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友達〜両片思い
夏休みの予定
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期末試験も終わり、教室の中にはどこかのんびりした空気が漂っている。すっかり夢の世界に旅立っているやつすらいる。
試験結果が出た直後は『赤点が~』なんて騒いでいるのもいたけど、俺と栞には無縁な話だ。精々夏休みに補習を頑張ってもらいたい。
俺は栞に付きっきりで教えてもらっていた立場なので、あまり偉そうなことを言えないけれど、そうでなくても赤点なんて取ったことはないのだから。
自由とは自分で勝ち取る物だ。
と、授業中にも関わらず余計なことを考えてしまうくらいには俺も気が緩んでいる。
おかげで眠気まで襲ってくる始末。
どうにか板書をノートには書き写しているものの、古文のおじいちゃん先生のゆったりとした話し方で欠伸が出そうになる。
このまま寝ちゃってもいいかな……。
誘惑に負けそうになったところで、少し気になって黒板から目を離し、俺の右斜め前、初めてできた友人へと視線を向ける。
前が見えているのか心配になるほど長い前髪の女の子。
彼女は眠気など微塵も感じさせない様子で、背筋を伸ばし先生の説明を真面目に聞きながらノートを取っている。
その姿を見た途端、彼女に追いつきたい、情けないところは見せたくない、そんな思いが沸き起こる。
なにせ前回の勝負で俺は負けてしまったのだ。こんなところで寝ていては差が広がってしまう。ただ授業を受けているだけの姿でさえ栞は俺に力をくれる。
きっとこういうところも好きになった理由なんだろうなぁ。
俺は頭を振って眠気を払い授業に集中するのだった。
***
放課後の図書室、相変わらず俺達はそこにいた。
「ねぇ、涼。午後の授業中、私のこと見てたでしょ?」
「え? 見てないけど……?」
「うそ、視線感じたもん」
「いや、ちらっとは見たけど」
「ほら、見てた」
「真面目に授業受けてるなって思っただけだから」
好きだから見てましたなんて、とてもじゃないけど言えないわけで。
「涼は午後の授業、眠そうだったもんね?」
「なに? 栞も俺のこと見てたの?」
「ちらっとね。眠そうな顔、可愛かったよ?」
「男に可愛いとかバカにしてるようにしか聞こえないんだけど?」
「いいじゃない。言っとくけど褒め言葉だよ?」
「まぁそれなら……。ってあんまり良くないんだけど……」
できることなら栞には格好良いと思ってほしい。そのためにも色々頑張らないと……。
「そんなことよりさ」
「そんなことって……、栞が始めた話でしょうに」
急な話題転換に戸惑う。栞と話をしているとよくあちこち話が飛ぶことがある。女の子ってそういうものなのかね? 女の子どころか男友達もいなかったからよくわからないけど。
「細かいことはいいの。それで、夏休みって涼は何か予定ある?」
ぼっちの俺にそんなこと聞くかね? 毎年家でダラダラしてますが。
「特にないんじゃないかな? あ、でも毎年お盆に父さんの実家に帰省してるかな」
「ならそれ以外は暇ってことだよね?」
「まぁ、そうだね」
「じゃあさ……一緒に宿題とかやらない?」
願ってもないことだ。栞と一緒なら躓いても助けてもらえるし、それに夏休み中に栞に会えないのは寂しいと思ってたところだから。
「いいよ。俺も助かるし。一緒に図書館にでも行く?」
「それでもいいんだけど……、涼の家じゃだめかな……?」
「え? 俺ん家?」
「だって図書館じゃ話もできないし、誰かに会ったりしたら嫌だもん」
「それはそうだけど……、いいの?」
「いいのって、なにが?」
聞き返されても困るんだが……。
家ってことはプライベートな空間に入るってことで、親にも会ったりするかもしれないわけで……。
「あっ、もしかして……、なんかいかがわしい事考えてる?」
自分の身体をギュッと抱き締めて、俺から距離を取る栞。
いや、待って! なんでそうなるの? もしかして俺そういうやつだって思われてる?
「違うって! 親とかいるけどいいのって話だよ!」
「あぁ、そういうこと。じゃあしっかりご挨拶しなきゃね」
「まじか……」
家に女の子なんて連れてったら母さんに何言われるか不安なんだけど……。
「こういうのは早いほうがいいでしょ? そのほうがその後気兼ねなく遊べるじゃない」
「確かに……」
「あ、涼も私の親に挨拶してもらうから」
「まじか……」
女の子の親に挨拶とかどうしたらいいんだ? 下手したら栞のお父さんに殺されないかな……?
「そんなに心配しなくても平気だよ。うちの両親優しいから」
「はぁ……。わかったよ」
「本当?! やった! じゃあ最初は涼の家ってことで、予定はまた改めて決めましょ」
俺が承諾すると栞は顔を綻ばせる。
こんなに喜ばれちゃねぇ。ダメなんて言えないよな。
上機嫌な栞を見て思わず苦笑が漏れてしまう。
その後はいつも通り授業の予習復習をしたり、他愛のない話をしたりして過ごす。下校のチャイムが鳴るまでそうするのがいつもの流れになっていた。
「あ、もうこんな時間なんだ。そろそろ帰ろっか」
「そうだね。それじゃいつも通りに」
チャイムが鳴ると二人で昇降口に向かう。
「俺先に行って待ってるから」
「うん。置いて帰っちゃダメだからね?」
「わかってるって」
一旦そこで別れ、駅で落ち合って同じ電車に乗る。
まるで皆から隠れて付き合うカップルのようでちょっとこそばゆい。でもまだ友達だ。それでもこの時間は俺の中でかけがえのないものになっている。
最近では日も長くなって気温もどんどん上がっていく。季節は夏に向かっている。夏なんて暑いだけで嫌いだったのだけど、今年は違う。
隣でニコニコ笑っている栞のお陰で。
大事にしなきゃな、自然とそう思った。
試験結果が出た直後は『赤点が~』なんて騒いでいるのもいたけど、俺と栞には無縁な話だ。精々夏休みに補習を頑張ってもらいたい。
俺は栞に付きっきりで教えてもらっていた立場なので、あまり偉そうなことを言えないけれど、そうでなくても赤点なんて取ったことはないのだから。
自由とは自分で勝ち取る物だ。
と、授業中にも関わらず余計なことを考えてしまうくらいには俺も気が緩んでいる。
おかげで眠気まで襲ってくる始末。
どうにか板書をノートには書き写しているものの、古文のおじいちゃん先生のゆったりとした話し方で欠伸が出そうになる。
このまま寝ちゃってもいいかな……。
誘惑に負けそうになったところで、少し気になって黒板から目を離し、俺の右斜め前、初めてできた友人へと視線を向ける。
前が見えているのか心配になるほど長い前髪の女の子。
彼女は眠気など微塵も感じさせない様子で、背筋を伸ばし先生の説明を真面目に聞きながらノートを取っている。
その姿を見た途端、彼女に追いつきたい、情けないところは見せたくない、そんな思いが沸き起こる。
なにせ前回の勝負で俺は負けてしまったのだ。こんなところで寝ていては差が広がってしまう。ただ授業を受けているだけの姿でさえ栞は俺に力をくれる。
きっとこういうところも好きになった理由なんだろうなぁ。
俺は頭を振って眠気を払い授業に集中するのだった。
***
放課後の図書室、相変わらず俺達はそこにいた。
「ねぇ、涼。午後の授業中、私のこと見てたでしょ?」
「え? 見てないけど……?」
「うそ、視線感じたもん」
「いや、ちらっとは見たけど」
「ほら、見てた」
「真面目に授業受けてるなって思っただけだから」
好きだから見てましたなんて、とてもじゃないけど言えないわけで。
「涼は午後の授業、眠そうだったもんね?」
「なに? 栞も俺のこと見てたの?」
