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3.この邪神龍めんどくせぇ
しおりを挟むやあ、皆さん、こんにちわ。
どこにでもいる平凡な高校生、神木静奈(カミキ シズナ)です。
つい先日異世界に転移し、邪神龍を名乗る龍と契約しちゃいました。
ええ、意味が分かりません。
そう言う小説は飽きる程読みましたが、いざ自分の身に起きたら、もう面白い位に混乱するものだと学びました。
はぁー、何でこんなことになったんだろう……。
『おーい、シズナー、どうしたのだ、暗い顔をして?』
頭の中に声が響く。
この声の主こそ、俺と契約した邪神龍クルワールだ。
長い名前だからクルルって呼んでいる。
本人も了承済みだ。
尻尾をパタパタ振りながらこっちを見ている。
どんな見た目かって?
西洋風のデッカいドラゴンを黒くして、めっちゃ禍々しい見た目にしてみ?
だいたいそんな感じ。
めっちゃ見た目は怖い。
『おーい、シズナー、聞こえておるのか?』
声をかけてくる姿は、それはもう勇者を迎え撃つラスボスの様な風格である。
ただまあ、俺にはなぜかこの龍に対する恐怖心が湧かない。
クルル曰く、そう言う適性があるとの事だ。
それこそが契約者の資格なんだとか。
うーん、いまいち実感がわかないけど、まあ、その辺は後にしよう。
『おい、シズナ、無視するでない!寂しいではないか!おーい!』
とりあえず、あれだ。
だいぶ遅くなったけど、現状を確認するとしよう。
先ず現状はこうだ。
学校からの帰り道、俺はなぜか異世界に転移した。
場所はどこかの洞窟。
そして、訳の分からない状況でも生き延びる為に、目の前の邪神龍と契約した。
『おーい……シズナー……おーい……』
次に持ち物。
服装は学生服のまま。
鞄と、コンビニ袋。ポケットにはスマホ。
スマホは当然の様に圏外だった。
ただ内蔵されてるいくつかのアプリは使えるみたいだ。
電卓とか、メモ帳とか。
と言っても電源がいつ切れるか分からないし、大事に使おう。
あとは……鞄の中もそのままだな。
教科書とノートが数冊。
シャーペン等の筆記用具。
あと財布。所持金は千三百五十二円。お小遣い制です。
あとは……ティッシュとハンカチ、それにガムか。
持ってる物は以上だ。
『…………シズナァ……無視するでないぞぉ……』
次に場所だな。
見渡す限り岩肌の半球体上の空間だ。
大きさとしては体育館の二倍位かな。
どっかの地下なのかなぁ?
でも視界は明るい。
所々に生えてるクリスタルが光源となってるからだ。
もしかして、あれかな。
ダンジョンとか言うヤツとか?
異世界小説のお約束。
あ、ヤバい。ちょっとわくわくしてきた。
まあ、でもこうして俺が悶々と考えるよりも、クルルに聞くのが一番良いよな。
そんな当たり前の事に今更気付く。
「おーい、クルルー」
『…………』
あれ?返事がない。
見れば、隅っこで丸まってる邪神龍が居た。
「あれ?どうしたの、クルル?」
『……(ムスッ)』
なんかむくれていらっしゃる。
「おーい、どうしたんだよ、クルル」
なんで怒ってるんだ?
ん?そう言えば、さっきから話しかけられてたような気がするな。
もしかしてアレか?話しかけたのに、無視しちゃったから、怒ってるのか?
「…………」(ふりふり)
クルルは答えないが、尻尾が二回ほど揺れた。
どうやら、正解らしい。
無視されてふてくされるとか、なんなんだこの邪神龍。
「なぁ、悪かったって。ちょっと考え事してただけなんだよ。別に無視したわけじゃないんだよ」
『…………』(チラッ)
ホントに?みたいな感じでチラ見してくる邪神龍。
「ホントだって、信じてくれよ」
『…………でも、無視したではないか、契約者のくせに』
うわぁ、めんどくせぇな、コイツ。
『……っ!い、今、儂の事面倒臭いと思ったじゃろ!契約者のくせに!』
あ、そうだ、コイツ俺の思考が読めるんだった。
ああ、もう!ホントに面倒臭いな!
『むぅぅぅ~~~また面倒臭いとおもったのじゃ~』
あー、ますますむくれちゃったよ。
「悪かったよ!謝るから!何でも言う事聞いてやるから、話を進めさせてくれ!」
『―――っ!』
俺がそう言うと、クルルはピクリと反応した。
『……い、今“なんでもする”と言ったのじゃな?』
「ああ、言ったよ。出来る範囲で、何でもしてやるよ」
『ほ、本当じゃな?男に二言は無いな?』
「ほ、本当だ……」
い、一体何を要求するつもりだ、コイツ……?
まさか魂を寄越せとか―――。
『じゃ、じゃあシズナよ!契約者として、要求する!』
「……(ごくり)」
「儂の頭を撫でよ!』
「……………は?」
『聞こえなかったのか?頭を撫でよ、と言ったのじゃ!』
クルルは俺の前に頭を差し出してくる。
「デカすぎで、頭に届かないんだけど……」
『は、鼻先で構わん!』
「え、そうなの?じゃあ……」
なでなで。
なでなでなで。
『~~~~~~~~ッ』
俺が撫でると、クルルは尻尾をぶんぶんと振り乱した。
どうやら気持ち良かったらしい。
『ま、まあ!今回は!今回はこれで勘弁してやろう!ああ、仕方ない!お主は儂の契約者なのじゃからな!だが、次は無視するでないぞ!いいな!』
「あ、ああ……」
何この邪神龍。
ちょっと可愛いんですけど。
『それで、儂に何か聞きたいことがあるのではなかったのか?』
「ああ、そうだった」
この場所とこの世界について聞きたかったんだ。
どうやら、ようやく本題に入れそうだ。
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