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絆編
ネガティブバースト
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これから使うのは、とにかく強力な範囲スキル。糸が張り巡らされたこの森では、距離を取れずテレサが巻き込まれてしまう。ナイトスワンプで沈めることも考えたが、花粉の下に糸があるかもしれない。
確実なのは、上だ。真上に飛べば、たった一歩で事足りる。
「えーっと、強化されたすべての力を使って、ただ上にジャンプするわけ?」
「そういうこと。単純な動作だから、体の使い方を練習する必要もない。不満か?」
「……信じるわ。覚悟は出来てる」
「敵の目が戻る前に始めるぞ。【ダークネス】10連」
糸は上にもある。ダークネスで断ち切ってやれば、脱出ルートの完成だ。行動を読ませないために、いくつかは無作為な方向に放っておいた。
攻撃を受けたと錯覚したアラクネは、用心のために糸を引く。俺たちの攻撃を防ぐ糸の壁を作り出す。ここまでは思惑通りだな……。
「もし失敗して巻き込まれても、あんたを恨んだりしない」
返事はしない。小さな肩をぽんと叩いて、上を指差した。
「飛べ! テレサ!」
テレサは、真上に飛び上がった。この勢いは、跳躍なんて可愛いものじゃない。上空まで届くかもしれない。きっと、ネガティブバーストに巻き込まれないはずだ……。
「お貴族様との約束を違えることになるが、まぁいいさ。何もかもアラクネのせいにすればいい。さぁて、汚い花火といこうか……っ!?」
ネガティブバーストを使うと決めた瞬間……体内のマナが暴れまわる。黒い何かが流れ込んできて、これまで感じたことのない怒りと絶望が押し寄せる。
「面倒だ……何もかも……面倒だ……もうどうでもいい」
まるで自暴自棄になったような。俺らしくない考えに支配され、自然と口から漏れていた。
「約束なんか、するんじゃなかった! どいつもこいつも俺の邪魔ばかりしやがって……すべてまとめて! 滅んでしまえぇぇぇっ!!」
【ネガティブバースト】
体内で荒れ狂うマナを一気に解放すると、俺の視界が黒に染まった。見えなくても感じる。俺を中心に黒い波動が広がっていく。それはダークレイを超える闇の力……触れたものすべてを消し去る究極の力だ。
スノーウッドを飲み込み、糸を飲み込み、触れたものすべてを消滅させる。そのたびに憤りが解消されていく。とても良い気分だ。俺はバカだった。もっと早くこうするべきだった。
邪魔なものや、ストレスの原因はすべて消し去ればいい。この力があれば簡単なことだ。誰にも止められやしない。
清々しい気分も、またすぐに怒りに染まる。アラクネが作り出した糸の壁が、生意気にもネガティブバーストに耐えているのだ。
「無駄な努力だっ!!」
感情に身を任せると、黒い波動の威力が増した。抗っていた糸の壁を消し去り、アラクネが新たに作る糸の壁もことごとく消し去る。
最後に、やけにしぶとい糸の繭に触れた。恐らくはアラクネが自分の身を守るシェルターのようなものだろう。それも無駄な足掻きだ。
ぶち破っていく感覚がある。そのたびに喜びに支配される。強者の特権に浸っているうちに、すべての抵抗が消えた……。
広がり続けていた闇の波動も消えていく。視界が開けていくと、強烈なめまいがした。これはMPを使い切った弊害だ。
前のめりに倒れ込む最中、アラクネの死体が見えた。体の半分を消し飛ばされ、瞳から光も消えている。膨大だったやつの体には、一筋のマナの光さえない。
「俺の……勝ちだ……っ!」
