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第1怪:戦艦亀
いざ地上へ
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宗吾から大怪獣調査の手伝い募集について聞いてから二週間後。
無事に応募が通った二人と一匹は、集合場所に向かっていた。
指定時刻の十分前に集合場所に到着するも、既に他の隊員は全員集まっていた。
制服と見た目から誰がどの所属か一目でわかる。
第四から明らかに戦闘員と分かるおじさんが三人と、少し様子のおかしい、顔を黒い布で覆った隊員が二人。第五から見るからに研究者な白衣を着た者が三人。見覚えはないが同じ第六の制服を着た長身で陰気そうな青年が一人。
刹亜達を含め、計十一人での行軍のようだった。
第四の制服を着た壮年の男――名前は一倉――が、刹亜らをぎろりと睥睨した。
「第六の分際で一番最後に到着とはな。随分偉くなったものだ」
「あ? 集合時間の十分前についてんだ――」
早速けんか腰の刹亜の口を塞ぎ、宗吾が素早く頭を下げた。
「申し訳ありません! 少し書類整理に手間取ってしまい出遅れてしまいました。今後は気を付けますのでご容赦頂ければ幸いです」
「ふん。次はないぞ」
「有難うございます!」
不満顔の刹亜を押さえつけたまま、一行は用意されていたマイクロバスに乗り込んだ。
地上を失った人類の資源は乏しい。昔と違い自動車や航空機は貴重なものであり、乗る機会など滅多になく。久しぶりの乗車に刹亜のテンションが上がった。
全員が席に座ると、第四の隊員が運転を開始した。
地上を動く乗り物については、エンジン音ゼロと迷彩加工が施されている。また機体は怪獣の鱗などを使用することで、ちょっとやそっとの攻撃では破壊されないよう改造されていた。
とはいえ決して安全ではない。怪獣によって荒らされた地上に舗装された道などほとんど残されておらず、音を立てずに動くのは厳しい悪路ばかり。怪獣の体を使うことで装甲の強度を上げているとはいえ、難なく突破してくる怪獣も多数いる。まあ、動き出してしまった以上心配するだけ無駄な話だが。
バスが出発してから十分。怪獣からの襲撃も受けず順調な滑り出しの中、第五の研究員が口を開いた。
「さて皆さん。既に軽くは話してあるけれど、今回の目的について改めて説明させてもらうね。と、その前にまずは自己紹介と行こうか。僕こそが今回の調査を提案した発起人、第五のカラーホワイトで研究長を拝命している天木天明だ。これからよろしく頼むよ」
明朗ではきはきとした話し方と声色。白髪交じりで顔にも深いしわがあり、かなり年を取っているように見える一方、声だけを聞くなら無邪気な少年のようにすら感じられる。
他の隊と全く関りを持たない刹亜は当然天木のことを知らず、何となく頷く。一方周りの隊員は天木のことをよく知っているらしく、何をいまさらという視線を向けていた。
刹亜は隣の席に座る宗吾を軽く肘で小突くと、「あの爺さん有名なのか?」と囁いた。
「……現在使われている兵器の大半は天木先生の成果だよ。特務隊なら知らない人はいない名前だと思うけど」
「マジか。初耳だ」
「……トレーニングするのは自由だけど、多少は僕以外の人ともコミュニケーション取った方がいいと思うよ」
呆れと憐憫を含んだ視線を宗吾が向けてくる。ついでに今日も首に巻いている白マフラーことリュウも、あざ笑うかのように体を震わせた。
二人の態度に苛立ちを覚え、刹亜は拗ねた様子でそっぽを向く。
そんな彼らのやり取りなど当然気付くことなく、天木の話は続いていた。
「今回の僕らのミッションは人類が三体だけ倒した大怪獣の一つ、『戦艦亀』の死体の調査だ。当時の、まだギリギリ人類が怪獣に屈していなかった頃の、最大の戦果だね。それと同時に、今日に至るまであまり調査をされてこなかった最大の資源でもある」
「……戦艦亀の体は、有効利用されてませんでしたか」
見覚えのない第六の青年――水瀬が、ぼそぼそと疑問を口にする。
