20 / 40
第2怪:真珠蜘蛛
漂着
しおりを挟む
「おい、あれじゃないか」
双眼鏡を用い海を見張っていた特務隊――日本唯一の怪獣討伐機関――の隊員の一人が声を上げる。
周りにいた隊員は彼が指さす方に目を向け、「あれか?」と呟いた。
海からゆっくりと、こちらに近づいてくる、巨大な影――否、巨大な貝。
中国からの緊急連絡で知ることとなった、大怪獣『真珠蜘蛛』の死骸。
かの国曰く、「対怪獣用の毒ガスを貝の中で大量にばらまいて殺した」とのこと。死骸を回収しようとしたところ、他の怪獣と遭遇し取り逃した。進行方向からして○○日後に日本近海に到着すると考えられるため、処分の方をお願いしたいとの話だった。
真珠蜘蛛は怪獣出現初期から観測されている大怪獣の一体。見た目はアコヤガイを彷彿とさせる巨大な貝の形をしており、直径約四百メートルと言われる。貝の硬度は尋常でなく、かの戦艦亀の甲羅と並ぶほどの硬度を持っている。しかし真珠蜘蛛の脅威はそこではない。真の脅威は、貝の中に飼われている巨大な蜘蛛であった。
巨大蜘蛛は太く伸縮性のある白い糸を吐き出し、近づいてきた獲物を片っ端から捕獲、中に引きずり込んでいく習性を持っていた。貝を盾にした蜘蛛の攻撃は一方的かつ強力で、出現初期には数千の兵士が中に引きずり込まれ殺された。
糸による攻撃を避け貝内部まで侵入に成功した部隊もあったが、貝の中は人よりも太い糸が張り巡らされた蜘蛛の巣塗れであり、ろくに動くこともできず動画と音声のみを託し全滅した。またこの際、巣の中には糸に包まれた巨大な塊が点在しているのが確認されていた。これは中に取り込まれた兵士の成れの果てであったが、いくつかの中身は大きな真珠であった。
以上のことから、真珠蜘蛛は中に取り込んだ兵士を核とし真珠を作ると考えられた。
また、真珠蜘蛛には他の怪獣とは明確に違う点が一つあった。それは、人だけでなく他の怪獣も襲うこと。
多くの怪獣は血の反発からか、基本的に怪獣同士での殺し合い、共食いを行わない。しかし真珠蜘蛛は怪獣も真珠を作るための核として利用できるらしく、近づいた怪獣もまとめて捕縛する動きを見せていた。
攻略難度としては戦艦亀よりも低いとされていたにもかかわらず、総攻撃の対象とされなかった理由でもある。
『掃除屋』の異名もつけられていた真珠蜘蛛は、大怪獣ながら一定の有用性を見込まれ、大規模な討伐作戦が行われてこなかった――今日までは。
隊員たちに見張られる中、真珠蜘蛛は陸地に接着する。
接着した陸地の近くには怪獣がちらほらうろついている。しかし真珠蜘蛛から糸が射出されることは無い。
疑わしくはあったが、中国の言葉通り既に真珠蜘蛛は息絶えているようだった。
先遣隊として、数名の隊員が武装したまま真珠蜘蛛に近づく。周囲の怪獣を討伐した彼らは、貝に触れられるところまで接近した。
貝は完全には閉まっておらず少しだけ開いている。少しとはいえ、人が入るには十分すぎるほどの隙間。彼らは顔を見合わせた。
「……本当に、死んでるんだよな?」
怖気づく隊員に対し、別の隊員が叱咤する。
「どうせ誰かは調べなきゃならねえんだ。ごちゃごちゃ言ってないでさっさと行くぞ」
「それにもし生きてるなら、この距離まで近づいた時点で殺されてるはずだ。死んでるかはともかく、弱ってるのは間違いないんじゃないか」
さらに別の隊員も、緊張した面持ちながら背中を押す。
それでも前に進もうとしないため、痺れを切らした一人が単独で中に入っていった。
双眼鏡を用い海を見張っていた特務隊――日本唯一の怪獣討伐機関――の隊員の一人が声を上げる。
周りにいた隊員は彼が指さす方に目を向け、「あれか?」と呟いた。
海からゆっくりと、こちらに近づいてくる、巨大な影――否、巨大な貝。
中国からの緊急連絡で知ることとなった、大怪獣『真珠蜘蛛』の死骸。
かの国曰く、「対怪獣用の毒ガスを貝の中で大量にばらまいて殺した」とのこと。死骸を回収しようとしたところ、他の怪獣と遭遇し取り逃した。進行方向からして○○日後に日本近海に到着すると考えられるため、処分の方をお願いしたいとの話だった。
真珠蜘蛛は怪獣出現初期から観測されている大怪獣の一体。見た目はアコヤガイを彷彿とさせる巨大な貝の形をしており、直径約四百メートルと言われる。貝の硬度は尋常でなく、かの戦艦亀の甲羅と並ぶほどの硬度を持っている。しかし真珠蜘蛛の脅威はそこではない。真の脅威は、貝の中に飼われている巨大な蜘蛛であった。
巨大蜘蛛は太く伸縮性のある白い糸を吐き出し、近づいてきた獲物を片っ端から捕獲、中に引きずり込んでいく習性を持っていた。貝を盾にした蜘蛛の攻撃は一方的かつ強力で、出現初期には数千の兵士が中に引きずり込まれ殺された。
糸による攻撃を避け貝内部まで侵入に成功した部隊もあったが、貝の中は人よりも太い糸が張り巡らされた蜘蛛の巣塗れであり、ろくに動くこともできず動画と音声のみを託し全滅した。またこの際、巣の中には糸に包まれた巨大な塊が点在しているのが確認されていた。これは中に取り込まれた兵士の成れの果てであったが、いくつかの中身は大きな真珠であった。
以上のことから、真珠蜘蛛は中に取り込んだ兵士を核とし真珠を作ると考えられた。
また、真珠蜘蛛には他の怪獣とは明確に違う点が一つあった。それは、人だけでなく他の怪獣も襲うこと。
多くの怪獣は血の反発からか、基本的に怪獣同士での殺し合い、共食いを行わない。しかし真珠蜘蛛は怪獣も真珠を作るための核として利用できるらしく、近づいた怪獣もまとめて捕縛する動きを見せていた。
攻略難度としては戦艦亀よりも低いとされていたにもかかわらず、総攻撃の対象とされなかった理由でもある。
『掃除屋』の異名もつけられていた真珠蜘蛛は、大怪獣ながら一定の有用性を見込まれ、大規模な討伐作戦が行われてこなかった――今日までは。
隊員たちに見張られる中、真珠蜘蛛は陸地に接着する。
接着した陸地の近くには怪獣がちらほらうろついている。しかし真珠蜘蛛から糸が射出されることは無い。
疑わしくはあったが、中国の言葉通り既に真珠蜘蛛は息絶えているようだった。
先遣隊として、数名の隊員が武装したまま真珠蜘蛛に近づく。周囲の怪獣を討伐した彼らは、貝に触れられるところまで接近した。
貝は完全には閉まっておらず少しだけ開いている。少しとはいえ、人が入るには十分すぎるほどの隙間。彼らは顔を見合わせた。
「……本当に、死んでるんだよな?」
怖気づく隊員に対し、別の隊員が叱咤する。
「どうせ誰かは調べなきゃならねえんだ。ごちゃごちゃ言ってないでさっさと行くぞ」
「それにもし生きてるなら、この距離まで近づいた時点で殺されてるはずだ。死んでるかはともかく、弱ってるのは間違いないんじゃないか」
さらに別の隊員も、緊張した面持ちながら背中を押す。
それでも前に進もうとしないため、痺れを切らした一人が単独で中に入っていった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる