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第2怪:真珠蜘蛛
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「こいつが真珠蜘蛛の本体か……」
探索を再開し、真珠蜘蛛の最奥を目指し動くこと十数分。
入口に比べ奥は蜘蛛の糸が増加している様子はなく、比較的労せずに進むことができた。
隠れているのか、そもそももういないのか。巨大蜘蛛が現れることもない。ただ宗吾らとも合流することはなく、気付けば真珠蜘蛛の最奥まで辿り着いていた。
毒ガスから逃げようとした結果なのか、最奥には先に戦った巨大蜘蛛とは一線を画する、7階建てのマンション級の巨大蜘蛛が鎮座していた。
今起きている異常事態の根源かもしれない怪獣相手に、全員が緊張した面持ちを浮かべる。
そんな中、一人涼しい顔を崩さない二宮から指示が飛んだ。
「大石、伏見は真珠蜘蛛に動いた形跡がないか調査しろ。ホンファは万一動き出した際、二人をすぐに救助できるようサポートを。折原は俺と一緒に周囲の警戒だ」
指示に従いそれぞれが動き始める中、刹亜は二宮の隣に立つと、小声で話しかけた。
「なあ、いくつか確認したいことがあるんだがいいか」
言葉は発さず、二宮は目で続きを促してくる。
刹亜はホンファへと視線を送りながら言った。
「あのホンファって女、実際は中国からの来客なんかじゃなくて特務隊のメンバーだよな」
「そうだ」
「……やっぱ知ってたのかよ」
ホンファとの会話からほぼ間違いないと思いつつも、実のところ言質は取れていなかった。こちらが勝手に都合のいい解釈をしていた可能性も捨てきれていなかったのだが、流石にそんなことはなかったらしい。
ほっと胸を撫で下ろしつつも、それはそれで文句を言いたくなってくる。
「あんたも俺たちのこと疑ってたんだな。少しショックだぜ」
「俺は単に任務をこなしているだけだ。そこに俺の意思はない」
「まあそうなのかもしれねえけど……。いや、今この話はどうでもいいか。じゃあもう一つ。あんたは今ここで起きている事件、怪獣だけの仕業か、それとも人が介入してるのか、どっちだと思ってる」
「むろん後者だ」
「OK。そこは解釈一致で安心したわ」
現状起きている異常事態を考えれば当然の答え。しかしその一方で、これは大きな問題を内包している。それ即ち、
「俺たちの中に怪獣に味方する裏切者がいるってことになるんだが、その点も理解してるよな」
「そんなこと、この任務が始まった時から知っている」
「ふーん。因みに今一番怪しいのは、単独行動をしていた時間があり、なおかつ殺された斎藤と直前まで一緒に行動をしていたあんた自身なんだが、そこはどうよ」
「俺ではないとしか言えないな。そもそも今回、単独行動の有無は裏切者かどうかを決める根拠にはならない」
「ちっ、そこまでわかってんのかよ」
マウントが取れそうになく、刹亜は舌打ちした。
今この部隊に紛れている裏切者は、どういうわけか怪獣と手を組めている。それが刹亜の予測だった。
無線が使えなくなったことや、重機のトラブルなどは十中八九裏切者の仕業。一方で今起きている蜘蛛の糸の増加や、巨大蜘蛛の襲撃などは当然怪獣の仕業だ。
問題はこの二つのタイミングが合いすぎているということ。
蜘蛛の糸の増加や蜘蛛の襲撃が、爆弾を仕掛け真珠蜘蛛を完全に殺害するというタイミングで発生。それまではあくまでやや不自然な事故としての妨害だけで、真珠蜘蛛が生きていると臭わせる行為は一切なかったにもかかわらずだ。
偶然というにはあまりにも出来すぎている。
ただ、怪獣が人間と手を組むとは思えない。洗脳か、擬態か。
まあ、ここで大事なのは手を組んだ方法じゃない。大事なことは、裏切者と怪獣が連携を図っている可能性が高いという事実。怪獣に指示を出し襲わせているのなら、アリバイの有無は関係なくなる。
「だとしても、あんたが疑わしくないかと言われたら微妙だけどな。ホンファのこと隠してたし」
「本気でそう思うなら俺に言うのは愚策だろう」
「まあな」
実際、本気で二宮を疑っているかと言えば嘘になる。刹亜らと一緒に真珠蜘蛛に来た時点で、それ以前の妨害工作はできなかったはずだからだ。
ただしこれは、裏切者が一人であるという前提の話になるが。
現時点で誰が裏切者か見極めるのは無理がある。そう結論に達し小さくため息を吐いていると、白マフラーが僅かに振動した。
刹亜は慌てて周囲を見渡す。
二宮がやや不審げな視線を投げかけてくるも、二人の視線はすぐに同じ方向へと向かうことになった。
探索を再開し、真珠蜘蛛の最奥を目指し動くこと十数分。
入口に比べ奥は蜘蛛の糸が増加している様子はなく、比較的労せずに進むことができた。
隠れているのか、そもそももういないのか。巨大蜘蛛が現れることもない。ただ宗吾らとも合流することはなく、気付けば真珠蜘蛛の最奥まで辿り着いていた。
毒ガスから逃げようとした結果なのか、最奥には先に戦った巨大蜘蛛とは一線を画する、7階建てのマンション級の巨大蜘蛛が鎮座していた。
今起きている異常事態の根源かもしれない怪獣相手に、全員が緊張した面持ちを浮かべる。
そんな中、一人涼しい顔を崩さない二宮から指示が飛んだ。
「大石、伏見は真珠蜘蛛に動いた形跡がないか調査しろ。ホンファは万一動き出した際、二人をすぐに救助できるようサポートを。折原は俺と一緒に周囲の警戒だ」
指示に従いそれぞれが動き始める中、刹亜は二宮の隣に立つと、小声で話しかけた。
「なあ、いくつか確認したいことがあるんだがいいか」
言葉は発さず、二宮は目で続きを促してくる。
刹亜はホンファへと視線を送りながら言った。
「あのホンファって女、実際は中国からの来客なんかじゃなくて特務隊のメンバーだよな」
「そうだ」
「……やっぱ知ってたのかよ」
ホンファとの会話からほぼ間違いないと思いつつも、実のところ言質は取れていなかった。こちらが勝手に都合のいい解釈をしていた可能性も捨てきれていなかったのだが、流石にそんなことはなかったらしい。
ほっと胸を撫で下ろしつつも、それはそれで文句を言いたくなってくる。
「あんたも俺たちのこと疑ってたんだな。少しショックだぜ」
「俺は単に任務をこなしているだけだ。そこに俺の意思はない」
「まあそうなのかもしれねえけど……。いや、今この話はどうでもいいか。じゃあもう一つ。あんたは今ここで起きている事件、怪獣だけの仕業か、それとも人が介入してるのか、どっちだと思ってる」
「むろん後者だ」
「OK。そこは解釈一致で安心したわ」
現状起きている異常事態を考えれば当然の答え。しかしその一方で、これは大きな問題を内包している。それ即ち、
「俺たちの中に怪獣に味方する裏切者がいるってことになるんだが、その点も理解してるよな」
「そんなこと、この任務が始まった時から知っている」
「ふーん。因みに今一番怪しいのは、単独行動をしていた時間があり、なおかつ殺された斎藤と直前まで一緒に行動をしていたあんた自身なんだが、そこはどうよ」
「俺ではないとしか言えないな。そもそも今回、単独行動の有無は裏切者かどうかを決める根拠にはならない」
「ちっ、そこまでわかってんのかよ」
マウントが取れそうになく、刹亜は舌打ちした。
今この部隊に紛れている裏切者は、どういうわけか怪獣と手を組めている。それが刹亜の予測だった。
無線が使えなくなったことや、重機のトラブルなどは十中八九裏切者の仕業。一方で今起きている蜘蛛の糸の増加や、巨大蜘蛛の襲撃などは当然怪獣の仕業だ。
問題はこの二つのタイミングが合いすぎているということ。
蜘蛛の糸の増加や蜘蛛の襲撃が、爆弾を仕掛け真珠蜘蛛を完全に殺害するというタイミングで発生。それまではあくまでやや不自然な事故としての妨害だけで、真珠蜘蛛が生きていると臭わせる行為は一切なかったにもかかわらずだ。
偶然というにはあまりにも出来すぎている。
ただ、怪獣が人間と手を組むとは思えない。洗脳か、擬態か。
まあ、ここで大事なのは手を組んだ方法じゃない。大事なことは、裏切者と怪獣が連携を図っている可能性が高いという事実。怪獣に指示を出し襲わせているのなら、アリバイの有無は関係なくなる。
「だとしても、あんたが疑わしくないかと言われたら微妙だけどな。ホンファのこと隠してたし」
「本気でそう思うなら俺に言うのは愚策だろう」
「まあな」
実際、本気で二宮を疑っているかと言えば嘘になる。刹亜らと一緒に真珠蜘蛛に来た時点で、それ以前の妨害工作はできなかったはずだからだ。
ただしこれは、裏切者が一人であるという前提の話になるが。
現時点で誰が裏切者か見極めるのは無理がある。そう結論に達し小さくため息を吐いていると、白マフラーが僅かに振動した。
刹亜は慌てて周囲を見渡す。
二宮がやや不審げな視線を投げかけてくるも、二人の視線はすぐに同じ方向へと向かうことになった。
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