23 / 126
~番外編~
『HALLOWEEN PARTY』後編
しおりを挟むあれから。
最初に声を掛けてくれたヴァンパイア・ガールのお二人と正宗さんのスリーショットを撮らせてもらったり。
正宗さんが、私とヴァンパイア・ガールのお二人のスリーショットを撮って下さったり。(お二人が両脇に並んでまさに両手に花状態でうっはー! でした!! しかも両頬にお二人がちゅーする仕草をしてくれて!)
いやあ、楽しいなこのイベント!!
「ありがとうございました! ベストカップル、お二人に投票させていただきますね!」
別れ際、ヴァンパイア・ガールのお二人が言った言葉。
ベストカップル? 投票……?
首を傾げていると、幸村先生が「あ、そーだった」と説明して下さいました。
「今日のイベントではねー、『ベスト・ハロウィン賞』と『ベスト・カップル賞』をゲストの投票で決めるんだよー。『ベスト・ハロウィン賞』は会場で一番良いコスプレだと思った人を一人。『ベスト・カップル賞』は一番良いコスプレのカップルを一組選ぶんだ。バスケットに番号が振られてるでしょ? それが、投票の番号ってわけ。あ、投票ブースはあっちね」
幸村先生が指差す先には、赤いボックスの置かれた長机が一つ。
そこに置かれている紙に番号を書いて、ボックスに入れるんだな。なるほどー。
『ベスト・ハロウィン賞』に、『ベスト・カップル賞』かあ……
あ、ベスト・カップルといえば……
「幸村先生、今日は朧さんはご一緒じゃないんですか?」
「ぎくう!!」
え!?
なんですかそのあからさまな「ぎくう!!」って。
「聞いてよちーちゃああああんん!! 朧がさー!! 俺の用意した衣装着たくないって言い出してさああ!!」
「は、はあ……」
その衣装をめぐって喧嘩になったんだそうだ。
一体どんな衣装を用意したんだろう……?
「ちなみに、どんな衣装を?」
「お姫様」
「……ぶふっ」
ワインを飲んでいた正宗さんが噴いた。
ああお口から滴る赤いワインが血のようで素敵です!! って。
あああハンカチ。ハンカチー!!
「ありがとうございます、千鶴さん。幸村……お前一体何を考えてるんだ」
「ええー!! だって超似合うと思ったんだよ!!」
た、確かに超似合いそうですが……
朧さん、絶対に!! 着ないでしょうねえ……
「ううー、本当は朧と二人で『ベスト・カップル賞』狙おうと思ってたんだけど……絶対に来てくれないよアイツ……」
お姫様な朧さんに合わせて、当初は王子の衣装を用意していたという幸村先生。
「ロンリーな俺には人の命を狩る死神がお似合いなのさ……というわけで、いちゃこらするカップルの命ァとったるぞー!!」
突然カマを振り上げる幸村先生。
ちょ!! やけっぱちだからって、悪ノリが過ぎますよ!!
やめっ……
「お前ほんっとーに、馬鹿だよなあ……」
え……!?
「「え!?」」
振り上げられたカマの柄を握るのは、眉をしかめて幸村先生を睨む正宗さんでもなく。
もちろん、ぽかんと口を開ける私でもなく。
「ろ……朧……?」
「なんださっきの台詞。どっかの鉄砲玉かっつーの」
真っ青な軍服風の衣装を纏う王子様……!!
いやいや!! お、王子様ルックの……朧さん。
かっ!! かっこいいいいい!!
なにこの美王子!! いやああ美形に王子ルックって……!! 最強すぎる!!
というかですね……
死神と王子様ってかなり意外な組み合わせだけど……
萌えるな!!
妄想が……妄想が止まらないよおおお!!!
* * *
その日は、この国の第三王子の誕生日だった。
城では盛大な誕生祝いの宴が催されている。
(生まれた日に死ぬなんて、可哀そうな奴だなあ……)
そう同情しながらも、これも仕事だ仕方がないと、死神は城のバルコニーに降り立つ。
そう。今夜は第三王子の生まれた日。
そして、彼が命の終わりを迎える日、でもある。
死神は第三王子の魂を冥府に送るために使わされた。
人の魂を糧とする悪魔らからその魂を守り、導くために。
「ん……あれ?」
死神はひっそりと、王子の私室に入りこんだ。
ここで、宴から帰ってくる王子を待って、その魂を狩るために。
だがその計画に反して、宴の主役であるはずの第三王子が……
「どうして……」
彼は正装姿のまま、寝台に横たわっていた。
死神はゆっくりと、王子に近付く。
「…………」
はっと、死神は目を見張った。いや、目を奪われた。
寝台の上に横たわる王子のその、美しい顔に。
(わわ……こいつ……本当に人間!?)
