッと乱暴におろされると、男は鍵をガチャリとかけた。

「ここで大人しくしているんだな」

 男はそう言うと黒装束の男と一緒に階段を上っていく。

「いたた、はぁ、思いっきり殴られたから、青痕になっているな、これ」

 これでも毎日鍛錬している身体だから、このくらいのことなら気を失うこともない。だけど痛いものは痛い。ううっ、と唸っていると後ろの方から「だ、大丈夫?」とか細い声が聞こえてきた。

「誰っ?」

 後ろを振り返ると、そこにはやせ細った女性が三人、肩を寄せ合わせて座っていた。薄暗い中良く見ると、他にも牢があり女性達が押し込められている。総勢、二十人程度か。

「わ、私たちも連れてこられて……」

 と一人の女性が声を上げた。どうやら、彼女達も攫われてここに連れてこられたようだ。私と違って身代金目的ではなさそうだ。

 三人とも手足を縛られている様子はない。どうやら犯人たちは、この地下牢に入れておけば逃げ出すことなど出来ないと思っているようだ。

 担がれている間に見た様子だと、ここは使われていない貴族の屋敷のようだ。

「すまないが、ちょっと手伝って欲しい」

 私は三人の中でも一番元気のありそうな女性に声をかけると、縛られていた縄を解く手伝いをお願いする。これさえ解ければ何とかなる。

 しゅるり、と最後の縄が足から外れ手や足首をぶらぶらさせるが、特に問題はない。

「よしっ、これで大丈夫だ」

 そう独り言を言うと、牢の中の彼女達も安心したのか、ほっ、と息を吐いた。

「私たち、どうやら外国に売るために攫われたらしいの」

 縄を解くことを手伝ってくれた彼女は小さな声で教えてくれた。どうやら、食事を運んでくる男が漏らしたようだ。そして迎えの一団が明日にも到着するとのことだった。

「明日、か」

 ここまでの情報を合わせると、多分男たちは人身売買の下請けなのだろう。黒装束の男が一番強い男で、他は街のゴロツキだ。私を誘拐することで身代金をとり、その金とここにいる女性達を売った金で逃走するつもりだろうか。

 そうなると明日の取引まで大人しくして、迎えが来たところで一網打尽にすれば犯罪組織を捕まえることができるかもしれない。

 今、この屋敷で一番危険なのはあの黒装束の男だろう。隙のない動きをしていた。私は作戦を考えつつも太ももに張り付けていた道具袋から針金を取り出し、早速鍵穴に差し込む。カチャカチャと動かせばカチャン、と簡単に開錠が出来た。


 *****

(Sideレーヴァン)

「今、用意できるのはこれだけだ。明日には全額用意する」

 俺とクレイグ、公爵閣下の三人で指定された場所に行くと、そこには気の弱そうな男が一人いるだけであった。いや、気配を消しているが外にも一人いる。

 郊外にある小さな屋敷に一億ルータルの現金を持って行ったが、予想通りそこにはクローディアの姿はなかった。

「明日であれば午前中に用意してほしい、とのことです。そうでなければお嬢さまの命はないと思え、とのことです」

 この目の前の男も脅されているようだ。脂汗をかきながら、俺たちの方を震えながら見ている。

「ところで、本当にクローディアを攫ったのはお前達なのか、その証拠はあるのか?」

 一億もの大金を渡していいのか、その前に証拠を見せろと閣下は男に問いかけた。

「はい、この髪飾りを見てください」

「これは……」

 閣下は見覚えのない髪飾りを手にしている。俺はうっすらとそのブルーラベンダー色の髪飾りを思い出した。それは一緒に誘拐されているルフィナ嬢が、以前クローディアの瞳の色だと言っていた髪飾りだった。

「閣下、それはルフィナ嬢のものですね」

 俺はボソリと閣下の耳に入れた。二人は一緒に攫われているから、ある意味クローディアも一緒と思われる。

「わかった。確かに娘はそちらにいるようだな」

「おわかり頂けましたでしょうか」

 男は震えながらも、こちらが納得したことに安心したようだ。そしてクレイグがボソリ、と閣下に言葉をかけた。どうやら、残りの資金のことであろう。閣下はうむ、と頷いて震える男に言葉をかけた。

「では、残りは明日の朝十刻までに用意しよう。その代わり、クローディアの無事が確認できなければ残りの金額は渡さない」

「はっ、はぃぃ。そ、そう、伝えておきます」

 ルートザシャ公爵閣下の怒気のある声に、さらに男は震えたが今できるのはここまでだ。

 俺たちは屋敷を出ると、閣下の執務室へと急いで戻るのだった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』

鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。 そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。 お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。 挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに… 意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。 よろしくお願いしますm(__)m

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...