52 / 81
第2章 やっぱり俺の仲間が優秀なんですけど…
15話 診断
しおりを挟む「さて、着替えも済んだし忘れ物もないな。」
「はい。一通り確認してきました。」
城での用を済ませた俺達は一度宿に戻り正装から着替えてソレイドに帰る準備をしていた。
「戻ったら忙しくなるなぁ。」
「ああ。一気に片をつけていつも通りの生活に戻るぞ。俺もシルビアさんも家から出られないなんて退屈だからな。」
「はい!私も微力ながらお手伝いさせていただきます。」
「ああ、頼りにしてるぞ。あ、それとソレイドに帰る途中に少し寄り道させてくれ。」
「寄り道ですか?少しくらいなら構わないと思いますが。」
「ボタンさんにも少し協力してもらいたい。」
「うち?まあ、かまへんけど。」
こうして俺達は少し寄り道をしてソレイドの自宅に帰還した。
どこに寄ったかって?川と山だよ。
_______________________________________________
俺達が3人揃って自宅の玄関に転移するとちょうどローズが近くにいたので俺は声をかけた。
「ただいまっと。お、ミレン。そっちの首尾はどうだ?」
「う、うむ。マイムが精神的疲労で少し休んでおるがアンは無事救出出来たのじゃ。今は上の部屋で寝かせておる。」
「精神的疲労?大丈夫なのか?」
「うむ。特に問題はないのじゃが、今は一人にしてやって欲しい。」
あの舞が精神的な理由で疲弊するなど想像ができない。
きっとアンさんの救出作戦はかなりハードなものだったのだろう。
そう考えると悪魔の叡智は舞とローズでも一筋縄ではいかない相手の様だし、俺も気を引き締めてかからなければ。
俺がそう決意を新たにしているとシルビアさんが控えめに声をかけてきた。
「あの、フーマ様。」
「ああ、悪かったな。アンさんの様子を見てきたらどうだ?」
「ありがとうございます。失礼します。」
俺とローズが話をしていたためシルビアさんはアンさんの様子を見に行くことを躊躇っていたようだ。
今すぐにでも駆け出して顔を見に行きたかっただろうに、悪い事をしたな。
「なあ、アンさんの病の原因はわかんないのか?」
「うむ。妾はもともとそういった事が得意でない上に、スキルのLVも足りんからの。妾では呪術が原因ではないという事までしかわからん。」
「それじゃあうちもアンはんの具合を見て来ようかね。うちは病とかの治療は得意分野やし何か出来るかもしれへん。」
「ああ。悪いな。」
「かまへんよぉ~。」
ボタンさんはそう言うとシルビアさんの後を追って階段を登っていった。
ボタンさんにはシルビアさんにかかっていた呪術を解いて解毒までした実績があるし、もしかすると治せるかもな。
そんな期待を持ちながらローズと共に俺達も一応アンさんの具合を見に行く事にした。
俺達がアンさんの部屋に行くとボタンさんがアンさんの額に手を当てたり、眼球を調べたりしてその容態を確認していた。
アンさんは犬獣人のようだがこの前話を聞いた通り背はシルビアさんより大分低く幼い顔立ちをしている。
もしかするとローズより小さいんじゃないか?
「どうだ?直せそうか?」
「そうやなぁ。これが普通の病ならうちの魔法で治せたかもしれんけど、どうやら違うみたいやな。」
「ふむ。それで何が原因でアンは倒れておるおるのじゃ?」
「この症状と話を聞く限り魔力拒絶反応みたいやね。この子の体内の魔力は周囲から取り込んだものがほとんどやし間違いないやろな。」
「それはどのような病なのですか?アンは治るのですか?」
シルビアさんが凄く不安そうな顔でボタンさんの顔を見上げて質問をする。
「魔力拒絶反応は体内の魔力が少ない状態が長く続き、それを身体が無理になんとかしようとして周囲から魔力を取りこんで起きる拒絶反応やな。体内の魔力が少なくなる原因は未だ解明されてないんやけど、世界樹ユグドラシルから採れるユグドラシルの朝露を何回か服用すれば体内の魔力精製が促されて自分で魔力を作れるようになるんよ。その方法で治療をして魔力拒絶反応が再発したって話は聞いた事ないし、アンはんの病も同じ方法で完治できるはずや。」
「そうですか。アンは助かるのですね。良かった。本当に良かった…」
シルビアさんはそう言うと握っていたアンさんの手を額に近づけてポロポロと涙を流し始めた。
たった一人の友人を助ける為にダンジョンに一人で挑み、自分の身を削ってまで戦ってそれでも治療法が得られず心を痛めていたシルビアさんにとって、治療法が見つかるというのは凄く喜ばしい事なのだろう。
俺達3人は誰からともなく黙って部屋を後にした。
今はシルビアさんとアンさんの二人きりにさせておいてあげた方が良いだろう。
俺とローズとボタンさんがリビングに戻ると、舞が一人で紅茶を飲んで待っていた。
「大丈夫かマイム。ミレンに凄く辛い事があったって聞いたぞ?」
「え、ええ。そう大した事ではないわ。後でミレンちゃんとお話しすれば良いだけですもの。」
そう言って舞はにっこりと微笑んだ。
ん?どうしたローズ。
なんで俺の後ろに回ってガクガク震えてるんだ?
「それで、アンさんの容態はどうだったのかしら?」
「ああ、どうやらユグドラシルの朝露ってのを飲めば治るらしいぞ。」
「そう。それは良かったわ。これで心置きなく悪魔の叡智と戦えるわね!」
「そうやね。それじゃあまずはお昼ご飯にしましょか。うちが腕によりをかけて作るんよ。」
「そうね。私達もお昼はまだだし私もお手伝いするわ。」
舞とボタンさんの両名はそんな感じで話しながらリビングから出て行った。
あの二人の組み合わせって初めて見た気がする。
俺がそんな事をぼんやり考えているとローズが震えた声で俺に声をかけてきた。
「ふ、ふーみゃ。妾はもうダメかもしれぬ。」
「さっきからどうしたんだ?様子がおかしいぞ。」
「それは妾の口からはとても言えんのじゃが、大変なのじゃ。当分は妾と共におってくれ。」
「ん?まあ、良いけど。」
一体俺達がいない間に舞とローズに何があったのだろうか。
俺がそんな事を考えながら震えるローズの頭を撫でているとシルビアさんがリビングにやって来た。
「フーマ様。少々宜しいでしょうか。」
「ん、どうかしたか?」
「アンが目を覚ましたのでフーマ様を紹介させて欲しいのです。」
「わかった。今行く。」
俺はシルビアさんの後に続いてアンさんのいる部屋へ再び向かった。
ローズも俺の後ろをてこてこと付いてくる。
本当にどうしたんだよ。
「アン。フーマ様をお連れしたよ。」
「あ、貴方が私とシルちゃんを助けてくれたフーマ様なんだね。どうもありがとう。」
アンさんは顔のみを俺に向けてそう言った。
熱もかなりあるらしいし話をするだけでも辛いのだろう。
「別に俺は大した事はしてないぞ。アンさんの事はシルビアさんがちゃんと治してくれるから安心して今は休んどけ。後で病人食を作って持ってくるから食べられそうなら食べるんだぞ。栄養を摂るのは大事だからな。」
「うん。ありがとう。」
アンさんはそう言うと目を閉じて再び寝息を立て始めた。
3ヶ月以上はもうこのままらしいし、体力も大分落ちているのだろう。
アンさんが体力に優れた獣人で無かったら既に生き絶えていたかもしれない。
「ありがとうございます。フーマ様。」
「気にすんな。アンさんの看病がひと段落ついたら食堂に来てくれ。昼飯にするぞ。」
「はい。ありがとうございます。」
俺とローズは何度もシルビアさんにお礼を言われながら部屋を後にした。
リビングに戻って紅茶でも飲むかねと思いながら廊下を歩いていると、ローズに聞いておきたかった事があるのを思い出した。
「なあローズ。そういえば俺に新しい称号が付いてたんだよ。」
「ほう。何がついたのじゃ?」
「何だっけな…あ、そうそう、大物食いってやつなんだけど知ってるか?」
「おぉ、中々珍しい称号を手に入れたの。」
ローズが少し驚いた顔をして俺に言った。
へぇ、珍しい称号なのか。
少し嬉しい。
「で、どういう称号なんだ?」
「うむ。それは弱きものが自分よりも数段格上の相手を倒す事で得られる称号じゃ。その効果は格上に対して強くなる事じゃと言われておるの。」
「へぇ、今回は精神的なものじゃないんだな。でもその条件なら別に珍しくないんじゃないか?」
確かに格上の相手に勝つ事は難しいが、この世界ならスキルや魔法の相性とかでどうとでもなるだろうし、そこそここの称号を持ってる人は多い気がする。
「いや、この弱きものという条件が中々厳しくての。スキルや魔法を覚えすぎていたりレベルが高かったりするとこの条件に引っかかってしまうのじゃ。強者同士の戦いなら格上に勝つ事はよくある事なのじゃが、戦闘経験の浅いものが強者に勝つ事はそうないしの。根性でこの差を詰めた者にのみ手に入る憧れの称号じゃな。」
「へぇ、結構良い称号なんだな。格上ばっかの俺にはピッタリだ。」
「まぁ、強くなるとは言ってもその上昇率はごく僅かじゃ。くれぐれも慢心せぬようにの。」
「ああ。最近も格上相手に負けたばかりだし気をつけるよ。」
剣闘大会では自分よりレベルが20も高い相手にコテンパンにされた。
もしかすると俺の記憶が読めるボタンさんはこの事を見越して俺を剣闘大会に出場させたのかもしれない。
ってあのボタンさんに限ってそんな訳ないか。
ただ、良い称号を手に入れたぐらいじゃ勝てるようにはならないって事をしっかりと覚えておこう。
そんな事を考えながらリビングに戻って紅茶を飲んでいると舞が昼食が出来たと言って迎えに来てくれた。
それじゃあ次の方針を話し合いながら昼飯にしますかね。
0
あなたにおすすめの小説
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~
犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。
塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。
弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。
けれども違ったのだ。
この世の中、強い奴ほど才能がなかった。
これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。
見抜いて、育てる。
育てて、恩を売って、いい暮らしをする。
誰もが知らない才能を見抜け。
そしてこの世界を生き残れ。
なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。
更新不定期
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる