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プロローグ・すべての始まり編
第3話 アンデッドの軍団②
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俺たちの為に必要なことだったんだ、と影森は心の中で言い訳をするが、生きる術を持たないクラスメートを、着のみ着のままで追い出したことに変わりはなかった。
「やっぱり、死んじゃったのかな……。
あの時私たちが見捨てたから……。」
「よそうよ、その話は。」
考えていたことだが、口にしたくはなかった。死体を見ていなければ死んでない、どこかで生きている可能性だってあるのだから。
そうだ。近くには人の住む町も、教会もあると言っていたじゃないか。だったら保護者のいない子どもを、教会が保護してくれている筈だ。警察のような組織や、役所のような場所だって、異世界とはいえある筈だ。
そこに助けを求めれば、なにも死ぬようなことはない筈。そう考える影森は、現代よりも発展していない世界に、そんなものがある筈がないという可能性に目と耳を塞いだ。
「だってさ、もし、あれが私たちの誰かだったら、もし私だったらと思うと……。
もし、もしだよ?
スキルがなかったら、この世界に放り出されたら、どうやって生きていけばいいの?」
「──やめろってば!!」
新井がビクッとする。
「……ごめん、大きい声出して。」
「ううん、私こそごめん。
影森君“も”、──気を付けてね。」
「うん……?」
そんな風に新井は、なんだかとても含みのある言い方をして、森の奥へと消えてゆく。
それが妙に引っかかったが、日があまり差し込まない森の奥は暗い。突然何が出てきてもおかしくなかった。新井と離れて1人になってしまうと、急に不安が増してくる。
そんなことはすぐに、頭のどこかへ追いやって、ドキドキする心臓を誤魔化すかのように、杖を構えて警戒しながら先へと進む。
突然、足首に何かが絡みついた。慌てて足元にファイアーボールを放つ。
「影……?」
足首に絡みついた影は、手応えがないまま影森から離れていく。シン……とした森の中で、影森はその場で周囲の気配を伺った。
──突然まばゆい光が放たれ、一瞬目を閉じた隙に、顔面を水の塊が襲う。
『息が……!』
もがくが水の塊は離れない。思わず掴める筈のない水の塊を掴もうとして、手が無我夢中で水の塊の周囲をうごめく。背後から誰かに肩を叩かれた気がした。ファイアーボールを何とか後ろに向けて放った──筈だった。
杖は反応せず、顔から水の塊がはがれる。
影森はぜいぜいと息を吸い、その場に崩れ落ちる。もう辺りには何の気配もなかった。
静かな森に、風に揺られた木々の葉が落ちて、影森の周囲を通り過ぎて行った。
「よー、おつかれー。」
森での訓練を終えて、魔法使い組み全員で城に戻ると、城で練習していた、剣士、弓使い、テイマー組の半数が明るく出迎える。
訓練は相変わらずきつかったが、訓練後の仕事がなくなったことで、明るさを取り戻した者、まだ気にしている者と様々だ。
「なんだよ、お前ら全員ぐったりしてね?
今日の訓練、そんなにきつかったのか?」
日頃魔力切れ寸前を見極めて、城に戻って来ていた筈の魔法使い組みたちが、全員青い顔をしてうつむいていたり、床にしゃがみこんだりしている。まるで最初の頃の、力配分も分からず戦っていた頃や、訓練のあとに城の仕事をさせられていた時かのようだった。
近接職組みと弓使い組みが、そんな魔法使い組みたちの様子に首をかしげている。
「う、うん、まあね……。」
影森は力なく答えた。
夕食は全員大広間で食べる。晩餐会用の長いテーブルに全員腰掛け、目の前に並んだ豪華な食事をワイワイと楽しんだ。これだけはこの世界に来てから変わらない、唯一の贅沢で楽しみだ。勇者だけが食べることの出来る食事。この国は存外貧乏なのか、ベッドなんかは思ったよりも質素だ。城自体もこじんまりしていて、なんなら日本にいた時に映像で見た外国の城のほうが豪華だと思う。
石造りで古めかしく、暖炉はあるが当然冷房なんかはない。夏の暑さは相当なものだと思うが、この場所は割合高地にあって、夏は涼しいのだという。それと水魔法で涼しくしているらしい。なるほど、外に出ると少し暑いが、王宮の中がひんやりとしているのはそういう理由らしい。なぜこんな場所に城を建てたのか、日本人からすると不思議ではあるが、ドイツの古城なんかも高いところに建っているし、攻め込まれることを考えた場合、存外そんなものなのかも知れなかった。
休みの時に、生徒の1人が王宮の図書室に足を運ぶと、そこは図書室と呼ぶにはおこがましいくらいの、せせこましい場所で、蔵書の数も自分たちの高校の図書室よりも、格段に少なかった。せいぜい個人の本棚程度。
それも歴史のありそうな書物は1つもなくて、割合最近出たのであろうと思えるものばかりだった。兵士の1人に聞くと、重要なものは一般公開されていないのだと言われた。
なるほどどと思いつつも、重要な書物ならばそういう扱いになるのも分かるが、なぜこうも一般書籍が少ないのか解せなかった。
それをポツリとつぶやくと、そもそも紙自体が貴重な為に、個人が所有出来るような本が、あまり発行されていないのだと教えられた。それならばこの少なさも妥当なのだろうと思いつつ、この国について書かれている書籍を探すと、地図らしきものを発見した。
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「やっぱり、死んじゃったのかな……。
あの時私たちが見捨てたから……。」
「よそうよ、その話は。」
考えていたことだが、口にしたくはなかった。死体を見ていなければ死んでない、どこかで生きている可能性だってあるのだから。
そうだ。近くには人の住む町も、教会もあると言っていたじゃないか。だったら保護者のいない子どもを、教会が保護してくれている筈だ。警察のような組織や、役所のような場所だって、異世界とはいえある筈だ。
そこに助けを求めれば、なにも死ぬようなことはない筈。そう考える影森は、現代よりも発展していない世界に、そんなものがある筈がないという可能性に目と耳を塞いだ。
「だってさ、もし、あれが私たちの誰かだったら、もし私だったらと思うと……。
もし、もしだよ?
スキルがなかったら、この世界に放り出されたら、どうやって生きていけばいいの?」
「──やめろってば!!」
新井がビクッとする。
「……ごめん、大きい声出して。」
「ううん、私こそごめん。
影森君“も”、──気を付けてね。」
「うん……?」
そんな風に新井は、なんだかとても含みのある言い方をして、森の奥へと消えてゆく。
それが妙に引っかかったが、日があまり差し込まない森の奥は暗い。突然何が出てきてもおかしくなかった。新井と離れて1人になってしまうと、急に不安が増してくる。
そんなことはすぐに、頭のどこかへ追いやって、ドキドキする心臓を誤魔化すかのように、杖を構えて警戒しながら先へと進む。
突然、足首に何かが絡みついた。慌てて足元にファイアーボールを放つ。
「影……?」
足首に絡みついた影は、手応えがないまま影森から離れていく。シン……とした森の中で、影森はその場で周囲の気配を伺った。
──突然まばゆい光が放たれ、一瞬目を閉じた隙に、顔面を水の塊が襲う。
『息が……!』
もがくが水の塊は離れない。思わず掴める筈のない水の塊を掴もうとして、手が無我夢中で水の塊の周囲をうごめく。背後から誰かに肩を叩かれた気がした。ファイアーボールを何とか後ろに向けて放った──筈だった。
杖は反応せず、顔から水の塊がはがれる。
影森はぜいぜいと息を吸い、その場に崩れ落ちる。もう辺りには何の気配もなかった。
静かな森に、風に揺られた木々の葉が落ちて、影森の周囲を通り過ぎて行った。
「よー、おつかれー。」
森での訓練を終えて、魔法使い組み全員で城に戻ると、城で練習していた、剣士、弓使い、テイマー組の半数が明るく出迎える。
訓練は相変わらずきつかったが、訓練後の仕事がなくなったことで、明るさを取り戻した者、まだ気にしている者と様々だ。
「なんだよ、お前ら全員ぐったりしてね?
今日の訓練、そんなにきつかったのか?」
日頃魔力切れ寸前を見極めて、城に戻って来ていた筈の魔法使い組みたちが、全員青い顔をしてうつむいていたり、床にしゃがみこんだりしている。まるで最初の頃の、力配分も分からず戦っていた頃や、訓練のあとに城の仕事をさせられていた時かのようだった。
近接職組みと弓使い組みが、そんな魔法使い組みたちの様子に首をかしげている。
「う、うん、まあね……。」
影森は力なく答えた。
夕食は全員大広間で食べる。晩餐会用の長いテーブルに全員腰掛け、目の前に並んだ豪華な食事をワイワイと楽しんだ。これだけはこの世界に来てから変わらない、唯一の贅沢で楽しみだ。勇者だけが食べることの出来る食事。この国は存外貧乏なのか、ベッドなんかは思ったよりも質素だ。城自体もこじんまりしていて、なんなら日本にいた時に映像で見た外国の城のほうが豪華だと思う。
石造りで古めかしく、暖炉はあるが当然冷房なんかはない。夏の暑さは相当なものだと思うが、この場所は割合高地にあって、夏は涼しいのだという。それと水魔法で涼しくしているらしい。なるほど、外に出ると少し暑いが、王宮の中がひんやりとしているのはそういう理由らしい。なぜこんな場所に城を建てたのか、日本人からすると不思議ではあるが、ドイツの古城なんかも高いところに建っているし、攻め込まれることを考えた場合、存外そんなものなのかも知れなかった。
休みの時に、生徒の1人が王宮の図書室に足を運ぶと、そこは図書室と呼ぶにはおこがましいくらいの、せせこましい場所で、蔵書の数も自分たちの高校の図書室よりも、格段に少なかった。せいぜい個人の本棚程度。
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なるほどどと思いつつも、重要な書物ならばそういう扱いになるのも分かるが、なぜこうも一般書籍が少ないのか解せなかった。
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