37 / 55
第37話 精霊と妖精の森
しおりを挟む
「精霊と妖精の森、ですか?」
家庭教師の授業の休憩の時間、今日もシルヴィオはラヴェール王子と共に昼食をとっていた。
「ああ。各国にはそれぞれ、国を守護してくれている精霊がいるんだけどね。うちの国では王族は5歳になる年に、お礼と挨拶で訪ねることになっているんだけど……。」
なんだか歯切れが悪い様子のラヴェール王子。目線を下に落として言い淀んでいる。
「なんだか様子がおかしいらしいんだ。」
「様子がおかしい?」
「元々普段から人が近付かない場所なんだよね。妖精はイタズラ好きだから、下手に入り込むと、森で迷子にさせられることもあるから。」
ああ、とシルヴィオは、自分を入れ替えるイタズラをしようとしていたフィオレの顔を思い出しながら思った。
「どうおかしいのですか?」
「精霊と妖精の森は、とても澄んでいて、魔物が近付けない場所なんだ。だから中央聖教会の支部もその近くに立てられるのが常なんだけど、魔物が現れたと言うんだよ。」
「それまではいなかったのですか?」
「うん。森の外まで、浄化された空気が広がっているからね。淀んだ空気の場所でないと、魔物は生まれないとされているから。」
「兄さまはそこに行かないとまずいのですか?」
「各国の王族は、精霊の加護、または祝福をいただくことになっているんだ。このままだと、僕はそれを賜れないことになる……。」
「そうなると、兄さまは王族として認められない、ということですか?」
「そうなるね。精霊の加護または祝福のない王族は、他の国に認められないから。」
ラヴェール王子はしょんぼりとした様子で言った。ラヴェール王子を王太子にしようと考えているシルヴィオにとっても、それは困ったことになる。
するとそこへ、
【デイリーミッション
精霊の森の問題を解決せよ
報酬:精霊の加護】
とデイリーミッションが現れた。デイリーミッションで解決させろとは、なんとも乱暴な話である。1日で解決出来るとは、シルヴィオには思えなかった。
だが精霊の加護は、王族として認められる為に、シルヴィオにとっても必要なものだ。少し年齢は早いが、もらっておいて損はないだろう。
問題は、今日の授業を受けていては、それをする時間が足りないということだ。シルヴィオはお腹が痛いと言って、仮病で授業を休もうとした。すると、
「シルヴィオさまに腹痛をおこさせる料理をお出しするなどと……。
料理長はさっそくクビにして、投獄いたしましょう。宮侍医をここへ!」
と、王子宮の侍女頭が騒ぎ出してしまい、騒ぎを聞きつけた王妃さままでもが心配する様子を見て、シルヴィオは慌てて、気の所為でした!授業受けられます!と訂正する羽目になったのだった。
ラヴェール王子は先に授業に向かっていた為、とぼとぼと長い廊下を一人歩きながら、シルヴィオはため息をついた。
「はあ……。どうしようかな。」
そこへフィオレが現れて、
「あんた、あったま悪いのね!」
とクスクス笑い出した。
「フィオレ!久しぶり!ねえ、精霊と妖精の森がおかしいって聞いたんだけど、何か知ってる?」
するとフィオレは顔を曇らせた。
「……なんか変な子が近くにいるらしいの。妖精たちがみんな騒いでるわ。その子のせいでセフィーラさまの体調が悪くなって、森の空気が悪くなって住みにくいって。」
「──変な子?どんな子?」
「あんたと同い年の子どもよ。近くの教会で拾われて、そこで暮らしてるの。その子が来てから変なのよ。何人も体調が悪くなる人が出たり、死人まで出たみたいね。人間はその子どものせいだと気付いてないみたい。」
「セフィーラさまって誰?」
「森に住まう精霊の名前よ。妖精は精霊の眷属だから、セフィーラさまのお近くに住まえることは、妖精にとって名誉なことなのよ。私もしばらく帰ってないけど、本来なら精霊と妖精の森に住んでいたんだから。」
フィオレがドヤ顔でそう胸を張った。
「じゃあ、セフィーラさまの体調が悪かったら、フィオレも心配だよね。」
「そうなの。でも、私たちじゃ癒やして差し上げられないから……。」
とフィオレがしょんぼりする。
「なら、僕がどうにか出来ないか考えてみるよ。ねえフィオレ、なんとか授業を邪魔出来ないかな?僕、精霊と妖精の森に行きたいんだ。」
「いいわ。協力してあげる。あんたにどうにか出来るとは思えないけど、……でも、あんたには特別な力があるみたいだしね。」
そう言ってフィオレがツイッと飛んでいくと、しばらくして、授業を受ける為の部屋から家庭教師がお腹をかかえて飛び出して来る。そのままシルヴィオの横を通り過ぎて、しばらく待っても戻って来なかった。
部屋の中を覗き込むと、心配そうな表情を浮かべたラヴェール王子が、椅子に腰掛けてこちらを振り返っていた。
「先生、どうしちゃったんですか?」
「急にお腹が痛くなったみたいで、今日の授業はもう終わりだって。午後がまるっとあいちゃったな。」
見えていないのをいいことに、フィオレはラヴェール王子の肩に腰掛けながら、こちらにウインクをよこしてきた。どうやらフィオレがイタズラをしたらしい。
────────────────────
冬休みの間は毎日投稿します。
1/4を過ぎたらまた金土日配信となります。
X(旧Twitter)始めてみました。
よろしければアカウントフォローお願いします。
@YinYang2145675
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
ランキングには反映しませんが、作者のモチベーションが上がります。
家庭教師の授業の休憩の時間、今日もシルヴィオはラヴェール王子と共に昼食をとっていた。
「ああ。各国にはそれぞれ、国を守護してくれている精霊がいるんだけどね。うちの国では王族は5歳になる年に、お礼と挨拶で訪ねることになっているんだけど……。」
なんだか歯切れが悪い様子のラヴェール王子。目線を下に落として言い淀んでいる。
「なんだか様子がおかしいらしいんだ。」
「様子がおかしい?」
「元々普段から人が近付かない場所なんだよね。妖精はイタズラ好きだから、下手に入り込むと、森で迷子にさせられることもあるから。」
ああ、とシルヴィオは、自分を入れ替えるイタズラをしようとしていたフィオレの顔を思い出しながら思った。
「どうおかしいのですか?」
「精霊と妖精の森は、とても澄んでいて、魔物が近付けない場所なんだ。だから中央聖教会の支部もその近くに立てられるのが常なんだけど、魔物が現れたと言うんだよ。」
「それまではいなかったのですか?」
「うん。森の外まで、浄化された空気が広がっているからね。淀んだ空気の場所でないと、魔物は生まれないとされているから。」
「兄さまはそこに行かないとまずいのですか?」
「各国の王族は、精霊の加護、または祝福をいただくことになっているんだ。このままだと、僕はそれを賜れないことになる……。」
「そうなると、兄さまは王族として認められない、ということですか?」
「そうなるね。精霊の加護または祝福のない王族は、他の国に認められないから。」
ラヴェール王子はしょんぼりとした様子で言った。ラヴェール王子を王太子にしようと考えているシルヴィオにとっても、それは困ったことになる。
するとそこへ、
【デイリーミッション
精霊の森の問題を解決せよ
報酬:精霊の加護】
とデイリーミッションが現れた。デイリーミッションで解決させろとは、なんとも乱暴な話である。1日で解決出来るとは、シルヴィオには思えなかった。
だが精霊の加護は、王族として認められる為に、シルヴィオにとっても必要なものだ。少し年齢は早いが、もらっておいて損はないだろう。
問題は、今日の授業を受けていては、それをする時間が足りないということだ。シルヴィオはお腹が痛いと言って、仮病で授業を休もうとした。すると、
「シルヴィオさまに腹痛をおこさせる料理をお出しするなどと……。
料理長はさっそくクビにして、投獄いたしましょう。宮侍医をここへ!」
と、王子宮の侍女頭が騒ぎ出してしまい、騒ぎを聞きつけた王妃さままでもが心配する様子を見て、シルヴィオは慌てて、気の所為でした!授業受けられます!と訂正する羽目になったのだった。
ラヴェール王子は先に授業に向かっていた為、とぼとぼと長い廊下を一人歩きながら、シルヴィオはため息をついた。
「はあ……。どうしようかな。」
そこへフィオレが現れて、
「あんた、あったま悪いのね!」
とクスクス笑い出した。
「フィオレ!久しぶり!ねえ、精霊と妖精の森がおかしいって聞いたんだけど、何か知ってる?」
するとフィオレは顔を曇らせた。
「……なんか変な子が近くにいるらしいの。妖精たちがみんな騒いでるわ。その子のせいでセフィーラさまの体調が悪くなって、森の空気が悪くなって住みにくいって。」
「──変な子?どんな子?」
「あんたと同い年の子どもよ。近くの教会で拾われて、そこで暮らしてるの。その子が来てから変なのよ。何人も体調が悪くなる人が出たり、死人まで出たみたいね。人間はその子どものせいだと気付いてないみたい。」
「セフィーラさまって誰?」
「森に住まう精霊の名前よ。妖精は精霊の眷属だから、セフィーラさまのお近くに住まえることは、妖精にとって名誉なことなのよ。私もしばらく帰ってないけど、本来なら精霊と妖精の森に住んでいたんだから。」
フィオレがドヤ顔でそう胸を張った。
「じゃあ、セフィーラさまの体調が悪かったら、フィオレも心配だよね。」
「そうなの。でも、私たちじゃ癒やして差し上げられないから……。」
とフィオレがしょんぼりする。
「なら、僕がどうにか出来ないか考えてみるよ。ねえフィオレ、なんとか授業を邪魔出来ないかな?僕、精霊と妖精の森に行きたいんだ。」
「いいわ。協力してあげる。あんたにどうにか出来るとは思えないけど、……でも、あんたには特別な力があるみたいだしね。」
そう言ってフィオレがツイッと飛んでいくと、しばらくして、授業を受ける為の部屋から家庭教師がお腹をかかえて飛び出して来る。そのままシルヴィオの横を通り過ぎて、しばらく待っても戻って来なかった。
部屋の中を覗き込むと、心配そうな表情を浮かべたラヴェール王子が、椅子に腰掛けてこちらを振り返っていた。
