最後の勇者のレゾンデートル〜スキルなし判定された俺が隠しユニークスキル「ゲノムコントロール」で闇社会の覇王となるまで〜

陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)

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第2章・勇者召喚の秘密編

第60話 かなしい2人②

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 マリィさんの、執念すら感じる愛。だけどそれをエンリツィオにぶつけることなく、彼女は胸に秘めていた。

 だけどもし、俺が、江野沢以外の相手にそんなことまでされたとしたら、ちょっと怖いと思うのと同時に、その控えめさに惹かれてしまうかも知れない。

 俺の為に自分が出来る最大限のことを、やれるように努力して、なおかつ自分の気持ちすらも、言っても来ない女性。

 それも、そんなことをしなくたって、付き合ってと迫って来られて、ノーと言う男が存在しないであろう美人が、だ。

 俺にとって一番には出来なくても、本当に俺のことが好きで、俺のことしか考えてないんだって分かるから。

 そこまでの思いを、もし仮に堂々とぶつけてこられたら怖いけど、いつ使うかも分からない場面の為だけに、裏でそんな努力をして、なおかつ全然アピールもして来なかったのを知ってしまったら。

 2人きりになった時、キスくらいはしてしまうかも知れない。キスで盛り上がってしまったら、そのまま流れでヤらないとは正直言えない。

 というよりも、俺にその時、他に好きな相手がいなかったら、多分積極的にヤっている。
 ──だってそんなの、健気でいじらし過ぎるじゃないか。

 エンリツィオもそこまでされて、気持ちを無視出来なくなったんだろう。たとえ特別に、愛してやることは出来なくても。

 エンリツィオの為だけに生きてるようなマリィさんは、きっとまたエンリツィオの役に立とうとするだろう。

 だけど、そんなマリィさんだからこそ、危ない目にあって欲しくないという、アシルさんの気持ちも分かる。

「……正直にかかわるなって、理由も合わせて伝えるのじゃ、駄目だったんですか?
 手紙に返事をしてたら、マリィさんも納得してくれたんじゃ?

 エンリツィオがそれをしないのなら、せめてアシルさんがするとか……。」

「マリィはすぐに顔に出るから、どんな内容であれ、エンリツィオから返事を貰えたってだけで、それが周囲に即バレる。

 それが僕からだろうと、エンリツィオ絡みな時点でそれは同じだ。エンリツィオにつながる細い糸に、希望を持ってしまう。

 何せ出会った頃は使いこなせてなかった神速を、エンリツィオの為だけに極めたような子だからね。

 エンリツィオとの関係を知っていて、こちらに悪意を持つ奴らが相手なら、切れた筈の女に連絡を取ってるエンリツィオが、こっちで何かしようとしてると、探ってきかねない。

 ──結果、マリィが狙われる。
 アプリティオに来たら、マリィが動かない筈はないと思ったけど、僕らが無視していれば、その可能性は減る。

 僕が何かを進言しても、どうせエンリツィオは何も手を打たないだろうとは思ってた。
 それをするくらいなら、愛人をしてた時だって、護衛をつけていただろうしね。

 挨拶でこっちに来ることで僕たちの存在が知られるまで、少なくともかかわりたくはなかった。
 だから何も言えなかったんだよ。」
 アシルさんは困ったように笑った。

「というか、2人とも、変装しないんですね?普通にウロついててびっくりしましたよ。」
 そう言う俺に恭司がうんうんとうなずく。

「そもそもエンリツィオ一家の名前自体、聞いたことがあるのなんて、裏社会の奴らか、冒険者の一部か、王宮関係の仕事をしてる一部の奴らに限られるからね。

 ニナンガでだって、元魔法師団長が王宮を奪ったって事実は知られてても、元魔法師団長の顔なんて、王宮勤めの奴らしか知らない訳だし。

 エンリツィオ一家の名前を聞いたことがある奴らでも、ボスの顔なんて当然知らないし、ニナンガから来た新しい王様が、そのボスだなんてことも、普通の人は知らないよ。

 こっちじゃ歓迎式典の参加者だって、王宮勤めの奴らに限定されてたわけだしね。

 護衛を連れて歩くと嫌でも目立つから、僕らだけで動いた方がいい場合もあるのさ。」
 なるほどね。

「──そろそろ行こうか。さすがに終わってるでしょ。」
 そう言ったアシルさんに促されて店を出たものの、エンリツィオはそこから1時間近くも、マリィさんの家から出て来なかった。

 気温の高いアプリティオの外気にさらされながら、俺の出した水魔法で全員涼を取りながら待っていると、マリィさんを伴って、エンリツィオが部屋から出て来た。

「オウ、待たせたな。
 オンナひとり躾けるのに、ちょっと手間どっちまってよ?

 新しいベッドを1つ手配してくれ。
 駄目にしちまったもんでな。」

 いつものようにニヤニヤしながら言ってくるエンリツィオに、アシルさんは慣れた様子だったが、待ちくたびれた俺と恭司は、何も返す気力がなかった。

 ていうか、マリィさん、めっちゃツヤツヤしてて、赤く染まった首筋とか耳元とか、さっきより色っぽいです。

「マリィ、いい加減諦めろ。
 俺とお前は、とっくに終わってんだ。」
 エンリツィオはマリィさんに振り返りもせずに言う。

「……分かってないのね。
 私はね。
 あなたを知らずに生きる幸せよりも。
 ──あなたを愛して苦しむ地獄の方がいい。」

 愛しいという言葉は、“かなしい”とも読むことが出来る。
 マリィさんの表情は、まさにそれだった。

 俺はその日、江野沢に会いに王宮に行くのを諦めた。
 帰り道、エンリツィオとアシルさんの後ろを、恭司と歩きながら、俺はポツリと呟いた。

「すげえ、重いな、マリィさんの愛情って。
 忘れるなんて、出来ねえくらいに。
 多分、人生のすべてなんだな。
 あの人にとって。」

 エンリツィオは足を止めて俺を振り返った。

「──本気の愛は、重いモンだ。

 簡単に次にいけたり、忘れられるくらいなら、ソイツは元々相手を愛しちゃなんかいねえよ。

 マリィは俺と似てるんだ。
 だから気持ちは痛いくらい分かる。
 ……分かるが、どうもしてやれねえ。
 こればっかりは……な。

 いっそ、マリィを愛してやれたらと、思ったことが、ねえわけじゃねえよ。」

 仕方のないこと、だと思った。
 お互いに、仕方のないことだけれど。

 お互いがお互いに気持ちが向いていれば、きっと幸せになれる2人なのに、自分の気持ちに正直で、互いが思う相手に対して本気だからこそ、向き合う事が出来ない、かなしい2人だと思った。

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