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第0怪:出会い
物語の始まり
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「ねえちょっと、ほんとに今から外行くの? やっぱり止めようよ……」
「止めねえ」
震える体を両腕で抱きしめながら付いてくる宗吾に、刹亜は簡潔に言葉を返す。
「昨日見た光。もしあれが怪獣だったら放置しておけないだろ。早く確かめねえと」
「いやいや、たぶん見間違えだって! 百歩譲って見間違えじゃなかったとしたら、尚更危険じゃん! 特務隊に任せようよ!」
「今はその特務隊がいないだろ。だから俺たちがやるんだ」
「こ、こんなの死にに行くようなもんだって……」
言葉も態度も否定的でありながら、宗吾はそれでも刹亜の後をついてくる。それはおそらく、あの光の正体を確かめないと、安心してこの場所居住区で生活できないことを悟っているからだろう。
ほんのちょっとした、絶対に気のせいだと思うような些細な違和感でも無視してはいけない。それが今の世界のルールだから。
地上へ出る正面玄関には見張りがいる。だから外に出るには、二人で居住区を探索中に発見した抜け穴を使うしかない。
本来ならそこから怪獣が入ってくる危険性もあるため、すぐにでも塞いでしまうべきなのだが、こういう事態に備えて敢えて大人には黙って残しておいたもの。
一応外からも中からも穴があることは分からないようにカモフラージュはしてある。その甲斐あってか、今のところ抜け穴のせいで問題が起きたことはない。
二人は抜け穴までやってくると、周りを見回し誰もいないことを確認してから、こっそりと夜の地上に出た。
「この時間に外に出るなんて久しぶりだな」
「僕はもう、二度と出たくなかったけどね」
「嘘つけ。怪獣どもが現れる前は、天体観測が趣味だったじゃねえか」
「……もうそんな昔のこと、覚えてないよ」
「そんな昔じゃねえ。まだあれからたった三年だ」
「三年は、十分昔だよ」
そんなやり取りをしながら、二人は光源となる物を一切つけずに夜闇の中を進んでいく。
三年前が十分昔かどうかはともかく、この三年で地上の景色は大きく変わった。その変化の一つとして、夜空を見上げれば満面の星々を見れるようになったことが挙げられる。排気ガスを出すような工場・機械など今の地上には皆無に等しく、皮肉にも大気汚染は大きく緩和されたからだ。
「怪獣は地球が生み出した使者、か」
「何? 何か言った?」
「何でもない。それより方角はこっちであってるよな」
「うん、それは大丈夫だと思う」
手に持った方位磁石を見ながら宗吾が言う。
二人はそれからしばらく、黙って地上を歩き続けた。
人がいなくなった土地に、怪獣が留まることは少ない。しかし少ないだけでいないわけではなく、今この瞬間にも目の前に現れたとして不思議ではない。
サク、サク、サクーー
二人が歩く音以外、全くと言っていい程音がしない。怪獣が暴れた土地からは、人だけでなく虫や野生動物もいなくなっているからだ。
そしてそれは、彼らの小さな足音だけでも怪獣に位置を知らせることに繋がる。
しかし今回、二人は運に恵まれていた。目的地である光の落ちた場所まで、怪獣に出会うことなく辿り着くことができた。
「……これが、昨日見た光の正体か」
「そうみたいだね。でもこれって……卵?」
発見したのは全体が白い光に包まれた発光する卵。大きさは人の顔と同じ程度であり、大きいと言えば十分に大きいが、怪獣の卵にしては小さすぎるようにも思えた。
二人が近づいても、発光する卵に変化はない。今すぐ危険が生じるものではないと判断し、二人は少しだけ緊張の糸を緩めた。
「動物の卵……ではないよね? 大きいし、光ってるし」
「だろうな。まあ間違いなく怪獣の卵だろうけど……このサイズだと小型な奴か?」
「どうだろう? 生まれた時は小さいけど、どんどん成長して大怪獣級になるのかもしれないし……。そもそも怪獣の卵についてなんて、全く聞いたことないよ」
「要するに分からねえってことだな。それじゃあどうする? 孵化する前にここで割って殺しておくか?」
「だ、駄目だよそれは! ここに卵があるってことは近くに親がいるかもだし、それに殺しきれずに孵化させちゃったら僕たち殺されちゃうよ!」
「まあそうだよな……もしかしたら、卵型の怪獣で、今は単に寝てるだけの可能性もあるし」
「や、やめてよ変なこと言うの……本当にありそうで超怖いんだけど」
宗吾は急に恐怖を覚えたようで、卵から数歩距離を取り、今すぐにでも逃げられるような姿勢を取り始めた。
そんな彼を見て、刹亜は小さくため息をついた。
「今更ビビッてどうすんだよ。つうかもしこれが卵型の怪獣だったなら、とっくに俺らは殺されてるよ」
「それはそうかもだけど……寝てるだけっていう可能性も否めないし……」
「だから心配し過ぎだって。ほら」
「わ、ちょ、刹亜ダメだって!」
「馬鹿お前! 何大きな声出して――」
