最後の勇者のレゾンデートル〜スキルなし判定された俺が隠しユニークスキル「ゲノムコントロール」で闇社会の覇王となるまで〜

陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)

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第2章・勇者召喚の秘密編

第55話 異世界の実況見分①

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「……間違いありません。
 媚薬によるステータス異常が起きています。」
「では、その結果を書類にしていただけますか?」

 アシルさんが、部下が連れて来た鑑定師に、エンリツィオの状態を鑑定させ、それを書類にするよう指示を出す。

「──酒とグラスの薬の反応はいかがでしたか?」
 今度は薬師に尋ねる。

「酒からは反応がありませんでした。グラスからはタップリと。」
「……だろうね。目の前で初めて開けたわけじゃない酒に、エンリツィオは手を出さない。」

 目の据わったアシルさんは、今も目を閉じたままのエンリツィオを見ながら言う。

「──グラスの内側の表面に、均等に媚薬を塗りつけるなんて作業、薬師のスキル持ちでないと出来ません。

 普通はどんな薬でも、そのまま塗ったら垂れてきて底にたまります。

 そうすれば気付かれてしまうから、グラスの厚みが少し増しただけのように偽装したのでしょう。

 いくら塗りつけて乾かしても、媚薬は水溶性ですから、酒が入った瞬間崩れて混ざったのだと思いますが、酒が表面張力しているすぐ真下で、グラスが薄くなっているかどうかだなんて、分かる人は殆どいないでしょう。

 初めてそのグラスを見た人なら、おそらく余計に気付きません。
 オマケに原液並の濃縮度だ。これはこの国の市販品にはありえない濃さです。

 こんなものを直接飲ませたら、気持ちよくなるどころか、下手すりゃ発狂しますよ。殺人未遂に等しい行為だ。

 手に入れるのにも塗りつけるにも、明らかに、薬師が関わっているかと思いますが、マトモな薬師のすることではありません。」

 薬師が言う。
「……入手ルートも塗りつけたのも、同じ人間かも知れないね。
 薬師が誰に使うつもりだと指示されてやったのかは知らないけど、──可哀想に。」

 アシルさんが笑う。薬師と鑑定師がゾッとした表情になる。

「現場にもお立ち会いいただいたんだ、この事は、こちらが要求した場合、正式な被害として受理していただけますね?」

 アシルさんは、別の部下が連れて来た役人2人に確認する。
「はい、ステータス異常の鑑定結果と、媚薬の含有状況を提出いただければ。」

「では、追っていずれ。
 本日は結構です。
 ありがとうございました。

 鑑定師の方と薬師の方には、あちらで部下から代金をお支払いさせていただきます。」

 エンリツィオの部下が、別の部屋に鑑定師と薬師を案内しに行った。

「取り敢えず、現時点で揃えられる証拠は揃ったね。
 あとは実行犯の薬師だけだ。」

「……こっちで薬師を探すのか?
 すぐに訴えねーのか?」
 恭司が不思議そうにアシルさんに尋ねる。

「元々は裏社会のボスなんてやってる人間相手に、こんなことをしでかそうってんだ。

 薬に慣れてると思って、国王は考えもせず、一番濃いヤツをぶち込めとでも指示したのかも知れないけど。

 ──ことは殺人未遂に等しい行為でも、国王の目的は、あくまでエンリツィオの体だったからね。

 普通に訴えたらどうなると思う?
 未遂でも、事に及ばれた後でも、そういう被害にあった人を、世間はどう見るかな?」

「エンリツィオ一家のボスが、ケツ非処女にされた──って思われて終わりだろうな。」
 俺が言う。

「──そ。
 されたか、されてないかは問題じゃない。

 そういう目的を持った人間に、媚薬を盛られて襲われたっていう事実がそこにあるだけ。
 実際こんなこと、別に初めてじゃないしね。

 だからこういう事を、僕たちの世界じゃ、いちいち公にはしないんだ。
 ひっそりと、やった人間を処理するだけ。
 ただ、相手は一般人で、なにせこの国の国王だからね。

 取れる証拠は取っておいたほうがいい。
 生かすも殺すも僕たち次第だってことを、相手に分からせる為のカードは、多いに越したことはないからね。」
 アシルさんはいつものように微笑んだ。

「薬師は王宮のヤツなのかな?」
 俺の疑問に、

「さあねえ。
 マトモな薬師の仕事じゃないっていうし、脅されたのか命令されたのか、単に仕事で引き受けただけのヤツなのかは分からないけど、普段お抱えの薬師以外が出入りしてたら、まあ、すぐに分かるだろうね。」

 アシルさんは余裕の雰囲気だった。
「あとは僕がやっておくから、2人はご飯でも食べておいで。

 もうこんな時間だし、お腹すいたでしょ?
 ホテルの中のレストランなら、僕の名前を出せば、お金は後で請求されるようになってるから。」

 確かに腹が減っていた。
 王宮に行って、エンリツィオが媚薬を飲まされて、江野沢に会いに行ってと、あまりに色んな事が一気に起こり過ぎて、すっかり忘れていた。

 この世界は殆ど街灯なんて物がないから、日が落ちると歓楽街以外の場所は、すぐに真っ暗になるけど、本来まだ全然寝るような時間じゃない。

 かと言って、2人でほぼ真っ暗な中を、店を探してうろつく気もしない。俺たちは言われた通りに、ホテルのレストランへとやって来た。

 あと30分でラストオーダーだという時間に、俺たちは滑り込みでユニフェイを連れて店に入った。

 テイムしていれば魔物でも高級レストランに入れるというのが、この世界での唯一いいところかも知れなかった。

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