最後の勇者のレゾンデートル〜スキルなし判定された俺が隠しユニークスキル「ゲノムコントロール」で闇社会の覇王となるまで〜

陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)

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第2章・勇者召喚の秘密編

第79話 ボスの提案とそれぞれの恋人②

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「──本名を名乗っていなかったな。
 ニナンガの国王としてしか挨拶していなかったが、俺の本名はエンリツィオだ。」

「エンリツィオ一家の……ボス?
 ──ニナンガの国王が、闇社会を束ねる組織のボスだっていうのか?」

 やはり王族はエンリツィオ一家の名前自体は聞いたことがあるのか。でも、それとニナンガ国王がイコールでつながっているとは思わなかったらしい。

「父は……エンリツィオ一家のボスの体に手を出したのか……。」
 ドメール王子が頭が痛そうに片手でおさえて天をあおぎ、それを聞いたマリィさんとジルベスタがビクッとする。

「やっぱりあの方……あなたを無理やり?
 ニナンガ王国で魔法師団長をやってらしたあなたを見初めたと言って、あなたがこの国に挨拶にいらっしゃることになったのを、異常なまでに喜んでらしてて、気味が悪く思ってはいたけれど……。
 ──お気の毒なことね。」

 自身も襲われた経験のあるジルベスタが、同情の眼差しでエンリツィオを見つめる。

「──嫌な思い出し方してんじゃねえよ。
 この俺が、媚薬盛られて、魔法が使えなくされたってくれえで、あんなジジイに負けるとでも思ってんのか。

 覆いかぶさろうとして来た瞬間に、肩を握りつぶして放り投げて、そのまま気絶させてやったよ。」

 マリィさんがロコツにホッとした表情を浮かべる。それに、女性の変化に聡いドメール王子が反応する。

「マリィ……。前回もなんだが、君、なんで彼をちゃんと見ようとしないんだい?

 それに、いつも聡明で冷静な君が、おかしくなるのは、いつも彼が同席している時だけだ。まさか……。」

 ドメール王子にそう言われて、チラッとエンリツィオを見た瞬間、マリィさんは耐えられなくなって、真っ赤になって両手で顔を覆ってしまった。

「……あの……、やめたげて貰ってもいいですか?多分、今彼女、いっぱいいっぱいなんで……。」

 俺が右手を上げてドメール王子に代わりに答える。

 多分、国王の正装してるエンリツィオが、カッコ良すぎて、直視出来なかったとか、そんなとこだと思うから。

 それを表情に出さずに耐えるあまりに、いっぱいいっぱいになってしまっている。
 ほんと拗らせてるなあ、相変わらず。

 エンリツィオがむず痒そうな表情を浮かべてソッポを向いた。

「……そうか。
 いや、これでつながった。
 昔、彼女を口説いて振られたことがあってね、その時無理やり相手を聞き出したことがあったんだが、その時言ってたんだ。

 7つの国を裏から支配する組織のボス。
 ──そうか、それがあんたか!」

 ドメール王子は独り言を言いながら、1人で納得している。それをジルベスタが、横からチラリと睨む。──ん?

「──あ、いやいや、君と出会う前の話さ。今の僕は、君だけだよ。」

 ジルベスタの視線に気付いたドメール王子は慌てて立ち上がり、ジルベスタの両手をそれぞれの手で掴んで懇願する。

 そこにアシルさんが、
「でも、ついこの間、僕らが最初にドメール王子と面会した時にも、直前まで口説いてましたよね、マリィのこと。」

 あっ!それ、俺、わざわざ、だまってたのに!
 男女間のもつれが何よりのごちそうのアシルさんが、2人の間に燃料を投下する。

「あ、あの頃はさ、ほら、まだ君と再会したばかりで、そんな風に思ってなかったというか……。」

 ジルベスタは上目遣いでドメール王子を睨み、ドメール王子は必死になってそれに言い訳していた。

「──オイ、くだらねえ話はそろそろやめて貰ってもいいか。」
 エンリツィオが呆れたように、ドメール王子に話の席に戻るよう促す。

「その話は、あとでまた、ゆっくり説明させて貰うから、ね?
 ……いや、すまなかった。
 ──え?な、なんだい?

 すまんが、ちょっとだけ席をはずさせて貰うよ。
 イテテテ!耳を引っ張らないでくれ!」

 ジルベスタに説明したあとで、エンリツィオに向き直ったドメール王子を、ジルベスタが無理やり引っ張って隣の部屋に連れて行く。

 そして。
 ──パン!!
 乾いた音が響いたと思うと、ドメール王子とジルベスタが戻り、ドメール王子は再び席についた。

「……お待たせしてすまなかった。」
 しっかりと頬についた紅葉のあざなど、まるで存在しないかのように、真面目な顔で話しはじめようとするドメール王子に、ついにアシルさんが、こらえきれなくなってブフーッ!と口元をおさえて吹き出した。

 ……2人とも、王族の筈なんだけどなあ。
 確かに公式な場ではないけど、痴話喧嘩を優先するかね?

 全員顔見知りではあるけどさ。
 でも、そっか、ジルベスタ……。

 俺は寂しいような、微笑ましいような気持ちで、ジルベスタとドメール王子のやり取りを見つめた。

「──まあ、この国の王子に無理やり聞き出されたあげく、聞くまで口説くのはやめないし、引き下がらないと言われちゃあ、彼女にもどうしようもなかったんだ。

 あんまり彼女を責めないでやってくれ。
 このことは、俺と彼女しか、……いや、俺の幼なじみには喋っちまったか。

 まあ、あいつはそんなこと言いふらすようなやつじゃあないし、実際誰も彼女の相手がどんなだか知らないしな。

 彼女を入れて、愛人が17人いるってことだけは、いつの間にか広まってたが。
 まあ、それぐらいさ。」

 と、事も無げにドメール王子が言った。
 マリィさん、モテるだろうしなあ……。
 その相手がどんなだか、ちょっとでも情報が入れば、瞬時に広まるであろうことは、想像できた。

「──それで、……俺に何をさせようってんだ?」
 ドメール王子が、改めて真面目な表情になる。

「俺たちは、ラダナン刑務所の囚人たちからスキルを奪った。
 ──そのことは、まだこの国にも、他の国の奴らにも、広めないでおきたい。

 囚人たちをいつ死刑執行するかは、オマエの判断1つの筈だ。
 それを近日中に執り行え。

 囚人は再び刑務所の前に戻しておいたが、今は王宮の関係者か誰かがやったと思っちゃいるだろうが、何せ200人だ。

 誰が捕まえて戻したのか、誰も知らねえってなると、そのうち必ず噂になる筈だ。

 奴らは一度刑務所から逃亡してる身だからな。その罪で刑の執行を早めたところで、誰も不思議にゃあ思わねえ。

 囚人がいなくなれば、噂する人間の数も減るってモンだ。そもそも一番疑問を持つのは、当の囚人たちだろうからな。」

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