最後の勇者のレゾンデートル〜スキルなし判定された俺が隠しユニークスキル「ゲノムコントロール」で闇社会の覇王となるまで〜

陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)

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第3章・血みどろの抗争編

第97話 殺人祭司、再び①

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「いいな。あの店料理美味いんだよな。
 ママさんも色っぽいしよ。」
 恭司が同調する。

「へー、行ってみたいな!
 アンナちゃんてどんな子なの?」

「ちょっと親に虐待されててな……。
 今、ママさんに住み込み従業員てことで預かって貰ってんだ。」

「そうなんだ……。」
 英祐が、可哀想、という表情になる。

「スゲーいい子で偏見ねえし、お前らもきっと気に入るぜ?
 俺は男を見た目や立場で判断しない女の子に人生で初めて会ったぜ。」

 恭司が明るくそう言ったことで、英祐も気持ちが楽になったようだ。

 問題は女の子に興味のないアスタロト王子がどう判断するかだったが。
「お前らがそこまで言うんなら興味出たわ。俺も行く。」

 俺たちは顔を見合わせて笑った。下で木に登れないで待っているユニフェイが、上を見上げながらクゥ~ンと鳴く。
「あ、やっべ。寂しがってる。」

 俺は慌てて木から降りると、ユニフェイにも実を与えながら頭を撫でた。
 そんなわけで、俺たちは連れ立ってアンナの店に向かうことにした。

 店は今日も盛況だった。まだ早い時間だというのに、酒を飲んでいる職人もいる。
「酒場なんだ?」

 英祐が驚く。アンナの年齢を伝えていたので、それからすると俺たちの世界の人間には、まあ違和感だよな。

「親の自営業を手伝ってるみてーなもんだよ。ママさんはアンナを娘みたいに扱ってるからな。」
「ああ、なるほどね。」

 英祐が頷きながら納得した。
「アンナ!」
 恭司の呼びかけに、皿を洗っていたアンナが顔を上げる。

「お久しぶりです!」
 嬉しそうに微笑んでくれる。
「ああ、あんたたちかい、今日はお友だちも一緒かい?」

 ママさんも嬉しそうに微笑んでくれる。
「そこのテーブルがあいてるよ、さあ、座った座った。」
「え?でも、誰か寝て……。」

 英祐が戸惑いながらそう言う。そこ、と言われたテーブルには、確かに誰かが突っ伏して寝ていた。

 ママさんはテーブルに近付くと、寝ていた男性の頭をスパン!と叩いた。英祐が目を丸くする。
「イテッ!?なんだあ?」

「オッジさん、あんた昼間っから飲みすぎだよ!そろそろ帰んな!お客さんが来てるんだよ、商売の邪魔邪魔!」
「そうか、悪かったな、また来るぜ。」

「はいよ。またね。」
 ママさんが手を振る男性に手を振り返す。
「……あれ、うちの親衛隊副隊長だぜ。」
 アスタロト王子がボソッと言う。

「あれでも王宮勤めのお貴族様なんだってさ。うちじゃ貴族も平民もないってんで、気楽だからって飲みに来てくれるんだけどね。最近恋人と別れたらしくて、毎回くだ巻いてて見てられないったら。」

 ママさんがヤレヤレ、という顔をする。
「未練タラタラだもんなオッジの旦那。」
「適当に遊べばいいのによ。真面目過ぎんのが玉にキズだよな。」

 常連客たちがガハハ、と笑う。
「……自由なんだな、この店。」
「おうよ。王族も平民も、この店じゃ同格よ!」
「そうか。俺実は王子なんだぜ?」
 アスタロト王子がニヤリと笑う。

「王子か!そりゃあいい!
 王宮の贅沢な料理ばっか食ってねえで、たまにはこういう店の料理も食ってけよ!
 素材は貧乏でも味は一級品だぜ?」

「素材が貧乏で悪かったね!」
 ママさんが笑う。
「あんた、嫌いなもんは?」
 ママさんがアスタロト王子に尋ねる。
「特には。」

「じゃあ、アンナの作った料理を味見してくれるかい?反応次第で店に出す予定なのさ。アタシも初めて見る料理だから、友だちのあんたらに、まずは出してみようかと思っててね。」

「マジかー!やったなアンナ!」
「料理店出すの夢だもんな!」

 俺と恭司がアンナを囲んで喜びを分かち合う。アンナは照れくさそうに笑った。
「──はい、どうぞ。」
 アンナがテーブルに料理を運んでくれる。

 ……ってコレ、ソーセージじゃね?
「これ、なんて料理だ?」
 アスタロト王子は初めて見るのか。

「名前はまだなくて……。
 昔お姉ちゃんが作ってくれた料理を、思い出して作ってみたんです。」
 エリスさんが?

