上京して一人暮らし始めたら、毎日違う美少女が泊まりに来るようになった

さばりん

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第一章 出会い編

第十一話 田舎者

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 俺は洗面所の鏡の前でネクタイをキュっと締めた。最後に身だしなみを整えて、スーツにほこりなどが付いてないか確認する。

「よしっ!」

 気合を入れ直して、鞄を手に持って玄関へと向かう。
 鍵を閉め、戸締りがされているかもう一度確認。しっかり施錠されていることをチェックして、俺は駅へと歩き出す。
 その時、隣のドアが勢いよく開かれた。

「やばいやばい」

 そう言いながら慌てた様子で出てきたのは、優衣ゆいさんだった。
 スーツをだらしなく着こなし、片足ケンケンでなんとかヒールを履いて、家を飛び出したところだった。

「おはようございます優衣さん」

 俺が挨拶すると、優衣さんは、はっ!と俺の姿に気が付つき、慌てて取りつくろう。

「おはよ、大地君! お、スーツじゃん決まってるね! もしかして今日入学式?」
「はい」
「そっかぁ! ま、大学生活これから楽しみな! お姉さんは遅刻しそうだから先に行くね、それじゃ!」

 手を振りながら、優衣さんは廊下を走り、階段を駆け下りて、嵐のように猛ダッシュで駅の方へと消えていった。
 寝坊して遅刻しそうなんだなありゃ……優衣さんのポンコツっぷりに俺は苦笑いを浮かべつつも、優衣さんが無事に間に合いますようにと心の中で祈った。
 
 俺も消えていった優衣さんと同じ方向へと足を向けて、駅へと歩いていく。
 今日は雲一つない晴天で、絶好の入学式日和だ。
 道中にある公園には、桜が満開に咲き乱れており、時折風が吹くと、花びらが散り、さらに地面に落ちている花びらが舞い上がり、紙ふぶきのような幻想的な光景を演出していた。

 そんな街の様子を観察しているうちに、人通りも多くなっていき、やがて駅に到着する。
 生憎あいにく、朝のラッシュの時間帯と重なってしまい、駅前には多くのスーツ姿のサラリーマンがラッシュの電車へ乗るため、駅の改札口へと続く階段へと吸い込まれ行く。
 
 あの大群の中に混ざり込まなくてはならないと考えると気が引けたが、意を決して荒波にもまれる気持ちで駅の中へと入っていく。改札口を抜け、ホームへと続く階段を下りた時、ちょうど乗る方面の電車が到着し、ドアが開いた。
 
 ぎっしりと詰まった肉まんのように人が詰め込まれている電車内に、俺は唖然あぜんとした表情になる。もう入りきらないのではないかという車内に、さらに人が隙間を探して無理やり詰め込む具材のように詰め込まれていく。

 おいおいマジかよ。都内の朝のラッシュって、こんなに毎日大変な思いして乗らなきゃいけないわけ? もうラッシュというより戦場じゃん……

 北の大地にいた時は、こんなに混雑している電車に乗ったことがないため、目が回ってしまいそうだ。というか、俺の地元は電車が走ってる地域でも、一時間もしくは二時間に一本しかない。そんでもって座れる。

 頑張れ赤字路線! 頑張れ! 鉄道会社!

 地元との違いに、俺が戦慄せんりつめいた表情で眺めていると、発車ベルがホームに鳴り響く。
 その音を聞き、俺は急いでその具材の波に呑み込まれるようにして、なんとか電車に乗りこんだ。やがて電車のドアが閉まり出発する。

 動き出した電車に、ガタンゴトンと揺られながら、必死に自分の立つスペースを確保しようともがくが、相手のフィジカルコンタクトが強いので中々スペースを確保できない。

 これが現日本社会人のスクラムの力。何という集団力だ! まさにONE TEAM! 
 そんなこと露知らず、各々が自分のスペースを確保しようと、次々とラガーマンである北の大地から道産子大地選手にタックルをかましてくる。

 今後、朝の一限目から授業がある日は、今日と同じような時間に登校しなければならないので、毎週こうして通勤ラッシュワールドカップを開催しなくてはならないのかと考えてしまうと、背筋がぞっとした。

 なんとか耐えていると、ようやく電車が大学の最寄り駅に到着する。ドアが開いた途端、戦いに敗れた者たちが、外へ放り出されていく。俺もなんとかその僅かな人の隙間をかき分けながら、やっとの思いでホームへ降り立つ。
 
 ホームに出ると、先ほどまでとは違い、新鮮な空気を吸える爽快感と、圧迫されていた場所から抜け出せた開放感を感じる。

 北の大地よりも都内の方がごみごみとしていて、元々圧迫感があったにもかかわらず、今は開放感すら覚えている。なるほど、この満員電車という窮屈地獄を耐えているからこそ、都内の人混み具合に目が回らないのか納得。(田舎者の個人的見解)

 周りを見渡すと、俺と似たようなスーツ姿の若者が、大勢電車から降りてきていた。
 同じ目的の人たちが、通勤電車という荒波にもまれて、ここまでやってきたらしい。
 心なしか皆疲れているように見える。やっぱ、若者でも満員電車は辛いんだな。

 ただ電車に乗っただけなのに、俺の身体には一日分の疲れを蓄積したかのような疲労感がどっと押し寄せてきていた。何とか気が滅入る前に足を動かして、俺は改札口へと歩みを進めた。

 高架になっているホームから階段を下りて、地上に足をつくと、十メートルほど先に大きな改札口が見えてきた。

 改札口を出ると、金髪スーツや、黒髪メガネなど、社会人と雰囲気が違う若者たちが、スマートフォン片手に友達を待っている。
 俺もその若者たちと同じように、スーツのポケットからスマートフォンを取りだして時間を確認する。時計は頂点をさしており、待ち合わせ時間ピッタリになっていた。

 辺りを見渡すと、その若者たちの中に、ひときわ爽やかな雰囲気を醸し出しながらも、少し大人びたような雰囲気の厚木あつぎらしき人物を発見した。その厚木らしき人の元へ近づいていくと、隣にもう一人女性が立っていた。
 髪の毛を後ろに結んでいたので、化粧もしていたので、最初はよく分からなかったが、だんだん近づいていくと高本たかもとだった。
 厚木と高本は、俺の姿に気が付くと、手を大きく上げてこちらに声を掛けてきた。

「おっす!」
「おはよ」
「おはよう。ごめん、待った?」

 俺が申し訳なさそうにそう尋ねると、ニコニコとしながら高本が答えた。

「全然! 私らも今来たとこだし」
「それなら、よかった」

 俺がほっと胸を撫で下ろして一息入れると、今度は厚木が仕切りだす。

「よっしゃ、じゃあ会場に向かいますか」
「おけ」
「おう。行こう」

 俺たちは三人で入学式の会場へと向かう。会場といっても、一番生徒を収容できる大学の講堂なのだが、俺たちはどこか神妙な面持ちで会場へと足を運んでいた。
 駅前から少し離れた大学へと続く一本道へ入ると、高本がふと話を切りだす。

「そういえば、綾香っち残念だったね」
「そうだな……」
「ま、確かに人気女優なわけだし、仕方ないわな」

 井上さんは、学部の入学者代表として前列に座らなくてはならないため、残念ながら一緒に入学式に出席することは出来ない。
 まあ、そりゃ人気女優ともなれば、大学側も入学生代表の模範として推薦したくなるわな……そんなことを3人で喋りながら歩いていると、あっという間に大学の校門へ到着していた。
 
 正門から講堂までは、一直線に道が伸びているのだが、その一本道の両端には連なるようにテントが建てられていた。

 入学式が終わった後、新入生に部活・サークルの勧誘活動のビラ配りをするのがこの大学の伝統だそうで、講堂までの一本道には、既に在校生とみられる大学の先輩たちが、ビラ配りの準備を、割り当てられたテントで忙しそうに作業していた。

「噂には聞いてたけど、こんなに規模が大きいんだなうちの大学の勧誘活動って」

 左右をキョロキョロ見渡しながら俺がテントの数に圧倒されていると、二人の笑い声が聞こえてくる。

「南そんなにキョロキョロしてると」
「田舎者みたい」

 俺は顔を真っ赤にして二人の方を向いた。二人は少し馬鹿にしたような表情を浮かべて笑っていた。

「うるせぇな、田舎者で悪かったな」
「そうだよね。北の大地も南大地だもんね……ぶっ!」

 この間の自己紹介が、相当お気に入りだったのか、高本が俺の自己紹介のシャレを言ってみせ、また一人で爆笑している。

「おい、やめろって」

 俺を思ってなのか、珍しく厚木が高本に注意する。厚木は俺の方を向いて苦笑いを浮かべながら……

「でも、確かにそんなにキョロキョロばっかりしてたら、田舎者だと思われるから気を付けろよ」

 と、軽い口調で俺に注意してくれた。

「お、おう。そうか……分かった」

 厚木は意外といいやつなのかもしれない、そんなことを思ったのもつかの間。厚木は高本の耳元で小声で話しかける。

「他にも色んなところ連れていったら、アイツ面白そうだな……」
「確かに……『ここは日本なのか!?』とか言って、マジで驚きそうだよね……ぶっ!」
「バカ笑うなよ!」
「だって想像しただけで……ぶはっ!」

 高本はついに我慢できなくなり、噴き出して大笑いする。

「二人とも聞こえてるんだけど……俺も流石にそこまで変な反応はしないから」

 俺は軽くふてくされるように、ふいっとそっぽを向いて拗ねた。

「ちょっと、ごめんってば!」
「そうそう、ほんの冗談だから!」

 二人が俺をからかっているのをよそ目に、カツカツと足音を鳴らしながら、先に進んでいく。

「あ、ちょっと待ってってば」
「悪かったって」

 悪気が全く感じられないような口調で、二人は俺の後を追いかけてきた。
 田舎者で悪かったな!
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