天木は教え子を見るような目でにっこり笑みを浮かべると、「それも間違いじゃない」と頷いた。
「人手や機器不足、他の怪獣からの妨害を受けたとはいえ、ある程度検体の回収は済んでいる。特に戦艦亀の甲羅は防具やその他兵器に大いに活用されているとも。だけどその一方で、僕たちはまだ、大怪獣の死体を十分に調べられていない。端的に言えば、死後にどのような変遷をたどるのか。ここのところはまるで研究されていないんだ。僕としてこれは怪獣の本質を掴み、彼らを世界から消すために必須の行為だと思うんだよね」
「……いまいち、よく分かりません」
「そうかい? 君たちも全員知っていると思うけど、怪獣は生物としての構造からして僕らとは違う。加えてどこからやって来たのかさえ分かっていない。そんな怪獣の、この世界での死後。非常に興味深いだろう?」
「それなら、小型の怪獣でも十分なのでは?」
「勿論小型の怪獣については調べてあるさ。けれど、やはり大怪獣というのは別格の存在だと思うんだよね! あれだけのスケールを誇る存在がそもそもこの世界に存在すること自体異常で興味深いことだ! 理由なくあそこまで巨大になるはずがないし、何か大きくなる必要があったと推測されるのだけど――」
「天木研究長。お話がそれています。一度落ち着いてください」
天木の隣に座る、白衣を着た第五の女性――心木が冷たい声で待ったをかける。天木は照れたように頭を掻きながら、「ごめんごめん」と謝罪した。
「まあとにかく、大怪獣の死体を調べることは彼らを倒すために意義のある行為だと考えているんだ。とはいえすぐに結果が得られるものではないし、上層部からもあまり賛同は得られなくてね。本来ならもっと大人数で調べたかったんだけど、今回は少数の、僕ら十一人での調査となったわけだ」
揺れるバス内でわざわざ立ち上がり、天木は参加したメンバー一人一人にしっかり視線を合わせていく。
参加した隊員を集団でなく個として認識しようとする天木の態度に、自然と刹亜らの姿勢も正される。
一方で、第四部隊は今回の天木の調査に否定的らしく、一倉が「下らん」と吐き捨てた。
「大した成果も見込まれないことのために、貴重な時間と人員を割くなど今後は止めていただきたい。それにどうして第六の屑どもまで連れてきたんだ。俺たちだけで十分だろ」
天木は困った様子で眉をひそめ、一倉を見返した。
「そりゃあ調査の手伝いだよ。君たちは護衛専門で、どうせ調査の手伝いはしてくれないんでしょ?」
「当たり前だ。一分の隙も作らず常に警戒態勢を維持するのが第四だ。研究者のくだらない道楽に付き合ってなどいられない」
「ひどいなあ。その道楽の結果、怪獣を殺せる武器が生み出されるのに。まあ何にしろ、君たちが手伝ってくれないんだから雑用を呼ぶのは当然じゃないか」
「ふん。それにしてもこんなひょろそうなガキどもばかりじゃな。何の役に立つのやら」
「あ? 喧嘩売ってんのかおい」
見下した発言を受け、沸点の低い刹亜が瞬時に沸き立った。
「これでも俺は毎日鍛えてるんだ。あんたが思ってるほど雑魚じゃねえぞ」
「は。毎日鍛えているなんて当たり前のことだ。第四にいるのはその上でセンスと強靭なメンタルを持った者のみ。お前のようなちょっと鍛えただけの一般人がほざくんじゃない」
「んだと――」
「刹亜ストップ。よく見て、あの人たち全員シルバースターだよ。僕らとレベルが違うのは嘘じゃない」
「……ちっ」
第四部隊に所属する者は、一部の例外を除き全員が胸に星型のバッチを付けている。これは一種の勲章かつ階級章であり、第四として一年未満の者はイエロー。一年以上三年未満の者はブロンズ。三年以上五年未満の者はシルバー。五年以上の者はゴールドのバッチの着用義務がある。
現環境下においては、地上に出ること自体が高い命のリスクを伴う。まして怪獣の討伐となれば死のリスクは計り知れない。
