上京して一人暮らし始めたら、毎日違う美少女が泊まりに来るようになった

さばりん

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第一章 出会い編

第一話 新生活

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 3月下旬、俺は故郷を離れ、はるばる東京へ上京してきた。

 4月から東京の大学に進学するため、北の大地からやってきた俺、南大地みなみだいちは、明日から一人暮らしを始める。そして、今日は引っ越しの荷物を整理するために母親と共に新しく暮らすアパートへ向かっていた。

 最寄りの駅からは徒歩15分ほど、築40年と結構年期の入ったアパートではあるが、木造2階建ての角部屋で1DKの6畳間でバス・トイレ別という好条件で、東京にもかかわらず家賃4万円となかなかの好物件だったため、不動産屋でこのアパートを見つけて即決した。

 アパートから5分ほど歩けばスーパーもあるし、特に生活に困るようなこともない。唯一欠点を指摘するなら、大学が最寄り駅から電車に乗って10分ほどかかる位置にあるということかな。

 俺と母親は、このアパートを管理する大家さんの元へ出向いていた。

 「今日から息子がお世話になります。これつまらないものですが……」

 母親は大家さんに北海道のお土産の定番である、白い四角形のクッキーを手土産に渡す。

 「あらあら、これはご丁寧にどうも」

 大家さんは遠慮しつつも、母親からの手土産を受け取る。

「ほら、あんたが住むんだからしっかりご挨拶しなさい」

 母親に促されて、俺も大家さんに挨拶をする。

「初めまして、北の大地から来ました南大地です、よろしくお願いします」
「こら、そんなシャレはいらないの」
「イッテ」

 こつんと頭をたたかれた。
 母親は大家さんに平謝りするが、大家さんは全然気にしている様子はなく、にこやかに答えてくれる。

「いえいえ、こちらこそ。こんなボロくさいアパートでよければ好きに使ってください」

 大家さんが優しそうなおばさんでよかったと、心の中で安堵《あんど》していると、荷物を積んで運んできた引っ越し業者の車がアパートの前に到着した。


 ◇


 引っ越し業者の人に、荷物を部屋に入れてもらい、ひとまず物がすべて入れ込まれた。すべてといっても、服、本、漫画など最低限度の物しか持ってきていないので、段ボール4箱ほどしかなかった。
 
 ハンガーラックや洋服用のタンスなどを組み立てて、服を入れ終わるまでにそう時間はかからなかった。2時間ほどたったところで、段ボールの荷物の整理は終わり、時刻はお昼を過ぎたあたりになっていた。
 
 今日の昼食はコンビニ弁当。荷物の整理途中、母親が近くのコンビニへ買いに行ってくれていた。しかし、まだ机などの家具がないため、地べたに座っての食事。

「とりあえず、服の整理は終わったわね。次は家具を買いに行くわよ。14時に春香《はるか》ちゃんたちと待ち合わせしてるから」
「え、アイツいるの……」

 俺は嫌悪感丸出しの表情で、母親に冷たい目線を向ける。
 俺が言う「アイツ」とは、お隣さんでご近所の幼馴染、小野春香おのはるかのことである。この春から、大学は違うが、春香も都内の大学へ進学するため、上京するのだ。

 母親同士の仲がよく、日ごろから会う機会も多かったし、別にあいつのことは高校の時まで嫌いではなかった。むしろ、あのサラサラとしたストレートの長髪と、くりっとした目に小さい鼻、そして清楚感あふれる真っ白い顔は、誰もが美少女と呼べるようなやつだったことは認めよう。ただ、先週から俺とあいつは、絶賛ケンカ中で少し会うのが気まずいのだ。

 俺が渋ったような顔をしていると、母親は深いため息をついた。

「まーだ、あのことでケンカしてるの?」
「うるせぇな……別にいいだろ」
「私はあっちも十分可愛いと思うけどね」
「けっ、くだらね」

 俺は母親から目線を逸らして、残っていた弁当を一気に掻き込んだ。


 ◇


 都内の巨大ターミナル駅の西口駅前に、本当にあるんだな家電量販店。

 アパートから最寄りの駅まで歩き、そこから電車に乗って20分、首都圏の人が歌っている歌の通りに、その家電量販店は巨大ターミナル駅西口の駅前にそびえていた。

「すげぇな……本当にあるんだなこんな巨大な駅前に」
「何言ってんのあんた? いいから早く付いてきなさい」

 母親に促され、駅前に佇んでいる家電量販店の前に向かうと、入り口のところに、待ち合わせている二人の姿を見つけた。

「ごめんなさいね。小野さんお待たせしちゃって」
「平気よ、私たちも今来たところだから」

 母親が駆け寄っていき、挨拶を交わした女性は、春香の母親。そして、その隣で俺の母親に挨拶している金髪の女こそが、小野春香である。
 高校の時の清楚系小野春香はどこへやら、ウェーブをかけたセミロングの髪を金髪に染め、耳にはきらりと光るピアス、高校の時よりも厚くなった化粧。見ての通り大学デビューをするために大変貌を遂げたのだ。

 俺は春香の母親へ軽い挨拶を済ませ、ちらりと春香の様子を窺う。
 すると、彼女も俺の視線に気がつき目が合った。一瞬きょとんとした顔をしていた彼女は、高校の時と変わらない春香であったが、すぐに表情を強張らせ俺を威嚇する。
 
