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正義躍動する三日目
幕間:主催者どもの勝手な予想3
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「これにて三日目も終了! 各々の準備も整ってきたようですし、今後のゲームの展開がいよいよ楽しみに! 宮城が暴露したキラースペルにより一気に終わりを迎えるのか! それとも六道らの持つカウンタースペルの存在がばれたことにより、より慎重な水面下の戦いが行われるのか! はたまた『杉並』の手によって残りのプレイヤーも殺されてしまうのか! それでは御方々の意見を聞いていきたいと思います!」
恒例の喜多嶋の問いかけと共に、主催者たちによる身勝手な話し合いが始まる。
そしてこれも恒例のこととして、真っ先に意見を述べたのは八雲だった。
「ふむ。まず言っておくが儂の予想は変わっておらんぞ。鬼道院がこのゲームの勝利者となる。これは譲らん。それにしても……今回のゲーム参加者は本当に慎重で消極的な動きをするものばかりだな。まさか大広間から一歩も外に出ず、宮城のくだらない話に数時間も付き合うとは……。正直退屈で居眠りをしてしまったぐらいだ」
眉間にしわを寄せ、うんざりとした表情を浮かべる八雲。
彼の発言に賛同するように、如月も小さくため息をこぼした。
「それに関しては全く同感ですね。『虚言致死』が全員に知れ渡ったことや、六道らが持つカウンタースペルの存在に他プレイヤーが気づくなど、ゲーム全体としては動きがなかったわけではありません。とはいえ、基本的には宮城の――いえ、佐久間の無駄話をだらだらと聞き続けるだけの時間がほとんど。退屈を覚えずにはいられませんでした」
喜多嶋の高揚した入りとは対照的に、場の雰囲気はどんよりとした陰鬱さを漂わせる。
どうやら全く満足いただけていなかったと知り、喜多嶋が慌てた様子で言葉を取り繕おうとする。が、彼よりも早く、場の空気を一変させるような朗らかな声音で金光が口を開いた。
「それはどうかなあ。僕としては、今までになく面白い時間を過ごさせてもらったよ。佐久間君だったっけ。彼のこと、最初は口先だけの小悪党かと思ってたけど、予想をはるかに上回る食わせ物じゃあないか。今まで応援してた宮城君は死んじゃったし、これからは彼のことを支持していこうかなあ」
不満顔の八雲、如月とは正反対の活き活きとした表情の金光。
まさか本気で言っているわけではあるまいなと、数人から猜疑の視線が降りかかる。
「……金光さんが少々特殊な嗜好の持ち主であることは知っているつもりですが、今回ばかりは毛ほども理解できませんね。できれば佐久間のどこにそんな魅力を見出したのか聞かせてもらえないでしょうか」
皆の疑問を代表して如月が尋ねる。
金光は不満そうな如月らの顔を笑顔で眺めた後、ゆったりとした口調で質問に答えた。
「佐久間君の魅力はさ、他の誰よりもやることに一貫性がある点なんだよ」
「一貫性? 誰に対しても警戒心を見せずに無駄話を繰り広げるところですか?」
「いやいやそこじゃなくてさ。彼が一貫してるのは、攻撃対象をゲーム参加者でなく僕ら主催者に絞っているところだよ」
「それは……」
反論しようと口を開くも、否定するに足る言葉が出ず押し黙る。
如月が沈黙するのと同時に、ここまで静けさを保ってきた天上院が、仮面の隙間から蠱惑的な声を出した。
「成る程なあ。言われてみれば佐久間の狙いは常に我々に向いていたようにも思えますなあ。何せ彼は、最初の時点からスペルを使い喜多嶋さんを殺せるか聞いておりましたからねえ。今回の無駄話もまた、妾達に対する嫌がらせのつもりであったと、金光老は仰りたいわけですか。すると金光老の言う面白い時間というのは、ゲームを楽しむはずの主催者がストレスをため、苛立ちに顔を歪めていた時間のことになるんでしょうなあ」
「うん、天上院さん大正解。今までの参加者で、僕たちに復讐しようとか取り入ろうとかしてきた人はたくさんいたけど、ゲーム中から嫌がらせをしてきた人なんていなかったからね。怒鳴ることすらできず、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた八雲さんや如月君の姿が見れるなんて、凄く貴重な時間だったよ」
悪意の欠片も見いだせない無垢な笑顔を浮かべ、金光は天上院の言葉に頷く。
普通なら多少なりとも気分を害すであろう発言だが、金光のその笑顔を見ると不思議にも苛立ちの感情がしぼんでしまう。
結果、八雲が軽くぼやいただけで、話題はいつもの勝利者予想へと移っていった。
「金光は佐久間へと鞍替えしたらしいが、如月の坊ちゃんは今も東郷が生き残ると予想しているのか」
「勿論です。これに関しては今後も変わることは絶対ありませんので、聞くだけ時間の無駄ですよ。それより、天上院さんは今も杉並の刺客が勝つとお考えですか」
「そうですなあ。少しずつ杉並の存在に感づき始めている者もいるようですが、まだその正体を特定はできそうにないですしなあ。妾も前日と変わらず杉並を推していきたいと思いますよう。と、そういえば杉並の使者さんは、今も彼が勝ち残ると考えているのですかねえ?」
不意に話を振られた『杉並』の使者は、機械の如く無感情に返答する。
「はい。このまま目立つ行動をとらなければ、まず間違いないでしょう。……ただ、あの者の欠点は調子に乗りやすく、時に余計な行動を起こすことです。今の状況は彼にとって理想通りの展開。それが彼の慢心を生み出すことに繋がり、不意の死を招く可能性はある、と考えます」
「随分と弱気な発言だな。まああ奴に関するヒントは既に鬼道院が聞き及んでいるからな。実際、このまま何事もなく勝ち残る展開にはならんだろう」
この八雲の意見には概ね皆賛成なのか、各々小さく首肯した。
それからしばらく、『虚言致死』のスペルに関する利用法や、カウンタースペルを攻略する方法などについて自分ならこうすると言った意見が交わされる。
その話題も下火になった頃、やや緊張した面持ちの喜多嶋が、話をまとめにかかった。
「どうやら、とあるプレイヤーの嫌がらせにより、御方々に退屈で不快な時間を提供してしまったようですね。謹んでお詫び申し上げます。次回以降はこのような事態にならないよう、何かしらルールの変更なども検討する所存です。
さて、明日からはどのような展開になるのか。いい加減、三人チームを組んだ彼らが動き出すと思われますが、一体彼らのスペルでどのようにライバルを殺していくのか。おそらくは姫宮様のスペルを主体とした殺人計画になると思われますが、今回集まった参加者は慎重なものばかり。うまく罠にはめるのはかなりの困難が予想されます。そして何より『杉並』の存在。三人チームの策を利用して、血命館に大きな波紋を生み出してくれることが期待できるのではないでしょうか。
それでは、引き続き彼らの殺し合いをご堪能ください」
恒例の喜多嶋の問いかけと共に、主催者たちによる身勝手な話し合いが始まる。
そしてこれも恒例のこととして、真っ先に意見を述べたのは八雲だった。
「ふむ。まず言っておくが儂の予想は変わっておらんぞ。鬼道院がこのゲームの勝利者となる。これは譲らん。それにしても……今回のゲーム参加者は本当に慎重で消極的な動きをするものばかりだな。まさか大広間から一歩も外に出ず、宮城のくだらない話に数時間も付き合うとは……。正直退屈で居眠りをしてしまったぐらいだ」
眉間にしわを寄せ、うんざりとした表情を浮かべる八雲。
彼の発言に賛同するように、如月も小さくため息をこぼした。
「それに関しては全く同感ですね。『虚言致死』が全員に知れ渡ったことや、六道らが持つカウンタースペルの存在に他プレイヤーが気づくなど、ゲーム全体としては動きがなかったわけではありません。とはいえ、基本的には宮城の――いえ、佐久間の無駄話をだらだらと聞き続けるだけの時間がほとんど。退屈を覚えずにはいられませんでした」
喜多嶋の高揚した入りとは対照的に、場の雰囲気はどんよりとした陰鬱さを漂わせる。
どうやら全く満足いただけていなかったと知り、喜多嶋が慌てた様子で言葉を取り繕おうとする。が、彼よりも早く、場の空気を一変させるような朗らかな声音で金光が口を開いた。
「それはどうかなあ。僕としては、今までになく面白い時間を過ごさせてもらったよ。佐久間君だったっけ。彼のこと、最初は口先だけの小悪党かと思ってたけど、予想をはるかに上回る食わせ物じゃあないか。今まで応援してた宮城君は死んじゃったし、これからは彼のことを支持していこうかなあ」
不満顔の八雲、如月とは正反対の活き活きとした表情の金光。
まさか本気で言っているわけではあるまいなと、数人から猜疑の視線が降りかかる。