地面に倒れ込んだまま優越感に浸っていると、上体を起こされ、口に小瓶を突っ込まれた。どうやらテレサが降りてきたらしい。
「どうだ見たか! これが俺の本気だ!!」
「上から見てたわ。とんでもないスキルね。今でも寒気がする」
「……手を離せ」
「えっ? まだムリしないほうが――」
手を振り払い、ふらふらと進む。憎たらしいアラクネの死体を見下ろし、思い切り踏みつけた。
「このっ、クソっ、雑魚がっ!!」
踏みつけても踏みつけても、潰れない。魔術師のひ弱な力では、こいつに傷一つ付けられないようだ。もう一度ネガティブバーストを使って、完全に消滅させてやろうか。きっとスカっとするぞ。
「ちょっと! どうしたのよっ!?」
「何がだ? 勝利の余韻に水を差すなっ!!」
「……らしくない。あんたらしくない。だってあんたは、こんなことしない」
「ちょっと魂を繋げたくらいで、俺のすべてを知った気か?」
「……ヌルの首を持ち帰ってきたとき。あたしが感情に身を任せて、腐った頭を踏み潰そうとしたとき、止めたじゃない!! とても悲しそうな目で止めたのよっ!! そのあんたが、こんなことをするなんておかしいわ!」
「こいつには苦労させられた。少しくらい踏み潰しても構わん!」
「……なんだか今のあんたは、怖いわ」
俺が怖い? かっこいいだろう? 伝説の化け物を、最強のスキルでぶっ殺したんだぞ。それが……怖い……そう思われているのか……?
全身を駆け巡っていた高揚感が、スっと引いていく。同時に気持ちが沈んでいく。残ったのは、激しい自己嫌悪だけだった。
「俺は一体、何をしているんだ? こんな無駄なことに時間をかけてどうするんだ? こいつを蹴る暇があるなら、地面にぶっ倒れたいはずなのに……」
「きっとアラクネのスキルのせいね。いつものあんたなら絶対しないもの」
「あ、あぁ……そうだな……」
頭をよぎったのは、ネガティブバーストの説明文だ。精神を汚染すると書かれていたが、これがスキルの弊害なのだろうか?
自分が自分ではなくなる感覚。まるで別人が入り込んだように、間抜けにも怒っていた。しかし記憶は鮮明に残っている。思い出すだけでゾッとした……。
「……あっ! あんたの腕はどこ!? 早く治さないと!」
俺の腕は、もうどこにもない。アラクネと一緒に消滅した。他でもない、俺が消し飛ばした。力なく首を振ると、テレサがうつむいた……。
「あたしのせいだ……」
「俺のスキルで消滅したんだ」
「あたし、役に立つって言ったのに……足手まといだった。ずっとあんたに守られて、庇われて……あたしのせいで腕を――」
「違う。そうじゃない。俺が弱かったから、片腕を失ったんだ――」
「あたしのせいだ。あたしが……死ねば良かったんだぁ……あぁぁっ」
両手で顔を抑え、地面に膝を付き、背中を丸めて泣き出すその様は、とても小さく見える。慰めてやりたいが、今はどの言葉も届かないだろう。抱きしめてやっても少しも落ち着いてくれやしない……。
「テレサちゃん、ごめんなぁ。おじさん、頑張ったんだけどなぁ。やっぱり弱くてなぁ。キレイに勝てなくてごめんなぁ。かっこいいところ見せられなかったよ……」
スキルの副作用だろうか? 普段なら絶対に言わないであろう弱音を吐き出していた。
だが、その言葉はテレサに届いたらしい。やっと顔を上げてくれた。涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔だった。
「あんたは……いつだって……かっこいいじゃない……っ」
「そ、そうか? いやぁ、照れるなぁ」
「……どうして笑えるの? 怒るところでしょ!」
「誰に? お前にか? 何度も言ってるが、俺が弱かったせいだ。ぶっちゃけアラクネが強すぎた。片腕で済んで良かったよ」
