先パイッ！「ビーエル」って何ですかっ？

第68話 無自覚⑧

本当は…身内達は、自分にも危害が来たら…と距離を置きたかったかもしれないが

テーブルが ここしか空いて無いし…

コイツが にっこり笑って、いつもの様に「早よ 食べよ～？」とか誘うし

皆 日本人だから 同調圧力…と言うか、意見を言えない…と言うかで…

いつものように 一緒に昼食を食べる事になったけど…

表情が固い…というか、口数が少ない…
いや、必要最低限しか言わない。

まだ、情報処理中か…さっきの連中が恐かったのか…衝撃が大きかったのか…？

分からないけど…この周りの、特等席の連中よりは顔色が良い。

何てったって 今 俺らにイタズラされて無いからな？

蛇に睨まれた蛙…的な 気分を味わえる 特等席のポジションよりは幾分かマシだろうけど…？

アイツが「チンして来る～」と レンジに行ってる間に…

早速、さっきの連中についてと、気になる過去の連中についてを報告…と言うか確認する。

何人かは弁護士と警察をはさんで、接近禁止令とか出してるから

未だに 当時担当してくれた弁護士事務所とは繋がっていて

定期報告的なのは続いてるから…

でも、一番 気になってるのは…アイツが絡まれる時は…柔道部達とか、部活生と一緒の時が多い気がする…。

俺は ちょっとしか、知らないけど…聞いた限りでは…そう。

ただ、いつも大人数で観光的なの行ってるし…部活生の割合が多くなるだけ…？

たまの休みにリフレッシュ的な？
部活休み＝部員全員休み…なんだろうし？

部活してる…特に運動部は全国から推薦とかで来てて、寮生活とか、大学の近くに住んでたりだから…

アイツと駅とかで 遭遇率が高くなるだけ…か？

どうも引っ掛かるな…知ってるから？

美人局みたいなので廃部寸前になったのとか…公式戦出られなくて…

あの人達は 責任とって退学した所までは…報告があったけど…

何か…その時に…似てる気がする…考え過ぎか？

でも…アイツが巻き込まれでもしたら…

今度、神戸さん達に確認してみて…白石君にも…

「先パイっ？」

「あっ…どした？」

「チンして来た～！お茶も持って来た～ メール？終わったら食べよ～？」

「ああ、ありがと。もう終わった」

これは、「誰かがテーブルに残らんと、席が無くなるかも…」とか

コイツが もっともらしい理由で俺を残した。

2人一緒に席を外したら、「これ幸い！」「今だ 逃げろ！」って特等席の連中がゴッソリ居なくなるだろうからな。

コイツは「逃がしてやらね～♪ 蛙共！」とでも言う様に、イタズラっぽく 茶目っ気たっぷりで ニコニコしてて

本当に「かわいい後輩」だな。

クソかわいいな…これは。

ヤバい…人生初…顔が「にやけ」そう…かも？

不思議だな…誰からも「にやけ顔」の作り方とか 教わっても無ければ

役者のように 鏡の前で表情の訓練もして無いのに…

自然と…出来るもんなのか、「その時」が来れば。

また１つ、コイツから教わった…と言うか、初めての体験したな。

「先パイ？何かあったん？メッセージ？良いこと？ホントに終わってからでいいよ～？飯は」

「ん？いや、もう終わりと言うか、先手打っといただけ。逃すわけ無いし？」

「！ あ～、さっきの～っ？先パイさっすが～！仕事 早っや～！チンして来る間やんっ？やっぱカッケ～！♪」

「せっかく作って来てくれたから、ゆっくり集中して食いたいしな？」

今のは、もちろん わざと声に出して言った。周囲の反応見たいから。

それに、遊び半分で 俺らに喧嘩 売る様な事をしようとする馬鹿を ある程度潰しとく。

これで 喧嘩売る様なら、容赦無い 反撃が待ってると 分かる脳みそがあれば…しないだろうけど。

世の中 私利私欲や承認欲求やらに負け、馬鹿を見る人間は無数にいるからな。

けど…可哀想に…身内まで巻き添いだ…
悪いな…こんなヤバそうな 俺らと飯って…

普通の感覚なら、味がしない…か 喉に詰まりそうか…？ごめん。

でも…漫研連中は…やっぱ、創作パワーのお蔭か…顔が青から紅潮して来て…

瞳が輝いてる気が…「腐界」のパワーか？

周囲を見渡すと…やっぱ「腐」のパワーな気がするな…

何はともあれ、かなり…気になってた、お姉さん達のレシピが こんなに早く食べれるなんて…

今日は、もしかしたら…一周まわって「良い日」なのかもしれない。

「かわいい後輩」も分かった…出来たしな。

「先パイ、はじめに言っときますけど！」

「何？」

「これ、姉ちゃん達のレシピ通りやけどな？姉ちゃん達が作った方が100倍旨いけん！そこだけは 言っとかねぇと！」

「…ふっ 分かった…けど…ふふっ 何それ？いや、まぁ 何となく 言いたい事は分かる気がするけど…」

「うちの姉ちゃん達が こんなもん と思われたら堪らんけんさ～っ？」

「ははっ 言うと思った～」

今から、人生初 他人の手作り料理食べるし、しかも…

味の再現度は1/100だと宣言されてて…

普通に考えたら、それは絶対 美味しく無いだろうって思って 食べたく無いのが普通なのに。

是非とも食べてみたくて しょうがないって…

俺って…馬鹿か…何だろう？

けど、今スゲェ 楽しい…？かも…