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第1章 俺もチートキャラになりたいんですけど…
27話 風呂にて
しおりを挟む「ん゛あ゛ぁぁぁぁ。生き返るー。」
舞とローズの試合を見た後もローズに稽古を付けてもらった俺は訓練が終わった後に一人湯船に入って疲れを癒していた。
「いやぁ。それにしても剣術が覚えられて良かったなぁ。」
そうなのだ。
俺はローズに何度も何度も蹴られながら剣を振り続け、ようやく剣術スキルを覚えられた。
因みに剣術スキルLV1の効果はこれだ。
剣術 LV1 相手に素早く接近し力強く斬り込める。
ステータスカードの説明を読んだ感じではいまいちよくわからなかったが、そういう技が使えるようになったという事らしい。
広くソニックスラッシュという名前で広まっている技だそうだ。
その技の由来をローズに尋ねてみた所、スキルや魔術を習得するとなんとなくその技や魔法の名前や詠唱が思いつくらしい。
その思いつく名前や詠唱が何故か皆同じだから共通認識になるんだとか。
確かに俺もソニックスラッシュという名前を聞いて違和感が全くないし、テレポーテーションやアイテムボックスなどもふと気づいたらそう言っていた。
異世界は本当に謎である。
「にしても、ローズに蹴られた跡が一切残ってないってどういうことだよ。ただ痛いだけでダメージが入らない蹴り方でもしてんのか?」
「うむ。そのとおりじゃ。」
俺の独り言にいつの間にか風呂場に入って来ていたローズが頭からお湯をかぶりながらそう答えた。
「おいっ!何しれっと入って来てんだ!!」
「なんじゃ?別に広いんじゃから構わんであろう。」
「構うわ!!」
こいつには常識というものがないのだろうか。
普通男が入っている風呂場に後から入ってこようとは考えないだろう。
「まったく我儘な奴じゃな。ほれこっちに来て背を流してくれ。」
「誰が流すか!」
「誰のおかげで剣術を習得できたと思っておる。弟子は師匠の背を流すもんじゃ。」
「はあ。俺は先に上がるから自分で洗えよ。」
そう言って俺が湯船から出ようとしたその時ドアの向こうから舞の声がかかった。
「ねえ風舞くん。ローズちゃんどこに行ったか聞いてないかしら。部屋に服が脱ぎ散らかしてあったんだけど、どこにもいないのよ。」
「ああ、妾なら………」
ズシャーー
俺はローズが声を上げそうになったところで湯船のお湯を全てローズの頭上に転移させた。
「風舞くん?なんかすごい音がしたけど大丈夫?」
「あ、ああ。問題ない。ローズなら少し散歩して来るって言ってたぞ。」
「あら、そうなの。それなら私も誘ってくれれば良かったのに。それじゃあ風舞くん、私はリビングにいるわね。」
舞はそう言って脱衣所から出ていった。
あ、危ないところだった。
「おい。いきなり何をするんじゃ!」
「こっちのセリフだ。お前がいらん事するからだろ!」
「別に妾は何もしておらんじゃろ。」
「舞に二人で風呂場にいるところを見られたらマズいでしょーが。」
「まったく。お主は本当に初心じゃのう。そんなんでは何時までも舞と恋仲になれんぞ。」
「うるせえやい!」
千歳を超える奴の貞操観念で語られても困る。
こちとら女の子の手料理を食べられるだけで喜べる男子高校生なのだ。
流石に風呂に別の女の子といるのを見られてけろっとしているような肝っ玉は持ち合わせていない。
「まあよい。ほれ、さっさと洗ってくれ。まずは頭からじゃ。」
「誰が洗うか。俺は今度こそ上がるぞ。」
「そうか。ではマイにフウマに断られてしまったと言って洗って貰うとしよう。」
「い、いやー。是非ともローズを洗ってやりたいなぁ。」
「ふん。初めからそういえば良いんじゃ。」
「はあ。せめて服を着てからにさせてくれ。」
「まったく困った奴じゃな。早くするんじゃぞ。」
勇者の天敵は魔王。
これは覆せない真実らしい。
_______________________________________________
俺は一度脱衣所に出てローズが大声を上げないように手早くタオルで水をふき取り、着替えをすませてからもう一度風呂場に入った。
「生娘じゃないんじゃから裸を見られるぐらい分けないじゃろうに。」
「日本の男子高校生はそういうのに敏感なんだ!」
「まあよい。ほれ、髪を洗ってくれ。いつまでもこのままじゃと体が冷える。」
俺は我儘魔王の頭にお湯をかけてシャンプーを手によく伸ばしてから頭を洗ってやった。
因みに異世界にはシャンプーもリンスもボディーソープもあるし、各種化粧品もある。
異世界は進んでるな。
「おおぉ。お主中々上手いではないか。」
「そりゃどうも。俺の母さんが美容師だったからその手伝いでシャンプーだけはやってたんだよ。」
「ほう。そうだったのか。うむうむ実に心地よいぞ。」
「はいはい。」
ローズの腰のあたりまである長くて綺麗な金髪を洗いながら、俺とローズの会話は続く。
「お主はもといた世界に帰りたいとは思わんのか?」
「うーんそうだなぁ。確かに日本にいつでも帰れるならそう思うが、もうこの世界に来れないとなると帰りたいとは思わないな。」
「お主は家族を残してきたんじゃろう?」
「まあ、そうなんだが。俺は常日頃から失踪したらやりたい事をやりに行っただけだから心配しないでくれって言ってたしな。我ながらに親不孝もんだとは思うが俺が好きな事をやれって母さんは言ってくれてたし、応援してくれてたらいいなぁ。」
「なんじゃそれは。お主はおかしな奴じゃの。」
「そうか?まあ、唯一心残りがあるとしたら俺を一人で育ててくれた母さんに無事ですって言えないことだな。」
「ふむ。会話はできんが思念を飛ばすだけならできるやもしれんぞ。」
「え?そうなのか?」
「うむ。転移魔法を応用すれば思念くらいなら上位の世界でも飛ばせるじゃろうな。」
「ほへー。それじゃあ頑張らなくちゃだな。さて、流すから目を瞑ってくれー。」
「うむ。」
俺はローズの上から桶を使ってお湯をかけ流しながら、泡を落としていく。
ローズは俺達が異世界に来て苦しんでいるのではないかと心配してくれたようだ。
おそらく舞にも同じように気をかけていたのだろう。
「ありがとなローズ。」
「なに、妾もお主に心配してもらったからの。そのお返しじゃ。」
「できれば風呂場でない方が良かったがな。」
「日の本の国では裸の付き合いというものがあるんじゃろう?」
「それは同性の場合だ。」
「なに?アカリが言っておったのは間違いだったのか。」
「ん?そのアカリって言うのはこの前言ってた日本の勇者か?」
「うむ。そうじゃな。たいそう変わったやつじゃった。」
俺と同郷の勇者か。
それは何とも気になる話だ。
泡を流し終わった俺は、リンスをローズの髪になじませながら尋ねる。
「なあ、そのアカリって人の事もっと聞かせてくれよ。」
「うむ。あれは確か400年ほど前じゃったな。確か妾が各地の報告書を纏める執務をしておった頃じゃ。アカリが獣人の男と共に妾の命を狙って城までやって来た。」
「随分と急な話なんだな。」
「うむ。妾の城は民を守るために一番人族の領地に近いところに立っておるからの。因みに魔王の執務室も魔王城に入って正面の部屋じゃ。」
「それはまあ、なんとも攻め気な城だな。」
「そうじゃろう。妾の自慢の城じゃ。それで、部屋で執務をしておった妾を見てアカリが言ったんじゃ。金髪眼鏡巨乳お姉さまキターーと。」
「え?すまない。もう一度言ってくれないか?」
「じゃから、金髪眼鏡巨乳お姉さまキターーとアカリがいったんじゃよ。」
マジかよ。
そのアカリって勇者は姫だって聞いてたから、てっきり戦国時代とかの人だと思っていたが、オタサーの姫とかそういう意味だったのかよ。
「な、なあ。念のために聞くがその人って元の世界で何をしていたか知ってるか?」
「うむ。確か神こすぷれいやぁとかいう多くの者に崇められる階級で人々に癒しを与えておったと言っておったの。」
「あ、そうですか。」
やっぱりアカリとかいう勇者はオタクだったみたいだ。
「その後、妾とアカリは意気投合し、やってきた二人は結婚をして、二人で仲良く妾の国で暮らしておったな。」
「大分はしょったな。」
「まあ、妾とアカリが何して遊んだとか話してもお主はつまらんじゃろうからな。そう言えば、あのボタンとかいう獣人もアカリと知り合いのはずじゃ。」
「ん?そうだったのか?ボタンさんって雲龍の店主さんだろ?」
「うむ。妾も最近思い出したんじゃが、ボタンという仲のよい友達がいるとアカリは言っておった。いやぁ、ボタンという名を聞いてから何処か覚えがある気がしてたんじゃ。」
本来は男女の仲に使う言葉だが、縁は異なもの味なものとはよく言ったものだ。
まさかボタンさんとローズが遠い知り合いだったとは思いもしなかった。
「それはなんとまぁ。さて、もう一回目を瞑ってくれ。」
「うむ。」
俺はローズのリンスも綺麗に流してやってから立ち上がった。
「さて、流石に体は自分で洗ってくれ。」
「うむ。しょうがないの。また頼むぞ。」
「はいはい。今度な。」
俺は風呂場を後にしてリビングでお茶をしていた舞に、ローズが帰ってきてから風呂に入ったと伝えてリビングで舞と雑談をしながらだらだら過ごした。
風呂から上がったローズが俺が髪を洗うのが上手かったと口を滑らして一騒動あったが剣術も習得出来たし充実した一日だった。
_______________________________________________
リビングにてローズ失言後
「髪を洗ったってどういう事なのよ!!」
「いや、それはローズに脅されて仕方なく。それに何度も言うが俺は服を着てたんだって。」
「そういう問題じゃないわ!ローズちゃんの裸を見たんでしょう!」
「見たけど背中だけだったし。」
「ふふん。フウマは中々の実力じゃったぞ。見よ。妾の髪が輝いておる!」
「お前はややこしくなるから黙ってろ!!」
「ローズちゃんだけ風舞くんに髪を洗って貰ってズルいわ!!今度私も洗ってくれないと許さないから!!」
「はい?」
「ち、ちが、そういう意味じゃ。」
舞が顔を真っ赤にしてリビングから走り去って行った。
「やれやれ、マイにも困ったもんじゃ。」
「いや、元はと言えばお前のせいだからな?」
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