「あたしが足を引っ張らなかったら、腕を失わずに済んだわ。守るって約束したのに……あたしのせいで……あんたの人生っ、台無しにしちゃった……っ」
いつの間にかソウルリンクが切れている。ぼそりと呟かれてよく聞こえなかったが……。
「聞き間違いでなければ、俺の人生が、台無しと言ったか?」
「そうよ。何もかもあたしのせい。恨んでよ。殴ってよ。一生をかけて償うから――」
「勝手に決め付けるなこのクソガキがっ!! 俺の人生が台無しになったかどうかは、俺が決める。それも死の間際に、初めて、分かることだ!!」
「だったら……どうしたらいいのよ……どうすれば許して貰えるの……っ」
「最初から怒ってないと言ってるだろうが。可哀想なやつ認定をされてムカついただけだ。これまで通りに接しろ。お門違いな贖罪の気持ちがあるなら、ムリにでも普通に接しろ。すぐに慣れる」
「うん……ごめん。ごめんね……っ」
「謝らなくていいから肩を貸せ。帰るぞ」
美少女に肩を借りて歩くなんざ、男としてはカッコ悪い。だが、おじさん的にはとても良い。どさくさに紛れておっぱい揉めるからな。うほほっ。
「テレサ……(おっぱい)大きくなったな……」
「まだまだ(背が)大きくなるわよ」
「まじでか。それは楽しみだなぁ。D(カップ)くらいになっちゃう?」
「んー、最終的には、C(冒険者のランク)くらいじゃない? あんたが望むなら、Bを目指してもいいわよ」
「減ってんじゃねーか!?」
「??? 何を言ってんの……まさか胸の話だったの!?」
「この流れで、他にあると思うか……?」
「あるでしょ……あはははっ、あんたらしいわ。いつものあんたらしい。好きなだけ揉ませてあげるから、頑張って歩いてね。ほらっ、頑張って……っ」
左腕の鈍い痛みは、右手から伝わる柔らかな感触のおかげで忘れられた。
アラクネが死んだことで、糸は力を失った。もう踏んでも動かない。ただの糸だ。
こうして俺たちは、死の森から生きて帰ったのだった……。
あとがき
いつもは事後処理的な話があるけど、今回はバッサリカットします。
詳しいことはそのうち活動報告にでも書こうかな。興味ある人は読んでねって感じで。
これにて絆編終了。次回から新章です。冒険話が極端に減ってエロの比率が増える予定
確実なのは、上だ。真上に飛べば、たった一歩で事足りる。
「えーっと、強化されたすべての力を使って、ただ上にジャンプするわけ?」
「そういうこと。単純な動作だから、体の使い方を練習する必要もない。不満か?」
「……信じるわ。覚悟は出来てる」
「敵の目が戻る前に始めるぞ。【ダークネス】10連」
糸は上にもある。ダークネスで断ち切ってやれば、脱出ルートの完成だ。行動を読ませないために、いくつかは無作為な方向に放っておいた。
攻撃を受けたと錯覚したアラクネは、用心のために糸を引く。俺たちの攻撃を防ぐ糸の壁を作り出す。ここまでは思惑通りだな……。
「もし失敗して巻き込まれても、あんたを恨んだりしない」
返事はしない。小さな肩をぽんと叩いて、上を指差した。
「飛べ! テレサ!」
テレサは、真上に飛び上がった。この勢いは、跳躍なんて可愛いものじゃない。上空まで届くかもしれない。きっと、ネガティブバーストに巻き込まれないはずだ……。
「お貴族様との約束を違えることになるが、まぁいいさ。何もかもアラクネのせいにすればいい。さぁて、汚い花火といこうか……っ!?」
ネガティブバーストを使うと決めた瞬間……体内のマナが暴れまわる。黒い何かが流れ込んできて、これまで感じたことのない怒りと絶望が押し寄せる。
「面倒だ……何もかも……面倒だ……もうどうでもいい」
まるで自暴自棄になったような。俺らしくない考えに支配され、自然と口から漏れていた。
