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不動の二日目
幕間:主催者どもの勝手な予想2
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「はてさてさて! 無事二日目も終了いたしました! 初日に比べれば全体的に動きが少なく、些か退屈な展開だったように思えましたが如何でしたでしょうか? 退屈な展開とは言いましたがそれぞれ全く何もしていなかったわけでなく、今後の生き死にを決める重要な駆け引きや伏線も多く存在していたことと思われます。本日の出来事を踏まえ、あのプレイヤーはやっぱり面白い。あのプレイヤーは思っていたほど大したことないなど、評価が変わる場面もあったのではないでしょうか?
是非是非御方々の感想を承りたいと思います!」
薄暗い、モニターの明かりのみが光源の奇怪な部屋。前日と変わらずそこには六人の男女が集い、それぞれ自由にモニターへと視線を飛ばしている。そんな中、喜多嶋はマイク片手に高らかと声を上げた。
真っ先に口を開いたのは昨日と同じく恰幅の酔い禿げた男――八雲だ。むふんと大きな鼻息を漏らすと、大儀そうに持論を述べた。
「儂の意見は変わらんよ。鬼道院。やつこそがこのゲームの勝者となる。あやつを甘く見て取り入ろうなどと企んでいた藤城は予想通り殺された。つまり鬼道院は裏切られるリスクなくして二つのキラースペルを所持したことになる。運も実力のうち。今日最大の戦果を得られたのは、間違いなくあやつだろう」
「それはどうかのう。妾としては藤城を殺した者こそ、このゲームをクリアする筆頭候補だと思いましたけどなあ。というよりも杉並さん。藤城を殺したあの者こそが杉並の刺客で間違いないのでしょう? いくらなんでもあの身体能力は、少しばかり不公平だと思うのですがなあ」
仮面に空いた微かな穴から、天上院は氷のように冷たい視線を『杉並』に投げかける。相も変わらず全身を黒装束で包んだ杉並は、まるで機械音のようなくぐもった声で淡々と言い返した。
「確かに、藤城を殺した者が杉並の刺客です。ただ、このゲームにおいて身体能力はあまり役に立たないもの。即死系のキラースペルの前には肉体の頑強さなど何の意味も持ちません。藤城の死は、彼自身の油断が招いた結果。不公平だとは言えないと思いますが。それに、あの者は自身の行いがルール違反にならないよう、誰よりもリスク――いや、体を張りました。それは皆々様もご承知の通りと思いますが」
杉並の言葉を聞き、天上院は扇でそっと顔を隠す。
それでこの話にひと段落着いたと考えたのか、続いて頬がこけた白髪の青年――如月が口を開いた。
「どうやら天上院さんは勝者となる人物を杉並に変えたようですね。それはとても都合がいい。私も予想を変え、天上院さんがもともと推していた東郷が生き残ると考えを改めました。というより、彼がこのゲームで生き残ることは百パーセント確定した未来でしょう」
「如月の坊ちゃんがそこまで強く言い切るとは珍しいな。是非ともその心を教えてもらいたいものだ」
完全に馬鹿にした表情で八雲が如月を見つめる。だが如月は、自分が間違ったことを言ったと一切考えていない様子で、涼し気に八雲を見つめ返した。
「これまでの東郷の動きを追えば八雲さんも気づくでしょう。私がなぜこんなことを言っているのか。彼は、今まで誰もしなかった――いや、成し得なかったことをキラースペルを用いて可能にしたのです。私自身にわかには信じがたいですが、あの場面。何度も脳内で再生しましたが、ただ一つの信じ難い結論に収束せざるを得ませんでした」
「だからその結論が何かと聞いてるんだがな。まあいい。坊ちゃんが言っていることが本当かどうかはゲームの続きを見ていれば自ずと明らかになるだろう。それより金光はどうなんだ。まだ宮城が勝つことを期待しているのか」
この話にはもう興味がなくなったらしく、八雲は金光へと話を振る。金光はとぼけた様子で、「勿論宮城君のことは応援してますけど」と前置きしてから続けた。
「どうにも僕が思うに、宮城君死亡フラグが立っちゃった気がするんだよね。彼は精神的にも肉体的にもすごく強いけど、こうした駆け引きはやっぱり向いてないみたいだし。だから勝者予想としては……架城さんか秋華さんかなぁ。二人とも独自の必勝法を導き出してるように見えるし、なんとなく死にそうにないから」
本気なのかふざけているのか。どちらとも取れない金光の態度に、八雲は面倒そうに顔を歪める。
「……毎度のことだがお主のなんとなくは信じていいのか悪いのか分からんな。当たるときは当たるが外すときはとことん外しおるし」
「妾は金光老の言葉を信じますよ。前回は予想を大きく外しておったから、今回は当たる番だと思うのでな」
「私は信じませんね。架城はともかく秋華は東郷を敵に回しているように見える。今回の勝利者が東郷となる以上、少なくとも秋華が生き残ることはないでしょう」
「如月坊ちゃんの東郷信奉は随分のものだな。しかし……うむ。儂としても秋華は鬼道院と相容れない存在に見える。鬼道院が勝ち残る以上、奴の死は必然に思えるが……」
どこまで考えあっての物だったかは分からないが、金光の言を機に再びそれぞれが長い黙考状態へと移り替わる。
どうやら二日目の感想はここまでと見て取り、喜多嶋はやや声を潜めて解散の音頭をとった。
「それでは、本日はここまでということで。私の勝手な予想でございますが、明日からは今日とは違って大きな動きが見られることでしょう。それによって今まで自分が推していたプレイヤーがあっさり死ぬことになるかもしれませんし、これまで目立たなかったプレイヤーが急に浮上するかもしれません。
いずれにしろ、ゲームはまだ二日目を過ぎたばかり。本当の闘いはこれからと思われます。是非、明日からの戦いも期待してお待ちください」
是非是非御方々の感想を承りたいと思います!」
薄暗い、モニターの明かりのみが光源の奇怪な部屋。前日と変わらずそこには六人の男女が集い、それぞれ自由にモニターへと視線を飛ばしている。そんな中、喜多嶋はマイク片手に高らかと声を上げた。
真っ先に口を開いたのは昨日と同じく恰幅の酔い禿げた男――八雲だ。むふんと大きな鼻息を漏らすと、大儀そうに持論を述べた。
「儂の意見は変わらんよ。鬼道院。やつこそがこのゲームの勝者となる。あやつを甘く見て取り入ろうなどと企んでいた藤城は予想通り殺された。つまり鬼道院は裏切られるリスクなくして二つのキラースペルを所持したことになる。運も実力のうち。今日最大の戦果を得られたのは、間違いなくあやつだろう」
「それはどうかのう。妾としては藤城を殺した者こそ、このゲームをクリアする筆頭候補だと思いましたけどなあ。というよりも杉並さん。藤城を殺したあの者こそが杉並の刺客で間違いないのでしょう? いくらなんでもあの身体能力は、少しばかり不公平だと思うのですがなあ」
仮面に空いた微かな穴から、天上院は氷のように冷たい視線を『杉並』に投げかける。相も変わらず全身を黒装束で包んだ杉並は、まるで機械音のようなくぐもった声で淡々と言い返した。
「確かに、藤城を殺した者が杉並の刺客です。ただ、このゲームにおいて身体能力はあまり役に立たないもの。即死系のキラースペルの前には肉体の頑強さなど何の意味も持ちません。藤城の死は、彼自身の油断が招いた結果。不公平だとは言えないと思いますが。それに、あの者は自身の行いがルール違反にならないよう、誰よりもリスク――いや、体を張りました。それは皆々様もご承知の通りと思いますが」
杉並の言葉を聞き、天上院は扇でそっと顔を隠す。
それでこの話にひと段落着いたと考えたのか、続いて頬がこけた白髪の青年――如月が口を開いた。
「どうやら天上院さんは勝者となる人物を杉並に変えたようですね。それはとても都合がいい。私も予想を変え、天上院さんがもともと推していた東郷が生き残ると考えを改めました。というより、彼がこのゲームで生き残ることは百パーセント確定した未来でしょう」
「如月の坊ちゃんがそこまで強く言い切るとは珍しいな。是非ともその心を教えてもらいたいものだ」
完全に馬鹿にした表情で八雲が如月を見つめる。だが如月は、自分が間違ったことを言ったと一切考えていない様子で、涼し気に八雲を見つめ返した。
「これまでの東郷の動きを追えば八雲さんも気づくでしょう。私がなぜこんなことを言っているのか。彼は、今まで誰もしなかった――いや、成し得なかったことをキラースペルを用いて可能にしたのです。私自身にわかには信じがたいですが、あの場面。何度も脳内で再生しましたが、ただ一つの信じ難い結論に収束せざるを得ませんでした」
「だからその結論が何かと聞いてるんだがな。まあいい。坊ちゃんが言っていることが本当かどうかはゲームの続きを見ていれば自ずと明らかになるだろう。それより金光はどうなんだ。まだ宮城が勝つことを期待しているのか」
この話にはもう興味がなくなったらしく、八雲は金光へと話を振る。金光はとぼけた様子で、「勿論宮城君のことは応援してますけど」と前置きしてから続けた。
「どうにも僕が思うに、宮城君死亡フラグが立っちゃった気がするんだよね。彼は精神的にも肉体的にもすごく強いけど、こうした駆け引きはやっぱり向いてないみたいだし。だから勝者予想としては……架城さんか秋華さんかなぁ。二人とも独自の必勝法を導き出してるように見えるし、なんとなく死にそうにないから」
本気なのかふざけているのか。どちらとも取れない金光の態度に、八雲は面倒そうに顔を歪める。
「……毎度のことだがお主のなんとなくは信じていいのか悪いのか分からんな。当たるときは当たるが外すときはとことん外しおるし」
「妾は金光老の言葉を信じますよ。前回は予想を大きく外しておったから、今回は当たる番だと思うのでな」
「私は信じませんね。架城はともかく秋華は東郷を敵に回しているように見える。今回の勝利者が東郷となる以上、少なくとも秋華が生き残ることはないでしょう」
「如月坊ちゃんの東郷信奉は随分のものだな。しかし……うむ。儂としても秋華は鬼道院と相容れない存在に見える。鬼道院が勝ち残る以上、奴の死は必然に思えるが……」
どこまで考えあっての物だったかは分からないが、金光の言を機に再びそれぞれが長い黙考状態へと移り替わる。
どうやら二日目の感想はここまでと見て取り、喜多嶋はやや声を潜めて解散の音頭をとった。
「それでは、本日はここまでということで。私の勝手な予想でございますが、明日からは今日とは違って大きな動きが見られることでしょう。それによって今まで自分が推していたプレイヤーがあっさり死ぬことになるかもしれませんし、これまで目立たなかったプレイヤーが急に浮上するかもしれません。
いずれにしろ、ゲームはまだ二日目を過ぎたばかり。本当の闘いはこれからと思われます。是非、明日からの戦いも期待してお待ちください」
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