フィジカルエリートが選抜されているとはいえ、怪獣と直接戦う第四の死亡率は他の部隊とは比べ物にならないほど高い。ましな年でも30%、ひどい年なら生存率は10%を切る。そんな第四において三年以上死なずに活躍し続けるシルバースターの持ち主は文句なくエリート中のエリート。第六部隊の隊員が歯向かっていい相手ではなかった。
「全く、俺たちがシルバースターであることにすら気づいていなかったとはな。観察力のない者はすぐ死ぬ。死にたくないなら、俺たちの指示を厳守するんだな」
こぶしを握りしめ怒りを堪える刹亜。宗吾は彼をあやすように腰を軽く叩いてから、「一つ質問してもいいでしょうか?」と尋ねた。
「何だ、言ってみろ」
「シルバースターの、いわば特務隊の英雄と言ってもよい方たちが三人も同行している。今回の目的を考えると行き過ぎた護衛にすら感じるのですが、何か理由があるのでしょうか」
一倉は腕を組み、大きく頷いた。
「確かに。ただ研究者どもの我儘に付き合うだけなら何も俺たちが出る必要はないな。が、そのうちの一人は高名な先生だ。加えて今回は適性検査も兼ねている。本音を言えば、これでも少ないぐらいだと感じているな」
「適性検査ですか?」
「そこの二人だ。俺らと同じ第四だが、全く別物のバーサーカー部隊――カラーブラックの新人が二人もいる。万が一にもそいつらが暴走した時は俺たちで駆除しなくちゃならないからな。そうなれば怪獣討伐よりも面倒な戦いになる」
宗吾はちらりと視線を件の二人に向ける。黒い布で顔を覆った不審な二人組。カラーブラック所属であることにも驚いたが、それよりも『バーサーカー』、『暴走』という物騒な単語が気にかかった。
「……寡聞にして存じ上げないのですが、カラーブラックとはどのような部隊なのでしょうか? それにバーサーカーとは一体どういう意味でしょう?」
一倉は見下した様子で口角を上げると、「そういえば、第六には秘密の話だったな。忘れてくれ」と雑に話題を打ち切った。
勿論そう言われて忘れられるわけもないが、ここで反抗するのは印象を下げるだけと考え必死に堪える。
代わりに得意の作り笑顔を浮かべ、「お答えいただき有難うございました」と軽く頭を下げた。
こうして謎や不和を抱きつつも、彼らを乗せたマイクロバスは着々と目的地へと向かっていった。
無事に応募が通った二人と一匹は、集合場所に向かっていた。
指定時刻の十分前に集合場所に到着するも、既に他の隊員は全員集まっていた。
制服と見た目から誰がどの所属か一目でわかる。
第四から明らかに戦闘員と分かるおじさんが三人と、少し様子のおかしい、顔を黒い布で覆った隊員が二人。第五から見るからに研究者な白衣を着た者が三人。見覚えはないが同じ第六の制服を着た長身で陰気そうな青年が一人。
刹亜達を含め、計十一人での行軍のようだった。
第四の制服を着た壮年の男――名前は一倉――が、刹亜らをぎろりと睥睨した。
「第六の分際で一番最後に到着とはな。随分偉くなったものだ」
「あ? 集合時間の十分前についてんだ――」
早速けんか腰の刹亜の口を塞ぎ、宗吾が素早く頭を下げた。
「申し訳ありません! 少し書類整理に手間取ってしまい出遅れてしまいました。今後は気を付けますのでご容赦頂ければ幸いです」
「ふん。次はないぞ」
「有難うございます!」
不満顔の刹亜を押さえつけたまま、一行は用意されていたマイクロバスに乗り込んだ。
地上を失った人類の資源は乏しい。昔と違い自動車や航空機は貴重なものであり、乗る機会など滅多になく。久しぶりの乗車に刹亜のテンションが上がった。
全員が席に座ると、第四の隊員が運転を開始した。
地上を動く乗り物については、エンジン音ゼロと迷彩加工が施されている。また機体は怪獣の鱗などを使用することで、ちょっとやそっとの攻撃では破壊されないよう改造されていた。
とはいえ決して安全ではない。怪獣によって荒らされた地上に舗装された道などほとんど残されておらず、音を立てずに動くのは厳しい悪路ばかり。怪獣の体を使うことで装甲の強度を上げているとはいえ、難なく突破してくる怪獣も多数いる。まあ、動き出してしまった以上心配するだけ無駄な話だが。
バスが出発してから十分。怪獣からの襲撃も受けず順調な滑り出しの中、第五の研究員が口を開いた。
「さて皆さん。既に軽くは話してあるけれど、今回の目的について改めて説明させてもらうね。と、その前にまずは自己紹介と行こうか。僕こそが今回の調査を提案した発起人、第五のカラーホワイトで研究長を拝命している天木天明だ。これからよろしく頼むよ」
明朗ではきはきとした話し方と声色。白髪交じりで顔にも深いしわがあり、かなり年を取っているように見える一方、声だけを聞くなら無邪気な少年のようにすら感じられる。
他の隊と全く関りを持たない刹亜は当然天木のことを知らず、何となく頷く。一方周りの隊員は天木のことをよく知っているらしく、何をいまさらという視線を向けていた。
刹亜は隣の席に座る宗吾を軽く肘で小突くと、「あの爺さん有名なのか?」と囁いた。
「……現在使われている兵器の大半は天木先生の成果だよ。特務隊なら知らない人はいない名前だと思うけど」
「マジか。初耳だ」
「……トレーニングするのは自由だけど、多少は僕以外の人ともコミュニケーション取った方がいいと思うよ」
呆れと憐憫を含んだ視線を宗吾が向けてくる。ついでに今日も首に巻いている白マフラーことリュウも、あざ笑うかのように体を震わせた。
二人の態度に苛立ちを覚え、刹亜は拗ねた様子でそっぽを向く。
そんな彼らのやり取りなど当然気付くことなく、天木の話は続いていた。
「今回の僕らのミッションは人類が三体だけ倒した大怪獣の一つ、『戦艦亀』の死体の調査だ。当時の、まだギリギリ人類が怪獣に屈していなかった頃の、最大の戦果だね。それと同時に、今日に至るまであまり調査をされてこなかった最大の資源でもある」
「……戦艦亀の体は、有効利用されてませんでしたか」
見覚えのない第六の青年――水瀬が、ぼそぼそと疑問を口にする。
天木は教え子を見るような目でにっこり笑みを浮かべると、「それも間違いじゃない」と頷いた。
「人手や機器不足、他の怪獣からの妨害を受けたとはいえ、ある程度検体の回収は済んでいる。特に戦艦亀の甲羅は防具やその他兵器に大いに活用されているとも。だけどその一方で、僕たちはまだ、大怪獣の死体を十分に調べられていない。端的に言えば、死後にどのような変遷をたどるのか。ここのところはまるで研究されていないんだ。僕としてこれは怪獣の本質を掴み、彼らを世界から消すために必須の行為だと思うんだよね」
「……いまいち、よく分かりません」
「そうかい? 君たちも全員知っていると思うけど、怪獣は生物としての構造からして僕らとは違う。加えてどこからやって来たのかさえ分かっていない。そんな怪獣の、この世界での死後。非常に興味深いだろう?」
「それなら、小型の怪獣でも十分なのでは?」
「勿論小型の怪獣については調べてあるさ。けれど、やはり大怪獣というのは別格の存在だと思うんだよね! あれだけのスケールを誇る存在がそもそもこの世界に存在すること自体異常で興味深いことだ! 理由なくあそこまで巨大になるはずがないし、何か大きくなる必要があったと推測されるのだけど――」
「天木研究長。お話がそれています。一度落ち着いてください」
天木の隣に座る、白衣を着た第五の女性――心木が冷たい声で待ったをかける。天木は照れたように頭を掻きながら、「ごめんごめん」と謝罪した。
「まあとにかく、大怪獣の死体を調べることは彼らを倒すために意義のある行為だと考えているんだ。とはいえすぐに結果が得られるものではないし、上層部からもあまり賛同は得られなくてね。本来ならもっと大人数で調べたかったんだけど、今回は少数の、僕ら十一人での調査となったわけだ」
揺れるバス内でわざわざ立ち上がり、天木は参加したメンバー一人一人にしっかり視線を合わせていく。
参加した隊員を集団でなく個として認識しようとする天木の態度に、自然と刹亜らの姿勢も正される。
一方で、第四部隊は今回の天木の調査に否定的らしく、一倉が「下らん」と吐き捨てた。
「大した成果も見込まれないことのために、貴重な時間と人員を割くなど今後は止めていただきたい。それにどうして第六の屑どもまで連れてきたんだ。俺たちだけで十分だろ」
天木は困った様子で眉をひそめ、一倉を見返した。
「そりゃあ調査の手伝いだよ。君たちは護衛専門で、どうせ調査の手伝いはしてくれないんでしょ?」
「当たり前だ。一分の隙も作らず常に警戒態勢を維持するのが第四だ。研究者のくだらない道楽に付き合ってなどいられない」
「ひどいなあ。その道楽の結果、怪獣を殺せる武器が生み出されるのに。まあ何にしろ、君たちが手伝ってくれないんだから雑用を呼ぶのは当然じゃないか」
「ふん。それにしてもこんなひょろそうなガキどもばかりじゃな。何の役に立つのやら」
「あ? 喧嘩売ってんのかおい」
見下した発言を受け、沸点の低い刹亜が瞬時に沸き立った。
「これでも俺は毎日鍛えてるんだ。あんたが思ってるほど雑魚じゃねえぞ」
「は。毎日鍛えているなんて当たり前のことだ。第四にいるのはその上でセンスと強靭なメンタルを持った者のみ。お前のようなちょっと鍛えただけの一般人がほざくんじゃない」
「んだと――」
「刹亜ストップ。よく見て、あの人たち全員シルバースターだよ。僕らとレベルが違うのは嘘じゃない」
「……ちっ」
第四部隊に所属する者は、一部の例外を除き全員が胸に星型のバッチを付けている。これは一種の勲章かつ階級章であり、第四として一年未満の者はイエロー。一年以上三年未満の者はブロンズ。三年以上五年未満の者はシルバー。五年以上の者はゴールドのバッチの着用義務がある。
現環境下においては、地上に出ること自体が高い命のリスクを伴う。まして怪獣の討伐となれば死のリスクは計り知れない。
フィジカルエリートが選抜されているとはいえ、怪獣と直接戦う第四の死亡率は他の部隊とは比べ物にならないほど高い。ましな年でも30%、ひどい年なら生存率は10%を切る。そんな第四において三年以上死なずに活躍し続けるシルバースターの持ち主は文句なくエリート中のエリート。第六部隊の隊員が歯向かっていい相手ではなかった。
「全く、俺たちがシルバースターであることにすら気づいていなかったとはな。観察力のない者はすぐ死ぬ。死にたくないなら、俺たちの指示を厳守するんだな」
こぶしを握りしめ怒りを堪える刹亜。宗吾は彼をあやすように腰を軽く叩いてから、「一つ質問してもいいでしょうか?」と尋ねた。
「何だ、言ってみろ」
「シルバースターの、いわば特務隊の英雄と言ってもよい方たちが三人も同行している。今回の目的を考えると行き過ぎた護衛にすら感じるのですが、何か理由があるのでしょうか」
一倉は腕を組み、大きく頷いた。
「確かに。ただ研究者どもの我儘に付き合うだけなら何も俺たちが出る必要はないな。が、そのうちの一人は高名な先生だ。加えて今回は適性検査も兼ねている。本音を言えば、これでも少ないぐらいだと感じているな」
「適性検査ですか?」
「そこの二人だ。俺らと同じ第四だが、全く別物のバーサーカー部隊――カラーブラックの新人が二人もいる。万が一にもそいつらが暴走した時は俺たちで駆除しなくちゃならないからな。そうなれば怪獣討伐よりも面倒な戦いになる」
宗吾はちらりと視線を件の二人に向ける。黒い布で顔を覆った不審な二人組。カラーブラック所属であることにも驚いたが、それよりも『バーサーカー』、『暴走』という物騒な単語が気にかかった。
「……寡聞にして存じ上げないのですが、カラーブラックとはどのような部隊なのでしょうか? それにバーサーカーとは一体どういう意味でしょう?」
一倉は見下した様子で口角を上げると、「そういえば、第六には秘密の話だったな。忘れてくれ」と雑に話題を打ち切った。
勿論そう言われて忘れられるわけもないが、ここで反抗するのは印象を下げるだけと考え必死に堪える。
代わりに得意の作り笑顔を浮かべ、「お答えいただき有難うございました」と軽く頭を下げた。
こうして謎や不和を抱きつつも、彼らを乗せたマイクロバスは着々と目的地へと向かっていった。
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