最後の勇者のレゾンデートル〜スキルなし判定された俺が隠しユニークスキル「ゲノムコントロール」で闇社会の覇王となるまで〜

陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)

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第3章・血みどろの抗争編

第97話 殺人祭司、再び②

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「けどよ、アンナが普通に男と恋愛して結婚したかったらどうすんだ?
 そういう夫婦も、この国にだっているにはいるんだろ?」

「ああ、その可能性は考えてなかったな。
 確かにいるぜ。
 大半は友情結婚だけど、男女の恋愛結婚てのもよ。

 金に興味のない女なら、王族との結婚よりそっちがしたいかもな。」

「俺はアンナに幸せになって欲しいからよ、ちゃんと異性として愛してくれるヤツと結婚させてやりてえぜ。」

「……お前の好きなヤツって、アンナか?」
「ちっげえよ!なんだよ、こないだっから!別にいいだろ、誰でも!」

「俺の好きなヤツは変わってねえぜ?
 心配すんなよ。」

 そう言ってすり寄って来るアスタロト王子を押し返す俺を見て、恭司と英祐がゲラゲラ笑う。2人のいないとこでは、こういうことして来ねえから、別にいいけどさ!

 恭司の分を切って持って来たアンナが、
「仲いいんですね。」

 と、微笑ましそうに俺たちを見ている。
 だろ?と、ニヤつくアスタロト王子。可愛い女の子に勘違いされんなら話別だわ!

「ちげーから!俺たち何でもねえから!」
「否定すると、他人から見ると、よりそれっぽくなるよ?匡宏。」
 英祐が残念そうに言ってくる。

「──なあ、あんた、王妃に興味ねえか?」
 肘をついた腕に顎を乗せながら、アスタロト王子がニヤリと笑ってアンナに尋ねる。
コイツ、本気でアンナを嫁にする気か?
大事にはしてくれると思うけど……。

「王妃……ですか?
 考えたこともないです。

 ママさんと一緒にこの店で頑張って、いずれ自分の店を持つのが夢なので、今はそれしか考えてないですね。」

 アンナはニッコリと微笑んだ。
「王妃になれば、自分の店くらい、すぐに持たせてやるぜ?」

「そうなんですか?
 ああ、お客さん、王子なんでしたっけ。

 うーん。でも、やっぱり自分の力で頑張りたいです。まだ、お店持てる程じゃないと思うので。

 私なんかに声をかけて下さって、ありがとうございます。」

 アンナは笑顔でそう言うと、またカウンターの奥に消えて行った。
「……いい子だな。」
「だろ。」

 目を細めてアンナを見ているアスタロト王子に、恭司が同調する。

「あの子に何かした親父ってのは誰だ?
 教えろ。──兵士向かわせて即逮捕してやっからよ。」

 アスタロト王子が急にキレた時の恭司の顔になる。

「それが……分かんねんだ。
 アンナも言わねえし。
 分かったら、すぐ教えるよ。

 俺たちも、2度とアンナに関わって欲しくねえから。」

 恭司も英祐も俺の言葉に頷く。
「そうしてくれ。
 あの笑顔がくもんのは、……俺も許せねえからよ。」

 アスタロト王子にそこまで初対面で言わせるアンナは、きっとたくさんの人に愛されて幸せになれるだろう。ならなきゃおかしい。そう思った。

「席、空いてますか?」
「はい、どう──ぞ。」

 そう言った瞬間、アンナが恐ろしいものを見たような目で表情を強張らせた。
 まさか父親か?

 一瞬そう思ったけど、そうじゃないことはすぐに気が付いた。ママさんまでもが、同じ顔で表情を強張らせていたのだ。

 なんだ?誰が来たって言うんだ?
 視線の先には、ガンギマリしたかのように見開かれた目の祭司が立っていた。
 殺人祭司!?こんなところに!?

 だけど、2人が見ていたのは、その後ろの穏やかな表情の男だった。
 ──うちの母親は人事部で面接担当をやっている。その母親が言っていた。

 女は本能で、ヤバい人を見抜けるのよ?知り合いだとか、恩があるとか、そういうのに目をつぶって自分を誤魔化さない限り、誰でも犯罪を犯すタイプの人間を見抜くことが出来るのよ──と。

 おそらく2人の本能が、思わず顔に出るほどに、アイツはヤバいと告げているのだ。
 殺人祭司は……こっちか──!!

 俺はテーブルの下で英祐の手首を握って、反対の手で英祐の手のひらに、“他心通”と書いた。

『つないだよ?どうしたの?』
『おお?なんだコレ?
 ──こ、こいつ、頭の中に直接……!!』
『遊ぶな恭司。気持ちは分かるけど。』

『これは魔族の魔法だよ。
 魔族同士は相手の許可さえあれば、心の中で直接会話が出来るんだ。

 それか、紋を付けた相手とね。
 匡宏に頼まれて、紋をつけといたんだよ。
 恭司は匡宏の使役してる使い魔だから、匡宏が許可すれば聞こえるんだ。

 アスタロト王子は妖精だから、ちょっと紋つけるのは無理だと思うけど。』

 恭司が眉根をひそめる。
『マジかよ……仲間外れはよくねえぞ?』
『しょうがねえよ、魔族の魔法だしよ。』
『それで?急にどうしたの?』

『声出さねえように気を付けてくれ。
 ……殺人祭司が来てる。』
『ええっ!?』

『言われて見れば、こないだのガンギマリのヤツじゃねえか!』

『いや、多分そっちじゃねえ。
 これから心眼で見てみるけど、ママさんとアンナが、後ろの男にマジでビビってた。
 ……そっちが本命だ。』

『マジかよ……。普通のヤツにしか見えねえぜ……。』
 手前のヤツにビビって逃げた恭司が驚く。

『女の本能舐めたらいかんと、うちの母ちゃんが言ってたんだ。

 女は本能で犯罪犯すヤツが分かるらしい。2人がああまでビビってるんだ。
 十中八九間違いねえよ。』
『……気付かれないよう、気をつけてね?』

『……分かってる。』
 俺はステータス画面を開くと、千里眼で祭司を検索した。縦に並んで2人。後ろの祭司を選択して心眼でステータスを見る。

『……やっぱりだ。
 後ろのヤツが殺人祭司だ。
 エンリツィオが言ってたよ。

 まるでレアボス倒す感覚で殺しに来られたのは初めてだって。
 そう言われてみると、ゲーム感覚で人殺しするなら、前より後ろって感じしねえか?』

『……確かに。
 前の人がやるなら、なんかもっと変態的なこと楽しみそうな気がするよね。』

『けど、どうすんだよ?
 逃げるのは簡単だけどよ、アンナとママさんを置いてくことになるぜ?』

『目的が分からねえから、しばらく様子見しようぜ。それからでも遅くねえ。』
『……分かった。』

『いいぜ。』
 俺たちはすぐには逃げ出さずに、殺人祭司の出方を伺うことにした。

「この店の料理は美味しいとすすめていただきましてねえ。とても楽しみです。
 オススメをいただけませんか?」
 前の祭司がママさんに声をかける。

「あ、ああ、はい、お酒は何を?」
「ああ、私たち、祭司ですのでお酒はいただけません。
 お料理だけでお願いします。」

「祭司さんでしたか。
 でしたら、果実を使った飲み物はいかがです?お酒は入ってませんし、この店の名物なんですよ。」

 アンナが笑顔を作る。
「それはいいですね。
 あなたもそれでいいですか?」
「──ええ。では、同じものを。」

 地の底から響いてくるような声だった。
 音に悪意があるなら、これは悪意を音色にしたような声だ。この声を聞いて、初めてコイツは人殺しなのだと実感した。

「王子に祭司に、今日は変わった客がきやがんなあ。」
「──王子?」
 客の言葉に殺人祭司が反応する。どこか喜びを含んだような声。

 ──王族は経験値が高いんだ。
 姿を奪う男が言っていた言葉を思い出す。
 コイツ、またアスタロト王子を──!!
「王子というのは、どなたですか?」

「──俺だぜ。」
 なんにも知らないアスタロト王子が、殺人祭司に探されて返事をしてしまう。チクショウ、顔を覚えられた──!!

「はじめまして。
 チムチの王子殿下。
 我々は管轄祭司です。今はこの国の教会に指導に回っているところです。」

「へえ?そうなのか。
 まあ、よろしくな。」

 興味はなくとも、王族の次に力を持つ教会の管轄祭司ともなると、無下には出来ない。アスタロト王子がそう返事をした。

「お連れの方はどなたですかな?」
「ああ、コイツらは──」
「“テレポート”。」

 瞬間、俺の姿がみんなの前から消える。
 消える瞬間、アスタロト王子の、古代魔法!?という声が聞こえた気がした。
 俺は突然地面に放り出された。

「──イテッ!!」
「ほう?お前か。
 強いネクロマンサーで指定して召喚したんだが、随分と子どもが来たもんだな。」

 見たことのない魔物の上に、立てた膝に腕を乗せた男が座っていた。燃えるような赤い髪。精悍な顔立ち。少なくともアジア系じゃない。──誰だ?

「──俺の名前を言ってみろ。」
 見知らぬ男は笑いながらそう言った。

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