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魔法のお店がやってきた!
魔法のお店がやってきた!②
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学校の外に出たらチャイムが鳴った。
夕方四時を知らせるチャイム。帰りの会も終わって、少ししたらクラブ活動が始まる。
僕は急いでジャングルジムに行った。置き忘れた竹箒を取りに行くためだ。
高谷君たちが拾って遊んでたから、こわれてるかもって不安だったけど、竹箒はきれいなまま地面に転がってた。
よかった。この竹箒は、僕が魔法使いになるために必要なものだから、こわれてなくて安心した。
竹箒を拾って、僕は家に帰ることにした。僕は帰宅部ってやつだ。本当なら、五年生になったらクラブ活動をしなきゃいけないんだけど、僕はすっかりサボってしまってた。僕が入ってるサッカー部には高谷君たち三人がいるし。
なにより、サッカーよりもやらなきゃいけないことを見つけたから。
学校から、だいたい十五分くらい歩いたかな。僕は家に帰ってきた。家といってもアパートなんだけどね。その一階の、一番はしっこの家が僕の家。
お父さんが仕事から帰ってくるのは、いつも夜の九時。僕はランドセルにしまっていたカギを出して、ドアを開ける。
「ただいまー」
だれもいない部屋に向かって、僕は言った。
お母さんが生きてたころは、お母さんが「おかえり」って言ってくれてたけど……今は、だれもいない。
僕は宿題を後回しにして、テーブルに本と画用紙を置いた。今日の昼休憩に、図書館で借りた魔法の本。そこには、なくしたものを取りもどす魔法が書かれていた。
それに必要なのが、大きな紙と墨汁。そして、帰り道で拾ったカラスの羽根。
羽ペンで魔法陣を描いて、なくしたものの名前を唱えるんだ。そしたら、なくしたものがもどってくるんだって!
僕は、すずりに墨汁を入れて、羽根の先っぽにちょんとつける。それで画用紙に魔法陣を描いてみる。
ううん……なかなかうまく描けない。ガサガサになっちゃうな。
「よし、完成!」
かなり時間をかけて、魔法陣が完成した!
僕は両手を結んで、魔法陣にお願いする。
「お母さんが生き返りますように。
お母さんが生き返りますように。
お母さんが生き返りますように!」
目を閉じて、じっと待つ。
カチカチと、時計の音が聞こえる。
そのカチカチが六十回鳴るまで待った。でも、部屋の中は静かなまま。
魔法はまた失敗。
この前は「会いたい人に会える魔法」をやってみたし、その前は「なんでも一つだけ願いが叶う魔法」もやってみた。でも、なかなか成功しない。
お父さんに手伝ってほしいとお願いしたこともある。けど、お父さんは日本には魔法使いなんていないんだって言ってた。だから、魔法なんて簡単に使えないんだってこともわかってる。
でも、こんなに失敗ばかりだと、がんばってるのに泣きたくなってくるよ。
僕が魔法陣を片付けてると、僕のスマホから音が鳴った。LINEのメッセージだ。
僕はスマホの画面を見る。お父さんから、今日は遅くなるってメッセージが来てた。急な残業だって。夜は先にねてなさいだって。
お父さん、今日も帰って来れないんだ……
お母さんが死んじゃって、お父さんは忙しくなった。仕事をがんばってくれてるのはわかってるけど……やっぱりさびしい……
僕は、お父さんからもらったおこづかいをポケットに入れた。コンビニにおかし買いに行こう。
家を出て、カギをかける。もう秋だから、外は少しだけ暗くて、風も冷たかった。ジャンパーの前を閉じて、僕はコンビニに向かう。
コンビニは家から少しだけはなれてる。家を出て、細い道を歩いて、コンビニに行った。つもりだった。
大きなマンションと、和菓子屋さんの間。そこには牛乳の看板のコンビニがあったはず。でも、今日はその場所にちがうお店が建っていた。
ちょっとだけ古くさいような見た目。RPGで出てきそうな、洋風のお店。窓から中をのぞいて、僕はびっくりした。
