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プロローグ・すべての始まり編
第3話 アンデッドの軍団③
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らしき、というのは、地図というにはあまりに情報が少なかったからだ。町の名前なども書かれておらず、全体の形と山の名前がポツリ、ポツリとあるだけ。それを見ると、この国はかなり高い崖に囲まれた場所に作られた国だった。なるほど、こんな場所に国があるなら、農作物などを作るのが難しいだろう。
肉は魔物の肉だと聞いているから、家畜なんかも育てていないのかも知れなかった。
崖の上に町を作った例は珍しくない。だがここは国そのものが巨大な崖の上にあった。
魚が滅多に食卓に並ばないのは、海に降りられる場所が少なく、また崖の上まで運ぶのが大変だからなのだろう。それでも出るのだから、さすがは王宮といったところか。庶民の口には恐らくあまり入らないと思われた。
そう考えると、自分たちは一応贅沢をさせて貰っているのだと思い、それ以外は何も与えられない自分の心を慰めることが出来た。
地図を見ている間、まるで監視でもしているかのように、兵士はずっと生徒のそばから立ち去らなかった。気軽に見ていい図書室の書物の筈が、なにか見てはいけないものを見たような気持ちにさせられる。──自分たちには自由がない。そのことに気付くには、勇者だなんだと持て囃されて、特別な力を手に入れたことに調子づいた子どもの頭は、残念なくらい足りなかった。生徒が図書室から去るまで、兵士は生徒の姿を見つめていた。
城に来てからというもの、外は王宮が管理している森よりも強力な魔物がいると言い聞かされて、今の自分たちでは太刀打ち出来ないからと、外出すら許されていない。
森の魔物すらまだ一撃で倒せないことを考えると、確かに外に出るのは怖かった。
こうして言うことさえ聞いていれば、美味しいご飯と温かい寝床が与えられる。
いずれ魔王を倒す時のことを考えると、城の外の魔物もやがては倒さなくては、先々進めないであろうから、戦う日はいずれやってくるだろう。今はまだ負ける気がしない。
それと同時に外の世界が怖くもあった。すぐに安全なところに戻れず、交代で寝ずの番をして、安全な町までたどり着かなくてはならない。ぬるい狩りを続けている今の自分たちには、それがずいぶんときつく思えた。
その時兵士が大広間に飛び込んで来た。
「敵襲です!
全員王の間にお集まり下さい!」
全員が王の前に集められる。
「現在この城に、大量のアンデッドが向かっていることがわかった。
城の兵士だけでは数が足りない。
実戦練習だと思って、勇者であるあなた方にも協力して欲しい。」
宰相が段の上から皆に告げる。
「まあ、貴殿らが加われば、物の数ではないだろう。
頼むぞ、勇者たちよ。」
王の言葉に皆が沸き立つ。
「ついに実践かー!」
「訓練ばっかで飽き飽きしてたぜ!」
前衛職に隊列の指示がなされる。
いざ外へ迎え撃とうとした時、一人の兵士が、「伝令がございます!」と広間に飛び込んできた。皆が兵士の方を振り返る。
騎士団長に耳打ちをすると、騎士団長が慌てた様子で、それを宰相に耳打ちをする。
「なんと……そのようなことが。」
宰相が王に耳打ちをする。その言葉を聞いた途端に、サッと王の顔色が変わる。
「──諸君、話が変わった。
あり得ないことだが、今回のアンデッドは魔法を使うものばかりらしい。本来魔法を使うアンデッドは数があまりおらず、このように大量に攻めてくるなど聞いたことがない。だが実際にこの城の近くに来ているのだ。」
王のその言葉に、異常さを知っている騎士団の兵士たちがざわつき、なにがどう凄いのか、実感のわかない生徒たちがキョトンとしている。それを見た兵士の一人は、嫌な予感に心がざわついた。今回は魔族の国に送り出す勇者たちをただ育てるのとはわけが違う。
今まで安全だった筈の城に、自分たちにまで危険が迫ってきているのだ。この子どもたちの危機感のなさに不安が拭えない。
「魔法には魔法で対抗しなくてはならない。
魔法師団を前衛に、弓兵が後ろから攻撃。剣騎士団は撤退時のサポートを頼みたい。」
兵士たちが更にざわつき出す。
「かしこまりました。
全力で当たらせていただきます。
魔法師団長が膝をついて頭を下げた。
「君たち、行くぞ!」
魔法師団長が影森たちに声をかける。
「がんばれよー!」
という前衛職の無責任な声が聞こえた。
暗闇の中を、ゆっくりとこちらに近付いてくるアンデッドたち。
ランプや松明の明かりに薄く照らされたそれは、なお一層不気味だった。
「魔法師団、前へ!」
団長の声と共に、魔法師団が前に進む。後ろでは西田たちを含む弓兵が弓を構えて狙いを定める。
「火魔法部隊、前へ!」
影森が声をかけられ尻込みする。
────────────────────
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肉は魔物の肉だと聞いているから、家畜なんかも育てていないのかも知れなかった。
崖の上に町を作った例は珍しくない。だがここは国そのものが巨大な崖の上にあった。
魚が滅多に食卓に並ばないのは、海に降りられる場所が少なく、また崖の上まで運ぶのが大変だからなのだろう。それでも出るのだから、さすがは王宮といったところか。庶民の口には恐らくあまり入らないと思われた。
そう考えると、自分たちは一応贅沢をさせて貰っているのだと思い、それ以外は何も与えられない自分の心を慰めることが出来た。
地図を見ている間、まるで監視でもしているかのように、兵士はずっと生徒のそばから立ち去らなかった。気軽に見ていい図書室の書物の筈が、なにか見てはいけないものを見たような気持ちにさせられる。──自分たちには自由がない。そのことに気付くには、勇者だなんだと持て囃されて、特別な力を手に入れたことに調子づいた子どもの頭は、残念なくらい足りなかった。生徒が図書室から去るまで、兵士は生徒の姿を見つめていた。
城に来てからというもの、外は王宮が管理している森よりも強力な魔物がいると言い聞かされて、今の自分たちでは太刀打ち出来ないからと、外出すら許されていない。
森の魔物すらまだ一撃で倒せないことを考えると、確かに外に出るのは怖かった。
こうして言うことさえ聞いていれば、美味しいご飯と温かい寝床が与えられる。
いずれ魔王を倒す時のことを考えると、城の外の魔物もやがては倒さなくては、先々進めないであろうから、戦う日はいずれやってくるだろう。今はまだ負ける気がしない。
それと同時に外の世界が怖くもあった。すぐに安全なところに戻れず、交代で寝ずの番をして、安全な町までたどり着かなくてはならない。ぬるい狩りを続けている今の自分たちには、それがずいぶんときつく思えた。
その時兵士が大広間に飛び込んで来た。
「敵襲です!
全員王の間にお集まり下さい!」
全員が王の前に集められる。
「現在この城に、大量のアンデッドが向かっていることがわかった。
城の兵士だけでは数が足りない。
実戦練習だと思って、勇者であるあなた方にも協力して欲しい。」
宰相が段の上から皆に告げる。
「まあ、貴殿らが加われば、物の数ではないだろう。
頼むぞ、勇者たちよ。」
王の言葉に皆が沸き立つ。
「ついに実践かー!」
「訓練ばっかで飽き飽きしてたぜ!」
前衛職に隊列の指示がなされる。
いざ外へ迎え撃とうとした時、一人の兵士が、「伝令がございます!」と広間に飛び込んできた。皆が兵士の方を振り返る。
騎士団長に耳打ちをすると、騎士団長が慌てた様子で、それを宰相に耳打ちをする。
「なんと……そのようなことが。」
宰相が王に耳打ちをする。その言葉を聞いた途端に、サッと王の顔色が変わる。
「──諸君、話が変わった。
あり得ないことだが、今回のアンデッドは魔法を使うものばかりらしい。本来魔法を使うアンデッドは数があまりおらず、このように大量に攻めてくるなど聞いたことがない。だが実際にこの城の近くに来ているのだ。」
王のその言葉に、異常さを知っている騎士団の兵士たちがざわつき、なにがどう凄いのか、実感のわかない生徒たちがキョトンとしている。それを見た兵士の一人は、嫌な予感に心がざわついた。今回は魔族の国に送り出す勇者たちをただ育てるのとはわけが違う。
今まで安全だった筈の城に、自分たちにまで危険が迫ってきているのだ。この子どもたちの危機感のなさに不安が拭えない。
「魔法には魔法で対抗しなくてはならない。
魔法師団を前衛に、弓兵が後ろから攻撃。剣騎士団は撤退時のサポートを頼みたい。」
兵士たちが更にざわつき出す。
「かしこまりました。
全力で当たらせていただきます。
魔法師団長が膝をついて頭を下げた。
「君たち、行くぞ!」
魔法師団長が影森たちに声をかける。
「がんばれよー!」
という前衛職の無責任な声が聞こえた。
暗闇の中を、ゆっくりとこちらに近付いてくるアンデッドたち。
ランプや松明の明かりに薄く照らされたそれは、なお一層不気味だった。
「魔法師団、前へ!」
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