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第41話 怪しい子どもを探せ
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怯えたように、ラヴェール王子が母親の顔を見上げる。
「わたくしが取り除いて差し上げましょう。こちらに。」
王妃さまは恐る恐る前へと踏み出した。セフィーラさまが額に手を当て、触れたところが黄緑色に光る。
「わたくしの祝福は、本来この国の王族にのみ授けておりましたが、あなたにも特別に祝福を授けました。これで毒は取り除かれたので安心して下さい。ラヴェール王子にも加護が与えられましたので、体内にあった毒は取り除かれています。」
「何から何までありがとうございます。まさかわたくしにまで、祝福をいただけるだなんて……。」
王妃は王族以外で初めて、王族の縁者であることを理由に精霊の祝福を賜った人間となった。王族でなくとも、精霊が気まぐれに祝福を授けることはあるが、授けられる場面を見たことのある人間はいなかったのだ。
精霊の祝福は、神が等しく与える祝福と違い、選ばれた人間しか得ることのないものだ。与えられた人間は尊敬の対象となる。
ましてや毒におかされた王妃を守る為に祝福を授けるなど、かつて例がない。王宮に勤める人々は、この国の王族は精霊に強く愛されているのだと実感していた。
「セフィーラさま、質問をよろしいでしょうか……?」
王妃さまがセフィーラさまを見つめる。
「はい、なんなりと。」
「わたくしには、もう一人、シルヴィオという息子がいるのですが、その子もわたくしの体を通じて毒を受けたということになりますでしょうか?」
「そうなりますね。」
「どうすれば、それは取り除けるでしょうか?キュアポーションが効く毒でしょうか。あの子がセフィーラさまより祝福をいただけるようになるには、まだかなりの時間がございますので、心配なのです……。」
祝福をもらいに行かれる年齢になれば、祝福によって毒が取り除かれるであろうが、今はまだ毒におかされた状態だ。
すぐに死ぬ程の量でなくとも、成長期の子どもの体内に毒があっては、内臓にどんな影響があるかもわからない。
王妃さまはそれを心配していたが、だからと言って精霊に早めに祝福が欲しいとは言い出せなかったのだろう。だから毒を直接取り除く方法を尋ねたのだ。
「その子どもは心配ありません。とても強い子どものようです。体内にあったであろう毒は、すべて消え去っているようです。」
それを聞いた王妃さまとラヴェール王子はホッとした表情を浮かべた。目の前にいないシルヴィオの体調がわかる筈もないのだが、精霊という特殊な存在の言うことの為、誰もその違和感に気が付かないのだった。
ちなみにシルヴィオは、デイリーミッションで手に入れたスキルが、既に毒無効にまで進化している。代わりに将来酒に酔えなくなるのだが、それはまだ誰も知らない話だ。
「それと、あなたの従者たちの体内に蓄積した毒ですが、キュアポーションでは回復しません。無味無臭の特別な毒です。」
「そんな……。」
外に出て来ていた毒見担当の従者たちが、口元を手で覆って戦慄している。
「ですが、わたくしの森にあるグナの葉を煎じて飲めば問題ありません。わたくしの祝福がかけられた植物です。ひと月も飲めば、体内から消え去るでしょう。」
「おお……。」
それを聞いた毒見担当は、ホッとした表情を浮かべた。
「──ジャーマン。」
国王は近くに控えていた宰相の名を呼んだ。
「はっ。ただちに。」
ジャーマン宰相は、国王の意図を言外に汲み取り、王妃さまに毒を盛った人間や、毒の出入りがどこから行われたのか、また流通ルートを調べるように、部下に命じた。
その頃、シルヴィオはフィオレと共に近くの教会へと足を伸ばしていた。精霊の体調を崩させる程の、悪しき魂を持って生まれた、神の加護を得ていた体の持ち主。
それが八阪ではないかと思ったからだ。ここの教会は中央聖教会の支部であり、孤児院などは併設されていない。
ここにいる子どもたちは、全員祭司の見習いであり、聖魔法か回復魔法を有している。
または聖職者という、特殊なスキルの持ち主だ。聖職者のスキルは、始めからレベル5の聖魔法が使えるが、それ以上にレベルが上がることがなく、魔法スキルに分類されていない、職業スキルと呼ばれるものである。
本来であれば12歳の鑑定の儀を待って、スキルがあることが判明してから、聖職者のスキル持ちは強制的に、それ以外は本人が希望すれば教会に所属することになる。
だが、教会に捨てられていた子どもは、先に鑑定の儀を行い、有用なスキルでなかった場合は孤児院へ、教会にとって有用なスキルであれば、教会で育てることにしている。
その為、まれにまだ小さい子どもが暮らしている場合があるのだった。
シルヴィオは隠密と消音行動というスキルを使用して、教会の中へと潜り込んだ。
フィオレは元々魔力が高い相手でなければ、姿が人に見えないので、堂々と中に潜り込んでいる。隠密は人にぶつかると解けてしまう為、シルヴィオは行き交う人々に気をつけながら、教会の中を歩き回った。
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「わたくしが取り除いて差し上げましょう。こちらに。」
王妃さまは恐る恐る前へと踏み出した。セフィーラさまが額に手を当て、触れたところが黄緑色に光る。
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「何から何までありがとうございます。まさかわたくしにまで、祝福をいただけるだなんて……。」
王妃は王族以外で初めて、王族の縁者であることを理由に精霊の祝福を賜った人間となった。王族でなくとも、精霊が気まぐれに祝福を授けることはあるが、授けられる場面を見たことのある人間はいなかったのだ。
精霊の祝福は、神が等しく与える祝福と違い、選ばれた人間しか得ることのないものだ。与えられた人間は尊敬の対象となる。
ましてや毒におかされた王妃を守る為に祝福を授けるなど、かつて例がない。王宮に勤める人々は、この国の王族は精霊に強く愛されているのだと実感していた。
「セフィーラさま、質問をよろしいでしょうか……?」
王妃さまがセフィーラさまを見つめる。
「はい、なんなりと。」
「わたくしには、もう一人、シルヴィオという息子がいるのですが、その子もわたくしの体を通じて毒を受けたということになりますでしょうか?」
「そうなりますね。」
「どうすれば、それは取り除けるでしょうか?キュアポーションが効く毒でしょうか。あの子がセフィーラさまより祝福をいただけるようになるには、まだかなりの時間がございますので、心配なのです……。」
祝福をもらいに行かれる年齢になれば、祝福によって毒が取り除かれるであろうが、今はまだ毒におかされた状態だ。
すぐに死ぬ程の量でなくとも、成長期の子どもの体内に毒があっては、内臓にどんな影響があるかもわからない。
王妃さまはそれを心配していたが、だからと言って精霊に早めに祝福が欲しいとは言い出せなかったのだろう。だから毒を直接取り除く方法を尋ねたのだ。
「その子どもは心配ありません。とても強い子どものようです。体内にあったであろう毒は、すべて消え去っているようです。」
それを聞いた王妃さまとラヴェール王子はホッとした表情を浮かべた。目の前にいないシルヴィオの体調がわかる筈もないのだが、精霊という特殊な存在の言うことの為、誰もその違和感に気が付かないのだった。
ちなみにシルヴィオは、デイリーミッションで手に入れたスキルが、既に毒無効にまで進化している。代わりに将来酒に酔えなくなるのだが、それはまだ誰も知らない話だ。
「それと、あなたの従者たちの体内に蓄積した毒ですが、キュアポーションでは回復しません。無味無臭の特別な毒です。」
「そんな……。」
外に出て来ていた毒見担当の従者たちが、口元を手で覆って戦慄している。
「ですが、わたくしの森にあるグナの葉を煎じて飲めば問題ありません。わたくしの祝福がかけられた植物です。ひと月も飲めば、体内から消え去るでしょう。」
「おお……。」
それを聞いた毒見担当は、ホッとした表情を浮かべた。
「──ジャーマン。」
国王は近くに控えていた宰相の名を呼んだ。
「はっ。ただちに。」
ジャーマン宰相は、国王の意図を言外に汲み取り、王妃さまに毒を盛った人間や、毒の出入りがどこから行われたのか、また流通ルートを調べるように、部下に命じた。
その頃、シルヴィオはフィオレと共に近くの教会へと足を伸ばしていた。精霊の体調を崩させる程の、悪しき魂を持って生まれた、神の加護を得ていた体の持ち主。
それが八阪ではないかと思ったからだ。ここの教会は中央聖教会の支部であり、孤児院などは併設されていない。
ここにいる子どもたちは、全員祭司の見習いであり、聖魔法か回復魔法を有している。
または聖職者という、特殊なスキルの持ち主だ。聖職者のスキルは、始めからレベル5の聖魔法が使えるが、それ以上にレベルが上がることがなく、魔法スキルに分類されていない、職業スキルと呼ばれるものである。
本来であれば12歳の鑑定の儀を待って、スキルがあることが判明してから、聖職者のスキル持ちは強制的に、それ以外は本人が希望すれば教会に所属することになる。
だが、教会に捨てられていた子どもは、先に鑑定の儀を行い、有用なスキルでなかった場合は孤児院へ、教会にとって有用なスキルであれば、教会で育てることにしている。
その為、まれにまだ小さい子どもが暮らしている場合があるのだった。
シルヴィオは隠密と消音行動というスキルを使用して、教会の中へと潜り込んだ。
フィオレは元々魔力が高い相手でなければ、姿が人に見えないので、堂々と中に潜り込んでいる。隠密は人にぶつかると解けてしまう為、シルヴィオは行き交う人々に気をつけながら、教会の中を歩き回った。
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