雑貨屋さんだった。でも、ただの雑貨屋さんじゃない。
まるで、星をくだいて作ったみたいな、キラキラした雑貨がいっぱい。
砂の代わりに宝石が入った砂時計とか、緑の宝石をうめ込んだスプーンとか、虹色の鳥の羽根でかざられた鏡とか。
魔法のアイテムみたいなのが、お店の中にいっぱい並べられていたんだ。
僕は、わくわくしながらお店に入った。
おかしを買いに来たはずなのに、そんなのどうでもよくなってた。
中に入ると、まぶしいくらいにキラキラしてた。まぶしすぎて、目の奥が痛いくらい。思わずシパシパまばたきする。
雑貨がたくさん並んでいて、見かけより狭いお店だった。僕は全部の雑貨をよく見ようとして、その場でくるりと回った。
天井のシャンデリアは、電球もロウソクもなくて、オレンジの宝石がつけられてる。多分それからオレンジ色の光が出ているんだろうけど、どうやって光を出してるんだろう。
虹色で星形の宝石がつまった宝箱は、シャンデリアから降るオレンジ色の光を、白や青色に変えてはね返し、僕の目をくらませる。
風もないのに、ガラスでできた(ように見える)ドリームキャッチャーが、カチャカチャ音を立ててゆれた。
他にも見たことないようなキレイなものがいっぱいだ。きっと、これを作ったのは魔法使いなんだろうな。
「いらっしゃい」
急に声が聞こえて、僕はびっくりして肩がビクッとはねた。こわごわ振り返る。
ここはお店だから当たり前なんだけど、お店のレジカウンターに店員さんがいた。
女の人だ。お母さんより若くて、ちょっとあやしい雰囲気の人。竜のかざりがついた杖を、ハンカチでみがいていた。
髪は真っ黒でとっても長い。後ろはもちろん、前髪も長くて、片方の目をかくしてる。女の人の目は本当に真っ黒で、暗やみみたいな色。
着ているのは、黒いワンピースと、黒い三角ぼうし。見るからに魔女だ。
「なにか、お探しかな?」
魔女さんはニヤリと笑ってきいてくる。
僕は、ほしいものを探しに来たわけじゃなくて、たまたまお店があったから入っただけ。だから、なんて返事したらいいかわからなくて、首をかしげて考え込んでしまった。
夕方四時を知らせるチャイム。帰りの会も終わって、少ししたらクラブ活動が始まる。
僕は急いでジャングルジムに行った。置き忘れた竹箒を取りに行くためだ。
高谷君たちが拾って遊んでたから、こわれてるかもって不安だったけど、竹箒はきれいなまま地面に転がってた。
よかった。この竹箒は、僕が魔法使いになるために必要なものだから、こわれてなくて安心した。
竹箒を拾って、僕は家に帰ることにした。僕は帰宅部ってやつだ。本当なら、五年生になったらクラブ活動をしなきゃいけないんだけど、僕はすっかりサボってしまってた。僕が入ってるサッカー部には高谷君たち三人がいるし。
なにより、サッカーよりもやらなきゃいけないことを見つけたから。
学校から、だいたい十五分くらい歩いたかな。僕は家に帰ってきた。家といってもアパートなんだけどね。その一階の、一番はしっこの家が僕の家。
お父さんが仕事から帰ってくるのは、いつも夜の九時。僕はランドセルにしまっていたカギを出して、ドアを開ける。
「ただいまー」
だれもいない部屋に向かって、僕は言った。
お母さんが生きてたころは、お母さんが「おかえり」って言ってくれてたけど……今は、だれもいない。
僕は宿題を後回しにして、テーブルに本と画用紙を置いた。今日の昼休憩に、図書館で借りた魔法の本。そこには、なくしたものを取りもどす魔法が書かれていた。
それに必要なのが、大きな紙と墨汁。そして、帰り道で拾ったカラスの羽根。
羽ペンで魔法陣を描いて、なくしたものの名前を唱えるんだ。そしたら、なくしたものがもどってくるんだって!
僕は、すずりに墨汁を入れて、羽根の先っぽにちょんとつける。それで画用紙に魔法陣を描いてみる。
ううん……なかなかうまく描けない。ガサガサになっちゃうな。
「よし、完成!」
かなり時間をかけて、魔法陣が完成した!
僕は両手を結んで、魔法陣にお願いする。
「お母さんが生き返りますように。
お母さんが生き返りますように。
お母さんが生き返りますように!」
目を閉じて、じっと待つ。
カチカチと、時計の音が聞こえる。
そのカチカチが六十回鳴るまで待った。でも、部屋の中は静かなまま。
魔法はまた失敗。
この前は「会いたい人に会える魔法」をやってみたし、その前は「なんでも一つだけ願いが叶う魔法」もやってみた。でも、なかなか成功しない。
お父さんに手伝ってほしいとお願いしたこともある。けど、お父さんは日本には魔法使いなんていないんだって言ってた。だから、魔法なんて簡単に使えないんだってこともわかってる。
でも、こんなに失敗ばかりだと、がんばってるのに泣きたくなってくるよ。
僕が魔法陣を片付けてると、僕のスマホから音が鳴った。LINEのメッセージだ。
僕はスマホの画面を見る。お父さんから、今日は遅くなるってメッセージが来てた。急な残業だって。夜は先にねてなさいだって。
お父さん、今日も帰って来れないんだ……
お母さんが死んじゃって、お父さんは忙しくなった。仕事をがんばってくれてるのはわかってるけど……やっぱりさびしい……
僕は、お父さんからもらったおこづかいをポケットに入れた。コンビニにおかし買いに行こう。
家を出て、カギをかける。もう秋だから、外は少しだけ暗くて、風も冷たかった。ジャンパーの前を閉じて、僕はコンビニに向かう。
コンビニは家から少しだけはなれてる。家を出て、細い道を歩いて、コンビニに行った。つもりだった。
大きなマンションと、和菓子屋さんの間。そこには牛乳の看板のコンビニがあったはず。でも、今日はその場所にちがうお店が建っていた。
ちょっとだけ古くさいような見た目。RPGで出てきそうな、洋風のお店。窓から中をのぞいて、僕はびっくりした。
雑貨屋さんだった。でも、ただの雑貨屋さんじゃない。
まるで、星をくだいて作ったみたいな、キラキラした雑貨がいっぱい。
砂の代わりに宝石が入った砂時計とか、緑の宝石をうめ込んだスプーンとか、虹色の鳥の羽根でかざられた鏡とか。
魔法のアイテムみたいなのが、お店の中にいっぱい並べられていたんだ。
僕は、わくわくしながらお店に入った。
おかしを買いに来たはずなのに、そんなのどうでもよくなってた。
中に入ると、まぶしいくらいにキラキラしてた。まぶしすぎて、目の奥が痛いくらい。思わずシパシパまばたきする。
雑貨がたくさん並んでいて、見かけより狭いお店だった。僕は全部の雑貨をよく見ようとして、その場でくるりと回った。
天井のシャンデリアは、電球もロウソクもなくて、オレンジの宝石がつけられてる。多分それからオレンジ色の光が出ているんだろうけど、どうやって光を出してるんだろう。
虹色で星形の宝石がつまった宝箱は、シャンデリアから降るオレンジ色の光を、白や青色に変えてはね返し、僕の目をくらませる。
風もないのに、ガラスでできた(ように見える)ドリームキャッチャーが、カチャカチャ音を立ててゆれた。
他にも見たことないようなキレイなものがいっぱいだ。きっと、これを作ったのは魔法使いなんだろうな。
「いらっしゃい」
急に声が聞こえて、僕はびっくりして肩がビクッとはねた。こわごわ振り返る。
ここはお店だから当たり前なんだけど、お店のレジカウンターに店員さんがいた。
女の人だ。お母さんより若くて、ちょっとあやしい雰囲気の人。竜のかざりがついた杖を、ハンカチでみがいていた。
髪は真っ黒でとっても長い。後ろはもちろん、前髪も長くて、片方の目をかくしてる。女の人の目は本当に真っ黒で、暗やみみたいな色。
着ているのは、黒いワンピースと、黒い三角ぼうし。見るからに魔女だ。
「なにか、お探しかな?」
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