「ちらっとね。眠そうな顔、可愛かったよ?」
「男に可愛いとかバカにしてるようにしか聞こえないんだけど?」
「いいじゃない。言っとくけど褒め言葉だよ?」
「まぁそれなら……。ってあんまり良くないんだけど……」
できることなら栞には格好良いと思ってほしい。そのためにも色々頑張らないと……。
「そんなことよりさ」
「そんなことって……、栞が始めた話でしょうに」
急な話題転換に戸惑う。栞と話をしているとよくあちこち話が飛ぶことがある。女の子ってそういうものなのかね? 女の子どころか男友達もいなかったからよくわからないけど。
「細かいことはいいの。それで、夏休みって涼は何か予定ある?」
ぼっちの俺にそんなこと聞くかね? 毎年家でダラダラしてますが。
「特にないんじゃないかな? あ、でも毎年お盆に父さんの実家に帰省してるかな」
「ならそれ以外は暇ってことだよね?」
「まぁ、そうだね」
「じゃあさ……一緒に宿題とかやらない?」
願ってもないことだ。栞と一緒なら躓いても助けてもらえるし、それに夏休み中に栞に会えないのは寂しいと思ってたところだから。
「いいよ。俺も助かるし。一緒に図書館にでも行く?」
「それでもいいんだけど……、涼の家じゃだめかな……?」
「え? 俺ん家?」
「だって図書館じゃ話もできないし、誰かに会ったりしたら嫌だもん」
「それはそうだけど……、いいの?」
「いいのって、なにが?」
聞き返されても困るんだが……。
家ってことはプライベートな空間に入るってことで、親にも会ったりするかもしれないわけで……。
「あっ、もしかして……、なんかいかがわしい事考えてる?」
自分の身体をギュッと抱き締めて、俺から距離を取る栞。
いや、待って! なんでそうなるの? もしかして俺そういうやつだって思われてる?
「違うって! 親とかいるけどいいのって話だよ!」
「あぁ、そういうこと。じゃあしっかりご挨拶しなきゃね」
「まじか……」
家に女の子なんて連れてったら母さんに何言われるか不安なんだけど……。
「こういうのは早いほうがいいでしょ? そのほうがその後気兼ねなく遊べるじゃない」
「確かに……」
「あ、涼も私の親に挨拶してもらうから」
「まじか……」
女の子の親に挨拶とかどうしたらいいんだ? 下手したら栞のお父さんに殺されないかな……?
「そんなに心配しなくても平気だよ。うちの両親優しいから」
「はぁ……。わかったよ」
「本当?! やった! じゃあ最初は涼の家ってことで、予定はまた改めて決めましょ」
俺が承諾すると栞は顔を綻ばせる。
こんなに喜ばれちゃねぇ。ダメなんて言えないよな。
上機嫌な栞を見て思わず苦笑が漏れてしまう。
その後はいつも通り授業の予習復習をしたり、他愛のない話をしたりして過ごす。下校のチャイムが鳴るまでそうするのがいつもの流れになっていた。
「あ、もうこんな時間なんだ。そろそろ帰ろっか」
「そうだね。それじゃいつも通りに」
チャイムが鳴ると二人で昇降口に向かう。
「俺先に行って待ってるから」
「うん。置いて帰っちゃダメだからね?」
「わかってるって」
一旦そこで別れ、駅で落ち合って同じ電車に乗る。
まるで皆から隠れて付き合うカップルのようでちょっとこそばゆい。でもまだ友達だ。それでもこの時間は俺の中でかけがえのないものになっている。
最近では日も長くなって気温もどんどん上がっていく。季節は夏に向かっている。夏なんて暑いだけで嫌いだったのだけど、今年は違う。
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