「先生、どうしちゃったんですか?」
「急にお腹が痛くなったみたいで、今日の授業はもう終わりだって。午後がまるっとあいちゃったな。」
見えていないのをいいことに、フィオレはラヴェール王子の肩に腰掛けながら、こちらにウインクをよこしてきた。どうやらフィオレがイタズラをしたらしい。
────────────────────
冬休みの間は毎日投稿します。
1/4を過ぎたらまた金土日配信となります。
X(旧Twitter)始めてみました。
よろしければアカウントフォローお願いします。
@YinYang2145675
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
ランキングには反映しませんが、作者のモチベーションが上がります。
10
あなたにおすすめの小説
貴方がLv1から2に上がるまでに必要な経験値は【6億4873万5213】だと宣言されたけどレベル1の状態でも実は最強な村娘!!
ルシェ(Twitter名はカイトGT)
ファンタジー
この世界の勇者達に道案内をして欲しいと言われ素直に従う村娘のケロナ。
その道中で【戦闘レベル】なる物の存在を知った彼女は教会でレベルアップに必要な経験値量を言われて唖然とする。
ケロナがたった1レベル上昇する為に必要な経験値は...なんと億越えだったのだ!!。
それを勇者パーティの面々に鼻で笑われてしまうケロナだったが彼女はめげない!!。
そもそも今の彼女は村娘で戦う必要がないから安心だよね?。
※1話1話が物凄く短く500文字から1000文字程度で書かせていただくつもりです。
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します
すもも太郎
ファンタジー
伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。
その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。
出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。
そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。
大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。
今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。
※ハッピーエンドです
異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~
虎柄トラ
ファンタジー
下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。
意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。
女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。
敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。
剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。
一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。
快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた
巫叶月良成
ファンタジー
「異世界転生して天下を統一したら元の世界に戻してあげる」
大学生の明彦(あきひこ)は火事で死亡した後、転生の女神にそう言われて異世界転生する。
だが転生したのはなんと14歳の女の子。しかも筋力1&武器装備不可!
降り立った場所は国は三国が争う中心地の激戦区で、頼みの綱のスキルは『相手の情報を調べる本』という攻撃力が皆無のサーチスキルというありさま。
とにかく生き延びるため、知識と口先で超弱小国オムカ王国に取り入り安全を確保。
そして知力と魅力を駆使――知力の天才軍師『諸葛孔明』&魅力の救国の乙女『ジャンヌ・ダルク』となり元の世界に戻るために、兵を率いたり謀略調略なんでもして大陸制覇を目指す!!
……のはずが、女の子同士でいちゃいちゃしたり、襲われたり、恥ずかしい目にあわされたり、脱がされたり、揉まれたり、コスプレしたり、男性相手にときめいたり、元カノ(?)とすれ違ったりと全然関係ないことを色々やってたり。
お風呂回か水着回はなぜか1章に1話以上存在したりします。もちろんシリアスな場面もそれなりに。
毎日更新予定。
※過去に別サイトで展開していたものの加筆修正版となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる