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第2怪:真珠蜘蛛
消えた高倉
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「刹亜、二宮さん。無事だったんですね」
「宗吾!」
刹亜らが来たのとは別の方向から、宗吾と佐々木の二人が蜘蛛の糸を避けながら歩いてくる。
佐々木は目を赤く腫らし、涙を流しているが、特に怪我をしている様子はない。宗吾も疲弊した様子はあるものの怪我は見られなかった。
安堵する刹亜の隣で、二宮がすぐさま質問を投げかけた。
「高倉はどうした。一緒じゃないのか」
その言葉で、刹亜はようやく一人足りていないことに気づいた。
佐々木の表情から何が起きたのかそれとなく察し、唇を噛みしめる。
宗吾は眉を落とし、首を横に振った。
「それが、途中で別行動をとり始めて。今どこにいるか分からないんです」
「死んだわけじゃないのか」
てっきり斎藤のように殺されているのかと考えていたため、少し拍子抜けする。しかしそうすると、なぜ佐々木は泣いているのか。
刹亜が訝しんだ目を向ける中、二人はどんどん話を進めていく。
「高倉が理由もなく別行動をとるとも思えない。何があった」
「二宮さんからの連絡の後、巨大蜘蛛の襲撃を受けたんです。三人で協力して何とか倒せはしたんですが、その後、急に一人で行動すると言い出して」
「倒す前でなく、倒した後にか」
「はい。僕たちには真珠蜘蛛の外に出るよう指示をして、自分一人で奥に向かって進んでいきました」
「説明はなしか」
「特にありませんでした。ただ、ひどく思い悩んだ表情に見えました」
「そうか」
二宮は顎に手を当てて考え込む。
二人のやり取りが終わったのを見て、刹亜は宗吾に近づき、耳元で尋ねた。
「おい、高倉は本当に死んでないのか」
「うん、少なくとも僕が知ってる限りでは」
「だったらなんで佐々木は泣いてるんだ?」
「さあ……。僕もあんまりよくわかってないんだよね。高倉さんと別れて、二人で出口に向かってたら急に泣き出して。たぶん、蜘蛛の糸のせいで出られないことを察して、怖くなって泣いたんじゃないかと思うけど」
「あいつそんなやわな奴じゃねえと思うけど……」
「それより、そっちは何があったの。二宮さんの反応的に巨大蜘蛛はそっちにも出たってこと? それにホンファさんの姿も見えるけど」
「ああ、まあ、いろいろあってな」
周りの目もあるため、ホンファの件については伏せたうえでここまでの出来事を話す。
一通り話を聞き終えてから、宗吾は眉間にしわを寄せ呟いた。
「斎藤さんが殺された……。それも人の手で」
「人の手っつうのは憶測だけどな。それに今回の裏切者は真珠蜘蛛と協力してるみたいだしよ。殺したのは普通に真珠蜘蛛の方かもしれねえ」
「だとしても、人の意思は介在してるってことだよね」
俯き、小声で何かを呟き始める。
そんな宗吾を見て、刹亜は少しばかり緊張を緩めた。
離れている間は自身でいろいろと考えなければいかなかったが、こうして宗吾と再会できたならば、ある程度事件についての推理は任せることができる。
そうしてできた心の余裕は、やっておきたいことがあるのを思い出させた。
「二宮隊長。真珠蜘蛛の調査終わったっす」
タイミングよく、伏見ら三人が戻ってくる。
調べた結果、真珠蜘蛛に動いた様子は見られず、やはり生きているとは考え難いとのことだった。
これからどう動くかについて指示を求められた二宮は、数秒沈黙した後、刹亜と宗吾に意見を求めてきた。
「真珠蜘蛛本体が死んでいるのなら、今起きている異変は急に湧き出た巨大蜘蛛による偶発的な事故とも考えられる。ならば全員で出口まで強行突破するのが最善だと考えるが、お前たちはどう思う」
「そうですね……」
宗吾は数瞬悩んでからホンファに視線を向けた。
「ホンファさん。あなたの力で貝殻に穴をあけることはできませんか?」
「ムリダナ。ワタシノツノヨリモシンジュグモノカイガラノホウガカタイ」
「そうですか。では、僕たちを空高く持ち上げることはできますか?」
「ソノテイドノコトナラゾウサモナイ」
「分かりました。有難うございます」
丁寧にホンファへと頭を下げてから、宗吾は全員を見回し言った。
「僕が考える最善手は、この場から一人ずつホンファさんに出口へと送ってもらうことです。皆さんが彼女を信じられるなら、ですが」
「宗吾!」
刹亜らが来たのとは別の方向から、宗吾と佐々木の二人が蜘蛛の糸を避けながら歩いてくる。
佐々木は目を赤く腫らし、涙を流しているが、特に怪我をしている様子はない。宗吾も疲弊した様子はあるものの怪我は見られなかった。
安堵する刹亜の隣で、二宮がすぐさま質問を投げかけた。
「高倉はどうした。一緒じゃないのか」
その言葉で、刹亜はようやく一人足りていないことに気づいた。
佐々木の表情から何が起きたのかそれとなく察し、唇を噛みしめる。
宗吾は眉を落とし、首を横に振った。
「それが、途中で別行動をとり始めて。今どこにいるか分からないんです」
「死んだわけじゃないのか」
てっきり斎藤のように殺されているのかと考えていたため、少し拍子抜けする。しかしそうすると、なぜ佐々木は泣いているのか。
刹亜が訝しんだ目を向ける中、二人はどんどん話を進めていく。
「高倉が理由もなく別行動をとるとも思えない。何があった」
「二宮さんからの連絡の後、巨大蜘蛛の襲撃を受けたんです。三人で協力して何とか倒せはしたんですが、その後、急に一人で行動すると言い出して」
「倒す前でなく、倒した後にか」
「はい。僕たちには真珠蜘蛛の外に出るよう指示をして、自分一人で奥に向かって進んでいきました」
「説明はなしか」
「特にありませんでした。ただ、ひどく思い悩んだ表情に見えました」
「そうか」
二宮は顎に手を当てて考え込む。
二人のやり取りが終わったのを見て、刹亜は宗吾に近づき、耳元で尋ねた。
「おい、高倉は本当に死んでないのか」
「うん、少なくとも僕が知ってる限りでは」
「だったらなんで佐々木は泣いてるんだ?」
「さあ……。僕もあんまりよくわかってないんだよね。高倉さんと別れて、二人で出口に向かってたら急に泣き出して。たぶん、蜘蛛の糸のせいで出られないことを察して、怖くなって泣いたんじゃないかと思うけど」
「あいつそんなやわな奴じゃねえと思うけど……」
「それより、そっちは何があったの。二宮さんの反応的に巨大蜘蛛はそっちにも出たってこと? それにホンファさんの姿も見えるけど」
「ああ、まあ、いろいろあってな」
周りの目もあるため、ホンファの件については伏せたうえでここまでの出来事を話す。
一通り話を聞き終えてから、宗吾は眉間にしわを寄せ呟いた。
「斎藤さんが殺された……。それも人の手で」
「人の手っつうのは憶測だけどな。それに今回の裏切者は真珠蜘蛛と協力してるみたいだしよ。殺したのは普通に真珠蜘蛛の方かもしれねえ」
「だとしても、人の意思は介在してるってことだよね」
俯き、小声で何かを呟き始める。
そんな宗吾を見て、刹亜は少しばかり緊張を緩めた。
離れている間は自身でいろいろと考えなければいかなかったが、こうして宗吾と再会できたならば、ある程度事件についての推理は任せることができる。
そうしてできた心の余裕は、やっておきたいことがあるのを思い出させた。
「二宮隊長。真珠蜘蛛の調査終わったっす」
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調べた結果、真珠蜘蛛に動いた様子は見られず、やはり生きているとは考え難いとのことだった。
これからどう動くかについて指示を求められた二宮は、数秒沈黙した後、刹亜と宗吾に意見を求めてきた。
「真珠蜘蛛本体が死んでいるのなら、今起きている異変は急に湧き出た巨大蜘蛛による偶発的な事故とも考えられる。ならば全員で出口まで強行突破するのが最善だと考えるが、お前たちはどう思う」
「そうですね……」
宗吾は数瞬悩んでからホンファに視線を向けた。
「ホンファさん。あなたの力で貝殻に穴をあけることはできませんか?」
「ムリダナ。ワタシノツノヨリモシンジュグモノカイガラノホウガカタイ」
「そうですか。では、僕たちを空高く持ち上げることはできますか?」
「ソノテイドノコトナラゾウサモナイ」
「分かりました。有難うございます」
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