クラスごと異世界転移して好きな女の子と一緒に別行動していたら魔王に遭遇したんですけど...

がいとう

文字の大きさ
18 / 81
第1章 俺もチートキャラになりたいんですけど…

17話 雲龍にて

しおりを挟む
「つきましたよ!ここです。」

 ミレイユさんに案内されてやって来たのはメインストリートから少し入ったところにある建物の二階だった。漢字で『雲龍』と書かれた木製の看板がドアの横に立てかけられている。高級料亭みたいな入り口だ。

「へぇ、ここがその火の国の料理店なのかなんか趣があるな。」
「そうじゃな。では、入ってみるかの。」
「そうね。もうペコペコだわ。」
「ふふ、そうですね。早速入りましょう。」

 お店の中に入ると少し薄暗い雰囲気の落ち着いた和風のお店だった。カウンター席とその向かいに掘りごたつのボックス席がある。俺達が店内に入ると奥から女性の店員さんが現れた。他に従業員がいなさそうなのでおそらく店主だろう。

「あらあら。ミレイユはんおこしやす。今日はお友達もご一緒なんやね。嬉しいわぁ。」

 そう言って現れた女性は尻尾が9本あってもおかしくないような風格の一尾の狐獣人のお姉さんだった。はんなりとした雰囲気で京都弁のような話し方をする。

「はい。こんばんわ、ボタンさん。こちらは私の専属冒険者のフーマさんとマイムさんとミレンさんです。」

 俺達はミレイユさんの紹介に合わせて順に会釈した。

「あらあら。ミレイユはんが専属なんて優秀なんやね。ささっ、ずずいっと入ってな。今お茶を出します。」

 そう言って和服のボタンさんはパタパタと草履を鳴らしてカウンター内に入りお茶を入れ出した。店内には俺達以外の客がいなかった為、俺達は掘りごたつのボックス席に入った。座る前にミレイユさんが靴を脱ぐんですよと得意げに教えてくれたので俺と舞は微笑ましく思いながらそれに従い、順番に席に着いた。


「なあ、専属って全員につくものじゃないのか?」

 俺はお茶を待つ間気になったことを聞いてみた。

「そうじゃな。専属は大きな成長の見込みや功績を残しそうなものを受付の者が選んでサポートするシステムじゃ。全ての冒険者に専属がつくわけではないの。」
「あら、それじゃあミレイユさんが私達を選んでくれたのね!嬉しいわ。」

 そう言って舞が隣に座るミレイユさんに抱きつく。ちゃんとモフりは我慢しているようだ。

「えへへ。私の以前の専属冒険者さんが別の街へ行ってしまったのでちょうど私が誰とも専属契約を結んでいなかったっていうのもあるんですけど、私も皆さんとお会いできてよかったです。」
「そうだな。俺達もミレイユさんみたいな優秀な人が専属になってくれて嬉しいぞ。」
「そうじゃな。これからもよろしくの。」

 今日冒険者ギルドに帰還の報告に行って自分たちの番を待っている時、ミレイユさんが同僚の人をさりげなくフォローをしているのを見かけた。きっとかなり優秀なのだろう。

「えへへ。よろしくお願いします!」

 俺たちの言葉にミレイユさんが耳をぴこぴこさせてはにかむ。と、ちょうどそこへボタンさんがお茶とおしぼりを持ってやってきた。

「あらあら。仲良しさんやねぇ。はい、これはおしぼりやね。手を拭いてなぁ。」

 そう言ってボタンさんが俺達に順におしぼりを渡してくれる。手前に座る俺と舞におしぼりを渡した後、俺の奥に座るローズにおしぼりを渡そうとしたちょうどその時、ボタンさんの豊かな胸が手を拭いていた俺の頭にのしかかってきた。
 どうやら俺達の靴を踏んでしまって躓いたようだ。料理の邪魔にならないくらいの薄っすらとした花の香りと女性特有の甘い香りが俺の鼻腔を刺激する。柔らかな感触と相まってもう、最高です。

「あらあら。重たいやんなぁ。今どくからちょっと待ってな。」

 そう言ってボタンさんはよっこいしょと声をあげて俺から離れた。ああ、もっとのしかかっていても良かったのに。

「ほんまにすまんかったなぁ。重たかったやろ?」
「重たいだなんてそんな事ありませんよ。俺は冒険者なんですから、気にしないでください。」

 ボタンさんが申し訳なさそうにそう言うので、俺はキメ顔でボタンさんにそう言うと、

「あらあら、頼もしいなぁ。」

 ボタンさんがころころと笑ってくれた。と、その時横で頬杖をついていたローズに太ももをつねられた。おやおや嫉妬かいと思ってボタンさんから視線を外すとムッとしている舞と目があった。

「フーマくん。だらしない顔してるわよ?」
「おや、そうかい?そんな事ないと思うけど。」

 俺は自分の顔を触って確かめてみる。うん、普通だ。

「鼻の下伸びてますよ。それに話し方も変です。」
「そ、そげなことないわい!!ああ、腹減ったな!ボタンさん注文を御願いします!!」
「あらあら。」

 ミレイユさんにまで言われてしまった俺は逃げに徹する事にした。向かいに座る舞にさっきから足を踏まれているし、ミレイユさんには呆れた目を向けられ、頼みのローズは鼻で笑っているのでこの雰囲気からは逃げられた気はしないが。

「逃げたわね。」
「逃げましたね。」
「逃げたの。」

 やっぱりダメみたいだ。


 _______________________________________________



 その後、無理やり注文を始めた俺から順に料理を頼み、待つ事数分。ようやく腹を空かせた俺たちの目の前に料理が並んだ。品名からは異世界の食材を知らない俺と舞にはどんな料理かわからなかったので、ミレイユさんのオススメを頼んだ。ローズも一緒だ。

「おお、これが!!」

 俺達は目の前にならんだ料理にゴクリと喉を鳴らす。ミレイユさんのオススメの料理は親子丼のような見た目の丼ぶり料理だった。肉はクイックドードという魔物のものらしい。ソレイドのダンジョンの52階層で現れるようだ。

「それじゃあ、いただきます。」
「いただきます。」
「女神に感謝を。賜ります。」
「うむ。いただくぞ。」
「はい。召し上がってなぁ。」

 それぞれの食前の挨拶をすませた俺達は同時に食べ始めた。

「美味い!」
「そうね。ここまでの料理となるとなかなかないわ。」
「うむ。これはなかなかのものじゃな。」
「ですよね?ボタンさんの料理はやっぱりソレイド一ですよ!」
「あらあら。嬉しいわぁ。」

 卵は白身と黄身を完全にとききらないことでプリプリとした白身の食感と黄身のふんわりした食感を楽しめ、カツオ出汁のような風味をふんわりと感じる。また、肉はというとジューシーなもののくどさはなくこれもまた美味い。白米も日本で食べたものと同等かそれ以上かもしれない。要はめちゃ美味い。

「「おかわり!!」」
「あらあら。ちょっと待ってなぁ。」

 夢中になって食べていた俺と舞は同時に一杯目を食べ終えるとおかわりをした。いや、本当に美味いんだよ。これならいくらでも食えそうな気がする。

「はい。お待ちどぉさまぁ。そうだ、そこの瓶のソールの実を砕いたものをかけるとさっぱりするからよかったらかけてみてなぁ。」

 そう言ってボタンさんが指差した机の隅に置いてあった瓶を俺達はふりかけて食べてみた。瓶の中には黒っぽい粉が入っている。

「おお。ピリピリするけど香りがいいな。」
「そうじゃな。ソールの実にこのような使い方があったとは。眠気覚ましぐらいにしか使えんと思っておったわ。」
「ふむ。これは山椒に似ているかしら。」
「ピリピリして美味しいです。」

 皆ソールの実がお気に召したようだ。確かに山椒に似ている気がする。実がなっているところを一度確かめてみたいな。そんな事を考えながらもその後も楽しい食事は続き、お吸い物も飲んだ俺達は食後のお茶を飲みほっと一息ついた。

「ふう。うまかったな。」
「そうね。また来たいわ。」
「あらあら、嬉しいわぁ。待ってるからいつでも来てなぁ。」
「そうですね。また皆で来ましょう!」
「そうじゃな。また来ようかの。」

 その後、ボタンさんとたわいない話をした俺達は邪魔にならない内に店を後にした。


 _______________________________________________


 ボタンさんの店を出た帰り道、ミレイユさんの家が冒険者ギルドのすぐ近くらしいのでそこまで送ってから帰る事にした俺達は雑談をしながら歩いていた。

「ボタンさんいい人だったな。」
「あら、それってどういう意味かしら?」
「別に変な意味じゃないぞ。」
「あらそう。それならいいわ。」

 舞がそう言ってくすくす笑う。

「そうですね。でも、ボタンさんはああ見えてS級の冒険者でもあるんですよ?あの有名なフラム・レッドさんと同じランクなんです。凄いですよね!」

 ミレイユさんがそう教えてくれた。俺の中でのボタンさんのイメージははんなりとした京美人って感じだが、確かに魔物に苦戦している姿は想像できない。

「ふむボタンと言ったか。あやつ、かなりの実力者じゃな。妾の全盛期の8割ほどの力を持っていると思うぞ。」

 ミレイユさんの話を聞いたローズが俺の横に並んで日本語でそう言った。

「マジかよ。そんなに強いのか。」
「マジじゃ。看破を使ってみたがことごとく弾かれてしまったわい。いくら妾がそのような技が苦手とは言え、魔王たる妾のスキルを弾くような奴はそうおらん。」

 そうして隠れた実力者ボタンさんに出会った俺達は彼女の底知れなさを感じながら帰路を歩んだのだった。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

処理中です...