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第1怪:戦艦亀
入隊試験、の受付
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『大怪獣ファイル№8:戦艦亀
全長は約二キロ。高さ五百メートル。
外見はクサガメを巨大化させた姿。ただし、甲羅には無数の重火器が生えている。原理は不明だが、これら重火器は甲羅の上(中?)を自由に移動可能であり、自律的に稼働する。
討伐後の調査より、甲羅から生えていた重火器は全て戦艦亀により捕食されたものであることが判明。~~以上から、戦艦亀は食べた兵器を自律稼働する兵器として再生産する能力を持つと考えられる』
「これから特務隊の入隊試験を開始する。番号を呼ばれた者は順次部屋に入ってくるように」
まだ小学生ぐらいの子供から、六十を過ぎていそうな老人までがずらりと列をなしている。身長や体形は千差万別なれど、皆決意に満ちた表情をしている点は共通していた。
「やっぱり出遅れたかな」
僕はその列を横目に見ながら、受付の方へと歩いていく。
入隊試験が今日であることは聞いていたけれど、具体的な時刻に関して聞くのをすっかり忘れていた。
まあ何とかなるだろう。
どこかに受付があるはずと周りをきょろきょろしていると、分かりやすく「受付」と書かれた札の貼ってある机を見つけた。
机の後ろには二人の青年が。
一人は季節外れにも白いマフラーを付けた目つきの悪い青年。もう一人は優し気だけど少し頼りない印象の垂れ目の青年。
ひとまず彼らにまだ間に合うか聞いてみようと、僕は駆け足で近寄った。
「あの、入隊試験の受付って終わっちゃいましたか? 僕、今日の試験を受けに来た御園生遥って言うんですけど」
二人は急に声をかけてきた僕に対し一瞬驚いた表情を浮かべる。しかしすぐに笑顔を作り、優しげな青年――胸のネームプレートには石神と書いてある――が頷いた。
「御園生さんですね。安心してください。ちょうど今から試験ですので。まだ間に合いますよ」
「良かった。うっかり時刻を聞きそびれてて、もしかしたら無駄足になったかと思っちゃいました」
安堵からあははと笑いかけると、白いマフラーをした青年――ネームプレート曰く折原――がぶっきらぼうに「ま、元から決まった時刻なんてないんでね」と呟いた。
「そもそも特務隊は万年人手不足。定員オーバーになることなんてないし、本来いつ来てくれても構わねえから。ま、ばらばらに来られると対応がめんどいんで、こうして試験日作ってるわけだけどな」
「ちょっと刹亜、それは言っちゃダメって灰崎さんに言われてるでしょ」
「別に今から入隊試験受ける相手なら構わないだろ。んじゃはい。これがあんたの受付番号。番号順に呼ばれてくから、そっちの列並んどいて」
「あ、はい。どうも……」
折原から受付札をもらうも、僕はその場から動かずに二人を見つめた。
二人とも服装は特務隊のもので間違いない。ここで受付をやっているわけだから、戦闘部隊ではないのだろうけど、それにしても僕の知る特務隊のイメージからかけ離れている。
特務隊と言えば、日本で唯一の怪獣討伐機関だ。
今から約十年前に突如として地球に現れた化け物たち。その姿は動物・植物・電子機器、その他地球上に存在するあらゆるものと類似した形を持っており、共通の性質として人間の捕食と建物の破壊行動が見られた。
まさしく映画や漫画で登場する怪獣そのもの。中でも高層ビルより巨大な怪獣は大怪獣と呼ばれ、破壊規模含めて人々から大いに恐れられた。
世界中が一致団結し怪獣への対処を試みたが、その全てが無駄に終わった。既存の兵器で小型の怪獣を制圧することはできても、大怪獣相手にはほとんど通じず。一年が経つ頃には人類は地上を放棄し、地下に逃げ込むことになった。
