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第54話 ランディー王子の嘘のほころびの糸
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「ですが、僕が他の人を好きになる前に、加護縫いの聖女が死んでしまうと、その力は別の人間に移ることなく、次に女神アテナに愛された人間が生まれるまで、加護縫いの聖女は生まれないことになるのです。」
些細な違いのようだが、大きく異なる。
1.加護縫いの聖女は、女神アテナの加護を持つ者に愛されることによって生まれる。
2.女神アテナの加護を持つ者が別の人間を愛すると、その者が加護縫いの聖女に変わる。
3.ただし女神アテナの加護を持つ者が、別の人間を愛する前に加護縫いの聖女が死ぬと、次の加護縫いの聖女は生まれない。
まとめるとこういうことだ。
「なるほど……。じゃあランディー王子は、他に好きな人が出来る前に、私に死なれると困るわけですね。」
「……それはそうですが、そういう言い方は好きではありませんね。」
「ご、ごめんなさい。」
ミリアム以外を好きになどなれる筈がないと思っているランディー王子は、少しムスッとした表情でそう言った。
「つまり僕が特異点でなければ時間は巻き戻らず、加護縫いの聖女は次世代まで現れなかったことになりますね。」
「このことは、ルーパート王国の人間であれば、誰でも知っていることでしょうか?」
「いえ。王家の人間か、それに近しい人間しか知らないことですね。」
「じゃあ、ルーパート王国の王家に近い人間が、アイリーン嬢に教えた……?ひょっとして、王族と関わりがあったり?」
「可能性はあります。王族であっても正確なことは、王位を継いだ人間と、女神アテナに選ばれた人間にしか知らされませんので、アイリーン嬢が間違った知識を持っていたのも無理のないことですね。」
「なるほど……。アイリーン嬢はなぜかルーパート王国の王族か、王族に近しい人間しか知らない筈の知識を持っていた……。」
「アイリーン嬢が僕に近付こうとしているのも、それが理由かも知れませんね。」
「──と言うと?」
「過去の巻き戻りにおいて、今まで僕はほとんどこの国にくることはありませんでしたから、アイリーン嬢と関わる機会はありませんでしたが、今はこの国の社交界にいる。近付こうと思えば近付けます。」
「そうですね。」
「アイリーン嬢はフィリップ王子を愛していなかった。つまり、何か目的があってフィリップ王子に近付いたことになる。」
「目的……。」
「わかりませんか?」
「う……わ、わからないです……。」
「アイリーン嬢が聖女として活躍している場面を、誰も見たことがない。加護縫いの聖女の生まれ方を知っている。そしてそれは僕に愛されることだ。」
「……まさか、アイリーン嬢が加護縫いの聖女になろうとしてる、ってことですか?ランディー王子に愛されることで?」
「おそらくは。多分ですが、彼女は本物の聖女じゃない。だけど加護縫いの聖女になれれば、彼女は聖女を堂々と名乗れます。」
それならば納得のいく部分も多い。もしもミリアムが毎回殺されるのが、ミリアムが死ねば加護縫いの聖女になれるのだと、敵が勘違いしていたのだとしたら?
ランディー王子に愛されるより、ミリアムを殺して成り代わるほうが、ずっと容易いと思うことだろう。
「でも……でもですよ?アイリーン嬢がフィリップ王子に近付けば、私に近付くチャンスが増えますけど、私、それなら殺されてないとおかしいじゃないですか。」
そう言われて、ランディー王子はビクッとする。
「ランディー王子は過去の人生でこの国にいなかった。今はいるから、成り代わる為にランディー王子に近付くのはわかりますよ?」
「ミリぽむ、どういうことだッピ?」
「ランディー王子がいないのに、愛されて加護縫いの聖女になるなんて不可能でしょ?」
「そうだッピね?」
「それ以外で成り代わるとしたら、私が死ねば成り代われると思ってたんだから、私を殺す為にフィリップ王子に近付いたんじゃなきゃ、おかしいじゃない。」
「んんん?どういうことだッピ?さっぱりわからないッピ~!」
アリアドネが空中を飛び回る。
「アイリーンはフィリップ王子を愛していなかった。アイリーンは目的があってフィリップ王子に近付いた。アイリーンは加護縫いの聖女に成り代わろうとしていた。」
ミリアムは指を折って数えるように、手を見つめながらそう言う。
「だったら、私を殺す為に近付いた以外に、目的ってあるのかしらって……でも私、毎回別に死んでないし……って、え!?」
目の前のランディー王子から、嘘のほころびの糸が揺れている。
「ラ、ランディー王子、それって……。」
「え?」
「ランディー、嘘のほころびの糸ヨ!」
パイドラーが叫んだ。ランディー王子は思わず糸を隠すようにサッと触れようとした。
「そのほころび、見逃しません!」
「ランディー!!」
パイドラーが叫ぶ。ミリアムは嘘のほころびの糸を引き抜いた。ランディー王子が呆然とする。
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些細な違いのようだが、大きく異なる。
1.加護縫いの聖女は、女神アテナの加護を持つ者に愛されることによって生まれる。
2.女神アテナの加護を持つ者が別の人間を愛すると、その者が加護縫いの聖女に変わる。
3.ただし女神アテナの加護を持つ者が、別の人間を愛する前に加護縫いの聖女が死ぬと、次の加護縫いの聖女は生まれない。
まとめるとこういうことだ。
「なるほど……。じゃあランディー王子は、他に好きな人が出来る前に、私に死なれると困るわけですね。」
「……それはそうですが、そういう言い方は好きではありませんね。」
「ご、ごめんなさい。」
ミリアム以外を好きになどなれる筈がないと思っているランディー王子は、少しムスッとした表情でそう言った。
「つまり僕が特異点でなければ時間は巻き戻らず、加護縫いの聖女は次世代まで現れなかったことになりますね。」
「このことは、ルーパート王国の人間であれば、誰でも知っていることでしょうか?」
「いえ。王家の人間か、それに近しい人間しか知らないことですね。」
「じゃあ、ルーパート王国の王家に近い人間が、アイリーン嬢に教えた……?ひょっとして、王族と関わりがあったり?」
「可能性はあります。王族であっても正確なことは、王位を継いだ人間と、女神アテナに選ばれた人間にしか知らされませんので、アイリーン嬢が間違った知識を持っていたのも無理のないことですね。」
「なるほど……。アイリーン嬢はなぜかルーパート王国の王族か、王族に近しい人間しか知らない筈の知識を持っていた……。」
「アイリーン嬢が僕に近付こうとしているのも、それが理由かも知れませんね。」
「──と言うと?」
「過去の巻き戻りにおいて、今まで僕はほとんどこの国にくることはありませんでしたから、アイリーン嬢と関わる機会はありませんでしたが、今はこの国の社交界にいる。近付こうと思えば近付けます。」
「そうですね。」
「アイリーン嬢はフィリップ王子を愛していなかった。つまり、何か目的があってフィリップ王子に近付いたことになる。」
「目的……。」
「わかりませんか?」
「う……わ、わからないです……。」
「アイリーン嬢が聖女として活躍している場面を、誰も見たことがない。加護縫いの聖女の生まれ方を知っている。そしてそれは僕に愛されることだ。」
「……まさか、アイリーン嬢が加護縫いの聖女になろうとしてる、ってことですか?ランディー王子に愛されることで?」
「おそらくは。多分ですが、彼女は本物の聖女じゃない。だけど加護縫いの聖女になれれば、彼女は聖女を堂々と名乗れます。」
それならば納得のいく部分も多い。もしもミリアムが毎回殺されるのが、ミリアムが死ねば加護縫いの聖女になれるのだと、敵が勘違いしていたのだとしたら?
ランディー王子に愛されるより、ミリアムを殺して成り代わるほうが、ずっと容易いと思うことだろう。
「でも……でもですよ?アイリーン嬢がフィリップ王子に近付けば、私に近付くチャンスが増えますけど、私、それなら殺されてないとおかしいじゃないですか。」
そう言われて、ランディー王子はビクッとする。
「ランディー王子は過去の人生でこの国にいなかった。今はいるから、成り代わる為にランディー王子に近付くのはわかりますよ?」
「ミリぽむ、どういうことだッピ?」
「ランディー王子がいないのに、愛されて加護縫いの聖女になるなんて不可能でしょ?」
「そうだッピね?」
「それ以外で成り代わるとしたら、私が死ねば成り代われると思ってたんだから、私を殺す為にフィリップ王子に近付いたんじゃなきゃ、おかしいじゃない。」
「んんん?どういうことだッピ?さっぱりわからないッピ~!」
アリアドネが空中を飛び回る。
「アイリーンはフィリップ王子を愛していなかった。アイリーンは目的があってフィリップ王子に近付いた。アイリーンは加護縫いの聖女に成り代わろうとしていた。」
ミリアムは指を折って数えるように、手を見つめながらそう言う。
「だったら、私を殺す為に近付いた以外に、目的ってあるのかしらって……でも私、毎回別に死んでないし……って、え!?」
目の前のランディー王子から、嘘のほころびの糸が揺れている。
「ラ、ランディー王子、それって……。」
「え?」
「ランディー、嘘のほころびの糸ヨ!」
パイドラーが叫んだ。ランディー王子は思わず糸を隠すようにサッと触れようとした。
「そのほころび、見逃しません!」
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