 やっぱり先週のことまだ怒ってんだな……。
 俺は苦笑いを浮かべながら、母親たちの後を追い、店内へ入っていった。


 ◇

 
 家電量販店で冷蔵庫や洗濯機などを順に購入していく。俺は特にデザインなどを気にすることはなかったので、大きさだけ注意して、あとは適当にぱぱっと購入してしまう。
 春香の方も家電に関しては特にこだわりはなかったらしく、手早く家電を購入していた。時々目線が何度か合ったが、春香はすぐにぷいっと視線を逸らしてしまう。

 そんなことをしているうちに、無事に家電の買い物は終了。次に向かったのは、反対口の方にある、大手インテリア家具メーカーのお店。

 ここでは、机やキッチン用品などを購入した。俺は特にこだわりとかはないのでスムーズに買い物を済ませていくが、女の子の部屋となるとそうはいかず、春香は「ああでもない、こうでもない」と言いながら様々なものを物色して悩んでいた。次第に色々な商品を見ていて機嫌もよくなってきたのか「これ可愛い」などといいつつ、時折笑顔を見せるようになっていた。俺はその姿をボーっと眺めていた。

 今の金髪姿の彼女に慣れていないため、最初はその姿にも違和感があったが、彼女が笑っている姿を見ると、実は俺が見慣れていないだけで、案外ああいう見た目の方が大学ではモテるのかな? などと思えるようになってきた。

 するとまた、春香と目が合った。彼女は一瞬顔を赤らめたが、またすぐに目線を逸らして、再び家具物色に戻ってしまう。

 一通りの物を揃え終わり、最後に向かったのは寝具売り場。俺と母親は、実家から寝具を持ってきていないため、今日の寝具を持って帰らなくてはならなかったので、荷物にならないよう最後にやってきたのだ。

「そういえば、あんたは敷布団でいいの?」

 母親がそうたずねてきたので、俺は「あぁ」と生返事を返した。別に実家でも敷布団で寝てたし、特に問題はない。

「へぇ、あんたまだ敷布団で寝るんだ~」

 すると、今日初めて春香が、俺に上から目線で話しかけてきた。

「あ?」

 俺は睨みつけるような目で春香を見た。

「私は念願の一人暮らしで、ベット購入してもらったんだーいいでしょ!」

 春香は自慢げにベットのある方向を見て言ってきた。

「へぇ、よかったじゃん……」

 どうでもいいといわんばかりの返答をすると、春香は少し驚いた表情を見せた。

「え? どうして、ベットだよベット!? 一人暮らしなのに買わないの?」
「いや、俺の家6畳間で、ベットだと場所取るし、別にいらん」

 俺がそう言うと、春香は不貞腐《ふてくさ》れたような表情になった。

「あっそ。じゃああんたは、一生地べたで這いつくばって、ぺったんこの敷布団で寝てな」

 それはお前の実家の布団だろ……と突っ込みたくなったが、これ以上面倒事を起こすのも気が引けたので、心に秘めておき、俺は「はいはい」と、生返事だけを春香に返しておくことにした。


 ◇


 買い物を済ませ、会計を待っている間に何気なくスマホをいじっていると、春香に後ろから声を掛けられた。

「ねぇ」
「あぁ?」

 スマートフォンをいじりながら春香に生返事を返す。しばし間が空いた後に、春香の心細い声が聞こえてくる。

「そんなに似合ってないかな……私」
 
 俺はスマホの画面から春香へと目線を移す。春香は俯きながら少し顔を赤らめつつ、両手の人差し指を合わせ、目線はそっぽを向いていた。

 そもそも俺と春香が先週ケンカした原因というのが、大学デビューするために髪を染めてきた春香に対して、俺が「似合わない」といったことが発端であった。彼女は、「他のみんなは似合ってるって言ってくれたし」と反論したが、俺が「それはただのお世辞だ」と豪語し、言い争いになった挙句、春香が激怒し、口を聞いてくれなくなったのだ。

 ケンカの原因を俺が思い出している間、春香は緊張した面持ちでもぞもぞと身体を動かして、俺の返答を待っていた。
 俺はため息をついてから、出来るだけ素直な気持ちで答えた。

「まあ、お前がそれがいいって言うなら、それでいいんじゃねーか? 大学では誰も高校の時のお前なんて知らねーんだしよ」

 俺が頭を掻きながらそう言うと、春香は顔を上げた。しかし、俺の答えに納得がいってないらしく、渋い表情で見つめてきた。

「でも、大地から見たら似合ってないんでしょ??」

 別に俺の評価なんて気にすることないのに……と疑問に思ったものの。春香が納得していないようだったので、俺の正直な意見を伝えることにした。

「似合ってないって言うよりは、見慣れてないだけなのかもな……まあ一つ確実に言えることは、俺はその姿は好きじゃないってことかな」

 春香は俺が言った言葉が本心であるとわかり、ようやく納得の言ったような表情を見せた。

「わかった」

 その時の春香は、嬉しさや悲しさが入り混じったような、何とも言えない笑顔を俺に向けてきて、一言だけそう呟いた。
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