天界の天使のように美しく、魔界の淫魔のような色気さえ感じさせるその美貌。
死神は仕事も忘れて、王子に見入った。
すると……
「……!!」
けぶるような睫毛が震え、ゆっくりと……
王子が目覚める。
そして、呆けたように自分を見つめる死神を見て、
「俺の命をとりにきたのか? 死神」
と。王子はゆっくりと、死神に向かって手を伸ばした。
王子の手が、死神の頬に触れる。
その冷たい感触に、王子は目を細めて言った。
「冷たいな、お前。なあ、俺が……」
温めてやろうか? と。
囁かれたその言葉と絡められた腕に、死神はもはや仕事のことなどすっかり忘れて。
溺れていった。
* * *
なーんてね!!
なーんてね!!
死神は王子様に誘惑されちゃって朝になって「アッれー?」ってなるんですよねわかります!!
王子様はあの手この手で死神の仕事させる気をなくして自分の命を守ってしたり顔してればいいと思うんですよ!!! あっ、万が一冥府に連れていかれても……
朧さんなら冥府の神様だって誘惑できると思うんですよ!! 死神×王子様で冥府の神様が当て馬で……とか!! 萌える!! 滾る!!
いやああ超楽しい!!
ハロウィン、超楽しい~!!!
かくして。
そんなこんなで妄想イパーイでうはー!! なハロウィンパーティーは。
幸村先生の王子様衣装を着て遅れて参戦した朧さんの美! 王子様がぶっちぎりの人気を誇り。見事『ベスト・ハロウィン賞』を受賞されました。
いやあ……朧さんを見る女性客さん(そして一部の男性客さん)達の目、めっちゃうっとりしてたもんなあ……
ちなみに二位は正宗さんのヴァンパイアでした!!
そして……ですね。
なんか申し訳ないというか恐縮というか有難いというか……なことに。
『ベスト・カップル賞』を、正宗さんと私が……受賞しましたァ!!
いいのか!? 本当に良いのか!?
むしろ私的には幸村先生と朧さんがベストカポーなんですけど!?
恐縮しきり、正宗さんと二人で受け取った『ベスト・カップル賞』の賞品。
有名ホテルの豪華ディナー券でした。
嬉しいいいいい!!! 豪華ディナー!! 豪華ディナー!!!
あ、ちなみに朧さんが獲得した『ベスト・ハロウィン賞』の賞品は、高級ギリシャワインの詰め合わせ&それに合うソーセージの詰め合わせ、だったらしく。
朧さんは上機嫌で(ギリシャワインがお好きらしい)その重たい袋を幸村先生に持たせていました。
「いやあ、楽しかったですねえ」
自宅に帰って。衣装を脱いで。
お風呂に入ってさっぱりして、今はベッドの上でまったりごろごろ中です。
コスプレ、ちょっと恥ずかしかったけど楽しかったし!
正宗さんや幸村先生。朧さんや他のお客さん達のコスプレも、眼福だったし!
萌で胸熱な写真もいっぱい撮れたし!
会場で出されていたハロウィン料理やお酒もとっても美味しかったし!
素敵な商品も貰えたし。
「こんな風にハロウィンを祝ったのは初めてです」
「私も。また来年も、行きたいですねえ」
来年は、どんなコスプレをしてもらおうかな……
正宗さんならどんなコスプレだって似合いそうだけど。
「そうだ、千鶴さん」
ん?
隣に寝そべる正宗さんが、私の顔を見つめて低く、囁いた。
「トリック・オア・トリート」
「えっ?」
「……って、ハロウィンでは言うんでしょう? トリック・オア・トリート」
そ、そうですその通りですでもお菓子っ!!
会場でもらったハロウィンお菓子は一階に(今後の私のおやつ用に)置いてあって今ここには……っ
あわあわと慌てる私に、正宗さんは楽しそうに笑みを深めて。
「お菓子が無いので、悪戯しますよ?」
そう、言って。
妄想の中でヴァンパイアの正宗さんに噛みつかれたのと同じ、場所に……
「ひあっ」
あ、甘噛みされましたああああ!!
な、なんというデジャブ!!
って、そんなこと考えてる場合じゃなくてこれってやっぱり……
「千鶴さん……」
「……ぁっ……」
おっ、美味しくいただかれちゃうコースですよねえええ!!!???
そんな、ハロウィンにはちょっとだけ早いけれどもな……
『HALLOWEEN PARTY』の夜の、お話。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
884
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる