陰キャの俺、なぜか文芸部の白髪美少女とバスケ部の黒髪美少女に好かれてるっぽい。

沢田美

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陰キャ、先輩との自主練 ー先輩の笑顔が眩しすぎる件ー

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 文芸部の活動を終えて帰宅した俺は、部屋にこもって小説のアイデアノートを開いていた。
 
 もし俺が瀬良先輩をあっと言わせることができたら、官能小説と同じシチュエーション――
 
 ダメだ。絶対にしてはいけない妄想してる。
 
 頭を振って雑念を払いながら、ノートにアイデアを書き連ねる。

「バトル物が俺に向いてないなら、ギャグならどうだ!」

 このキャラにはこのセリフとこの見た目で――。
 気づけば夢中になってペンを進めていた。
 
 そんな時、ふとペンを止めた。
 休憩と思いスマホからネットニュースを閲覧する。
 数あるネットニュースの中に、一つだけ目立つ記事を見つけた。

「不知火先輩、凄いな……」

 そこに映し出されていたのは、不知火先輩がゴールにシュートしている写真と共に「未来のエース」と書かれている見出しで彼女を紹介しているものだった。
 
 躍動感あふれる写真。キラキラした笑顔。
 まさに青春の象徴って感じだ。

「明日もあの人たちと登校するのかな……嫌だなァ」

 あの2人と登校した時、周りから明らかな殺意と憎悪を感じたからな。
 鳥肌が立つほどの身震いをして、俺は再びアイデアノートの方に体を向けた。
 
 だが、集中力は完全に途切れていた。
 
 結局、その日は何も思いつかず、俺は布団に倒れ込んだ。

 ※

 次の日の学校。
 昼休みで昼食を終えた俺は、なぜか体育館の方に足を進めていた。
 
 理由は自分でもよく分からない。ただアイデアが見つかるかもしれないと思いつつ、体育館に足を運んだ。

 静けさが漂う体育館の中で、ボールがリズム良く跳ねる音が聞こえてくる。
 
 誰かいるのか? まさか幽霊? なんてな、幽霊は俺だけでいい、てな!
 
 そんな自虐をしながら中を見渡すと――そこにはシュートの練習をしている不知火先輩がいた。
 
 リズム良く息を切らして、汗を流している姿。
 黒髪が揺れ、制服から覗く引き締まった身体。
 
 ……カッコいいな。

「てっきり幽霊かと思いましたよ、不知火先輩」

「ヒャウ!? な、なんだ高一くんか」

 相当集中していたのか、俺が声をかけると先輩の声が裏返った。
 そして、不知火先輩は頬をムッと膨らませる。

「もう……変な声出たじゃん」

 その顔が可愛くて、思わず目を逸らした。

「それは失礼。練習してたんですか?」

「まぁね、試合が近いし。少しでも上手くならないと、周りに迷惑かけちゃうからね」

 不知火先輩は床に置いていたタオルで汗を拭いながら、近くに置いていた水で水分補給をした。
 
 その仕草一つ一つが絵になる。
 さすが校内の女王様だ。

「そんな高一くんは何しに来たの? もしかして襲いに来たとか?」

「先輩は俺のことをなんだと思ってるんですか……ただ小説のアイデアを探しに来ただけです」

「そっか……じゃあさ、暇そうだから私の自主練に付き合ってよ!」

「俺言っときますけど運動音痴ですからね? それと陰キャは基本運動はしない生き物でし――」

 俺がつらつらと言葉を並べていると、先輩からボールが飛んできた。
 それを咄嗟に取って、先輩に視線を向けた。
 
 不知火先輩は――笑っていた。

「ほら! 来なよ」

 彼女は優しく微笑む。
 
 その笑顔があまりにも眩しくて、俺はふと思った。
 これが水も滴るいい女ってやつなんだな、と。

「……わかりましたよ」

 俺はため息をつきながら、ボールを抱えてコートに立った。

 ※

 そこから俺と先輩は、お互いが満足――いや、俺が疲れ果てるまで練習をした。
 
 って言っても俺が10分でギブアップしたので、先輩にとってはウォーミングアップにすらならなかったと思う。
 
 さ、最近の若者は体力がすごいな……俺も歳だな。
 
 いや待て、俺もまだ高一だった。

「はい、お疲れ様!」

 体育館の壁際で休憩していると、不知火先輩は俺に冷えた水が入ったペットボトルを当ててきた。
 
 冷たい……でも涼しい。
 
 俺は当てられた水を貰い、水分補給をする。
 疲れ果てている俺の隣に先輩が汗を拭きながら座った。
 
 ち、近い……シャンプーの匂いもする。良い匂いだ。
 
 いや待て、汗の匂いじゃなくてシャンプーの匂いがするってどういうことだ? この人、どんだけいい匂いなんだよ。

「ねぇ、高一くん」

「なんですか?」

「ありがとね」

「何がですか?」

「由良のいる部活に入ってくれて」

 不知火先輩は少し寂しそうに笑った。

「別に良いですよそれくらい。――って言ってもどうせ強制的にどこかには収監されるなら、親しげのある瀬良先輩のいる文芸部に入ったことが幸運でした」

「あはは、何それ」

 不知火先輩は軽く笑うと、俺の方に視線を向けた。
 
 その瞳が、いつもより真剣に見える。

「ねぇ、高一くんはさ。気になる子とかいないの?」

 突然の問いかけ。
 
 気になる子……すなわち好きな子か。
 
 ふと脳裏によぎるのは、小中で人付き合いをまともにしてこなかった自分の姿。
 俺に好きな子なんてできるのだろうか。
 
 浅葱にはあんなことを言われたけど、正直自分はこの青春物語のぽっと出のモブキャラ。モブキャラが主人公を差し置いてメインヒロインと結ばれることは無い。
 
 ――そう、俺の答えは。

「いないですね。まず俺みたいな人間を好む人がいるか怪しいくらいです。俺は所詮モブキャラですから」

 本心だった。俺が実際に思っていたことだ。
 
 俺がそう答えた時、不知火先輩はいつもの笑顔や笑い声を出さなかった。
 ただ彼女は真剣な顔で俺を見つめている。
 
 その視線が、少しだけ痛い。

「私はそうは思わないよ。きっとこれから先の未来、高一くんのことを好き、って言ってくれる人が現れるよ」

「そうだといいんですけど――まぁ? 俺は一生ぼっちを貫いて非リア充というキャラ設定を押し通していきますけどね!」

 自虐を込めて笑う俺に、不知火先輩は少しだけ困ったような顔をした。

「じゃあ、私が高一くんをリア充にしてあげようか?」

「へ?」

 不知火先輩の瞳が俺を捉えた。
 
 いきなりの発言に固まる俺を見て、彼女はプッと笑いを零した。

「なに本気にしてんの。冗談だよ、冗談!」

「で、ですよね! 不知火先輩みたいな可愛い人にモテるわけないですし!」

 俺は慌てて否定した。
 
 だが次の瞬間、不知火先輩は少しだけ顔を赤くして――。

「――でも、私は多かれ少なかれ高一くんのこと好いてるよ?」

 俺は再び固まった。
 
 心臓が、ドクンと大きく鳴った。
 
 え? 今、なんて?
 
 好いてる? 俺を?
 
 いやいや、これは友達として、だよな? そうだよな?

「え、あ、その……」

「ふふ、どっちの意味かは、高一くんが考えてね」

 不知火先輩はそう言って立ち上がり、再びボールを手に取った。

「さ、もう一回練習するよ! 高一くん、休憩終わり!」

「え、マジですか!?」

「マジです!」

 爽やかな笑顔で言い放つ不知火先輩。
 
 俺は立ち上がる気力もないまま、ただ彼女の背中を見つめていた。
 
 ――俺の青春ラブコメは、一体どうなってるんだ。
 
 そして、俺の心臓は、まだドキドキと鳴り止まなかった。
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