唐突に卵を抱き上げた刹亜を見て、宗吾は外にいることも忘れ大声を上げてしまう。それに刹亜の方が慌てたその時――
ピシリ
発光する卵に、小さなひびが刻まれた。
「止めねえ」
震える体を両腕で抱きしめながら付いてくる宗吾に、刹亜は簡潔に言葉を返す。
「昨日見た光。もしあれが怪獣だったら放置しておけないだろ。早く確かめねえと」
「いやいや、たぶん見間違えだって! 百歩譲って見間違えじゃなかったとしたら、尚更危険じゃん! 特務隊に任せようよ!」
「今はその特務隊がいないだろ。だから俺たちがやるんだ」
「こ、こんなの死にに行くようなもんだって……」
言葉も態度も否定的でありながら、宗吾はそれでも刹亜の後をついてくる。それはおそらく、あの光の正体を確かめないと、安心してこの場所居住区で生活できないことを悟っているからだろう。
ほんのちょっとした、絶対に気のせいだと思うような些細な違和感でも無視してはいけない。それが今の世界のルールだから。
地上へ出る正面玄関には見張りがいる。だから外に出るには、二人で居住区を探索中に発見した抜け穴を使うしかない。
本来ならそこから怪獣が入ってくる危険性もあるため、すぐにでも塞いでしまうべきなのだが、こういう事態に備えて敢えて大人には黙って残しておいたもの。
一応外からも中からも穴があることは分からないようにカモフラージュはしてある。その甲斐あってか、今のところ抜け穴のせいで問題が起きたことはない。
二人は抜け穴までやってくると、周りを見回し誰もいないことを確認してから、こっそりと夜の地上に出た。
「この時間に外に出るなんて久しぶりだな」
「僕はもう、二度と出たくなかったけどね」
「嘘つけ。怪獣どもが現れる前は、天体観測が趣味だったじゃねえか」
「……もうそんな昔のこと、覚えてないよ」
「そんな昔じゃねえ。まだあれからたった三年だ」
「三年は、十分昔だよ」
そんなやり取りをしながら、二人は光源となる物を一切つけずに夜闇の中を進んでいく。
三年前が十分昔かどうかはともかく、この三年で地上の景色は大きく変わった。その変化の一つとして、夜空を見上げれば満面の星々を見れるようになったことが挙げられる。排気ガスを出すような工場・機械など今の地上には皆無に等しく、皮肉にも大気汚染は大きく緩和されたからだ。
「怪獣は地球が生み出した使者、か」
「何? 何か言った?」
「何でもない。それより方角はこっちであってるよな」
「うん、それは大丈夫だと思う」
手に持った方位磁石を見ながら宗吾が言う。
二人はそれからしばらく、黙って地上を歩き続けた。
人がいなくなった土地に、怪獣が留まることは少ない。しかし少ないだけでいないわけではなく、今この瞬間にも目の前に現れたとして不思議ではない。
サク、サク、サクーー
二人が歩く音以外、全くと言っていい程音がしない。怪獣が暴れた土地からは、人だけでなく虫や野生動物もいなくなっているからだ。
そしてそれは、彼らの小さな足音だけでも怪獣に位置を知らせることに繋がる。
しかし今回、二人は運に恵まれていた。目的地である光の落ちた場所まで、怪獣に出会うことなく辿り着くことができた。
「……これが、昨日見た光の正体か」
「そうみたいだね。でもこれって……卵?」
発見したのは全体が白い光に包まれた発光する卵。大きさは人の顔と同じ程度であり、大きいと言えば十分に大きいが、怪獣の卵にしては小さすぎるようにも思えた。
二人が近づいても、発光する卵に変化はない。今すぐ危険が生じるものではないと判断し、二人は少しだけ緊張の糸を緩めた。
「動物の卵……ではないよね? 大きいし、光ってるし」
「だろうな。まあ間違いなく怪獣の卵だろうけど……このサイズだと小型な奴か?」
「どうだろう? 生まれた時は小さいけど、どんどん成長して大怪獣級になるのかもしれないし……。そもそも怪獣の卵についてなんて、全く聞いたことないよ」
「要するに分からねえってことだな。それじゃあどうする? 孵化する前にここで割って殺しておくか?」
「だ、駄目だよそれは! ここに卵があるってことは近くに親がいるかもだし、それに殺しきれずに孵化させちゃったら僕たち殺されちゃうよ!」
「まあそうだよな……もしかしたら、卵型の怪獣で、今は単に寝てるだけの可能性もあるし」
「や、やめてよ変なこと言うの……本当にありそうで超怖いんだけど」
宗吾は急に恐怖を覚えたようで、卵から数歩距離を取り、今すぐにでも逃げられるような姿勢を取り始めた。
そんな彼を見て、刹亜は小さくため息をついた。
「今更ビビッてどうすんだよ。つうかもしこれが卵型の怪獣だったなら、とっくに俺らは殺されてるよ」
「それはそうかもだけど……寝てるだけっていう可能性も否めないし……」
「だから心配し過ぎだって。ほら」
「わ、ちょ、刹亜ダメだって!」
「馬鹿お前! 何大きな声出して――」
唐突に卵を抱き上げた刹亜を見て、宗吾は外にいることも忘れ大声を上げてしまう。それに刹亜の方が慌てたその時――
ピシリ
発光する卵に、小さなひびが刻まれた。
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