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第2章 やっぱり俺の仲間が優秀なんですけど…
22話 苦戦
しおりを挟む「ファイアーボール!」
俺はアセイダルの顔に剣を突き付けたまま、空いている左手からファイアーボールを放った。
アセイダルはバックステップで俺から離れてファイアーボールを避ける。
「ねぇ、フーマくん。今のアセイダルの攻撃は冒険者ギルドで見た縮地と同じくらいの速さだったけど、どうして反応出来たのかしら?」
油断と慢心を捨てさった舞が俺の後ろから横にずれて、両手剣をしっかりと構えながらそう俺に尋ねてきた。
「運が6割、勘が3割、称号が1割だな。俺にはアセイダルの攻撃なんて全く見えなかったし実力ではないぞ。」
「どういうことかしら?」
「そういうスキルを覚えた。」
俺がアセイダル戦を前にして覚えたスキルは直感と豪運の二つだ。
因みにステータスカードに書かれていたスキルの説明はこんな感じ。
直感 LV5 勘が良くなる。感覚的な頭の回転も少し良くなる。
豪運 運が良くなる。
いつも通りステータスカードの説明はよく分からないが、スキルである分その効果はそれなりにあるはずだ。
本当は直感ではなく見切りを覚えようと思っていたが、よくよく考えてみたら相手の攻撃を見切れたとしても避けられる自信がなかったし、直感の習得に必要なステータスポイントがかなり少なかったからこっちを覚えてみた。
豪運の方は直感をLV5まで覚えたらステータスポイントが5ポイント余ったので、何か良いスキルはないかなぁと思って探してみたらちょうど5ポイントで覚えられそうだったから折角だし習得した。
豪運は共通語と同じでどうやらスキルのLVがないらしく、これ以上の強化は出来なさそうだったが、LVのないスキルである共通語はもうペラペラに話せるし、豪運もかなり強力なスキルであると信じたい。
あとは称号の大物食いだが、ちょっとだけいつもより強くなってるんじゃないかな。多分。
俺がそんな効果があるのかないのかわからないスキルや称号の事を考えている間に、舞は怪訝な顔をしながらも一先ず納得する事にしたらしい。
「そう。まだよくわからないけれど、取り敢えず今はそれで良いわ。」
「ああ。終わったらゆっくり説明する。」
そこまで俺が言ったところで、アセイダルの土魔法が飛んできたので俺はパッとしゃがんでその攻撃を避ける。
今回は辛うじて見えたが、やっぱりスキルの感覚に頼っている部分が大きいな。
とはいえ、転移魔法と直感と豪運と大物食いの組み合わせがあればそこそこの攻撃は避けられそうで安心した。
一撃でももらったら死にかねない俺は全部の攻撃を避ける必要があるしな。
「俺の火力じゃあいつにダメージが入らなそうだから舞は攻撃に集中してくれ。俺は転移魔法を使って援護にまわる。ベクトルリセットに慣れるまでは違和感あるかもだけど、ぶっつけで調整してくれ。」
「上等よ。それじゃあ早速行きましょ!」
俺はそう言った舞の肩に手を触れて彼女をアセイダルの真後ろに転移させた。
アセイダルは舞の後ろから迫る鋭い斬撃を避けようとするが、俺はアセイダルの正面に壁の様に積み上がっている巨石の一つを転移させて進行方向を封じる。
舞の攻撃はアセイダルがワンテンポ遅れて横に動いたためにクリティカルヒットこそしなかったが、初めてアセイダルにダメージを入れられた。
「クソッ!マサカ転移魔法カ!?厄介ナ技ヲ使ウ。」
「おお、よく気づいたな。なかなか俺が転移魔法を使ってるって気付くやつはいないぞ。アセイダルくんは賢いなぁ。」
「馬鹿ニスルナァァ!」
アセイダルが俺の挑発を受けて大振りなテレフォンパンチをかましてくる。
単発ならスキルの効果で普通に避けられる俺はその攻撃を半身になって避け、視界にしっかりと収めていた舞を俺の近くに転移させてから火魔法をアセイダルの顔めがけて放った。
ローズの始めの雷を手で払った様にアセイダルの魔法防御力がかなり高いためか、俺の火魔法では大したダメージになっていない様だが、目隠しにはなったらしく今度は舞の攻撃がアセイダルの腹にしっかりと当たった。
アセイダルはそのまま後方へと吹っ飛ばされて壁にぶち当たる。
それを見て舞が一息つきながら口を開いた。
「ふぅ。中々硬いわね。」
「そうなのか?」
「ええ。ソニックスラッシュをのせた攻撃で真っ二つにするつもりだったのだけれど、上手く衝撃をいなされてしまったわ。身体の一部を硬くする能力もあるみたいだし厄介ね。」
舞の渾身の一撃をくらってもアセイダルは倒れてはくれないらしい。
とはいえ、呪術の使い手であるアセイダルは魔法の方が肉弾戦よりも得意だろうし、あいつが魔法を多用するようになってからが本番だろう。
「そういえば、魔力感知は覚えたのか?」
「ええ。この前ローズちゃんと2人でダンジョンに潜った時に覚えたわ。ただ、アセイダルはまだ呪術を使ってない様だし本番はこれからね。」
俺は呪術にかからないだろうからアセイダルの魔力は避けなくても問題ないが、舞の魔法防御力では呪術にかかってしまう可能性が少なからずある。
はぁ、魔法と呪術使わないで戦ってくれないかなぁ。
俺はそんな叶いもしない願いをしながら、土煙の中で立ち上がるアセイダルを見て剣を構え直した。
_______________________________________________
「やはりトレントだけあって再生能力が厄介じゃな。」
フウマとマイでは起点の分かりづらいこやつの攻撃を避けるのは難しかろうと思って、妾1人でイビルエルダートレントの相手をする事にしたのじゃが、妾はこの魔物にいささか手を焼かされておった。
トレントの特性である再生能力に加えて、魔封結晶の影響でイビルエルダートレントの表皮がかなり硬くなっていて剣を使わなくては攻撃が通りづらくなっておるのも妾が苦戦しておる原因の一つじゃろう。
「さて、魔石はどこかの。」
妾は攻撃を全てかわしながら、鞭の様に襲いかかってくる枝を斬り払いつつイビルエルダートレントの核となっている魔石を探す。
スライムやトレントなどの攻撃しても再生する魔物は魔石を見つけ出して破壊するか、体から取り出すのが定石である。
全盛期の頃なら跡形もなく吹き飛ばせばそれで済んだのだが、今の妾ではとてもそんな真似は出来ないためこうして探し出さなくてはならなかった。
なんとも面倒な事じゃの。
「まぁ無理をすればそれも出来なくはないが、折角城から逃げた時の傷が治ったのにまた内臓をズタズタにしたくはないしの。」
妾は城から逃げ出す時に、弱体化して転移魔法のLVが下がったままで自分の限界を超える無茶な転移した為に、身体に大きな不可がかかり内臓の一部を破裂させてしまった。
吸血鬼たる妾であればその程度放っておけば自然に回復するが、何も好き好んで身体を壊したくはないし、アセイダルとの戦いもこの後に控えている事を考えると一撃で吹き飛ばすという選択肢は選べない。
「魔封結晶を先に回収できれば楽になるんじゃろうが、どうも気配が掴みづらいし先に探し出すのは無理そうじゃな。」
イビルエルダートレントの体内に魔封結晶があるのは間違いないじゃろうが、体内にとり込んでいるためか魔封結晶の気配がぼやけていて上手く場所がつかめない。
そうなるとちまちまと切り裂きながら魔石を探していくしかないのじゃが、いくら攻撃しても次々と新しい枝を生やして襲いかかってくるため中々本体の幹の部分を攻撃できずにいる。
フウマとマイの方は、フウマが何やら新しいスキルを習得しておったしマイも実力をぐんぐん伸ばしてきておるからそこまで心配は無いじゃろうが、戦闘が長引けば長引くほど厳しくなってくるじゃろう。
妾が出来るだけ早くイビルエルダートレントを倒して加勢に行かなくてはならないのは間違いないはずじゃ。
「かなり消耗するからやりたくは無かったが、仕方ないかの。」
妾はそう呟きギフトの力で血でできた大剣を2本に増やしてイビルエルダートレントに向かって飛び込んだ。
これで妾の手数の方がイビルエルダートレントの回復速度を上回るじゃろうし、局面が動くはずじゃ。
こやつを倒して直ぐに行くから待っておるのじゃぞ。
妾はフウマとマイに心の中でそう応援しながらイビルエルダートレントを倒すために二振りの紅い大剣を振り続けた。
_______________________________________________
「フウマくん!」
「あいよ!」
舞の掛け声を聞いた俺はアセイダルが飛ばしてくる土魔法の砲弾を巨石に隠れて防ぎながら、転移魔法で舞をアセイダルから遠ざけた。
「サッキマデノ威勢ハドウシタ!」
「って言ってるけどどうするよ。」
「これは中々厳しいわね。」
アセイダルは舞に吹っ飛ばされてから呪術と土魔法を多く使う様になった。
舞がアセイダルに剣で攻撃しようとすると周りに自分の魔力をばらまいて呪術を使おうとし、距離を取ると石の砲弾を飛ばしてくる。
さっきからこの調子で俺達は一切攻撃出来ずに防戦一方となってしまっていた。
俺の火魔法じゃ遠くから打っても避けられるだけだったし。
「せめてもう少し俺に火力があればどうにかなるんだが。」
「今それを言っても仕方ないわ。今はどうやってあの呪術の壁を突破するか考えましょう。」
「ああ、そうだな。悪い。」
「ふふっ。私達はパートナーなんだからお互い様よ。」
舞がそう言って微笑んだ。
そうだ。
無いものを悔やんだって仕方ない。
今切れる手札だけでアセイダルをぶっ倒す方法を考えろ。
幸いにもあいつの攻撃は避けられるし、一切の攻撃が効かない訳でも物凄い回復能力を持っている訳でも無い。
アセイダルが今までどんな動きをしていたか思い出せ。
何かしらあいつに勝てる方法があるはずだ。
そうしてアセイダルの行動を思い返してみると、俺はある一つの仮説を思いついた。
「なぁ舞。アセイダルは舞が近づく度に魔力を放出してたのか?」
「ええ。私が一定の距離に入る度に魔力を出してたわ。どうやら魔力を身体に纏う事は出来ないみたいね。」
「それじゃあ、今のアセイダルの周りにはあいつの魔力は無いって事か?」
「そうね。少なくとも私にはあいつの周囲に魔力を感じられないわ。」
やっぱり俺の読みは正しかったらしい。
これならもしかするといけるかもしれない。
「そうか。それは良かった。もしかするとアセイダルに勝てるかもしれないぞ!」
俺は舞に向かって満面の笑みでそう言った。
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