「約束なんか、するんじゃなかった! どいつもこいつも俺の邪魔ばかりしやがって……すべてまとめて! 滅んでしまえぇぇぇっ!!」
【ネガティブバースト】
体内で荒れ狂うマナを一気に解放すると、俺の視界が黒に染まった。見えなくても感じる。俺を中心に黒い波動が広がっていく。それはダークレイを超える闇の力……触れたものすべてを消し去る究極の力だ。
スノーウッドを飲み込み、糸を飲み込み、触れたものすべてを消滅させる。そのたびに憤りが解消されていく。とても良い気分だ。俺はバカだった。もっと早くこうするべきだった。
邪魔なものや、ストレスの原因はすべて消し去ればいい。この力があれば簡単なことだ。誰にも止められやしない。
清々しい気分も、またすぐに怒りに染まる。アラクネが作り出した糸の壁が、生意気にもネガティブバーストに耐えているのだ。
「無駄な努力だっ!!」
感情に身を任せると、黒い波動の威力が増した。抗っていた糸の壁を消し去り、アラクネが新たに作る糸の壁もことごとく消し去る。
最後に、やけにしぶとい糸の繭に触れた。恐らくはアラクネが自分の身を守るシェルターのようなものだろう。それも無駄な足掻きだ。
ぶち破っていく感覚がある。そのたびに喜びに支配される。強者の特権に浸っているうちに、すべての抵抗が消えた……。
広がり続けていた闇の波動も消えていく。視界が開けていくと、強烈なめまいがした。これはMPを使い切った弊害だ。
前のめりに倒れ込む最中、アラクネの死体が見えた。体の半分を消し飛ばされ、瞳から光も消えている。膨大だったやつの体には、一筋のマナの光さえない。
「俺の……勝ちだ……っ!」
地面に倒れ込んだまま優越感に浸っていると、上体を起こされ、口に小瓶を突っ込まれた。どうやらテレサが降りてきたらしい。
「どうだ見たか! これが俺の本気だ!!」
「上から見てたわ。とんでもないスキルね。今でも寒気がする」
「……手を離せ」
「えっ? まだムリしないほうが――」
手を振り払い、ふらふらと進む。憎たらしいアラクネの死体を見下ろし、思い切り踏みつけた。
「このっ、クソっ、雑魚がっ!!」
踏みつけても踏みつけても、潰れない。魔術師のひ弱な力では、こいつに傷一つ付けられないようだ。もう一度ネガティブバーストを使って、完全に消滅させてやろうか。きっとスカっとするぞ。
「ちょっと! どうしたのよっ!?」
「何がだ? 勝利の余韻に水を差すなっ!!」
「……らしくない。あんたらしくない。だってあんたは、こんなことしない」
「ちょっと魂を繋げたくらいで、俺のすべてを知った気か?」
「……ヌルの首を持ち帰ってきたとき。あたしが感情に身を任せて、腐った頭を踏み潰そうとしたとき、止めたじゃない!! とても悲しそうな目で止めたのよっ!! そのあんたが、こんなことをするなんておかしいわ!」
「こいつには苦労させられた。少しくらい踏み潰しても構わん!」
「……なんだか今のあんたは、怖いわ」
俺が怖い? かっこいいだろう? 伝説の化け物を、最強のスキルでぶっ殺したんだぞ。それが……怖い……そう思われているのか……?
全身を駆け巡っていた高揚感が、スっと引いていく。同時に気持ちが沈んでいく。残ったのは、激しい自己嫌悪だけだった。
「俺は一体、何をしているんだ? こんな無駄なことに時間をかけてどうするんだ? こいつを蹴る暇があるなら、地面にぶっ倒れたいはずなのに……」
「きっとアラクネのスキルのせいね。いつものあんたなら絶対しないもの」
「あ、あぁ……そうだな……」
頭をよぎったのは、ネガティブバーストの説明文だ。精神を汚染すると書かれていたが、これがスキルの弊害なのだろうか?
自分が自分ではなくなる感覚。まるで別人が入り込んだように、間抜けにも怒っていた。しかし記憶は鮮明に残っている。思い出すだけでゾッとした……。
「……あっ! あんたの腕はどこ!? 早く治さないと!」
俺の腕は、もうどこにもない。アラクネと一緒に消滅した。他でもない、俺が消し飛ばした。力なく首を振ると、テレサがうつむいた……。
「あたしのせいだ……」
「俺のスキルで消滅したんだ」
「あたし、役に立つって言ったのに……足手まといだった。ずっとあんたに守られて、庇われて……あたしのせいで腕を――」
「違う。そうじゃない。俺が弱かったから、片腕を失ったんだ――」
「あたしのせいだ。あたしが……死ねば良かったんだぁ……あぁぁっ」
両手で顔を抑え、地面に膝を付き、背中を丸めて泣き出すその様は、とても小さく見える。慰めてやりたいが、今はどの言葉も届かないだろう。抱きしめてやっても少しも落ち着いてくれやしない……。
「テレサちゃん、ごめんなぁ。おじさん、頑張ったんだけどなぁ。やっぱり弱くてなぁ。キレイに勝てなくてごめんなぁ。かっこいいところ見せられなかったよ……」
スキルの副作用だろうか? 普段なら絶対に言わないであろう弱音を吐き出していた。
だが、その言葉はテレサに届いたらしい。やっと顔を上げてくれた。涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔だった。
「あんたは……いつだって……かっこいいじゃない……っ」
「そ、そうか? いやぁ、照れるなぁ」
「……どうして笑えるの? 怒るところでしょ!」
「誰に? お前にか? 何度も言ってるが、俺が弱かったせいだ。ぶっちゃけアラクネが強すぎた。片腕で済んで良かったよ」
「あたしが足を引っ張らなかったら、腕を失わずに済んだわ。守るって約束したのに……あたしのせいで……あんたの人生っ、台無しにしちゃった……っ」
いつの間にかソウルリンクが切れている。ぼそりと呟かれてよく聞こえなかったが……。
「聞き間違いでなければ、俺の人生が、台無しと言ったか?」
「そうよ。何もかもあたしのせい。恨んでよ。殴ってよ。一生をかけて償うから――」
「勝手に決め付けるなこのクソガキがっ!! 俺の人生が台無しになったかどうかは、俺が決める。それも死の間際に、初めて、分かることだ!!」
「だったら……どうしたらいいのよ……どうすれば許して貰えるの……っ」
「最初から怒ってないと言ってるだろうが。可哀想なやつ認定をされてムカついただけだ。これまで通りに接しろ。お門違いな贖罪の気持ちがあるなら、ムリにでも普通に接しろ。すぐに慣れる」
「うん……ごめん。ごめんね……っ」
「謝らなくていいから肩を貸せ。帰るぞ」
美少女に肩を借りて歩くなんざ、男としてはカッコ悪い。だが、おじさん的にはとても良い。どさくさに紛れておっぱい揉めるからな。うほほっ。
「テレサ……(おっぱい)大きくなったな……」
「まだまだ(背が)大きくなるわよ」
「まじでか。それは楽しみだなぁ。D(カップ)くらいになっちゃう?」
「んー、最終的には、C(冒険者のランク)くらいじゃない? あんたが望むなら、Bを目指してもいいわよ」
「減ってんじゃねーか!?」
「??? 何を言ってんの……まさか胸の話だったの!?」
「この流れで、他にあると思うか……?」
「あるでしょ……あはははっ、あんたらしいわ。いつものあんたらしい。好きなだけ揉ませてあげるから、頑張って歩いてね。ほらっ、頑張って……っ」
左腕の鈍い痛みは、右手から伝わる柔らかな感触のおかげで忘れられた。
アラクネが死んだことで、糸は力を失った。もう踏んでも動かない。ただの糸だ。
こうして俺たちは、死の森から生きて帰ったのだった……。
あとがき
いつもは事後処理的な話があるけど、今回はバッサリカットします。
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