そんな混沌の渦中で急遽設立されたのが怪獣討伐を目的とする特務隊。『怪獣を以て怪獣を制す』をコンセプトに、討伐した怪獣の体を活用することで、既存の兵器で歯が立たなかった怪獣への対処を試みた。
十年経った今でも十分な戦果は挙げられていないが、それでも地上を死なずに移動することができるのは特務隊だけ。特務隊の中には怪獣討伐を目的とした部隊だけでなく、地下に暮らす人々に定期的に食料や必需品を提供しにいく輸送部隊もおり、彼らのおかげで人類は絶滅を免れている。
そんなわけで、特務隊は人類の最後の砦にして希望。日本に住む国民全ての憧れであり、特務隊に所属している者も自信や誇りに満ちた人が多かった――のに。
目の前の二人からはそうした自負はまるで感じられない。一体なぜ……
「どうかしましたか?」
いつまでも僕が移動しないのを不審に思ったのか、石神が小首をかしげ尋ねてくる。
僕は少し躊躇した後、思ったことを素直にぶつけてみた。
「お二人は、特務隊員なんですよね」
「ええ勿論。まあ戦闘部隊ではなく裏方の事務員ですけど」
「事務員でも、怪獣から世界を取り戻すために戦っている特務隊の一員ですよね。何というか、その割には覇気がないような気がして」
「ああそのタイプね。夢壊すようで悪いですけど、こんなもんですよ」
折原が頬杖を突いて気だるげに言った。
「あなたもこれから入隊すりゃ分かるでしょうが、ここはそんな大した場所じゃない。怪獣を討伐し人類の居場所を取り返すとか謳ってますが、そんな兆しは一切ないし。今ある利権をいかに維持して今世を乗り切るか考えてる腐敗した団体ですよ」
「刹亜、それ以上は――」
「これから面接あるでしょ。そこで真っ先に書かされるのが、『死亡同意書』です。特務隊に入隊するからには、人民のために自らの命を捧げること。その死がどれだけ無意味に散ろうとも当団体には一切責任がないことを保証させる、一方的な契約。これを享受できる人間だけが、特務隊に入る資格があるんですって。全く、ブラックもいいところだ。ねえ、そう思いませんか?」
「思いませんけど」
「……」
僕がノータイムで応じると、折原は眉をしかめ口を閉ざした。
もしかしたらこれも試験の一環なんだろうかと思いつつ、僕は言葉を続けた。
「猫――じゃなく人民のために命を捧げるなんて当然です。自分が死んでもいいから怪獣を倒し、世界を取り戻したい。そう言う覚悟があるから僕はここにいるんです。当然命なんて惜しくない」
「……それがこの状況を一切好転させない、無駄死にだったとしてもか」
「勿論です。そもそもどんな死も無駄だとは思っていませんし、仮に何の成果も出せず死ぬことになっても文句はありません。ここで戦うことを選ばなければ、それこそただ怪獣に殺されるだけの無意味な人生になりますから。というより、折原さんも特務隊の一員ということは『死亡同意書』に同意して入隊したんですよね。だったら説明するまでもなく、僕の気持ちがわかるんじゃないですか?」
「……俺は」
「あ、そろそろ呼ばれそうですよ。移動したほうがいいんじゃないですか」
石神が急に口を挟んできた。
彼の言う通り、入隊希望者で作られていた長蛇の列もほとんど解消されていた。そこまで話し込んだつもりはなかったが、随分と試験の進行が速いらしい。
折原が何と答えるのか少し聞きたい気持ちはある。ただそれも、入隊することができればいつでも聞けると考えなおし、僕は深々頭を下げた。
「有難うございます。お二人のおかげで、改めて入隊する覚悟が決まりました。必ず入隊しますので、その時はまたお話しさせて下さい」
「うん。それだけの覚悟があれば入隊は堅いと思うから、気負わず受けてきてください。ご健闘お祈りしています」
そう言って、石神も丁寧なお辞儀を返す。折原はというと、軽く頭を下げただけで何も言ってくれなかった。