「……金光さんが少々特殊な嗜好の持ち主であることは知っているつもりですが、今回ばかりは毛ほども理解できませんね。できれば佐久間のどこにそんな魅力を見出したのか聞かせてもらえないでしょうか」
皆の疑問を代表して如月が尋ねる。
金光は不満そうな如月らの顔を笑顔で眺めた後、ゆったりとした口調で質問に答えた。
「佐久間君の魅力はさ、他の誰よりもやることに一貫性がある点なんだよ」
「一貫性? 誰に対しても警戒心を見せずに無駄話を繰り広げるところですか?」
「いやいやそこじゃなくてさ。彼が一貫してるのは、攻撃対象をゲーム参加者でなく僕ら主催者に絞っているところだよ」
「それは……」
反論しようと口を開くも、否定するに足る言葉が出ず押し黙る。
如月が沈黙するのと同時に、ここまで静けさを保ってきた天上院が、仮面の隙間から蠱惑的な声を出した。
「成る程なあ。言われてみれば佐久間の狙いは常に我々に向いていたようにも思えますなあ。何せ彼は、最初の時点からスペルを使い喜多嶋さんを殺せるか聞いておりましたからねえ。今回の無駄話もまた、妾達に対する嫌がらせのつもりであったと、金光老は仰りたいわけですか。すると金光老の言う面白い時間というのは、ゲームを楽しむはずの主催者がストレスをため、苛立ちに顔を歪めていた時間のことになるんでしょうなあ」
「うん、天上院さん大正解。今までの参加者で、僕たちに復讐しようとか取り入ろうとかしてきた人はたくさんいたけど、ゲーム中から嫌がらせをしてきた人なんていなかったからね。怒鳴ることすらできず、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた八雲さんや如月君の姿が見れるなんて、凄く貴重な時間だったよ」
悪意の欠片も見いだせない無垢な笑顔を浮かべ、金光は天上院の言葉に頷く。
普通なら多少なりとも気分を害すであろう発言だが、金光のその笑顔を見ると不思議にも苛立ちの感情がしぼんでしまう。
結果、八雲が軽くぼやいただけで、話題はいつもの勝利者予想へと移っていった。
「金光は佐久間へと鞍替えしたらしいが、如月の坊ちゃんは今も東郷が生き残ると予想しているのか」
「勿論です。これに関しては今後も変わることは絶対ありませんので、聞くだけ時間の無駄ですよ。それより、天上院さんは今も杉並の刺客が勝つとお考えですか」
「そうですなあ。少しずつ杉並の存在に感づき始めている者もいるようですが、まだその正体を特定はできそうにないですしなあ。妾も前日と変わらず杉並を推していきたいと思いますよう。と、そういえば杉並の使者さんは、今も彼が勝ち残ると考えているのですかねえ?」
不意に話を振られた『杉並』の使者は、機械の如く無感情に返答する。
「はい。このまま目立つ行動をとらなければ、まず間違いないでしょう。……ただ、あの者の欠点は調子に乗りやすく、時に余計な行動を起こすことです。今の状況は彼にとって理想通りの展開。それが彼の慢心を生み出すことに繋がり、不意の死を招く可能性はある、と考えます」
「随分と弱気な発言だな。まああ奴に関するヒントは既に鬼道院が聞き及んでいるからな。実際、このまま何事もなく勝ち残る展開にはならんだろう」
この八雲の意見には概ね皆賛成なのか、各々小さく首肯した。
それからしばらく、『虚言致死』のスペルに関する利用法や、カウンタースペルを攻略する方法などについて自分ならこうすると言った意見が交わされる。
その話題も下火になった頃、やや緊張した面持ちの喜多嶋が、話をまとめにかかった。
「どうやら、とあるプレイヤーの嫌がらせにより、御方々に退屈で不快な時間を提供してしまったようですね。謹んでお詫び申し上げます。次回以降はこのような事態にならないよう、何かしらルールの変更なども検討する所存です。
さて、明日からはどのような展開になるのか。いい加減、三人チームを組んだ彼らが動き出すと思われますが、一体彼らのスペルでどのようにライバルを殺していくのか。おそらくは姫宮様のスペルを主体とした殺人計画になると思われますが、今回集まった参加者は慎重なものばかり。うまく罠にはめるのはかなりの困難が予想されます。そして何より『杉並』の存在。三人チームの策を利用して、血命館に大きな波紋を生み出してくれることが期待できるのではないでしょうか。
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