陰キャの俺、なぜか文芸部の白髪美少女とバスケ部の黒髪美少女に好かれてるっぽい。

沢田美

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陰キャ、その先に待ち受けるのは絶望か希望か ーあれ? 俺の青春ラブコメ変じゃね?ー

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 不知火先輩が部屋を出ていった後、俺と瀬良先輩はしばらく無言で立ち尽くしていた。
 
 気まずい。気まずすぎる――てか、俺この後どうなるんだよ……死ぬのか? 俺は。

「……とりあえず、先輩、着替えてください」

「そ、そうね……」

 瀬良先輩は顔を真っ赤にしたまま、棚からいつもの制服を取り出した。

「高一くん、外に――」

「はい、出ます! 出ますとも!」

 俺は慌ててパソコン室を飛び出した。 
 廊下に出ると、少し離れた場所に不知火先輩の姿が見えた。
 壁にもたれかかって、何か考え込んでいるようだ。

「あの、不知火先輩……」

 俺が声をかけると、不知火先輩はこちらを向いた。

「高一くん……さっきのって、どういうこと?」

「えっと、その……」

 どう説明すればいいんだ? 瀬良先輩と俺の約束のこと? 官能小説のシチュエーションのこと? いや、それを説明したら余計にヤバいことになる。

「由良が……バニーガール着てたよね」

「は、はい……」

「なんで?」

「それは……俺が小説のアイデアで先輩をあっと言わせたら、先輩が書いてる官能小説と同じシチュエーションをしてくれるっていう約束があって……」

「官能小説……」

 不知火先輩が少し考え込む表情をする。

「それで、由良が書いてる官能小説にバニーガールが出てくるってこと?」

「そ、そうみたいです……」

「へぇ……」

 不知火先輩は少しだけ笑った。

「由良、そういうの書いてたんだ。知らなかった」

「え、知らなかったんですか?」

「うん。由良、私には作品あんまり見せてくれないから」

 不知火先輩は少し寂しそうに笑った。 
 その表情に、俺は少しだけ胸が痛くなる。

「でも……高一くんには見せてるんだね」

「え、あ、それは……」

「いいの。由良が心を開いてくれる人がいるって、嬉しいから」

 不知火先輩はそう言って、優しく微笑んだ。

「ただ……」

「ただ?」

「あんまり無茶なことはさせないでね。由良、意外と流されやすいから」

「は、はい……」

 その時、パソコン室のドアが開いた。 
 制服に着替えた瀬良先輩が、恥ずかしそうに顔を出す。

「優花……」

「由良」

 二人は顔を見合わせた。

「ごめん、変なところ見せちゃって」

「ううん、いいの。でも――」

 不知火先輩は瀬良先輩に歩み寄り、耳元で何かを囁いた。 
 瀬良先輩の顔が真っ赤になる。

「ゆ、優花!?」

「ふふ、冗談だよ」

 不知火先輩はそう言って、俺の方を向いた。

「じゃあ、私は部活に戻るね。高一くん、由良のこと、よろしく」

「え、あ、はい……」

 不知火先輩はそう言い残して、体育館の方へと歩いていった。

 ※ ※ ※

 不知火先輩が去った後、俺と瀬良先輩はパソコン室に戻った。
 
 気まずい空気が流れる。

「……高一くん」

「はい?」

「さっきは……ごめんね」

 瀬良先輩が小さく謝った。

「いえ、俺が調子に乗って写真撮ったりしたせいで……」

「ううん、私が暴走しちゃったから」

 瀬良先輩は少し恥ずかしそうに笑った。

「でも……高一くんの小説、本当に面白かったわ」

「ありがとうございます」

「特に、主人公の内面描写がいい。孤独だけど、それを受け入れようとしている感じが伝わってくる」

 瀬良先輩は真剣な顔で言った。

「高一くん、もしかして……自分のこと書いてる?」

「え……」

 図星だった。 
 俺は少しだけ、自分の気持ちを主人公に重ねていた。

「いいと思うわ。自分の経験や感情を物語に昇華させる――それが小説の醍醐味だもの」

「先輩……」

「だから、このまま書き続けて。完成したら、私が一番最初に読むから」

 瀬良先輩は優しく微笑んだ。 
 その笑顔が、あまりにも綺麗で。
 俺は思わず顔を赤くしてしまった。

「は、はい……頑張ります」

「うん。期待してる」

 瀬良先輩はそう言って、再びパソコンに向かった。 
 俺も自分の席に座り、アイデアノートを開く。
 静かな部室に、キーボードを叩く音だけが響く。なんだか、心地いい。

「ねえ、高一くん」

「はい?」

「今度、二人でまた美術館行かない?」

 瀬良先輩がパソコンから目を離さずに言った。

「え、あ、はい! 行きます!」

「じゃあ、決まり」

 瀬良先輩は満足そうに微笑んだ。

 ――俺の青春ラブコメは、まだまだ続きそうだ。

 ※ ※ ※

 その日の夜。 
 俺は自室で、スマホを眺めていた。
 さっき撮った、瀬良先輩のバニーガール姿の写真。
 ……消すべきか、残すべきか――いや残しておきたい、こんな格好の先輩の写真なんて消せるわけがない。

「いや、これは証拠として残しておくべきだろ」

 そう自分に言い聞かせて、写真をアルバムに保存する。 
 その時、スマホに通知が来た。

『LINE - 瀬良由良』

 瀬良先輩からだ。 
 俺は慌ててメッセージを開いた。

『さっきの写真、消してね?』

 ……ですよね~、消すフリして消さないどこうかな。

『分かりました』

 そう返信しようとして、ふと思いついた。

『でも、小説の参考資料として必要なんですが……』

 しばらくして、返信が来た。

『……一枚だけなら、いいよ』

 俺はガッツポーズをした。
 しゃおらぁ! この勝負俺の勝ちだァ!

『ありがとうございます!』

『代わりに、小説ちゃんと完成させてね』

『はい、必ず!』

 メッセージのやり取りを終えて、俺はベッドに寝転がった。 
 天井を見上げながら、今日のことを思い返す。 
 バニーガール姿の瀬良先輩。あの距離感。触れそうだった唇。

「……ダメだ、また変な妄想してる」

 俺は頭を振って、雑念を払った。
 そして、机に向かい、小説の続きを書き始めた。

 主人公が内気な少女と出会い、少しずつ心を開いていく物語。
 それは――俺自身の物語でもあった。ペンが止まらない。言葉が溢れてくる。
 気づけば、深夜3時を過ぎていた。

「……そろそろ寝ないとな」

 俺はノートを閉じて、ベッドに倒れ込んだ。目を閉じると、瀬良先輩の笑顔が浮かんでくる。

「……明日も、頑張るか」

 そう呟いて、俺は眠りについた。 
 これからどんな展開が待っているのか分からないけど――きっと、悪くない。 
 そんな予感がしていた。
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