彼の態度に少しもやもやする感情を抱きながらも、僕は再度頭を下げ、受験者の列に向かっていった。
全長は約二キロ。高さ五百メートル。
外見はクサガメを巨大化させた姿。ただし、甲羅には無数の重火器が生えている。原理は不明だが、これら重火器は甲羅の上(中?)を自由に移動可能であり、自律的に稼働する。
討伐後の調査より、甲羅から生えていた重火器は全て戦艦亀により捕食されたものであることが判明。~~以上から、戦艦亀は食べた兵器を自律稼働する兵器として再生産する能力を持つと考えられる』
「これから特務隊の入隊試験を開始する。番号を呼ばれた者は順次部屋に入ってくるように」
まだ小学生ぐらいの子供から、六十を過ぎていそうな老人までがずらりと列をなしている。身長や体形は千差万別なれど、皆決意に満ちた表情をしている点は共通していた。
「やっぱり出遅れたかな」
僕はその列を横目に見ながら、受付の方へと歩いていく。
入隊試験が今日であることは聞いていたけれど、具体的な時刻に関して聞くのをすっかり忘れていた。
まあ何とかなるだろう。
どこかに受付があるはずと周りをきょろきょろしていると、分かりやすく「受付」と書かれた札の貼ってある机を見つけた。
机の後ろには二人の青年が。
一人は季節外れにも白いマフラーを付けた目つきの悪い青年。もう一人は優し気だけど少し頼りない印象の垂れ目の青年。
ひとまず彼らにまだ間に合うか聞いてみようと、僕は駆け足で近寄った。
「あの、入隊試験の受付って終わっちゃいましたか? 僕、今日の試験を受けに来た御園生遥って言うんですけど」
二人は急に声をかけてきた僕に対し一瞬驚いた表情を浮かべる。しかしすぐに笑顔を作り、優しげな青年――胸のネームプレートには石神と書いてある――が頷いた。
「御園生さんですね。安心してください。ちょうど今から試験ですので。まだ間に合いますよ」
「良かった。うっかり時刻を聞きそびれてて、もしかしたら無駄足になったかと思っちゃいました」
安堵からあははと笑いかけると、白いマフラーをした青年――ネームプレート曰く折原――がぶっきらぼうに「ま、元から決まった時刻なんてないんでね」と呟いた。
「そもそも特務隊は万年人手不足。定員オーバーになることなんてないし、本来いつ来てくれても構わねえから。ま、ばらばらに来られると対応がめんどいんで、こうして試験日作ってるわけだけどな」
「ちょっと刹亜、それは言っちゃダメって灰崎さんに言われてるでしょ」
「別に今から入隊試験受ける相手なら構わないだろ。んじゃはい。これがあんたの受付番号。番号順に呼ばれてくから、そっちの列並んどいて」
「あ、はい。どうも……」
折原から受付札をもらうも、僕はその場から動かずに二人を見つめた。
二人とも服装は特務隊のもので間違いない。ここで受付をやっているわけだから、戦闘部隊ではないのだろうけど、それにしても僕の知る特務隊のイメージからかけ離れている。
特務隊と言えば、日本で唯一の怪獣討伐機関だ。
今から約十年前に突如として地球に現れた化け物たち。その姿は動物・植物・電子機器、その他地球上に存在するあらゆるものと類似した形を持っており、共通の性質として人間の捕食と建物の破壊行動が見られた。
まさしく映画や漫画で登場する怪獣そのもの。中でも高層ビルより巨大な怪獣は大怪獣と呼ばれ、破壊規模含めて人々から大いに恐れられた。
世界中が一致団結し怪獣への対処を試みたが、その全てが無駄に終わった。既存の兵器で小型の怪獣を制圧することはできても、大怪獣相手にはほとんど通じず。一年が経つ頃には人類は地上を放棄し、地下に逃げ込むことになった。
そんな混沌の渦中で急遽設立されたのが怪獣討伐を目的とする特務隊。『怪獣を以て怪獣を制す』をコンセプトに、討伐した怪獣の体を活用することで、既存の兵器で歯が立たなかった怪獣への対処を試みた。
十年経った今でも十分な戦果は挙げられていないが、それでも地上を死なずに移動することができるのは特務隊だけ。特務隊の中には怪獣討伐を目的とした部隊だけでなく、地下に暮らす人々に定期的に食料や必需品を提供しにいく輸送部隊もおり、彼らのおかげで人類は絶滅を免れている。
そんなわけで、特務隊は人類の最後の砦にして希望。日本に住む国民全ての憧れであり、特務隊に所属している者も自信や誇りに満ちた人が多かった――のに。
目の前の二人からはそうした自負はまるで感じられない。一体なぜ……
「どうかしましたか?」
いつまでも僕が移動しないのを不審に思ったのか、石神が小首をかしげ尋ねてくる。
僕は少し躊躇した後、思ったことを素直にぶつけてみた。
「お二人は、特務隊員なんですよね」
「ええ勿論。まあ戦闘部隊ではなく裏方の事務員ですけど」
「事務員でも、怪獣から世界を取り戻すために戦っている特務隊の一員ですよね。何というか、その割には覇気がないような気がして」
「ああそのタイプね。夢壊すようで悪いですけど、こんなもんですよ」
折原が頬杖を突いて気だるげに言った。
「あなたもこれから入隊すりゃ分かるでしょうが、ここはそんな大した場所じゃない。怪獣を討伐し人類の居場所を取り返すとか謳ってますが、そんな兆しは一切ないし。今ある利権をいかに維持して今世を乗り切るか考えてる腐敗した団体ですよ」
「刹亜、それ以上は――」
「これから面接あるでしょ。そこで真っ先に書かされるのが、『死亡同意書』です。特務隊に入隊するからには、人民のために自らの命を捧げること。その死がどれだけ無意味に散ろうとも当団体には一切責任がないことを保証させる、一方的な契約。これを享受できる人間だけが、特務隊に入る資格があるんですって。全く、ブラックもいいところだ。ねえ、そう思いませんか?」
「思いませんけど」
「……」
僕がノータイムで応じると、折原は眉をしかめ口を閉ざした。
もしかしたらこれも試験の一環なんだろうかと思いつつ、僕は言葉を続けた。
「猫――じゃなく人民のために命を捧げるなんて当然です。自分が死んでもいいから怪獣を倒し、世界を取り戻したい。そう言う覚悟があるから僕はここにいるんです。当然命なんて惜しくない」
「……それがこの状況を一切好転させない、無駄死にだったとしてもか」
「勿論です。そもそもどんな死も無駄だとは思っていませんし、仮に何の成果も出せず死ぬことになっても文句はありません。ここで戦うことを選ばなければ、それこそただ怪獣に殺されるだけの無意味な人生になりますから。というより、折原さんも特務隊の一員ということは『死亡同意書』に同意して入隊したんですよね。だったら説明するまでもなく、僕の気持ちがわかるんじゃないですか?」
「……俺は」
「あ、そろそろ呼ばれそうですよ。移動したほうがいいんじゃないですか」
石神が急に口を挟んできた。
彼の言う通り、入隊希望者で作られていた長蛇の列もほとんど解消されていた。そこまで話し込んだつもりはなかったが、随分と試験の進行が速いらしい。
折原が何と答えるのか少し聞きたい気持ちはある。ただそれも、入隊することができればいつでも聞けると考えなおし、僕は深々頭を下げた。
「有難うございます。お二人のおかげで、改めて入隊する覚悟が決まりました。必ず入隊しますので、その時はまたお話しさせて下さい」
「うん。それだけの覚悟があれば入隊は堅いと思うから、気負わず受けてきてください。ご健闘お祈りしています」
そう言って、石神も丁寧なお辞儀を返す。折原はというと、軽く頭を下げただけで何も言ってくれなかった。
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