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第1章 俺もチートキャラになりたいんですけど…

6話 旅の目的

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「んで、なんでお前は力を封じられてるんだ?さっき謀反とか言ってたが。」
「うむ。妾はここ500年程人族とは争わぬ方が良いという政策をとっておったのじゃが、どうも過激派の連中が秘密裏に他国と手を組んだようでの。それに気づかなかった妾は策にはまり、力を封じられたというわけじゃ。」
「その他国っていうのは人間の国なのかしら?」
「いや、フレイダール王国という魔族の国じゃ。魔族の国は4つあっての、妾の治めておったスカーレット帝国、ガランバルギア王国、フレイダール王国、ジェイサット王国の4つじゃ。ちなみにスカーレット帝国は妾が建国した今では最大の魔族国家じゃ!!」

 そう言って魔王さんは胸を張ってドヤ顔をする。
 いや、お前謀反起こされたんじゃなかったのかよ。

「へー魔族にも色々あるんだな。」
「うむ。それで妾がお主たちと共に旅をしたいと言ったのは、世界各地に飛ばされた妾の力が封じられておる魔封結晶を見つけたいからなのじゃ。」
「今の貴女にはどのくらいの力があるのかしら?」
「うむレベルは高いままだが、他のステータスは並の人間よりも少し上といったところかの。」
「ん?魔族にもレベルとかあるのか?」
「うむ。魔族も人族と対して変わらぬ。魔物を殺せばレベルも上がるし、ステータスカードを使いもする。違いをあげるとすれば魔族の方が好戦的で戦闘に向いているぐらいかの。」

 どうやら人族も魔族も対して代わりはないようだ。
 人種の違いの延長みたいなものだろうか。
 そもそもラノベでエルフやドワーフ、獣人や悪魔なんてざらに出てくるから興味はあっても抵抗はないな。

「そうなのね。それで、今更なのだけど貴女は何て名前なのかしら?因みに私は土御門舞よ。」
「ああ、そういえば聞いてなかったな。俺は高音風舞だ。」
「なんじゃ、いつまでも聞いてこないから興味がないのかと思ったぞ。心して聞くが良い!!妾はローズ・スカーレット!!スカーレット帝国魔王にして、大魔帝とは妾の事である!!」
「「おおー」」

 ローズのポーズ付きの自己紹介を聞いて俺と土御門さんは共に拍手をした。
 こんな派手な自己紹介始めてみた。
 真っ赤なドレスのスカートをたなびかせ、腕を組んでの堂々とした仁王立ち。
 物凄い見応えあるな。

「うむ、苦しゅうない。それでお主らが言っておった勇者だけど関係ないとはどういうことなのじゃ?どこかの国によって召喚されたのではないのか?」
「ええ、私達はラングレシア王国に召喚されたのだけれど、あそこの王族がどうもキナ臭かったから逃げて来たのよ。」
「ラングレシア王国じゃと?あそこの国の王族は代々は温厚な者であったはずじゃが。いや、しかし...」

 そう言うとローズは何やら考え事を始めた。
 魔王の立場からすると何か疑問な点でもあるのかもしれない。

「いや、今は良いか。それで、何故お主達はこのような場所におるのだ?ここはラングレシア王国からは魔族領を挟んで反対にある魔の樹海じゃぞ?」
「それは、高音くんの転移魔法のおかげね。」
「転移魔法じゃと?妾でも転移魔法はLV6までしか覚えておらぬ難易度の高い魔術じゃぞ?」
「いやぁ、俺はそれ以外に何も使えないんだけどな。」
「何?空間魔法も同時に覚えるのが定石だと思うが。」
「ん?そうなのか?」
「うむ。転移魔法と空間魔法は共通する部分が多くてな、移動に便利な転移魔法と攻撃にも使える空間魔法を並行して覚えた方がステータスポイントの消費も少なく済むのじゃ。」

 どうやら俺は結構なポイントを無駄にしてしまったようだ。
 これじゃあ俺の戦線への参加は遠そうである。

「む、そんなに落ち込むことはないぞ。転移魔法よりも空間魔法の方が習得は難しい。きっとお主なら楽に空間魔法も覚えられるはずじゃ。」
「そ、そうか。それなら良かった。」

 中学生くらいの見た目の女の子に励まされてしまった。
 実際には千年を生きる吸血鬼らしいが。

「マイの方はどのような魔術やスキルを覚えておるのかの?」
「私は火魔法と水魔法、土魔法がLV1。風魔法がLV2。身体操作がLV3よ。」
「何?威圧は持っていないのか?」
「ええ、とってないわね。」
「な、なんと。それで妾の殺気をもろともせず、あのような威圧をするとは誠に恐ろしい娘よ。」

 魔王に恐ろしいって言わせる土御門さんどんだけだよ。
 やっぱり土御門さんはチートキャラなのか。

「ステータスの数値は聞かないのか?」
「うむ。妾はスキルの看破を持っておるからの。わざわざ聞くまでもないわ。マイは満遍なく上げておるようじゃが、フウマは魔力と知力に偏っておるの。それにフウマはステータスポイントをほとんど転移魔法につぎ込んだじゃろ?」
「ん?ああ、その通りだが。何かまずいのか?」
「いや。まずくはないのだが、ステータスポイントを使わなくても魔術やスキルは習得できる。それならばスキルや魔術の習得まで時間はかかるものの、ステータスポイントは体力や魔力、攻撃などの数値をあげるのに使った方がいいじゃろうな。それにステータスポイントはレベルが上がっても増えはするが大した量にはならんからの。」
「まじかよ。半分以上転移魔法に使っちまった。」
「何、あまり気にすることはない。お主のような転移魔法を十分に使える勇者ならレベルが100になる頃にはマイとの差も誤差と思えるくらいにはなる。」
「頑張りましょうね高音くん!」
「あ、ああ。そうっすね土御門さん。」

 俺のキャラメイクは間違っていたようだ。
 落ち込んでても仕方ないし、ちまちまレベル上げしていくかね。
 しかし、レベル100かだいぶ遠いな。

「それで、ローズはなんで森の中で倒れてたんだ?気まぐれ転移をしたってわけじゃないんだろ?」
「気まぐれ転移?なんじゃそれは?」
「私達は王宮からできるだけ離れるために遠くの上空に転移しようとしたらここに辿りついたのよ。」
「お主ら、アホなのか?それで転移先に魔族や魔物がいたらどうするつもりだったんじゃ?それに魔族領域には高い山々が多くあるのじゃぞ?一歩間違えれば転移事故になってもおかしくないことをよくやったの。」
「いや、それはまあ。」
「反省してます。」

 頰をかきながら気まずそうにする土御門さんと俺。

「ふむ。まあ良い。それで妾が魔の樹海で倒れておったわけじゃったか?」
「ああ。力を封じられたのはわかるんだが普通は監禁とかされるんじゃないか?」
「そうじゃな、事の始まりは遠征訓練中に妹を人質にされた事じゃ。それを知った妾は急いで城に戻り何とか妹を救い出す事に成功したのじゃが、代償として力を封じられてしまって妹を連れて逃げる事が出来なくなってしまったのじゃ。そこで妹に結界魔法を使って身を守るように命じた後、この指輪にはまっておった魔蓄鉱石を消費して転移魔法を使い、その転移した先がここだったという訳じゃな。」

 そう言って歯噛みしながらも右手の中指に付けられた指輪を見せるローズ。
 確かにローズの指には宝石のないリングだけの指輪がついている。
 しかしローズは妹を城に残して逃げて来たのか。
 それならば確かに俺たちみたいな怪しい奴に助けを求める程必死なのもわかる。

「それで、妹さんは無事なのかしら?」
「うむ。妾の妹は強力な結界魔法の使い手での、向こう100年は自分の結界の中で生きられるはずじゃ。さすがに結界内では仮死状態になるがの。」
「なるほど。それじゃあ俺たちはそこまで道程を急がなくても大丈夫なのか。」
「うむ。先に旅の邪魔はせんと言ったじゃろ?じゃが、旅に同行する途中に近くに魔封結晶があれば寄らせてもらえると助かる。」
「ん?その魔封結晶ってのがどこにあるのかわかるのか?」
「うむ。なんとなくではあるがの。それに妾の力が封じられておる魔封結晶が近くにあると魔物が活性化するはずじゃ。おそらく行けばわかると思うぞ。」

 魔封結晶によって魔物が活性化するのか。
 それって土御門さんはともかく俺からするとまずい気がするんだが大丈夫だろうか?

「ふふふ。この勇者である私に任せておくといいわ。ローズちゃんの魔封結晶は私達が集めてあげるわ!!」

 案の定土御門さんは滅茶苦茶やる気出してるし。

「おお、助かるぞマイ。やはりお主らに頼んだ妾の目に狂いはなかった。まあ活性化しているとは言え、勇者たるお主らなら特に問題はないはずじゃ。よろしく頼むぞ。」
「まあどこに行くか決まってたわけじゃないし、魔封結晶を中心に回ってもいいか。」

 こうして俺たちの旅に魔封結晶探しをするという目的ができたのである。
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