 ママさんもアスタロト王子も知らないってことは、この世界の料理には存在しないものということになる。

 エリスさんは勇者なんかじゃなく、普通の地元の子だとアシルさんは言っていたのに、どういうことなんだろうか?

 俺と恭司と英祐が顔を見合わせる。
「これね、ソーセージって言って、俺たちの地元でもよく食べられてた料理だよ。」
 英祐がアンナにそう教える。

「そうなんですか?
 挽肉とかの腸詰めってことしか知らなくて。」
 ……完全にソーセージだな。

「アンナが塩漬けにした腸が欲しいって言った時はびっくりしたけどね。
 そんなものないから、出入りの業者に頼んで作って貰ったのさ。」

 やっぱり存在しないんだな。この世界に普通にあるなら、材料が流通してないとおかしいもんな。

「エリスさんはどこでそれを知ったんだ?勇者じゃなく地元の人の筈なのに。」
 首を傾げる俺に、

「アシルさん、フランス人でしょ?
 教えたんじゃない?フランスもハムやソーセージが有名だし。」
「そうなのか?」

「ソーセージといえばドイツだと思ってたぜ。」
 俺と恭司が驚く。

「ダンスの世界大会でフランスに行った時に、僕も初めて知ったんだけどね。日本のチームも優勝何度かしてる大会なんだ。」
「お前も参加したのか?」

「ううん、僕は見に行っただけだよ。
 ……いつかは参加したいなとは、思ってたけど……。」
 そこで英祐が声を落とす。

 この世界に連れて来られたことで、英祐の世界大会参加の夢は、2度と叶わなくなってしまったのだ。

 英祐、お前だけはこの世界に連れて来られて良かったんじゃねえかなんて、思ってごめんな。お前には、叶えたい夢があったんだもんな……。

「──いや、おかしくねえか?」
 恭司が突然声を張り上げる。

「アンナがエリスさんと会ってたのは、記憶がないくらいの小さな頃だせ?
 少なくとも10年は前だろ?

 アシルさんたちがこの世界に連れて来られた頃と近いけど、その時はまだニナンガ王宮でアニキが魔法師団長をしてた頃だ。

 アニキたちがこの国に来たのは、国を抜けて組織を作ってからだぜ?
 ……まだ2人は出会ってねえよ。」

 そういえばそうだ。
 じゃあ、いったいどこで?
 エリスさんはなにでソーセージの存在を知ったのだろうか。

「あの……、冷めちゃいますよ?」
 ソーセージに手を付けずに考え込む俺たちに、アンナが心配そうに声をかける。
「あ、ごめんごめん。」

 慌ててソーセージを頬張ると、まだ熱々で口の中を火傷して、慌ててコップを掴んで水をあおった。
「ご、ごめんなさい!」

 アンナが慌てて背中をさすってくれる。
「大丈夫。
 ちょっと慌て過ぎただけだから……。
 けど、マジうまいな、コレ!」

 ソーセージのうまさにビックリする。
「食いづれえから切ってくれよ。」
 恭司が俺を急かす。
「あ、じゃあ、切って来ましょうか?」

「頼むわ。」
 アンナが恭司の分の皿を持ってカウンターの後ろに引っ込んだ。

 俺は自分の皿からソーセージを切って、少しフウフウして冷ましてから、足元のユニフェイに与える。嬉しそうに食べると、前脚を俺の膝に乗せて顔を近付けておかわりを要求された。

 ……カワイイな、なんだそれ。
 ユニフェイの可愛さに逆らえずに、再びソーセージを切って与える。時々、江野沢だってこと、本気で忘れるんだよなあ。

「アンナを嫁にすんのもいいかもな。」
 アスタロト王子が急にそんなことを言い出したので俺は驚いた。
「え?」

「うちの母上みたく、金目当ての貴族の女より、ああいう方が、気楽に友だち夫婦出来っかも知んねえなって思ってよ。

 いずれは誰かとしないといけねえけど、──父上と母上みたいのは嫌だからな。」

「お前でも女に興味持つんだな?」
「──恋愛感情抜きならな。
 平民出身の女王ってのも、国民ウケ良さそうだ。」
 なるほどな。そういうことか。

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