陰キャの俺、なぜか文芸部の白髪美少女とバスケ部の黒髪美少女に好かれてるっぽい。

沢田美

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陰キャ、美少女先輩と勝負する ーその相手は文芸の女王ー

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午後の授業も終わり、完全に帰宅ムード。
 俺は、昼休みの浅葱との一件を思い返していた。

 分からない……浅葱って女、何を企んでるんだ?
 あの言葉は本気か冗談か。考えれば考えるほど霧が濃くなる。

 ――まあ、何はともあれ文芸部のパソコン室に行くか。

 そう決めて教室を出ようとしたとき。

「高一くん、部活に行くの?」

 振り返ると、担任の四宮先生。
 柔らかいウェーブの栗色の髪、優しい眼差しが俺を包む。

「はい」

「そうなんだ。ふて寝したらダメだよ?」

「あれはあの時だけですから」

 入学式で寝てた件を軽く突かれて、思わず苦笑い。
 四宮先生は「ふふっ」と笑って、俺の頭をぽんと撫でた。

「頑張ってね、高一くん」

「は、はい……」

 ちょっと照れながら、文芸部の部室へ向かう。

 ※

「来たわね、高一くん」

 部室の前で腕を組む瀬良。
 メロンみたいな胸の前で威圧感マシマシ、魔王の風格である。

 ……でっけ~(心の声が漏れそうになるのを必死で抑える)。

「何ボーッとしてるの? 早く中に入りましょ。約束通り、いいことしてあげる」

 いいこと!? やっぱここ、エロゲの世界線じゃないの?

 そんな邪念を振り払いながら入室――で、固まった。

 机いっぱいに並ぶお菓子とジュース。
 カラフルなスナック、チョコ、クッキー。完全なる歓迎ムード。

 たったひとりを迎えるのに、ここまで……?

 でも、瀬良にとって“初めてのちゃんとした部員”らしい。
 下心じゃなく、ちゃんと入部した俺を、本気で歓迎してくれているのだと分かった。

「あ、えっと、私なりに用意してみたんだ。……どうかな?」

 少し不安げな瀬良。いつもの妖艶さとは違う、素直な期待と不安。

「……お前たち100点だ」

 どこぞのデビルハンターみたいな台詞が口を突く。
 瀬良はクスッと笑った。

「なにそれ、高一くん。やっぱり少し変わってるね」

「そうですかね。捻くれてる自覚はありますけど」

「ふふ、でも嫌いじゃないよ。そういうの」

 お菓子をつまむ俺に、瀬良が椅子に座りながら聞く。

「どんな物語を書きたい?」

「エロ小説!」

「――却下」

「――えぇ!?」

 俺の情けない裏返りボイスに、瀬良はため息。
 ブレザーを脱ぐ仕草が、妙に色っぽい。白いブラウスとラインの強調。視線が泳ぐ。

「あ、視線逸らした」

「いや、なんかエッチだったんで……」

「その程度で赤面してるようじゃ、君にエロ小説は書けないよ」

「その程度の……レベル!?」

 瀬良はくすくす笑い、俺の隣に腰掛ける。距離、近い。いい匂い。

「一つ助言。小説は“自分に合った物語”から始めたほうがいい。
 ずっとバトル漫画を書いてきた人が、前知識ゼロでいきなりラブコメ描いても――多分キツいよね?」

「つまり、自分と相性の良いジャンルを見つけろ、と」

「そう。思いつく限り試して、手に馴染むものを掴むの」

 真剣な横顔。文芸への姿勢はやっぱり“女王”のそれだ。

「分かりました。じゃあ、瀬良先輩」

「なにかな?」

「俺が書いた小説で先輩が“息を呑む”レベルの作品ができたら、先輩が毎度言う“いいこと”、俺にしてください!」

 土下座寸前の勢いで直訴。
 瀬良は一瞬きょとん、からの不敵な笑み。

「いいわよ。ただし――こう見えて私、官能小説で入賞経験あり。学校の本は読み尽くした。
 “目が肥えた私”を本気で驚かせられるかしら?」

 挑戦的に光る瞳。
 俺の挑戦状は、確かに受理された。

「やってやりますよ。絶対に」

「ふふ、楽しみにしてるわ」

 視線がぶつかる。
 勝負の火花、点火。

「じゃあ、さっそく今日から書き始める?」

「いや、今日は帰ります」

「えっ」

 ぽかん顔の瀬良。……可愛い。
 思わず笑ってしまう。

「いきなりは無理ですよ。まずは構想を練らないと」

「あ、そっか。そうだよね」

 ちょっと残念そう。

「でも、明日からは頑張りますから」

「うん、期待してる」

 満面の笑み。やばい、眩しい。

 ※

 部室を出ると、廊下は夕陽色。
 これから始まるのは、“文芸の女王”と“生意気な新入部員”の勝負――という名のラブコメだ。

 ぼっち生活は終わった。
 でも、それはもしかすると悪くない。

「高一くん!」

 背後から声。振り向くと、息を切らした瀬良が走ってくる。

「わ、忘れてた……これ、入部届けの控え」

「あ、ありがとうございます」

 書類を受け取る。瀬良は少し照れ笑い。

「じゃ、じゃあ明日ね!」

「はい、また明日」

 手を振って戻っていく背中を見送りながら、ふと思う。

 ――もしかして、俺、青春してるのか?

 頬が少し熱い。
 校門へ向かって歩き出すと、夕陽が俺と瀬良の影を長く伸ばした。

 こうして、俺の“新しい高校生活”の一日目が終わろうとしていた。
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